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「百年アーキテクチャ(ITインフラ編) ~停滞は悪か?新しいテクノロジと上手につきあう方法」
株式会社オージス総研

2012年05月号
  • 「百年アーキテクチャ(ITインフラ編) ~停滞は悪か?新しいテクノロジと上手につきあう方法」
株式会社オージス総研   池田 大

 前回は「長く使えるITインフラを構築するための3つのキーワード」と題して、「オープン」「スタンダード」「疎結合」の3つのポイントに留意することで、できるだけ長く使える変化に強いITインフラを構築するための考え方について提示させて頂きました。

 このような「変化に強い」ITインフラが必要とされるのではなぜでしょうか?そもそも企業のITインフラに必要とされる機能が常に変わらないのであれば、構築後は経年劣化による取替のみで使い続けられますが、実際には様々な要因によりITインフラへの対応が必要となります。ITインフラへの対応は大きく2つあると考えます。

  • 内的要因による対応(ITインフラの成熟度向上)
  • 外的要因による対応(変化への対応)

内的要因による対応(ITインフラの成熟度向上)

 企業のITインフラを担当されている方であれば、常に自社のITインフラに対して課題を持って、毎年の予算のなかから課題解決に向けての施策を遂行されていることと思います。例えば標準化やサーバの統合化といったITインフラの効率化への対応などが挙げられます。これらの対応は自社のITインフラの成熟度を高めることで、TCO削減などに寄与することができるなど、効果も明確です。このような対応はITインフラ担当の方々も必要性を感じた上で遂行されているのではないかと思います。

外的要因による対応(変化への対応)

 もう一つ、よくあるITインフラへの対応は、企業の経営環境の変化やビジネスターゲットの変化により、システムに必要とされる機能が変わってくることです。最近の例ではビジネスのスピードが上がってきたために俊敏なシステムの対応が必要となり、SOAやクラウドの利用が必要となり、ITインフラではESBやクラウド連携の認証システム、データ連携システムなどが必要となる、といったものが挙げられます。またPC以外のデバイス(スマートフォンやタブレット)の登場により、これらのデバイスからもシステムを利用できるようにITインフラを整備するといった対応も必要となってきています。これら外的要因による対応は、新しいテクノロジに起因することが多く、ITインフラ担当の方々には「その新テクノロジは当社で本当に必要なのか?」という疑問を抱くことも多いのではないでしょうか。あるいは「どこまで追いかければ良いのか」と不安を抱く方もいらっしゃるかもしれません。

新しいテクノロジを採用しない選択

 IT業界はドッグイヤー(1年=7年)どころかマウスイヤー(1年=18年)だと言われるくらい他の業界に比べて新しいテクノロジの登場が早く、パラダイムシフトが頻繁におこります。一つの原因として、新しいテクノロジそのものがIT業界のビジネスのトリガとなるため、IT業界は積極的に新しいテクノロジを産み出そうとします。例えばWindowsXPは企業のPCで使用するクライアントOSとしては十分な機能を持っていました。しかしマイクロソフトはWindows Vista、7、8と新しいOSを開発して、WindowsXPはサポート終了という形で移行を促しています。これは(想像するに)新しいOSに追加した新しいテクノロジで対価をもらうビジネスモデルとなっているためです。またWindowsのバージョンアップが行われると「Windows新版対応」という名目でSI業者もシステム改修ビジネスが発生します。そういったIT業界の煽動に乗せられないようにするために、あえて新しいテクノロジを採用しないという選択もありえます。では、もしも新しいテクノロジを採用しなかった場合には、どのようなリスク・デメリットが考えられるでしょうか?

新しいテクノロジを選択しないリスク/デメリット:維持管理費用の高騰

 特にシステムのプラットフォームやアーキテクチャで新しいテクノロジを採用しない場合に懸念されるリスクです。現状メインフレームやCOBOLの技術者は数が少なく単価も高騰しています。これはダウンサイジングの名の下に多くの企業がメインフレームからオープン系と呼ばれるUNIX/PCサーバへのシステムに移行していったため、需要と供給の関係から、技術者のスキルもオープン系のサーバや開発言語へ移行してしまったためです。またハードウェアやソフトウェアの保守費も同様に高騰しています。これも利用者の数が減ったためにメーカーは一定の保守体制を確保するためにユーザーあたりの保守費を上げざるを得なくなったためです。このように古いテクノロジが新しいテクノロジに淘汰されてしまった場合に、古いテクノロジを使い続けていると維持管理費用が高騰するリスクが考えられます。

