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「ソーシャルメディアの課題と形成する技術(ハードとソフト) 第2回」
株式会社オージス総研

2012年03月号
  • 「ソーシャルメディアの課題と形成する技術(ハードとソフト) 第2回」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 ※ 本稿は、財団法人経済産業調査会発行 「特許ニュース」 No.13167 ((2012 年2月14 日発行)への寄稿記事です。

1. はじめに

 第1回では、『ソーシャルメディアの位置づけと課題』と題して、ソーシャルメディアを広く捉え、その分類をし、有効性と課題について紹介した。本稿では、ソーシャルメディアの課題について、実名と匿名の違い、炎上という側面から掘り下げる。また、ソーシャルメディアを形成する技術についても解説していく。

2. 実名と匿名

 ソーシャルメディアは、実名で参加するものと、匿名で参加するものがある。実名で代表的なものがFacebookである。
 Facebookを使っていると、現在の会社の同僚、現在の友達、学生時代の友人、過去一緒に仕事をした人など、さまざまな人とつながる。特に、学生時代の友人や、過去一緒に仕事をした人などは、現在は連絡先も定かではなく音信不通の状態だったのが、思いもよらない経路で再びつながったりする。そして学生時代の友人や過去一緒に仕事をした人が、現在の会社の同僚や現在の友達と知り合いだったりと新たな人脈が判明する。特に、過去の友人、知人は自分とは別の業界で経験を積んでいることが多く、会話をするだけで新たな発見があったり、アイディアが浮かぶことも良くある。
 匿名と実名は、「本音」と「建前」と言い換えられる。インターネットの世界で匿名を使用すると、現実の世界とは全く違うペルソナ(外的側面)をまとう事で、現実とは全く異なる人間関係を持ったバーチャルな世界を持つことになる。それに対して実名を使用すると、バーチャルなインターネットの世界と現実世界は別個の物ではなくなり、インターネットは現実と重なり現実を拡張するような位置づけになる。
 現実世界と重なっていることを考えると、ビジネスでソーシャルメディアを利用する場合は、実名のほうが親和性が高いと言える。
 現実世界においては、基本的に実名で生活をしているわけであるが、人は場面場面によって微妙にペルソナ(外的側面)を変化させている。会社の上司、同僚、取引先、遊び友達、家族、他人...に対してどのような自分を出すかを使い分けているのではないだろうか。
 しかし、Facebookなど実名のソーシャルメディアにおいては、これらの人が一堂に会してしまうことになる。もちろん友達をいくつかのグループに分けて、発言内容を切り替えることは可能であるが、実際にはそこまでのコントロールは難しく、あまり行なわれていないようである。
 色々な人向けに投稿することになると、おのずと話題は限られることになる。つまりペルソナを1つしかまとえないことになる。特にインターネットに公開されている場合、他人に読まれても良い内容に限られ、また「社会的な自分」として参加しているので、現実世界と同様のルールやマナーが要求される。むしろ、ソーシャルメディア上では現実世界より人通りが多かったり、発言が保存されるので、現実世界のルールやマナーよりもさらに、もう少し自制が求められるようである。そのためFacebookは、親しい友達との会話においても、少し堅めの表現になる傾向がある。
 同じSNSでもmixi、Twitterなど半匿名のものは、現実世界ではなかなか言いにくい自分の悩みや、弱音を書きやすい傾向にあるようだ。
 そして、2ちゃんねるなど匿名のものは、いくつものペルソナをまとうことができるので、本音ベースの意見が飛び交っており、オブラートに包まない意見を聞けるという点で参考になる面もある。
 しかし本音が語られる一方、行き過ぎて、本来は外に出てこない極端なペルソナが外部に出てしまい、攻撃的になったり、デマを流したり、誹謗中傷したりする。その結果炎上などの問題も発生しやすい。
 このように、実名と匿名には、一長一短があり、その特徴を見極めた上で使用すべきである。

3. 炎上の原因

 企業におけるソーシャルメディアの導入も増えてきた。そのような企業にとってソーシャルメディアは、世間に広くアピールし注目を集めるための非常に有効な手段である。しかしひとたび炎上が発生するならば企業側が被るダメージは計り知れない。そのため、企業は、炎上することを一番恐れているのではないだろうか。
 炎上の原因は、大きく次の3つに分けることができる。
 (1)悪意、または無知
 (2)企業の不祥事、事故
 (3)社員による問題

