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「 BigData 第3回 ソーシャルメディアとBIGDATA 」
株式会社オージス総研

2013年04月号
  • 「 BigData 第3回 ソーシャルメディアとBIGDATA 」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

※ 本稿は、財団法人経済産業調査会発行 「特許ニュース」 No.13446 (2013 年4 月3 日発行)への寄稿記事です。

1. はじめに

第2回ではBIGDATAを含めたデータ分析方法について、そして分析のための情報分析ツール、さらに利活用に向けた技術としてHadoopを紹介しました。本稿では、ソーシャルメディアとBIGDATAの関わりについて事例を中心に見ていきます。
BIGDATAはさまざまな分野で利用されていますが、火付け役はソーシャルメディアではないでしょうか?SNSをはじめとするソーシャルメディアのつぶやきは膨大で、それを分析すれば投稿者の様々な傾向が見えてきます。その意味でソーシャルメディアのつぶやきもBIGDATAの1つといえます。多くの人のつぶやきを集めて、分析・統計することで、今や人間の行動さえ予測可能になってきています。

2. マーケティング分野~ソーシャルリスニング~

(1)その必要性
ソーシャルメディアの投稿をBIGDATAとしてもっとも頻繁に利用しているのは、マーケティングの分野だと思われます。
今まで、マーケットの動向はマーケッターが推測するしかありませんでした。しかしソーシャルメディア上の消費者の声を分析することでマーケットの動向を裏付けられるようになってきており、分析結果を踏まえた対応を検討できるようになってきています。社内で持っているお客様の購買履歴や属性以外の有用なデータが手に入るようになってきたのです。
さらに踏み込んで、ソーシャルメディアの投稿を即座に分析することができれば、マーケティング分野にもリアルタイム性を持ち込むことが可能です。消費者のソーシャルメディア上の評判を見て、次のマーケティング活動に活かすだけではなく、まさに現在行っているマーケティング活動に修正、改善、さらには、商品自体や販売戦略などにも変更を加えることも可能になります。
既存の新聞広告、テレビのコマーシャル、Webページ等による販売促進活動では、どれだけの人がその広告を見たのかある程度は分かりますが、消費者がその広告を見て、どのように思ったかまではわかりません。その広告を出した後の、自社商品やサービスの売り上げの変動などをもとに、販売促進活動の効果を推測するしかありませんでした。
しかし、ソーシャルメディアであれば、リアルタイムに消費者の声が聞けるので、それを即座に分析できれば、その効果を早く正確に把握することが可能となります。
そうは言ってもソーシャルメディアの声は、有用なものもあれば、あまり関係ないもの、無用なものもたくさん混じっています。比率でいえば、有用なものは大変少ないため、母数を多くしなければ有効な分析結果を得られません。膨大なデータの中から、いかにして有用なものを、リアルタイムに抽出するかはこれからの課題です。
(2)ソーシャルリスニング
マーケティングでのソーシャルメディアの利用手法としては、ソーシャルリスニングがあります。ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディアの投稿から顧客の生の声を継続的に収集・蓄積し、自社製品やサービスに関する評判、改善点などを調査し定量的、定性的に分析するものです。