新しいテクノロジを選択しないリスク/デメリット:古いバージョンのソフトを使い続けるリスク

 主に既存のソフトウェアに新しいテクノロジ(新機能)を必要とせず、そのまま使い続けた場合に懸念されるリスクです。多くの商用ソフトウェアはバージョンアップという形で新機能を追加します。ソフトウェアベンダーは複数のバージョンをサポートするにはコストがかかるため、古いバージョンはサポートの対象外とすることが多く、古いバージョンで発生した問題については、対応してもらえません。またセキュリティホールなどへの対応も最新バージョンにしか行われなわれないため、セキュリティリスクも発生します。商用ソフトウェアはマイクロソフトの例で述べたようにバージョンアップに積極的なため、ユーザーが必ずしも必要としていない機能追加の可能性が高くなります。オープンソースソフトウェアであれば、不必要な機能追加のリスクは減ると考えられますが、それでも機能追加・バージョンアップは発生します。

新しいテクノロジを選択しないリスク/デメリット:ユーザーの企業システムへの不満

 まだITが一般的でない時代は、新しいテクノロジは企業向けに利用された後に一般消費者に利用されることが多かったですが、最近では新しいテクノロジは、まずは一般消費者向けに提供され、そこで受け入れられたものが後に企業向けにカスタマイズされて導入されるという流れ(いわゆるコンシューマライゼーション)が生まれています。企業システムのユーザーは、家庭では一般消費者として、こういった新しいテクノロジを経験していて便利さを知っています。そのため企業システムにも同様の利便性を求めます。ユーザーに「Googleで検索できるように簡単に社内のデータを検索できないの?」と言われたITインフラ担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

新しいテクノロジと上手につきあうためには

 これらのリスク/デメリットを踏まえて、新しいテクノロジと上手につきあっていくためのポイントをまとめてみます。

新しいテクノロジの情報を常に収集する

 新しいテクノロジを採用するかどうかはともかく、それはどのようなテクノロジでどのようなメリットがあるのか、情報を収集することは重要であると考えます。また新しいテクノロジは、前述した内的要因への対応(ITインフラの成熟度向上)にも適用できるものもあります。例えば仮想化技術などはITインフラの柔軟性や俊敏性を確実に向上できるテクノロジです。あるいは新しいテクノロジを知ることで、それまで気づかなかったニーズに気づくこともあります。

できるだけ主流となりそうなテクノロジを採用する

 今後多くの企業が採用をするであろうと思われるテクノロジは、自社でも採用をすべきです。特に古いテクノロジとのパラダイムシフトが起こり得るテクノロジは、採用しなかった場合に維持管理費用やリプレイス費用の高騰リスクが高まります。例えば、世間でクラサバアプリからWebアプリへ移行していたが、自社では必要ないとしてクラサバアプリで自社システムを構築し続けた企業があったとします。そのシステムを改修していくための技術者確保は徐々に困難になっていくと思われますし、同じ機能をWebアプリで構築するほうが安価なコストで実施できるでしょう。またその企業がスマートフォン等のスマートデバイスを利用したい場合にはシステムの大幅な改修やWebアプリ化が必要になってしまいます。流行ばかりを追っかけることは必ずしも良いことではありませんが、本流に乗っておくことはいろいろなメリットがあります。(このあたりは前回の3つのキーワードのうちの1つ「スタンダード」にも通じるものがあります)

ITインフラを疎結合にすることでテクノロジの最適化を目指す

 新しいテクノロジについて取り込みながらも、枯れたテクノロジに関してはできるだけ変更を加えないですむように、ITインフラを疎結合に保つことをおすすめします。ITインフラを疎結合にするには、機能を小さな単位で区切って実装し、各機能間を標準的なプロトコルあるいはインターフェイスで接続します。(詳細は前回記事「長く使えるITインフラを構築するための3つのキーワード」をご参照ください)

最後に

 企業のインフラ担当をされている方の中にはいろいろなご意見や別の経験をお持ちの方も多いと思われます。そのような意見をお伺いする場、議論をする場を提供したいと考えFacebookページを作成しております。皆様のご意見をお待ちしております。

Facebookページ「百年アーキテクチャ(ITインフラ編)」
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*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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