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「業務プロセスにおけるソーシャルメディアを利用したサービス 第3回」
株式会社オージス総研

2012年04月号
  • 「業務プロセスにおけるソーシャルメディアを利用したサービス 第3回」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 ※ 本稿は、財団法人経済産業調査会発行 「特許ニュース」No.13193 ((2012 年3月22 日発行)への寄稿記事です。

1. はじめに

 第2回では、『ソーシャルメディアの課題と形成する技術(ハードとソフト)』と題して、前半で実名と匿名の違い、炎上の原因を「悪意、または無知」、「企業の不祥事、事故」、「社員による問題」の3つに分けて解説し、後半ではソーシャルメディアを形成する技術を端末(デバイス)とサーバーに分け、ハードウェア、ソフトウェアについて紹介した。本稿では、業務プロセスとソーシャルメディアとの関係について解説していく。

2. 業務プロセスとソーシャルメディアの関係

 企業におけるソーシャルメディアの利用というと、マーケティングやブランディングなどがすぐ思い浮かぶが、ソーシャルメディアの可能性はそれだけにとどまらない。企業が行う業務プロセス全般にわたって広く、深く関係している。
 表1は業務プロセスとそこでのソーシャルメディア活用例を示している。ソーシャルメディアの活用例は全ての業務プロセスに存在するもので、その結果大部分の部署が、ソーシャルメディアと関係することが分かる。

表 1 業務プロセスとソーシャルメディアの活用例
業務プロセスとソーシャルメディアの活用例

 図1は表1で示した業務プロセスとソーシャルメディアの関係を、横軸-効果実感時期という視点から表現したものである。「研究、開発/製造」や「調達」における「クラウドソーシング/ソーシャルレンディング」及び、「保守/サポート/苦情処理」における「コミュニティによるサポート」は、人材募集やサポートの仕組みが出来上がってしまえば、比較的早くに効果を実感できる。一方「販売/マーケティング/ブランディング」における「ソーシャルマーケティング」や「ソーシャルブランディング」に関しては、効果がすぐ出るものではない。そのため、長期的な視野に立ってソーシャルメディアによる施策を行う必要がある。「経営戦略」における「経営データ分析」や「市場調査/企画」における「大規模データ分析」は、どのようなデータを何のために、どう分析するかを明確にしておかないと、たとえ導入・実施しても効果は期待できない。