炎上の原因
図 1 炎上の原因

 それぞれについて、実例を挙げて説明をする。

 (1)悪意、または無知
 悪意の典型的な例は嘘をつくことである。程度がひどければ、詐欺という犯罪になる。
 たとえば、グルーポンという共同購入型サイトがある。ここで、2011年1月にクレープ・ガレット専門店のランチを共同購入者が1,000人が集まれば、50%OFFにするという企画があった。無事1,000人の共同購入者が集まったのだが、後から、クーポンページに「平日限定利用可能(土日祝日は利用不可)」と訂正が入った。当然「だまし討ちの詐欺まがい」と批判が続出した。。
 雑誌でもホームページでも、自社の宣伝でメリットを強調するのは、ごくあたりまえの事である。だがそれも行き過ぎると"やらせ"になってしまう。特にソーシャルメディアの場合、読者が嘘や"やらせ"の気配に敏感に、時には過剰なまでに反応し炎上の原因となる。
 2005年にソニーは「ウォークマン体験日記」という、素人が新発売のウォークマンAシリーズを体験してレポートするプロモーションの企画をした。レポートをした人は素人のように振るまっていたが、公開した写真はプロ並みの機材を使ったと思われる出来映え、アップルのパソコンの批判をしているなどの点から、"やらせ"ではないかと炎上し、結局ソニーは「ウオークマン体験日記」を数日で閉鎖することになった。
 最近も、「食べログ」という飲食店の人気ランキングサイトで、好印象投稿や人気順位上昇を請け負う「やらせ業者」の存在が明らかになった。「食べログ」の運営会社であるカカクコムの株価にも影響を与え、ネット情報の信頼性を揺るがす問題になりつつある。
 また無知により炎上が発生することもある。ソーシャルメディアはインターネット上で利用するが、そのインターネットには、特有のネットマナーがあり、それに反すると炎上が起きやすい。
 UCC上島珈琲は2010年の2月5日に、複数のTwitterアカウントから、「コーヒー」などのキーワードが入ったTwitterのつぶやきを検索し、そのTwitterアカウントに、BOT(ROBOTの短縮形-自動化プログラム)を使い自動的に宣伝メッセージをリプライした。そのメッセージを送られた人にしてみれば、自分がフォローもしていないアカウントから宣伝が送られてくる上、そのアカウントも複数あることから、Twitter上にはスパムBOTを疑ったつぶやきが続出した。UCC上島珈琲の担当者は開始して2時間後には、キャンペーンが批判されていることに気がつき自動リプライを中止。同日中に謝罪文をインターネット上に公開することになった。これは悪意はないが、ネット上のマナーに対する無知が引き起こした例である。UCC上島珈琲の謝罪などの対応が比較的早かったため、その後は好意的な意見も寄せられたようである。このようにマスメディアを利用することに関して十分に知識も経験もある会社でも、ソーシャルメディアはマスメディアとは全く異なるもの考えて、ソーシャルメディア特有の使い方を理解しておく必要がある。

 (2)企業の不祥事、事故
 2011年4月、焼き肉チェーンの「焼肉酒家えびす」にて集団食中毒が発生した。「ユッケ」を食べて117人が食中毒に感染し、うち5人が死亡した。事件自体も非常にショッキングで話題になったが、さらに関心を呼んだのは社長の謝罪の仕方であった。「開き直りだ」、「パフォーマンスが過ぎる」など、2ちゃんねるなどで批判が続出し、会見の様子はYouTubeにもあがり、炎上に至った。
 このように不祥事が発生したときに企業(特にトップ)が言動を誤ると瞬く間にソーシャルメディア上で大バッシングがわき起こることになる。
 事故については、第1回目に紹介した「コンチネンタル航空 離陸失敗事例」の例がある。事故を未然に防ぐのは企業にとって必要なことであるが、発生してしまった場合、当事者やヤジ馬によって、ソーシャルメディアに一気に情報が投稿される。このとき企業側がソーシャルメディアを適切に使うことで、「サウスウェスト航空 機体損傷事例」のように炎上を回避し、被るダメージを少なくできる可能性がある。