『Listen First!1』では、ソーシャルリスニングで用いる2種類のリサーチを定義しています。ソーシャルメディア・モニタリングとソーシャル・リサーチです。ソーシャルメディア・モニタリングは、戦術的に企業や商品名などに対する投稿を日々トラッキングし、その投稿がポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、必要があれば対応を行うものです。それに対し、ソーシャル・リサーチは、戦略的に、投稿から態度、動機、感情、嗜好、欲求などを読み解き、時には無意識のうちにもある真のニーズを把握し、その行動の意味を理解するものです。
それでは、ソーシャルリスニングの事例を見てみましょう。
イギリスのCadbury(キャドバリー)社では、ウィスパチョコレートバーを販売していました。イギリスやアイルランドでは知らない人がいないほど馴染みの商品でした。
ところがある時から、Cadbury社はウィスパチョコレートバーの製造販売を中止しました。すると、ソーシャルメディアを中心に再販売を望む声が急増し、それを知ったCadbury社はもう一度販売を再開することになりました。
その際、Cadbury社はTwitterのハッシュタグ2「#WispaGold」を使って、キャンペーンを行い再販売を盛り上げました。その結果キャンペーン開始初日のチョコレートバーへのポジティブな反応は、前日を116%上回るものとなりました。さらにその勢いは継続して、ブランドへのポジティブな反応が1,800%にまで上昇しました。これはソーシャルリスニングをきっかけに、ソーシャルメディアを利用しマーケティングで成功した例です。ソーシャルメディア上の声に対して、ソーシャルリスニングの手法を用いたことで、よりダイレクトに消費者にアクセスすることが可能となりました。3
一方ソーシャルリスニングを行わなかったことによる失敗例も見受けられます。ソーシャルメディアの世界では、自分に都合が良いように投稿をコントロールすることはできません。自分の思惑に沿って、投稿してもらうことを目指しても、その逆になってしまう場合もあります。
米国のマクドナルドでは、食材に焦点をあてたキャンペーンを行っていました。具体的にはYouTubeなどで、生産者の紹介を行ったり、Twitterで#McDstoriesのハッシュタグを利用して、生産者の食材の品質へのこだわりを伝え、マクドナルドでの良い体験を投稿してもらおうというもくろみでした。しかし実際には、マクドナルドでのあまり良くない体験が多数投稿されてしまい。コントロール不能に陥ってしまいました。4
あらかじめ、ソーシャルリスニングが行われていれば、このような状況も予測可能となり、そうであればキャンペーンの中身を考え直したり、キャンペーンの企画自体を中止したりしたのではないでしょうか。
また、ソーシャルリスニングを怠っているがために、自社製品の販売の機会を失っているという指摘もあります。
2012年8月3日に開催された「ソーシャルメディアサミット in 関西2012」の講演の中でセールスフォース・ドットコムの加藤 希尊氏は、2012年5月21日の金冠日食においてデジタルカメラメーカーは販売チャンスを逃したと指摘しました。
金冠日食は、ソーシャルメディア上での投稿も多く、当日には、金冠日食に関する投稿は、8万件にも達していました。そして、金冠日食とともに投稿されている単語を分析すると、「デジカメ」、「カメラ」などが多く含まれていたということです。5月21日の、「デジカメ」、「カメラ」の単語を含むつぶやきは、通常の5倍の5万件近くに増加しており、金冠日食と、「デジカメ」、「カメラ」との相関関係は明らかでした。
しかし、具体的なカメラメーカー「各社」に関する投稿は、ほとんど増加していませんでした。カメラメーカーは千載一遇のチャンスを逃したというわけです5