各業務プロセスとソーシャルメディア利用の効果を実感できる時期
図 1 各業務プロセスとソーシャルメディア利用の効果を実感できる時期

 次にそれぞれの業務プロセスとソーシャルメディアの関係について詳細に説明する。

2.1 経営戦略

 経営者が経営戦略を考える上で、BI(Business Intelligence)が注目されている。BIは業務システムをはじめ企業内にある膨大なデータを収集分析して、経営者が理解しやすい形で表示するものである。経営者はBIの結果を見て会社のかじ取りに活用する。最近ではソーシャルメディアへの投稿データが注目されており、これも収集対象に含まれてきている。
 2010年6月に、世界的情報・分析企業のニールセン・カンパニーと世界的な経営コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが、ソーシャルメディア・インテリジェンスを活用した企業業績の改善を目指す合弁事業NMインサイトを設立した。
 NMインサイトは次のように発表している。※1
 「当社の顧客企業のニーズの変化に伴い、当社も業務の方法を継続的に改革しています。ソーシャルメディアは、ビジネスリーダーにとってますます重要な問題となっており、当社の多くの顧客企業にとって未開拓のチャンスのある分野です。今回設立された合弁事業は、組織にリアルタイムの情報を提供し、ビジネスリーダーが優れた成果を上げることができるよう支援します。」
 また、ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は『イノベーションのジレンマ』※2で次のように言っている。「優良企業は、従来の顧客に向けて製品の改良を進めている(持続的イノベーション)。それは、一見合理的で正しいと思われる経営上の判断に思われる。しかし一見機能などでは劣るが、顧客の要求には十分答えている新しい価値を持った製品があらわれることで(破壊的イノベーション)、従来の製品から破壊的イノベーション製品へと一気にシフトが行われ、優良企業はその地位を失ってしまう。」その為、経営において、この破壊的イノベーションを絶えず生み出す体制を構築するのが重要である。そしてこの体制には、多種多様な意見を持った人が集まっている必要がある。
 米国Forbes誌の「The World's Most Innovative Companies(世界で最もイノベーティブな企業)」の第1位にセールスフォース・ドットコムが輝いた。この選考に協力したのが、クリステンセン教授である。クリステンセン教授は、世界中の最も優れたイノベーターとしてセールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ氏の名前をあげている。
 そのマーク・ベニオフ氏であるが、次のターゲットとして、「ソーシャルエンタープライズ」を上げている。「ソーシャルエンタープライズ」とはビジネスの顧客や従業員との関係性構築にソーシャルメディアを効果的に活用する組織のことを意味する。
 そして、セールスフォース・ドットコムは、企業内のソーシャルネットワークとして機能するソフトウェア「Chatter」を2010年6月にリリースした。マーク・ベニオフ氏はChatterの利用をセールスフォース・ドットコム社内でも徹底させた。たとえば、300名余りが集まる役員と管理職の年次マネジメントミーティングの様子を、世界中のスタッフがChatterを通じて見ることができるようにしたのである。
 このように世界で最もイノベーティブな企業の経営者であるマーク・ベニオフ氏は、自身の会社の経営はもちろん顧客の会社の経営にとっても、ソーシャルメディアは最早欠かせない存在であると認識している。ソーシャルメディアは経営戦略においても無視できる存在ではなくなり、今後その認識は日本でも急速に広まるだろう。経営者は自分の会社の業務プロセス自体にソーシャルメディアを織り込んでいく事を考えなければならない。

2.2 市場調査/企画