 (3)社員による問題
 社員が個人的にTwitterなどで犯罪を自慢して、炎上するというパターンが頻発している。
 あるアパレルショップの店員は、マクドナルドにおいて、「ニンテンドーDS」を置き引きしたのを自身のブログで自慢し、勤務先のアパレルショップを即日首になった。このように犯罪に対して、罪悪感を持たず、自慢したりするのは、さすがに社会人はまれで学生などに多い。他にも未成年飲酒、無免許運転、改札突破による不正乗車、遺失物の横領などは頻繁に炎上している。
 また、第1回目にも、ホテルやレストランの従業員のつぶやきの例を紹介したが、あれは暴露、暴言を原因とした炎上である。こちらは学生とは限らず従業員や社員の例も多い。立派な社会人であるはずの教師が生徒の回答した答案の写真をTwitterにアップし、さらに「なんでやねん!」と突っ込みを入れ、炎上した例がある。
 他には、主義の対立、きめつけなどから炎上する場合もある。特に政治的、宗教的な話題については気をつけるべきである。
 これには北海道長万部町の公式ゆるきゃら「まんべくん」が公式ツイッターで、「どう見ても日本の侵略戦争が全てのはじまりです。ありがとうございました。」などと書き込み、意見が対立し炎上した例がある。
 これまで見てきたように「(1)悪意、または無知」に関しては、企業がソーシャルメディアを使用しないことで、防ぐことが可能であるが、「(2)企業の不祥事、事故」や「(3)社員による問題」については、企業がソーシャルメディアを使っても使わなくても発生する問題である。
 企業側はソーシャルメディアがどのようなものかを従業員に教育すること。そして、いざというときは、ソーシャルメディアを利用することによって、火消しを行えるくらいの備えをしておいた方が良いのではないだろうか。

4. ソーシャルメディアを形成する技術(端末のハードウェアとソフトウェア)

 ソーシャルメディアを形成するハードウェアとソフトウェア技術について、端末(デバイス)とサーバーに分けて考えていく。この章では、端末(デバイス)について解説する。

○端末(デバイス)の種類
 ソーシャルメディアを利用する端末(デバイス)の種類としては、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、携帯電話などがある。
 ソーシャルメディアを利用する端末(デバイス)としては、何が多いのであろうか?日本能率協会総合研究所が10代から40代のソーシャルメディアユーザ男女1,200名に対して行った「ソーシャルメディアに対する利用実態調査」※1によれば、
 ソーシャルメディアを利用する際の電子機器としては、「ノートパソコン」57.3%、「デスクトップパソコン」55.3%などパソコンが多い。「携帯電話」は31.3%、「スマートフォン」は、19.1%となっている。モバイルの特徴をより強く持っている「携帯電話」と「スマートフォン」を合計することで50%を越えている。全ての端末(デバイス)の利用者を合計すると100%を越えている。従って、「複数のデバイスを併用」も49%とある。
 

ソーシャルメディアを利用する際の電子機器(「ソーシャルメディアに対する利用実態調査」)
図 2 ソーシャルメディアを利用する際の電子機器(「ソーシャルメディアに対する利用実態調査」)

 パソコンでソーシャルメディアを利用する理由として上位にあるのは、「普段使い慣れているから」、「画面が見やすいから」、「文字入力がしやすいから」である。一方、携帯電話やスマートフォンでソーシャルメディアを利用する理由としては、「いつも持ち歩いているから」、「いつでも、どこでも好きな場所で利用できるから」、「普段使い慣れているから」、「毎回電源を入れて起動させる必要がないから」が上位を占める。このようにパソコンと携帯電話及びスマートフォンとではそれぞれメリット、デメリットがある。
 筆者の周囲でも自宅では画面が広いパソコン、外出先では持ち出しやすい携帯電話やスマートフォンというように使い分けが行われているようである。
 そして次に買い替える時は、携帯電話からスマートフォンにすると考えている人が多いようだ。もっとも、携帯電話はスマートフォンに近くなり、スマートフォンは携帯電話の機能を持ち始めているので、両者の境界は曖昧になりつつある。
 携帯電話、スマートフォンは電話をするツールとして発達してきた。しかし、メール送受信、Web閲覧、ソーシャルメディアアクセスなどの付加価値を備えてきており、この付加価値のほうが利用頻度が高くなりつつある。特に、スマートフォンにおいてその傾向は顕著である。
 では次にそれぞれの端末(デバイス)について、ハード、OS、アプリケーションの観点からそれぞれ説明を加える。

