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「ソーシャルメディアの立ち位置」
株式会社オージス総研

2012年09月号
  • 「ソーシャルメディアの立ち位置」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 企業にとって、イノベーションは欠かせないものです。イノベーションには、分析的手法と創造的手法どちらが有効なのでしょうか。またソーシャルメディアはそこにどのように関わってくるのでしょうか。

○ より一層の分析の必要性

 ビッグデータが注目されています。ビッグデータを収集し分析することで、いままで見えていなかったことが見えてきています。そしてこの分析結果を持っているか、持っていないかが企業間の競争の行方を左右する大きな要因になってきています。企業でも、データサイエンティストなどデータを分析する人材の獲得に力を入れています。
 ソーシャルメディアのデータもビッグデータの1つであり分析、活用が始まっています。たとえば、Twitterのつぶやきの中から自社や自社製品に対する不満、要望などを抽出して、改善に活かすことは、日々行われつつあります。さらには、つぶやいている人に積極的に話しかけて問題を解決すること(アクティブサポート)も行われています。
 一方、分析のみの工業社会の限界も指摘されています。

○創造性の必要性 工業社会、知識社会

 工業社会においては、良いものをいかに安く提供するかが重要でした。しかし、技術がコモディティ化してくると、後発の会社や国でも、先を行っていた会社や国と同等のものが作れるようになってきます。ここで問題は、後発の会社や国の方が、先を行っていた会社や国よりも人件費が安いことにあります。良いものをいかに安く作るかの競争においては、先を行っている会社や国になかなか勝ち目はない事になります。そこで、技術ベースの工業社会から脱して、知識創造をする知識社会への転換が求められています。

○分析的手法と創造的手法

 分析的手法は、現状や過去のデータを論理的に分析して、正解を絞り込んでいく手法です。
 工業社会においては、現状あるいは過去の事例を分析することで、よりよいものを作り上げてきました。ところが知識社会において、創造を行う事は、現状や過去に存在しないものをつくる事です。もちろん、競争相手も同じ業界とは限りません。
 そのため分析的手法は工業社会においては有効に働いていましたが、知識社会においては、必ずしも有効ではありません。
 これに対して創造的手法は、複数の未来に対する仮説を立てて考え、多面的に戦略を練り解決策を探しいくものです。これは知識社会において求められるものです。
 もちろん、創造的手法だけが必要とされるわけではなく、分析的手法もいまだ重要であることには変わりありません。両方の手法とも併存して使っていくことが最適です。
 しかし、分析的手法と創造的手法は、考え方が異なるため、同じ人や同じ組織が実行をする場合困難を伴うかもしれません。

○イノベーションとの関係

 この分析的手法、創造的手法とクリステンセン※1の持続的イノベーション、破壊的イノベーションとの関係を考えると、少しずつカイゼンを行っていく持続的イノベーションとは分析的手法が、今までの延長線上にない破壊的イノベーションとは創造的手法が親和性が高いと思われます。
 持続的イノベーションと破壊的イノベーションは軸が異なりますが、企業にとって両方必要なものです。しかし、対応する分析的手法と創造的手法の両立が難しいとしたら、持続的イノベーションと破壊的イノベーションの両立も難しいということになり、まさにイノベーションのジレンマの問題が起きてしまいます。

○ソーシャルメディア

 先ほど、ソーシャルメディアを含むビッグデータに分析的手法が使われていることを述べましたが、ソーシャルメディアは創造的な手法とも親和性が高いのではないかと思います。
 P.F.ドラッカーは、創造的手法が重視される知識社会のワーカーは知識により付加価値を生みだすナレッジワーカーである、と言っています。そして、ナレッジワーカーは一方的な指示命令ではなく、双方向のコミュニケーションをとり納得し共感することによって働く、とあります。
 そしてソーシャルメディアも、双方向のコミュニケーションであり、多くの「いいね!」をもらうには、いかにフォロワーや友達の共感を得るかが重要です。
 知識社会におけるナレッジワーカーの双方向のコミュニケーションの特徴と、ソーシャルメディアとの特徴がオーバーラップします。
 イノベーションの実現方法としては、デザイン思考やフューチャーセンターなども注目されています。
 デザイン思考は、デザイン会社のIDEOが作り出した技法です。IDEOにおいて創造は、個人の才能に頼るものではなく、管理するものであり、そのためプロセスが確立しています。そして、IDEOでは日々イノベーションが誕生しています。しかし既存の会社は、組織体制や業務プロセスが確立しており、一足飛びにIDEOのような会社のようになるのは難しいかもしれません。
 そこで、日常とは異なる"場"に身を置くことで、創造的なものを生みだすのが、フューチャーセンターの役割です。フューチャーセンターは、対話のための専用の場所であり、イノベーションの場として注目されています。北欧の知的資本経営から生まれ、欧州では、公的機関にも広がっています。※2
 これらの手法と比較するとソーシャルメディア自体が即イノベーションの実現手段となる訳ではなさそうです。しかし分析的手法と創造的手法の両立が難しい中、この両方と関係が深いソーシャルメディアの立ち位置は興味深いものがあります。ソーシャルメディアの動向を分析することで、この糸口も見えてくるのではないでしょうか。

○ソーシャルエンタープライズ

 ソーシャルメディアはプライベートで使うイメージが強いと思われますが、最近は、企業のシステムに導入されている例も多く見受けられます。
 SalesforceのChatterに始まり、SAP Sales on Demand 、Oracle Social、IBM Project Vulcan、Cisco WebEx Socialなどソーシャルメディアの機能をパッケージシステムに導入してきています。また、Googleは一般に公開しているSNSであるGoogle+を企業向けに模索する動きを見せています。さらにMicrosoftは、企業向けのSNSのYammerを買収しています。
 このように、ソーシャルメディアを企業システムに取り入れる動きが活発に行われています。業務システムにソーシャルメディアが入ることで、分析的な手法に加えて、創造的な手法を取り込むことも行われるようになるのではないでしょうか。

○まとめ

 企業が成長する上で、イノベーションは必要不可欠です。そして、イノベーションを実現するには分析的手法とともに創造的手法があります。しかし、分析的手法と創造的手法は、考え方が異なっているため、同一の人、組織において両立するのは難しいのかもしれません。多様性のある人、組織を確立することが重要です。創造的手法を実現する手段としては、デザイン思考、フーチャーセンターなどがありますが、ソーシャルメディアは、創造的手法、分析的手法のどちらにも親和性があり、企業システムへの導入も始まっています。今後の展開が興味深いと思います。

 ※1 イノベーションのジレンマ クレイトン・クリステンセン (著)  翔泳社
 ※2 フューチャーセンターを作ろう 野村恭彦(著), プレジデント社

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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