(3)アクティブサポート
ソーシャルリスニングをする中で、顧客の不満、クレーム、疑問などを見つけることがあります。このとき、さらに一歩進めて、アクティブサポートを行うことが考えられます。
アクティブサポートとはソーシャルメディア上に不満、クレームなどを見つけたら、ソーシャルメディア上で、積極的に話しかけ、問題を解決するものです。
企業が、自社製品やサービスに対する不満、クレームなどを、ソーシャルメディア上にリアルタイムに見つけ、それにすぐに対応することができれば、問題を早く収束できます。場合によっては、その対応で企業に対するファンを産みだすことも可能です。顧客満足度やブランドイメージ向上にもつなげられます。
逆に、そのような不満やクレームを放置するならば、ソーシャルメディア上で炎上し、企業に致命的なダメージを与えかねません。企業としては、神経を使うところです。

さて、ソーシャルメディアとBIGDATAの関係が密接なのはマーケティングだけとは限りません。選挙のようにリアルタイム性が要求されるもの、風邪の流行やその予測などにも利用されています。

3. 選挙(リアルタイム性)

ソーシャルメディアのつぶやきが、BIGDATAとして収集、分析され非常に注目された例は選挙ではないでしょうか。選挙はマーケティング以上にリアルタイムな状況把握、状況分析が要求される分野です。
2012年12月の衆院選では、自民党が圧勝しましたが、圧勝までの、各党政のTwitterのつぶやきを朝日新聞が調べています。(2012年12月22日付朝日新聞)
これによると、つぶやきの総数はそれぞれ、自民党総数1,507,281、民主党総数999,903、維新総数835,256、未来総数562,379と選挙で圧勝した自民党に対するつぶやきが群を抜いていることが分かります。
またつぶやきが「前向き度」が高いか「後ろ向き度」が高いかも分析されています。民主党に対するつぶやきの数そのものは比較的多いですが、後ろ向きのつぶやきが目立っています。
未来に関してはつぶやきの数は伸び悩みましたが、「前向き度」は高かったです。この結果を「一定数の熱心な支持者が繰り返し投稿」していたと分析しています。また維新に関しては、つぶやき数は未来より多かったですが、12月3日に「前向き度」が落ち込み、12月10日と11日には「後ろ向き度」が高くなっています。これについては原発政策などを巡る姿勢のぶれが原因であると分析しています。
12月3日に維新の橋下徹代表代行が原発政策について石原慎太郎代表の主張に歩み寄りましたが、ここから「ブレる」などの後ろ向きの言葉を含むつぶやきが増えたようです。
このようにつぶやきを分析すれば、選挙までの各政党に関する支持の状況をリアルタイムに把握することができます。
米国では日本よりさらに選挙におけるソーシャルメディアの利用が進んでおり、大統領選挙戦では、Twitterのハッシュタグを利用して、大統領候補者討論の直後に各候補者の評価を分析しています。米テレビ大手テレビフォックスニュースは2012年1月16日、サウスカロライナ州で開かれたオバマ氏への挑戦権を争う共和党の候補者討論会で、視聴者に候補者をリアルタイムに評価してもらい、それをもとに選挙の情勢を分析しています。視聴者は候補者が質問に正面から答えようとしているか、かわそうとしているか、受ける印象についてハッシュタグを用いてつぶやきます。
午後9時43分、ロムニー候補が自身の富豪ぶりを明らかにする申告書を公開するかどうか尋ねられ、「4月にも開示したい」と発言したときに、視聴者は一斉に「かわそうとしている」とつぶやいたということです。
このようなつぶやきの内容は、討論終了直後から、どちらが優勢だったかの判断に使われました。候補者の一つ一つの発言だけでも、選挙でどちらの候補者に有利に働いたかが分かります。選挙制度が異なる日本と米国では、同列に比較はできませんが、リアルタイム性という意味では、米国のほうが先を行っていると言えるでしょう。
朝日新聞の分析は、選挙で使用されると思われる「支持する」、「期待する」などの前向きの言葉や、「駄目だ」「嫌いだ」などの後ろ向きの言葉約30語を分析し、「前向き」、「後ろ向き」、「判別不能」に機械的に分類したものです。
ソーシャルメディアのつぶやきは、意味のあるものも、意味のないものもあります。しかもつぶやきは膨大です。そのため機械的に分析する必要があります。分析は、前向きの言葉が入っているか、後ろ向きの言葉が入っているかによって、ポジティブなつぶやきかネガティブなつぶやきかを判断しますが、皮肉の意味で前向きの言葉を使った場合や「支持したいと思うのはだめだ」などは逆に分類される可能性があります。その点は考慮する必要があります。

4. かぜ(リアルタイム性、将来予測)

その他に、Twitterのつぶやきを分析することで、現在の状況をリアルタイムに表現すると共に、将来予測も可能にしている例があります。
エスエス製薬はTwitter上のかぜに関するつぶやきをもとに、かぜをひいている可能性が高い人を検出し、グラフィカルに表示する"カゼミル"を提供しています。6日別、都道府県別に、かぜ話題度を表示できるほか、自分のTwitterのIDを入れると、フォローしている人でかぜに関する話題をつぶやいた人が表示されます。
"カゼミル"は、東京大学 知の構造化センターの協力を得て、Twitter上のかぜに関連するつぶやきを言語分析したものです。分析には「風邪」「カゼ」「かぜ」といった単語を軸に、さらにそこに「のど」「鼻水」「さむけ」「頭痛」「せき」「熱」などの症状を加え、かぜに関連するつぶやきとして、データを集計しています。なお、「カラオケでのどが痛い」などは、かぜに関連しないと判断されるようになっています。
かぜに関するつぶやきの増減と、気温、湿度など気象情報との関連性を東京大学知の構造センターが分析したところ、かぜのつぶやき数の増減と、72%の確率で一致したかぜ天気因子が発見されました。
天気因子を利用すれば、現在だけでなく、将来に関しても、高精度のかぜに関するつぶやき増減予測を"カゼ話題度予測"として表示することが可能になっています。7