 企業では、製品やサービスを考えるときに、市場調査を行うことが一般的であった。しかし、消費者は必ずしも企業に対して積極的に意見を言う訳ではなく、家族や友達との"雑談"の中で本音を言っている場合が多かった。そして、それが仮に多数意見だとしても、企業側はその表面に出ない多数(サイレントマジョリティ)の声を拾うことは困難だった。ところが、ソーシャルメディアが広がるとその"雑談"を文字として拾うことが可能になってきたのである。
 2.1経営戦略で前述したが、企業内では大規模なデータ(ビッグデータ)の活用がされている。そしてFacebook、Twitterなどソーシャルメディアの普及によって、膨大な非構造データが生みだされており、このデータをいかに活用するかが注目されている。データの具体的中身には、ライフログ(生活の記録)、ソーシャルグラフ(人間の相関関係)、GPSの位置情報、写真や動画などがある。これら膨大な非構造データもITの活用、例えばDWH(Data WareHouse)やHadoop(大規模データの分散処理技術)といった新技術の組み合わせにより、処理、分析が可能になってきたのである。
 日本マクドナルドでは、ソーシャルメディア上の投稿内容を分析することで、製品の改善に努めているようである。たとえば、「照り焼きのソースがたれて食べにくい」という投稿があれば、入れ物を工夫するといった対応をしている。また、同社が運営する「トクするケータイサイト」は2010年1月には会員数が1,600万人を突破している。そのため同社は、購買履歴や属性データ(年齢、性別…)を持っており、それを分析することで、朝しか来ない人に向けて、昼も来店してくれるように昼のメニューの紹介をしているようである。
 製品やサービスの企画において、顧客の声を聞くことが重要であるというのは、今までも言われてきた事である。しかし、これもあくまでも企業中心の考え方でしかない。企業は顧客の声を聞いて、企業が良いと思った製品やサービスの提供を一方的に行っているにすぎない。しかし、C.K.プラハラードは著作『顧客と企業のCo‐Creation 』※4において、今後企業は顧客と一緒になって製品やサービスなどの価値を生みださなければ競争に生き残れない、と言う。第1回でも記述したが、ソーシャルメディアを通して、顧客との信頼感を得て、顧客がその企業、商品、サービスの強力なファンとなり、あたかもその企業の社員のように、企業と一体となり、商品やサービスを作り上げるというのが理想である。
 ジェームズ・スロウィッキーは『みんなの意見は案外正しい』※5の中で、ある程度の多数で多様な人が集まった集団は、一人の個人よりも、よりよい判断を下すことがある(集合知)と主張している。しかし正しくなる条件として、集まった人のそれぞれが、多様性(それぞれ独自の情報を持っている)、独立性(他人の考えに左右されない)、分散性(ローカルな情報に特化している)を持っている必要がある。
 近来、問題は複雑化しており、少数の専門家の知識だけでは問題領域を正確に把握することができなくなってきている。そのため専門家の判断が必ずしも正しいとは言えなくなってきた。こういうときこそ、ある程度多数のしかも多様な人が集まった集団の判断の方が妥当なのである。
 ある会社のワンマン経営者を考えた場合、彼の周りにはイエスマンしかいないことがある。またそこまでいかないまでも、歴史がある会社にはその会社特有の社風があり、その社風に沿った人材が集まる、あるいはその社風に影響されることで、似たような人材ばかりになっていることがある。このとき個々の人材はもちろん優秀であり、経営陣としてある程度の人数もいるのであるが、人材の多様性が失われているのである。そうすると、ベンチャー的で、多様な人材が集まった新しい会社のアイディアや判断のほうが、歴史はあるが人材が硬直化した会社よりも的確ということになるのである。
 多様性、独立性、分散性を維持実現する上で、ソーシャルメディアは有効な手段になりうる。しかし、オンラインコミュニティの議論は極端な方向に走りがちなので、その点は注意が必要である。