○スマートフォン
 スマートフォンとソーシャルメディアは互いに影響を受けながら進化発展してきた。そのため、特にスマートフォンの最新機種は、ソーシャルメディアとの親和性が高い。スマートフォンに関しては、ハード、OS、アプリケーションのそれぞれのレベルでソーシャルメディアと関係を持っている。
 スマートフォンの代表格である、iPhoneとAndroid端末には、FacebookやTwitterなどソーシャルメディアを利用するアプリケーションが純正のものを含め複数用意されている。これらのアプリケーションは、スマートフォンがハードウェアとして内蔵しているカメラやGPS(Global Positioning System)と連動しており、たとえば写真を撮るとその写真をすぐにFacebookに投稿できたり、投稿に位置情報を追加したりすることができる。中には端末(デバイス)のハードウェアとして、Facebookを即座に起動可能なボタンを搭載しているものもある。
 次にOSレベルとソーシャルメディアの関係についてだが、iPhoneの最新のOSであるiOS5では、Twitterが標準機能としてOSに統合された。これによりSafari(Webブラウザ)、写真、YouTube、マップなどから直接ツイートすることが可能になった。たとえば、インターネットサーフィンをしながら、面白いWebサイトがあれば、直ぐにTwitterにツイートすることが可能になった。写真についても、iPhoneのデフォルトの機能として撮影を行い、そのまま、Twitterにツイートすることができる。あらかじめTwitterのアプリケーションを起動する必要もないのである。
 今後普及が期待されるWindowsPhone7は、ソーシャルメディアとの親和性をさらに高めている。WindowsPhone7で取り扱えるソーシャルメディアはWindows Live、Twitter、Facebook、LinkedInがある。そしてソーシャルメディアとの関係では次のような機能を持っている。
 
・ユーザインターフェース「Metro(メトロ)」
 ホーム画面には四角形のタイルという操作アイテムが並んでいる。これでアプリケーションを選択することはもちろん、アプリケーションからの通知情報も表示される。
 
・Peopleハブ
 メールアドレス、電話番号、ソーシャルメディアのユーザ情報を一元管理できる機能である。
 今までは、メールを見る、電話をする、ソーシャルメディアを使う、など機能別に行っていたが、特定の人に着目し、その人のメール、その人の電話、その人のソーシャルメディアでの活動をチェックできるようになる。今までのスマートフォンがメール、電話、Facebook、Twitterといった機能を切り口としているとすれば、Peopleハブは人を切り口としていると言える。
 
・Pictureハブ
 カメラで撮影した写真を、クラウド上のSkyDrive(マイクロソフトが提供する無料のオンラインストレージ)に保存したり、ソーシャルメディアに投稿したりすることが可能である。
 
・IE9(InternetExplorer9)を搭載
 WebブラウザとしてIE9を搭載することでHTML5やFlashなどパソコンと同等の環境を用意している。また、IE9の実現にはハードウェアアクセラレータを利用している。
 
○タブレット
 タブレットのOSはスマートフォンと同様に、iOSやAndroidを利用しているものが多く、できることはスマートフォンとほぼ同等である。iOSを利用したタブレット(iPad)がApple社から、Androidのタブレットが各社から提供されている。これらはスマートフォンと比較すると、画面が大きい。そのため、タブレットはソーシャルメディア、メール、Webなど軽い処理を中心にパソコンを利用していたパソコンライトユーザから、注目されているようである。パソコンと比較すると、軽量であり、またスマートフォンと同様に、すぐに起動するので手軽である。
 FacebookやTwitterのアプリケーションも、タブレットの画面のサイズに最適化された専用のものがリリースされている。iPadについては、iPhoneと同様にiOS5で、Twitterが標準機能としてOSに統合された。
 