5. 自然現象、社会現象との関係

"カゼ話題度予測"では天気因子との関係を分析し、将来の予測を行っていましたが、同様に、つぶやきと自然災害及び社会現象との関係についても分析が行われています。
(1)自然災害との関係
自然災害が発生した場合に、自然災害の報道などを見聞きした被災していない人たちが、どのように思い、感じたのかについてもソーシャルリスニングで分析されています。
消費者視聴行動分析を行っているニールセン株式会社は、2011年3月11日の東日本大震災の前後のソーシャルリスニングを行いました。この結果、震災後の消費者要求の変化が見えてきました。
分析では震災前と震災後で、特定の言葉を選び、消費者の意識を探っています。震災前の平均を100とすると、「買いたい」、「欲しい」など購買を意識した言葉の数は、震災直後に大きく落ち込み、その後2週間程たっても90程度までしか回復しませんでした。また、「学びたい」「上達したい」、「食べたい」、「遊びたい」なども、震災後に大きく落ち込み、90程度で推移していました。
一方、「結婚したい」、「抱きしめたい」などの言葉は、震災前の110程度に増加しました。8
(2)社会現象とつぶやき
ニールセンは2012年の社会現象に対して、ネガティブな感情を持ってつぶやいたのか、ポジティブな感情を持ってつぶやいたのか統計をとっています。9
「喜んだ」や「楽しんだ」といったポジティブな感情と共に書かれた記事では、成人式、バレンタイン、GWなどのイベントがありさらには、オリンピックやiPS細胞研究の山中教授のノーベル賞受賞も入っています。その中でも最も感動を持ってつぶやいたのはロンドンオリンピックでのなでしこジャパン銀メダル獲得ということです。
また、最も悲しんだものとして、上野動物園のパンダの赤ちゃんの死去、最も怒ったものとしては原発の再稼働です。
その他に、これは社会現象というよりも社会問題を扱った事例ですが、国連が、米国SAS Institute Inc.と共同調査を行い、ソーシャルメディアの分析により、米国およびアイルランドのソーシャルメディアのデータと失業率の関係などの検証を行いました。
ソーシャルメディア上の「雰囲気」と会話量などから、「食料品の買い控え」、「公共交通機関の利用増加」、「グレードの低い自動車への買い替え」などに関する会話が増加すると、失業率急増の前兆であることがわかったということです。10
そして、米国では「とげとげしい」あるいは「落ち込んだ」雰囲気が会話の中で増加し始めて4カ月後に失業が増えました。アイルランドでは、「不安を感じる」という会話が増えて5カ月後に失業率が増えたということです。
(3)社会現象のリアルタイム把握
独立行政法人情報通信研究機構では、「高度センサー情報集約・解析プラットフォーム」と題して、新世代ネットワーク戦略プロジェクトを推進しています。11この新世代ネットワークでは、様々な自然現状(気象、自然災害等)や社会現象(ニュース、SNS等)のイベントをリアルタイムで把握するICTサービスを目指しています。
高度センサー情報集約・解析プラットフォームは「動的ネットワーク制御ミドルウェア技術」、「広域ネットワーク構成技術」、「モバイルネットワーク仮想化技術」の3つの要素技術から構成されています。
「動的ネットワーク制御ミドルウェア技術」では、自然現象や社会現象に関する様々なセンサーデータを収集し解析する仮想センサーを作ることができます。仮想センサーは、センサーデータを提供したり、加工したり、収集して保存するといった様々な情報サービスを組み合わせて作られます。たとえば、"雨"の気象データと"避難"という語彙を含むTwitterのデータを毎時1分で観測しその時空間分布をモニタリングしています。
組み合わせはこれ以外にも、遅延している電車の路線近くのつぶやきや、電力需給が逼迫している地域のつぶやきなどが考えられています。
さらに独立行政法人情報通信研究機構は情報サービスに連動して動的ネットワークを制御する、Service-Controlled Network(SCN)ミドルウェアの研究開発を行っています。SCNミドルウェアにより、災害時など既存システムでは想定していない事態が発生した際も、ネットワークを動的かつ継続的に再構築することができ、膨大な情報を組み合わせて集約・分析したり、代替の情報サービスを提供したりすることが可能です。
これにより、Twitterなどの非定形、不規則なつぶやきも、様々な情報サービスに汎用的に利用できるようになります。