2.3 研究、開発/製造

従来、企業は優秀な人材をすべて抱え、自前で商品を研究、開発することで、市場を独占し大きな利益を得てきた。しかし、市場の変化が激しく、解決すべき問題は複雑化して、技術の革新が頻繁に行われる業界においては、とても1社だけでは、課題、問題を解決できるものではなくなった。
 そのため、自社の研究、開発だけに頼るクローズドイノベーションではなく、広く会社の外に意見を求めるオープンイノベーションが注目されるようになってきた。オープンイノベーションはそれほど新しいものではなく、カリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ教授が2003年に提唱したコンセプトで、自社が持つ技術、アイディア、リソースだけでなく、他社の技術やアイディアを組み合わせて新たな革新的な製品を生みだすものである。このオープンイノベーションにおいても、ソーシャルメディアを利用する例が増えてきた。
 Velvet Brigadeというファッションのブランドは、Web上でデザインを募集する。デザイナーのたまごが自分の自信作を送ると、Web上に公開される。そしてVelvet BrigadeのFacebookPageのファン(いいね!を押した人)は、気に入ったデザインに投票することができる。そしてVelvet Brigadeが得票数に応じて、実際に商品化して販売するという仕組みである。Velvet Brigade側から見れば、デザイナーは会社の外にいるということになる。
 また自動車でも同様のことが行われている。FiatがFiat Mioというプロジェクトにおいて、車のデザインや機能性などをTwitterやFacebookPage上で議論し、その結果が2010年のサンパウロ・モーターショーで披露された。誰でも議論に参加でき、17,000人がプロジェクトに登録したということである。
 開発において、ソーシャルメディアの使用を考えるとき、クラウドソーシングに注目する必要がある。クラウドソーシング(Crowd Sourcing)は、雑誌『Wired』でジェフ・ハウとマーク・ロビンソンが作った造語である。
 クラウドソーシングのクラウドは、"crowd"である。つまり、群衆、集まった人々の意味であり、社外の不特定多数の人に対して、アウトソーシングをすることである。このように人の集まりと言う意味でクラウドソーシングはソーシャルメディアと親和性が高い。
 クラウドソーシングの例として、ニコリという出版社を取り上げる。ここでは『パズル通信ニコリ』というパズル専門の雑誌を出版し、カックロ、数独、スリザーリンク、へやわけなど様々なパズルを掲載してる。特徴的なのは、掲載されるパズルのほとんどが、読者による投稿作品という点である。
 また、オーリッド社が提供している「KYBER(カイバー)」というサービスがある。専用のメモ帳に書かれた手書きの文字を、iPhoneアプリを使って、デジタル化するものである。アプリは無料だが、専用のメモ帳は有料である。つまり、メモ帳の代金にデジタル化するサービスの料金も含まれているのである。
 KYBERでは、まず専用のアプリを操作し手書きのメモをカメラで撮影し、問題がなければアップロードする。しばらくするとデジタル化されたデータが送られてくる。ここまでは、"cloud"(雲)のサービスの話である。
 手書きをデジタル化する部分であるが、OCRでの認識は手書きの場合まだまだ間違いが多い。そのため、KYBERでは国内150人、中国1,000人以上のスタッフがOCRのチェックに関わり、認識の精度を非常に高いものにしている。
 スタッフは、1文字について手書きの画像とOCRの文字を比較して、同じならば○、異なれば×をつけるという作業をする。そのため、日本語が分からなくても作業可能である。スタッフはFacebookなどのSNSを活用して雇われている。スタッフはどこでもスマートフォンなどで仕事をすることができる。このやり方なら会社は、入力センターなどの場所を確保する必要がなくなる。その分の固定費も必要ない。また報酬は現金ではなく、商品券と交換できるポイントを使っている。
 このように、"crowd"(群衆)のサービスでもある。"crowd"を使うことでメモ帳の代金だけという低コストで、非常に品質の高いサービスを提供しているわけである。
 もちろんそこには人海戦術だけでなく、ITの要素もある。スタッフが入力センターに常駐していないため、いかに作業が可能なスタッフを見つけ、そこに仕事を割り振っていくかが非常に重要になってくる。そのためオーリッド社では自動車メーカーが使っているものと同じ人材管理システムを使い24時間体制で管理をしている。

2.4 調達

 資金の調達に関しては、ソーシャルレンディングが利用されている。
 ソーシャルレンディングは、マーケット型とオークション型に分れる。マーケット型はあくまでも運営会社が借り手の格付けを行う。それに対してオークション型は借り手が目的や信用度をコミュニティの中でアピールし、貸し手はそれを判断材料として投資を行う。
 マーケット型の例として、AQUSH(アクシュ)がある。借り手と投資家は、他の金融機関を介在させないで、AQUSHローン・マーケットプレイスを通じて取引を行う。借り手は自身の情報をAQUSHに提供し、AQUSHはその情報をもとに借り手を5つのグレードに分類する。このグレードをもとに貸付金利が決定する。投資家は、このグレードを判断材料として信用リスクを考えて自分がいくらの金額をどれだけの期間貸し出すのかを決定する。Web上にはAQUSHコミュニティがあり、Twitterのツイートをはじめ、利用者の生の声が集まってきている。これも投資家の大きな判断材料の1つとなっている。
 オークション型としてはmaneoがある。借り手は、社名、事業内容、借入目的、利回りなどの条件、完済実績などの情報をWeb上やFacebookPage上に公開する。また投資の状況はTwitterでリアルタイムでツイートされている。貸し手はこれらを自由に読むことができ、それを判断材料として投資先を決定する。
 資金だけでなく、専門家の知識を提供する例もある。ボストンにある最大の投資ネットワークグループであるコモン・エンジェルズは、事業のアイディアに対して投資家を募る仕組みを持っている。
 コモン・エンジェルズは、現在および過去の起業家や技術系企業の幹部で構成されている。そして資金だけでなく、新事業を行う上でのアドバイスを行うコミュニティを提供している。そこには各種技術を持ったスペシャリストや非技術的見地からみることができるジェネラリストなど様々なタイプの人が加わり、アドバイスに深みを持たせている。