○パソコン
 パソコン用のMicrosoftの最新のOSであるWindows7では、FacebookやTwitterはWebブラウザから利用可能である。通常の利用では問題なく使いやすいので、これらを使っている人が多いと思われるが、独自のアプリケーションをインストールして使用することも可能である。パソコンの場合はハードウェアとしてカメラや、GPSを内蔵していることが少ないので、これらを直接コントロールし利用する場面は少ないが、スマートフォンやネットワーク対応のデジタルカメラなどで撮った写真を一旦クラウドに上げれば、パソコンからも自然に利用できる。こういった事を考えるとスマートフォンやタブレットと比較すると、パソコンはソーシャルメディアの融合という点では見劣りする。
 しかし、Windows7の次のバージョンのWindows8のユーザインターフェイスにはWindows Phone 7の「Metro(メトロ)」メトロUIが採用された。この事からパソコンはソーシャルメディアの影響を受けつつスマートフォン化している事がうかがえる。
 

 端末(デバイス)の中で、スマートフォン、タブレット、パソコンについてのそれぞれの特徴などを見てきたが、近頃はクラウド(サーバー側)を利用することで、パソコン、タブレット、スマートフォンといった端末(デバイス)の違いはあまり意識せずに済むようになってきた。

5. ソーシャルメディアを形成する技術(サーバーのハードウェアとソフトウェア)

 次にサーバーのハードウェア、ソフトウェアを見ていく。

○サーバーのハードウェア
 ソーシャルメディアをアプリケーションとして見た場合、それはさほど複雑なものではない。しかしそれを使う人の数および頻度によって、累積していくトラフィックによりデータの処理量が膨大となる。そのため実際には端末(デバイス)側よりもサーバー側のトラフィック処理が重要となる。
 Facebookのサーバーの台数は、2010年に6万台を超え、現在も増え続け10万台に近づきつつある。これだけの台数があると、それを動かす電力も膨大なものになり、その対策も重要になってくる。
 Facebookのデーターセンターの場所は、オレゴン州のPrinevilleにあるが、他のデータセンターと比較して、電力使用量が38%も効率化されている。サーバー冷却のためのエアコンは使用せず、自然の冷たい外気を取り入れることで電力使用量を抑えているのである。また、ミストが蒸発することで空気を冷却する空調システムを採用している。データセンター設備のエネルギー効率を表す指標であるPUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)は1.073を達成している。
 
○現実を拡張するソーシャルメディア
 情報通信白書平成23年版※2によると、「10代の約半数、20代の約3分の1がソーシャルメディアを利用する際に携帯電話やPHS、スマートフォンを主に用いる等モバイル端末でのソーシャルメディア利用が一般化している。」とある。
 若年層ほどパソコンよりも、モバイル端末を主に用いる比率が多くなっている。実際これら若年層はモバイル端末を、朝目覚めてまず手にして、電車で移動するときはもちろん、ちょっとした合間にも、そして夜中に寝りに落ちるまで一日中使っている。このようなソーシャルメディアネイティブな世代にとって、ソーシャルメディアの存在するインターネットの世界は仮想の世界ではなく、現実世界の一部のようである。その意味では、これらインターネットの世界を、現実世界の対立概念ではなく、現実世界をさらに広げるものとして捉えているのであろう。
 社会人になると、身近な会社の同僚や趣味の仲間との交流はあるが、学生時代の友達、転職した人であれば、昔の会社の同僚などとは疎遠になりがちである。しかし、ソーシャルメディアを利用することで、繋がりが復活し、日常的に会話をするようになる。もちろん現在の知り合い、友達との関係も深まる。
 これを、Facebookの筆者のある友達は次のように表現していた。
 「自分の体や五感が拡張されているのを感じる」
 この感覚は、実際にソーシャルメディアを体験してみるとわかる。特に、Facebookなど、実名のソーシャルメディアの場合、現実とネットワークが重なり拡張するのを体感できる。
 
○大規模分散処理技術
 各社とも非常に多くのサーバーを利用することになるので、大規模分散処理技術が必要になってくる。
 Googleは、多数の安価なハードウェアをネットワーク上に並べてそれを協調して処理する「Scale-out」というアプローチを使用している。多数のハードウェアを稼働すれば、当然故障が発生する。このとき、高価な信頼性の高いハードウェアをそろえるのではなく、安価なハードウェアを用い、ソフトウェアに障害対策を行わせることで、Availability(可用性)を向上させている。
 またファイルシステムは、Google File System(GFS)を作り上げている。これは「Scale-out」する分散ファイルシステムである。
 各社、サーバーについては、十分な性能を確保しているが、トラフィック量は、日時によって大きく変動し、対応を困難にしている。たとえば、本年2012年1月1日にはTwitterで、新年のあいさつのツイートが集中して、サーバーがダウンすることになった。
 