6. スマートフォン(GPS)との関係(位置データの把握)

ソーシャルメディアでは、いつでもどこでも、投稿したり、"友達"の投稿を読んだりするため、携帯電話やスマートフォンといった手軽に持ち運べるデバイスとの親和性が高いです。特に、スマートフォンについてはソーシャルメディアと歩調を合わせて普及してきた側面があります。
最近の携帯電話やスマートフォンのほとんどにはGPSがついています。このGPSデータにより、膨大な数の個人の位置データが取得できるようになってきました。
自分の携帯電話やスマートフォンにGPSが付いていたとしても、そのデータを第三者が利用しているなどとは意識していない人も多いのではないでしょうか?スマートフォンなどでアプリをインストールするときやアプリを起動するときに、現在の位置情報の利用の許可を求められることがあります。あまり気にかけることもなく、許可をタップしているのではないでしょうか?現在の位置情報というものは1人だけのデータが入手できたからといって、即座に何かに活用できるものではありません。そうは言ってもたくさんの人がGPS付きの携帯電話、スマートフォンを保持しており、集まる位置情報のデータは膨大になります。これらのBIGDATAについても既に利用が始まっています。
(1)ゼンリン混雑データ
株式会社ゼンリンでは「混雑統計」を提供しています。これは、携帯電話利用者から許可を得て取得した位置情報を、マーケティングデータとして統計処理したものです。
ドコモ携帯電話のオートGPS機能で得られたデータをもとにしており、個人を特定はしていません。
「混雑統計」では指定したエリアに流入する人口を、自宅エリア該当者、勤務エリア該当者、流動者に分けて、日別・時間帯別に比較しています。12
その「混雑統計」を元に株式会社シンクエージェントは、HitoDynamicsという人口流動マッピングサービスのレポートを作成し販売しています。13大きく分けて、鉄道沿線エリア、商業施設エリアの2種類のレポートがあります。鉄道沿線エリアの城西版では山手線の大崎駅、五反田駅、恵比寿駅、渋谷駅、原宿駅、新宿駅、新大久保駅、池袋駅の8駅への来訪者の傾向を分析しています。
それぞれの駅訪問者の居住エリアや勤務エリア、駅訪問者と勤務地駅の相関をもとにレポートをしています。

HitoDynamicsエリア・レポート 2011(城西版)
図1 出典:HitoDynamicsエリア・レポート 2011(城西版)http://hd.lis-data.com/service/report-001.html

商業施設エリアの新宿百貨店のレポートでは、伊勢丹新宿、京王百貨店、新宿マルイ本館、新宿三越、小田急百貨店、新宿高島屋の6店の来訪者の傾向を分析しています。
施設の滞在者の居住エリアや滞在者の勤務エリア、また施設ごとの日別、時間帯別の滞在時間や滞在者数など、さらには、リピート率などもレポートされています。
ここから、顧客が遠隔地から足を運んでいるのか、通勤帰りに寄っているのかなどがわかり、よりターゲットとすべき顧客層を絞り込むことができ、その顧客層に向けての対応を検討することもできます。

出典:HitoDynamicsエリア・レポート
図2 出典:HitoDynamicsエリア・レポート http://hd.lis-data.com/service/report-002.html

(2)カーナビの交通情報
これまでカーナビでは、VICS(Vehicle Information and Communication System)を通してリアルタイムに送信される渋滞や交通規制などの道路交通情報を利用していました。VICSは固定センサーを道路に設置しデータを収集していますが、全ての道路に設置されているわけではありません。
そこで、最近ではカーナビについているGPSの情報を収集し利用することで、さらにきめ細かい渋滞などの情報を提供することが可能になっています。
株式会社野村総合研究所の「全力案内」14では、タクシーからの位置情報やGPS機能付携帯電話からの位置情報を使って渋滞予測情報を生成しています。この渋滞予測情報では、今までのVICSの十数倍もの道路の情報を提供できるようになっています。