2.5 販売/マーケティング/ブランディング

 Googleは、ZMOT(Zero Moment Of Truth)という概念を打ち出した。ZMOTとは、実際に店舗を訪れる前に何を買うかの意思決定を既に行っていることを言う。事前に知り合いなどの薦めを聞いて購入商品を決定しているのである。このような消費者の考え方の変化に伴い、ソーシャルメディアを使ったマーケティングもZMOTに対応していく必要がある。
 ただしソーシャルメディアの普及によってある製品、サービスに対しての他人の評価は容易に取得できるようになっていくのでZMOTの概念も今よりももっと広がったものになるだろう。そのためZMOTへの対応方法も柔軟性を持たせたものを考えておかなければならないだろう。
 また、電通モダン・コミュニケーション・ラボは、ソーシャルメディアが主流になったときの、生活者消費行動を「SIPS」と名付けている。 「SIPS」は、Sympathize(共感する)→Identify(確認する)→ Participate(参加する) →Share & Spread(共有・拡散する)の略である。電通モダン・コミュニケーション・ラボは今後生活者は共感を重視する方向へ進むと言っている。
 ソーシャルメディアを利用した宣伝は、今までのテレビ、雑誌などマスメディアでの広告と異なり、一方的に発信するのではなく、顧客との信頼関係を築いた後に行われるものである。
 そのため、テレビ、雑誌広告などと異なり、目に見える効果は出にくい。テレビや雑誌は広告費用がかかるが、宣伝をするとその頻度や規模に応じて効果が目に見える形で出てくる。広報担当者としては、予算さえあればマスメディアへの広告費投入は比較的安全確実なのである。しかしソーシャルメディアはマスメディアの延長線上で考えると、費用対効果が読めないので、そこへの予算投入は難しいということになる。しかもソーシャルメディアの場合は広告代理店などに丸投げすることは難しく、自社の社員が自ら行う必要がある。しかし、ZMOTなどの考え方がさらに浸透していくと、マスメディアの効果はますます薄まり、効果がなかなか見えなくても、ソーシャルメディアを利用せざるを得なくなってきているのではないだろうか。
 マスメディアを使った大々的な広告は当然コストがかかり、行えるのは限られた大企業が中心である。一方ソーシャルメディアを使うこと自体はそれほどコストはかからない。しかし、世間ではコントロールが不可能な口コミが重要な情報として大きな比重を占めるようになってきている。そのため企業の対応として忘れてはならないのは、実直に企業や商品自体の魅力を上げることである。
 これは、企業に限らず個人でも言えることである。弁護士、会計士、など士が付く職業や、コンサルタント、企業経営者など、自分自身のブランディングをする例も増え、確かにそれは有効ではある。それでもやはり個人の内面が重要であり、最終的にはそれをいかに磨いてきたかが問われることになる。

