Webマガジン
「リーンで高機動な開発のススメ(1)」
株式会社オージス総研

2014年08月号
  • 「リーンで高機動な開発のススメ(1)」
株式会社オージス総研   山海 一剛


「崖っぷちのIT部門」、日経コンピュータ誌の2014年1月23日号の特集記事*1は、タイトルからしてセンセーショナルでした。この特集では、利用部門1000人とIT部門500人に実施した調査結果をもとに、IT部門に対する意識やイメージについて、自己評価との大きな落差を浮き彫りにしています。IT業界の中には、この記事の「何よりもIT部門を"抵抗勢力"とみなす利用部門も少なくない。」という言葉に、大きな衝撃を受けた人も少なくないでしょう。

まず簡単にこの特集記事を抜粋して紹介します。

図1 IT部門の自己評価と、IT部門に対する利用部門の評価 出典:『日経コンピュータ』2014年1月23日号
図1 IT部門の自己評価と、IT部門に対する利用部門の評価
出典:『日経コンピュータ』2014年1月23日号*1

IT部門と利用部門の意識の差が顕著だったのは、(1)利用部門の悩みやニーズの理解度、(2)ビジネス環境の変化に対する柔軟性、(3)仕事への基本姿勢(自発的かどうか)、の3点。(1)ではIT部門の53.8%が「理解している」と回答したのに対し、利用部門は33.6%と、20ポイントもの開きがある。(2)で「柔軟性がある」と答えたIT部門は58.7%であるのに対し、利用部門は27.1%。(3)では「自発的」と回答したIT部門は30.5%だが、利用部門は15.7%となった。*1

さらに衝撃的な調査結果が続きます。

図2 IT部門に抱くイメージ 出典:『日経コンピュータ』2014年1月23日号
図2 IT部門に抱くイメージ
出典:『日経コンピュータ』2014年1月23日号*1

利用部門とIT部門との意識の差は、「IT部門に抱くイメージ」にも表れている。調査では、「先導者」「パートナー」「門番」など六つの言葉の中で、自社のIT部門のイメージに最も近いものを選んでもらった。
利用部門、IT部門ともトップは、必要なシステムを利用部門が指定した通りに準備する「仕事請負人」(利用部門が39.6%、IT部門が36.8%)だった。結果が異なるのは2位以降だ。IT部門の自己評価では、2位はIT面で事業計画の推進を支える「参謀」(26.0%)、3位はビジネスを利用部門と共に遂行する「パートナー」(16.3%)となった。
ところが利用部門の評価では、「参謀」は4位(11.7%)、「パートナー」は5位(11.2%)に後退する。代わりに2位に付けたのは、ITに関する要求を慎重に見極める「門番」(21.6%)。3位は、ITに関して要求してもなかなか動かない「抵抗勢力」(14.8%)だった。利用部門で「門番」「抵抗勢力」を挙げたのは4割弱に達する。IT部門は合わせて2割に満たない。
*1

このように、IT部門が自身に抱いているイメージに比べ、利用部門ははるかに悪いイメージを持っていることがわかります。この後、記事はこのように続きます。

これらの結果から、「自分たちはビジネスに貢献している」と考えるIT部門と、「IT部門はビジネスへのIT活用にブレーキをかける存在」とみなす利用部門とのギャップの大きさがうかがえる。*1

私がこの仕事に就いたころ、ソフトウェアエンジニアは花形の職業でした。企業におけるIT部門も、それなりのプレゼンスがあったように思います。でも今やIT部門が経営者や利用部門の期待に応えられていないと見なされている。いつの間に、このようなことになったのでしょう。

少し話題が変わるのですが、「シャドーIT」と言う言葉をご存知でしょうか?「シャドーIT」とは、「企業内で、会社の管理下にないITを業務活動に利用する行為や状態」を指します。少し前までは、「私物のパソコン、スマートホン、タブレット型端末などを、会社の許可を得ずに業務に利用すること」と、管理されていないデバイスの使用を指していたのですが、最近はIT部門が認知していない状態で、クラウドサービスを利用することも指すようになりました。これは利用部門が勝手に情報システムを調達することであり、「IT投資の部分最適化になる」「重要な情報を、勝手にクラウド上で管理してしまってるのではないか」など、IT部門が顔をしかめる事態として、この言葉を紹介しているサイトが多いようです。

一般的なユーザ企業のIT調達では、年度単位に予算を組み、システム化企画を起案して稟議を通し、要件定義を行って開発を行い…と、業務に必要な情報システムを入手できるまでには、非常な工数と時間がかかっているのが実情です。
もし利用部門の人が、その業務の一部分だけにでも役立ちそうなクラウドサービスを見つけたらどうするでしょうか?サインアップするだけで使い始められるITが目の前にあれば、自社のIT部門に開発を依頼するようなことはぜず、迷わずクラウドサービスを選択するのではないでしょうか?あるいはクラウドサービスを使うこと自体が、企業のガバナンスに反することだと自覚されていないケースも少なくないようです。これだけインターネット上にさまざまなサービスが氾濫しているのですがから、無理もないことかも知れません。

これを読んでおられる利用部門の方は、いかがお感じになられるでしょうか?IT企業に臆する私としては、ここで目を向けないといけないのは、利用部門がおかれている現状だと思います。
ご存じのように世の中の変化の速度は、どんどん加速しています。少し前まで世界に冠たる存在だった日本の製造業が大きく転落したことを例にあげるまでもなく、今や利用部門は経営環境の変化を常にキャッチアップし、常に自らの業務を見直していく必要に迫られています。「新しいビジネスモデルを考案して競合他社との差別化を図れ」といった経営層からのプレッシャーもあるでしょう。そして今や、どの業務も何らかのITを使っています。利用部門が実現しようとしている俊敏さを、ITも持たないと意味がありません。今やこのような言葉がささやかれています「ITは改善のための道具だったはずだ。しかし今やITは改善の足かせでしかない」。

IT部門からすれば、言いたいことは沢山あると思います。でもこのようにしたのは、企業内のIT部門であり、私たちSI企業であるわけで、利用部門を責めることは出来ないはずです。
この記事では、何度かに分けで「改善の足かせ」というレッテルを返上するためには、どうすれば良いかを事例を交えて考えていきたいと思います。

(参考文献)

*1 崖っぷちのIT部門 IT部門のイメージは「抵抗勢力」(『日経コンピュータ』2014年1月23日号)

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

同一テーマ 記事一覧
山海 一剛  記事一覧
2014年08月号のコンテンツ



『Webマガジン』に関しては 弊社の「個人情報の取り扱いについて」に同意の上、
下記よりお気軽にお問い合わせください。

ページトップへ戻る