○端末(デバイス)とサーバーの処理分担
 端末(デバイス)側は小型化されたものが多いので処理性能もあまり高いとは言えない。そのため、もともと、端末(デバイス)側の処理は重くないが、さらに端末(デバイス)とサーバーの処理分担を最適化するため、今は端末(デバイス)側が行っている処理をサーバー側で行う技術も提供されている。
 アマゾンが提供している端末(デバイス)Kindleに搭載されているモバイルブラウズAmazon Silkには、「クラウドアクセラレーション」という機能がある。これは、もともと端末(デバイス)のブラウザが全て行っていた作業を、端末(デバイス)側とサーバー側とで分担して処理させるものである。
 AmazonのEC2(Amazon Elastic Compute Cloud)環境は、高速ネットワークで接続されているので、このEC2環境にWebページを構成するアイテム(パーツ)を全て読み込みキャッシュしておき、そこからデータを端末(デバイス)に配信する。こうすることで、端末(デバイス)側のブラウザでは100ミリ秒を要する処理もサーバー側で5ミリ秒で完了することになる。
 
○サーバーのソフトウェア(クラウド)
 サーバー側のソフトウェアとしては、端末(デバイス)の違いを意識しないで使用できるクラウドサービスが多い。
 iCloudはApple社が提供しているクラウド環境で、iOS5が搭載されたiPhone、iPad、iPod touchや、OS X Lionが搭載されたMacintoshなどの端末(デバイス)またはWindowsパソコンからアクセス可能である。iOS5が搭載された端末(デバイス)を持っていれば、5Gのストレージが無料で使用可能である。音楽、アプリケーション、写真、電子書籍にどの端末(デバイス)からでもアクセス可能である。また、同様にカレンダー、メール、連絡先なども、どの端末(デバイス)からも最新のものを見ることができる。意識して、シンクロ(同期)する必要はない。
 これに似た機能は、Androidにもある。AndroidのOS自体の機能ではないが、Androidのスマートフォンに、Google+のアプリケーションをインストールすると、自動的に自分がとった写真をアップロードする。これは、「Instant Upload」機能と呼ばれるもので、スマートフォンで写真を撮影するだけで、自動的にサーバー側のGoogle+にアップロードするものである。
 また前述したように、Windows Phone7においても、Pictureハブという類似の機能を提供している。
 さらにDropbox 、Evernoteなどのアプリケーションを使用すれば、iOS、Android、Windowsなど複数の端末(デバイス)で、ファイルやデータの共有をすることが可能である。
 
○回線のパンク
 外出先からスマートフォンでソーシャルメディアを使用する場合、主に、月額定額料金の3G回線を利用することが多い。しかし、スマートフォンは、従来の携帯電話と比較すると一人当たりの通信データ量が10~20倍にもなるため、その普及に伴い、通信速度が遅くなったり、繋がりにくいといった問題が発生してきている。
 そのため、アメリカではデータの通信料を定額制から従量制に見直す動きが出てきている。そして、日本においても従量制を検討する業者が出てきている。
 

6. まとめ

 ソーシャルメディアの課題について掘り下げた。ソーシャルメディアでもFacebookなど実名で使うもの、匿名で使うものがある。実名の場合は本音が出にくい。一方匿名は本音が出やすいがデマ、誹謗中傷、炎上などの問題が発生しやすい。また、炎上の原因について、「悪意、または無知」、「企業の不祥事、事故」、「社員による問題」の3つに分けて解説してきた。
 後半ではソーシャルメディアを形成する技術を端末(デバイス)とサーバーに分け、ハードウェア、ソフトウェアについて見てきた。
 ソーシャルメディアは新しい技術なので、課題も次々に上がってくる一方で、形成する技術も日々新しく、目を見張るものが登場してきている。今後もソーシャルメディアを取り巻くこれらの動きからは目が離せない。

※1  日本能率協会総合研究所の2011年3月4日の発表資料 「ソーシャルメディアに対する利用実態調査」
   http://www.jmar.biz/report/100324release.pdf
※2  「Open Compute Project」
   http://opencompute.org/

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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