7. 顔認識技術との組み合わせ~個人認識へ~

顔認識技術は、指紋認証システムや目の虹彩認識システムなどと並んでセキュリティシステムの個人識別方法の1つとして、実際に利用され始めています。フランクフルト国際空港では、自発的登録者を対象とした完全自動入国審査に利用されています。
これは、カメラで捉えた画像とあらかじめ登録されている顔のイメージとの比較を行っているものです。登録されている人がまだ少ないのでデータもまだ大量ではなく、BIGDATAとはいえません。しかしこの顔認識技術とソーシャルメディアを組み合わせることで新たなBIGDATAが生み出されます。
ソーシャルリーディングによって、今まで分からなかった個々の生活者の声を具体的に認識することが可能になったことは、すでに述べました。このことも画期的なことではあります。しかし、そこまではまだ個々の生活者からいえば、分析されるといっても匿名で扱われているという一種の安心感がありました。
ところが、ソーシャルメディア上に断片的に存在している情報を収集・分析することで、現実世界に直結するような何かを探しあてられる可能性がでてきました。
カーネギーメロン大学 Alessandro Acquisti 准教授らは、ソーシャルメディアの顔写真から個人を特定する研究を行っています。15
FacebookなどのSNSでは、顔写真を掲載している場合が多いです。必ずしもプロフィールを公開しているとは限りませんが、顔認識技術と組み合わせ、他のソーシャルメディアから情報を持ち寄ってつけ合せることで、個人の特定も可能になります。実際、大学のキャンバスを歩いている人に対しても同様の顔認識実験を行い、成功しています。
技術が進み精度が向上すれば、街で歩いているだけの人の、名前をはじめとする個人情報が全てわかってしまうような未来もありえてしまいます。
SNSをはじめとして、インターネット上には個人の断片的な情報が多く散らばっています。当人はこの程度の情報ならば大丈夫だろうと思うでしょうが、それらを機械的に集めてくるだけで、プライバシーのほとんどが公開されてしまう危険性をはらんできます。今までの感覚からいえば、なんとも恐ろしい時代になったわけです。こうなってしまうとプライバシーの考え方も、今よりオープンなものに変わらざるを得ないのかもしれません。
ソーシャルメディアの膨大な情報をBIGDATAとしてオンラインだけで分析するのではなく、現実世界の人と関連付けて分析が行われてしまうわけです。

8. ソーシャルメディアの分析

BIGDATAのなかには、構造データと非構造データがありますが、分析の手間を比較すると、非構造データの分析の方が圧倒的に困難です。そして非構造データの代表的なものがソーシャルメディアのデータです。ソーシャルメディアのつぶやきの中には、意味があるものもあれば、あまり意味をなさないものもあります。非構造データとしてのソーシャルメディアの投稿の傾向をいかに捉えるかが課題です。
ソーシャルメディアの投稿は膨大な数になりますが、文脈を捉えつつノイズを排除し、有効な情報をいかに収集するかが精度向上の重要な鍵となります。企業のニーズによって何をどのように分析するか異なりますが、一般的に次のような、プロセスになるでしょう。

(1)キーワードを決定する
大量の投稿の中で、目的の投稿を拾い出すにはどのようなキーワードを選定するのが適切かを決定します。
(2)キーワードで検索する
決定したキーワードを含む投稿を抽出します。
(3)文脈分析をしノイズを排除する
キーワードが含まれる投稿でも、単純に記事への参照をしているものは、単に反応しただけで、投稿者の意見が含まれていないこともあります。また宣伝目的の投稿や販売サイトへの誘導などは参考になりません。このような投稿は外していく必要があります。
(4)時系列に分析する
投稿が時間の経過とともにどのように変化する傾向があるかを分析することで、現時点がどのような状況であるか把握でき、そしてまた将来の予測も可能になります。
(5)他の要因との関係を分析する
他の要因(社会現象、自然現象など)と、投稿とがどのように変化していく傾向があるかを分析します。
(6)ニーズ分析をし課題を抽出する
投稿から、製品、サービスにどのようなニーズがあるかを分析し、課題を抽出します。

