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「デザイン思考 その7 -創造-」
株式会社オージス総研

2014年01月号
  • 「デザイン思考 その7 -創造-」
株式会社オージス総研   竹政 昭利

 スタンフォード大学デザインスクール「d.school」※1では、デザイン思考のステップとして次の5つを定義しています。前回は"問題定義"のステップについて説明しました。今回は、"創造"のステップについて見ていきます。

 "創造"は解決策のアイディアを出すステップです。ここではできるだけたくさんのアイディアを出します。
 アイディアを出す代表的な手法としては、ブレインストーミングがあります。ブレインストーミングは、アレックス・F・オズボーン氏によって考案された会議方式のひとつです。ご存じのようにブレインストーミングは、以下のようなルールで行われます。

  • 質より量を優先。
  • どんなアイディアもまず出してみる。
  • 評価しない(批判しない。)
  • アイディアを重ねる。

 あるメンバーのアイディアを受けて他のメンバーが新しいアイディアを生み出すサイクルを作り、アイディアを累積していくことが肝要です。
 互いに触発しあうという性質上、ブレインストーミングはメンバーやファシリテーターの違いにより思ってもみない良質なアイディアが飛び出すこともあれば、平凡なアイディアに留まる事もあります。
 ブレインストーミングの質を高めるには、多様な顔ぶれをメンバーとして集めることがカギになります。多様なメンバーから集合知が生まれます。
 (参考「 デザイン思考 その4 -集合知-

 発想の癖があるがために、人はどうしてもその人の枠(バイアス)にはまったアイディアしか出すことができなくなっています。
 これは、個人に限らず会社や組織についても言えることです。ある程度長い期間、同じメンバーで発想をしていると、その会社や組織の文化に影響されて、やはりその会社や組織の枠(バイアス)にはまった無難なアイディアを出す傾向があります。
 実際、ある会社の企画部門でアイディアを出してもらったところ、実施しやすい、上層部の許可を得やすいアイディアを出す傾向がありました。
 会社や組織の枠(バイアス)を回避する策としては、性別、年齢、組織、人種など、なるべく多様な人を集めることです。そうするとそれぞれの人が持つ枠(バイアス)は少しずつずれているので、触発しあううちに、枠(バイアス)に囚われないアイディアが出る可能性が高くなります。
 しかし多様な人を毎回、しかも違う顔ぶれで集めるには様々な労力がいり、また時間もかかります。だからと言って、毎回同じメンバーで話をしていると、徐々に枠(バイアス)が出来あがってしまうという弊害があります。
 これに対しては、イノベーションを実現するにあたって、オープンイノベーションを利用し、外部のアイディアを求めるというのも一つの解決策になります。

 一方、多様な人たちに着目するのではなく、ある特定の極端な特性を持った人たち(エクストリームユーザー)の感性をサービスや商品開発に活かすことも行われています。エクストリームユーザーとは、ある商品に非常に愛着を持って使っている(時には何々オタク・マニアと呼ばれるような)人。あるいは、全くその商品を使っていない人のことです。

エクストームユーザー
図1 エクストームユーザー

 発想の癖がどうしても存在してしまうという問題に対して、発想の癖を視覚化し、その癖を崩して、新しいアイディアを強制的に発想するという、また別の解決策があります。
 たとえば、ZIBAの濱口秀司氏は、DFW(dynamic frame working)という手法を提示しています。これは1から3+までのレベルがあり、それらを順にクリアしていくのです。
 濱口氏は、今までご紹介したような、たくさんのアイディアを出すことをレベル1としています。そして、レベル2として、アイディアに対して切り口を考えます。切り口とはアイディアを出した時の傾向(癖)です。なぜそのアイディアを出したか突き詰めて考えていき、切り口を浮かび上がらせます。そしてレベル3として切り口を視覚化し、構造化しどのようなバイアスがあるかを明らかにします。レベル3+としてバイアスが明らかになったことで、そのバイアスを破壊し、そのバイアスに囚われないアイディアを強制的に発想します。
 確実にイノベーティブなアイディアを得られるわけではありませんが、このようなフレームワークを利用することで、イノベーティブなアイディアへと意識的に誘導できるわけです。

 "創造"のステップでは、まず、いかに多くのアイディアを出すかが重要になります。アイディアは一度に出るものではなく、積み重ねや組み合わせによって、より良いアイディアが出るようになります。さらに、現在出ているアイディアの傾向(切り口)を明らかにすることで、それとはまったく異なった、アイディアを出すことができます。
 いままで、実際に様々な人とワークショップをしてきましたが、"創造"のステップは、会社、組織の文化、参加したメンバーの顔触れなどにより、同じことを行っても、全く結果が異なるという経験をしていきました。非常に盛り上がりアイディアがどんどん出てくる場合もあれば、アイディアがあまり出てこないで場合もあります。この時、状況に応じていくつかの手法を組み合わせて、ファシリテートすることが重要です。また、"創造"のステップの前、特に"共感"のフェーズで、十分にインタビューや行動観察を行っておくことも、"創造"のステップに影響を与えることが分かっています。"共感"や"問題定義"のステップをしっかり行っておくことが、結果的に"創造"のステップを充実させることにもなる訳です。

※1 スタンフォード大学デザインスクール(「d.school(Institute of Design at Stanford)」)
http://dschool.stanford.edu/

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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