2.6 保守/サポート/苦情処理

 製品の保守やサポートは、サポートセンターに何人ものサポート要員を抱えることになり、企業にとっても負荷が高く利益を圧迫する要因の1つである。また、保守やサポートを受ける側にとっても、サポートセンターの電話がつながらなかったり、長い時間待たされたりと少なからずストレスを感じる場面である。ここでサポート要員の知識が不十分だったり、対応が不誠実だったり、場合によっては海外にサポートセンターを設けていて、日本語もろくに通じなかったりするとストレスは増幅し怒りすら覚えるのである。ときには企業のその対応がクレーマーを一人誕生させているかもしれない。
 そのような、なおざりなサポートを経験すると、その企業に対する信頼感を無くしてしまい、たとえ製品が良くても、2度とその企業の製品は買いたくなくなってしまうのである。
 そういったことを回避するために、企業はその製品のユーザー同士のコミュニティをソーシャルメディア上に立ち上げて、疑問質問に答える場を提供するのである。あるユーザーが質問をすると他のユーザーがすぐに回答してくれるので、待たせることもなく、企業のサポートにも余裕が出てくる。もちろん、企業とユーザーの間に信頼感がなければ、疑問質問に回答していくれるユーザーがそもそも現れてくれないので、作りっぱなしではなく状況を把握し、適宜必要な対応をする必要はある。
 ソーシャルメディアの利用ならではのサポートにアクティブサポートがある。第1回目でも触れたが、ソフトバンク社は、Twitterにて、アクティブサポートを行っている。
 アクティブサポートは、企業がTwitterなどでつぶやかれている自社の製品、サービスに対する疑問、質問、不満などを拾い上げて、サポート側から積極的に語りかけるものである。
 ある会社の製品を使っていたり、サービスを利用しているユーザーは、疑問、質問、不満などがあると、その会社のサポート窓口に電話をかけたり、メールをしたりすることができる。しかし必ずしも全員が積極的に問い合わせをしてくれる訳ではない。単にTwitterでつぶやくだけの人もいる。このようなつぶやきは今までは、その会社まで届かなかった。会社の気付かないところで、その悪い評判は多くの人々の間に広がっていたのだ。
 アクティブサポートをすることで、その会社にクレームをつけることもなく、単に利用を止めていたユーザーと対話することが可能になる。アクティブサポートの対応次第では、ユーザーに感動を与え、その会社のファンを一人増やせる可能性がある。
 しかしアクティブサポートは、ユーザーの立場から言えば、思ってもみなかったのに突然話しかけられることに変わりはないので、サポートする側の態度は謙虚であるべきある。あまり押しつけがましいと逆効果である。そして、アクティブサポートをする以上、通常のサポート以上にサポート体制をしっかりする必要がある。もともと会社側からアプローチしているので、即時対応、サポート要員間の情報共有などは徹底しておくべきである。

3. まとめ

 これまで述べたように、ソーシャルメディアは、マーケティングやブランディングのために、マーケティング部門や広報部門だけが関わるという狭い範囲で限定的に扱うものではなくなっている。経営、研究、開発、調達、保守など広く業務プロセスの全般と関わっており、そのため、担当する部署も広範囲となる。もはや、企業の誰もがソーシャルメディアを無視することはできなくなってきている。特にソーシャルメディアが経営戦略などにも関わってきているということは、企業の存亡にもかかわる問題である。
 また、マーケティングや広報などでの利用に関しても、マスメディアの利用法とは考え方が異なっており、マーケティングや広報の部門も、今までの延長線上で考えると、炎上など痛い目にあってしまう。ソーシャルメディアがどのようなものかをしっかり捉えておく必要がある。

※1  ニールセンとマッキンゼーが、ソーシャルメディア・インテリジェンスを活用した企業業績の改善を目指す合弁事業を設立
   http://www.businesswire.com/news/home/20100615007377/ja/
※2  イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)  クレイトン・クリステンセン (著),
※3  SalesForce
   https://www.salesforce.com/jp/company/news-press/press-releases/2011/07/110726.jsp
※4  価値共創の未来へ―顧客と企業のCo‐Creation (Harvard business school press)   C.K. プラハラード (著), ベンカト ラマスワミ (著),
※5   「みんなの意見」は案外正しい ジェームズ・スロウィッキー (著),
※6  Velvet Brigade
   https://apps.facebook.com/offerpop/Contest.psp?c=43940&u=404&a=177914495580579&p=9481787170&rest=0&v=Home
※7  ニコリ
   http://www.nikoli.co.jp/ja/index.html
※8  fialmio
   http://www.fiatmio.cc/pt/
※9  AQUSH
   https://www.aqush.jp/aboutUs
※10  maneo
   http://www.maneo.jp/
※11  コモン・エンジェルズ
   http://www.commonangels.com/about-us/

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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