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「デザイン思考 その1」
株式会社オージス総研

2013年07月号
  • 「デザイン思考 その1」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 デザイン思考とは、Appleのマウスなど画期的なプロダクトデザインしたことで知られるデザインファームIDEOのイノベーション手法です。
 IDEO CEOのティム・ブラウンは、デザイン思考を次のように定義しています。
 「デザイナーの感性と手法を用いて人々と技術力を取り持つこと」あるいは「現実的な事業戦略にデザイナーの感性と手法を取り入れ、人びとのニーズに合った顧客価値と市場機会を創出すること」

 さて「デザイン思考」と初めて聞いたときにどのような印象を受けるでしょうか。「デザイン」と「思考」に分けて考えてみます。
 まず「デザイン」ですが、グラフィックデザインやプロダクトデザインなど、どちらかというと物の見た目の印象があるのではないでしょうか?あるいは芸術的なものをイメージする人がいるかもしれません。また「デザイン」はある種の人達にとっては「設計」になりますが、こうなると先ほどの「デザイン」とはまた違った印象になります。ソフトウエア開発者にとって、「設計」は工程の名前ですね。アーキテクチャ設計や詳細設計など仕様をかっちり固めて、あとは実装するだけです。建物の「設計」も構造設計や設備設計など緻密に計算し決定をするものです。
 ところが、「デザイン思考」のデザインは、見た目だけでもありませんし、詳細に決めるものでもありません。「デザイン」というと一般に物づくりの印象が強く、企業での新製品の企画では検討課題の1つとなっています。しかし、そこで行われていることを経営の視点から捉え直して見ると、それはその企業にとっての新事業としての商品企画という意味になります。
 「デザイン」の手法やデザイナーの感性を取り入れることで、事業戦略や顧客に対する新しい価値の提供と市場機会の創出などを行おうとしているのであり、これはすなわち、イノベーションの実現を模索していると言い換えても良いかもしれません。
 次に「思考」ですが、「思考」というと、じっくりと机の上で考えるイメージでしょうか?これも「デザイン思考」を誤解させる原因になっていると思います。
 スタンフォード大学デザインスクール「d.school」※1では、デザイン思考のステップとして次の5つを定義しています。

  • Step1 共感(Empathize)
     本人も気づいていない本音や、価値観を明らかにする。
  • Step2問題定義(Define)
     正しく問題設定をして、解決策を生み出す。
  • Step3 創造(Ideate)
     アイディアの幅を可能な限り広げる。
  • Step4 プロトタイプ(Prototype)
     実際につくって試す。
  • Step5 テスト(Test)
     ユーザーからのフィードバック。

出典:デザイン思考のステップ
図1 デザイン思考のステップ

 このステップの中で、「思考」に近いのは、「問題定義」でしょうか?このステップでは、洞察することで本音を探ります。ただ一人でじっくり「思考」するわけではなく、対話を通じて「思考」していきます。また、「創造」では、アイディアをブレーンストーミングなどでどんどん出していきます。これもじっくり「思考」した末にという訳ではありません。さらに「プロトタイプ」では「思考」は一旦脇に置いて、まず作ってみるというステップになります。
 デザイン思考は、実際に「プロトタイプ」を作成して「テスト」してもらうことで、なるべく早く失敗しながら問題解決を試行錯誤的に行います。

 このように「デザイン思考」のターゲットとしているところは、その名称から受ける印象とかなり異なるところがあります。そのため、名称に惑わされず「デザイン思考」の本質を理解していく必要があります。
 次号以降、「デザイン思考」について、イノベーションとの関わりをはじめ様々な面を紹介し、「デザイン思考」について理解を深めたいと思います。

※1 スタンフォード大学デザインスクール(「d.school(Institute of Design at Stanford)」)

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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