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「製造業のビジネスモデルとエンタープライズ・アーキテクチャ その2」
株式会社オージス総研

2012年12月号
  • 「製造業のビジネスモデルとエンタープライズ・アーキテクチャ その2」
株式会社オージス総研   宗平 順己

 多くの製造業は今グローバル化などビジネスモデルの転換が急務となっています。一方で硬直化したシステムがビジネスモデル転換の足かせとなることが多いというのも事実です。
 このような企業のビジネスモデルと企業システムのアーキテクチャとの不一致を解消する手段として、本シリーズでは,戦略との企業システム全体の適合を図るフレームワークであるEAに改めて焦点を当ててみたいと思います。EAの実践的な手法であるアーキテクチャ成熟度ステージの考え方に基づいて,企業のビジネスモデルをEAと関係づけることができるのか,具体事例を踏まえて検証していきます。

 今月号では、先月の最後に触れたオペレーティングモデルというものの解説と、それに基づく、標準化についてご紹介します。

1. Stage3におけるEAの設計

 Stage3での標準化のポイント図-1に示すようにオペレーティングモデルによって異なります。

Operating Modelとその標準化ポイント[1]
図-1 Operating Modelとその標準化ポイント[1]

 以下に、そのポイントを概説します。

(1)Unification
 全社的に基盤プロセス の共通化を進めるこのオペレーティングモデルではBA,AA,DA,TA全てのレイヤーで標準化を行います。
(2)Replication
 扱う商品や顧客ターゲットが異なるものの業務プロセスが類似するこのオペレーティングモデルではDA以外を標準化します。SaaSのマルチテナントの設計と類似しています。
(3)Coordination
 バリューチェーンプロセス毎に事業部制を敷く場合に該当するこのオペレーティングモデルでは,顧客は共通であるが,各事業部のプロセスは固有であることから,DAとTAが標準化対象となります。
(4)Diversification
 このオペレーティングモデルは顧客も業務プロセスも異なるが持ち株会社によってグループ化されている場合が該当するため,標準化の対象はTAのみとなります。ただし,グループ傘下の各社はそれぞれの事業群または会社内において他の3つのどのオペレーティングモデルに該当するのかの検討を行う必要があります。

2.ビジネスモデルとオペレーティングモデル

 EA設計の基本となるオペレーティングモデルは,当該企業グループの将来のBAの在り方を問うものですが,特に製造業において,どのように決定されるのでしょうか。
 製造業のビジネスモデルを論じる際に,「すり合わせ型」と「組み合わせ型」という視点がよく用いられますが,これは,単にモノづくりにだけに関係するのではなく,図-2に示すように,製品,生産,販売,組織などのアーキテクチャ,すなわちビジネス・アーキテクチャに関連するものである。

ビジネス・アーキテクチャの視点[2]
図-2 ビジネス・アーキテクチャの視点[2]

 文献2には以下のように記述されています。
 「重要な点は,アーキテクチャは企業にとって必ずしも所与のものではないということである。…中略… 企業にとって重要なことは,製品アーキテクチャ,工程アーキテクチャ,流通・サービスのアーキテクチャ,そしてそれらの相互関係を含むビジネス・アーキテクチャをどのように規定するかという「戦略的認識」である。…中略… どのような市場ニーズをターゲットにするのか,市場にどのようなニーズを見出すかによって,重要となる活動相互間の関係は異なってくる。その意味でビジネス・アーキテクチャとは,顧客の市場ニーズのパターンによって濃淡をつけられた,活動間の相互作用に関する認識マップであるということができる。」

 次号では,この認識マップを見事に表現した事例について考察します。

(参考文献)

[1] Jeanne W. Ross, Peter Weill, David Robertson, "Enterprise Architecture As Strategy: Creating a Foundation for Business Execution", Harvard Business School Press; 2006/8/8
[2] 藤本隆宏, 武石彰, 青島矢一 編,「ビジネス・アーキテクチャ : 製品・組織・プロセスの戦略的設計」, 有斐閣, 2001.4

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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