Twitterの投稿を分析する場合、Twitter社の公開APIを利用することができますが、この公開APIには、アクセス制限があり、キーワード検索で必ずしも全ての情報が取得できないことがあります。また、過去のつぶやきも1週間程度しか遡れません。
そこで、Twitter社は提供するデータの量や過去のつぶやきの取得などに関する制限がないAPI 、firehoseを提供しています。日本でも、NTTデータなどがTwitter社と再販契約を結ぶことで、日本の全つぶやきを検索できるサービスを提供しています。16

9. まとめ

ソーシャルメディアのBIGDATAは、マーケティングからはじまり、選挙の状況などリアルタイム性の高いものへも応用され、そして、風邪の予測といった将来予測にも利用されています。そこでは、自然現象、社会現象などとソーシャルメディアとの関係なども分析可能になってきています。また、スマートフォンの位置データの分析で、つぶやきではありませんが、人々の実際の行動を把握することもできるようになってきました。
そしてこれまでに個々人の集合としての傾向が把握できるだけでしたが、BIGDATAを拾い集めて個々人を特定する研究も進んでいます。顔認識などにおいては、個々人のデータとしてそれぞれ認識が可能になり、現実世界とつながるようになってきています。ソーシャルメディアの投稿をBIGDATAとして捉えることで、様々な可能性が見えてきたのではないでしょうか?
しかし課題もあります。ソーシャルメディアの投稿は投稿した人のものなのか、ソーシャルメディアを運用している業者のものなのか、そして、BIGDATAとして分析した結果は、分析者のものなのか、これもまた曖昧な点があります。今後ソーシャルメディアのデータを有効に活用するためには、これらの課題を早急にクリアにする必要があります。
第4回は「ビッグデータ時代の情報連携基盤」について、説明します。

※オージス総研はお客様の環境や諸条件を考慮した上で、独立かつ中立的な立場としてハードウェアやソフトウェアを選択し、SI のご提案を行っております。本文での製品名などはその一部のご紹介でございます。

(参考文献)

[1] isten First!』 Stephen D.Rappaport Dentsu Social Media Lab. 翔泳社
[2] ハッシュタグは#で始まる文字列で、あらかじめ文字列を指定しておき、そのハッシュタグをつけてつぶやいてもらうと、同じハッシュタグがついたものを集めることができる機能。
[3] キャドバリー
https://business.twitter.com/ja/optimize/case-studies/cadbury/ (現在はリンク切れ)
[4] ZDNet McDonald's #McStories gets 'supersized' with Twitter backlash
http://www.zdnet.com/blog/feeds
/mcdonalds-mcstories-gets-supersized-with-twitter-backlash/4529
[5] 「ソーシャルメディアサミット in 関西2012」「ソーシャルリスニングで読み解くソーシャルメディアの法則」
http://blogos.com/article/45264/
[6] http://kazemiru.jp/
[7] http://adv.yomiuri.co.jp/ojo/tokusyu/20110207/201102toku3.html
[8] 「ソーシャルリスニングから見えてきた、震災後の消費者欲求の変化」
http://www.netratings.co.jp/email_magazine/2011/05/NNR20110510.html
[9] 「ニールセン、2012年のソーシャルメディアを分析 もっとも感動した話題は「なでしこジャパンメダル獲得」」
http://www.netratings.co.jp/news_release/2012/12/20121219.html
[10] 「 オンライン上の「雰囲気」から失業率の増加を予測」
http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/news/press/201203/29.html
[11] 高度センサー情報、集約・解析プラットフォーム
http://www.nict.go.jp/publication/NICT-News/1210/page/NICT_1210_1-4p.pdf
[12] http://www.zenrin-datacom.net/business/other/#statistic
[13] http://www.think-agent.co.jp/hd/
[14] 全力案内
http://www.nri.co.jp/products/group/ubiqlink/z_an.html
[15] engadget日本版 「街行く人を認識し、ソーシャルメディアからプライバシを引き出す研究」
http://japanese.engadget.com/2011/08/02/cmu/
[16] 「 Twitterデータ提供サービスの開始について」
http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2012/111900.html

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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