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「「ビットコイン」に関する考察」
株式会社オージス総研

2014年09月号
  • 「「ビットコイン」に関する考察」
株式会社オージス総研   依藤 裕俊

1.ビットコインとは?

 ビットコインとは、ナカモトサトシ(日本人??)という謎の人物の論文(http://www.bitcoin.co.jp/docs/
SatoshiWhitepaper.pdf)にもとづいてしくみがつくられ、2011年ごろからネット上でPtoPで取引されるようになった通貨/決済手段です。(通貨といってもその実態は、単なる「電子鍵に守られた、01001110111100110111……というデータ」です。)

 ビットコインの主な特徴(通常の通貨やクレジットカードとのちがい)としては、以下の2つが挙げられます。

特徴(1)(利便性)
 簡単に送受信でき、決済手数料も極めて安価、クレジットカードのような登録も不要、匿名性と即時取引性をもった”ネット上の現金”とも言える特徴をもっています。ネット上取引の決済ツールとして使用されると同時に、ネット上だけではなく、使用可能な実店舗も欧米では増えているそうです。

特徴(2)(国家コントロールフリーである事)
 通貨発行量をコントロールする国や企業がなく、通貨量のコントロールは、予めプログラミングされた発行量規制が自動的に働いているだけであるという特徴をもっています。
よって、ビットコインの価値は、ほぼ100%市場の思惑で変動する、と言えそうです。国家をバックにもたないという事は、その国の経済の状態や金利の状況、政府の思惑に影響をうけないし、反面、国家の信用の裏付けないので、ビットコインそのものへの信用が揺らいだ時には、支えるモノはない、という事になります。

 上記の特徴(1)(2)を踏まえると、ビットコインは「金(ゴールド)」に似ていると言えそうです。(ネット上にあるデータの形をとった金、という感じでしょうか?)
 中央政府の後ろ盾がなくても、金の価値は、世界中の誰もが「金には価値がある」と考える事により発生し、完全に市場の判断にゆだねられています。そして、金の埋蔵量には限界があることもその価値を下支えしています。ビットコインも、minerとよばれるビットコイン採掘管理ソフトにより、流通量が自動調整され発掘量にも上限が設定されています。そして、その価値が需要と供給の関係によって決定されるのも金と同じです。

2.ビットコインの安全性はどう担保されているのか?

 「電子取引を保証する第3者機関(国や金融機関)の信用」のかわりとなる、流通時の本物保証のしくみが、ビットコインの肝といえそうです。サトシ・ナカモトの論文(http://www.bitcoin.co.jp/docs/SatoshiWhitepaper.pdf)からそのまま引用すると、以下の2つのしくみがそれを保証するとの事です。

(1)「良心的なノードがCPUパワーの過半数をコントロールする限り、プルーフ・オブ・ワークを使って記録された公開型の取引履歴を攻撃者が変えようとする事が、コンピュータ的に加速度的に実質上実行不可能になっていくP2Pネットワークのしくみ」

(2)仮にCPUパワーの過半数を悪意を持った攻撃者が所有した場合でも、その攻撃者がこのシステムを破壊するよりも、ルールに従って新しいビットコインを発掘した方が有利になる、インセンティブのしくみ」

 簡単にいうと、山師(マイニングする人)がビットコインの取引に対して無償でおこなう取引保証(この行為は、山師がビットコインを発掘することに貢献するので、実施するインセンティブがはたらく)によってつくられていく、取引保証のチェーン(プルーフ・オブ・ワーク)が一番長いものが本物であるとするしくみ、がビットコインの本物保証となっているようです。ルールにのっとって、多数の山師がこの行為を(ビットコインを得るために)大量のCPUパワーを持っておこなうため、悪意をもった攻撃者が、これを凌駕するだけの取引のチェーン(プルーフ・オブ・ワーク)をつくるには、さらに大量のCPUパワー、事実上不可能に近いパワーが必要になる・・・・というしくみです。

3.ビットコインがひろまるとどんな影響があるのか?

 第一に、少額決済のパートを中心に、金融取引コストの低下がおこることは間違いないです(特に国際送金等いまバカ高い手数料がかかっている分野に顕著におこると思います)。
人々がビットコインをウオレット(ウオレット会社が提供するビットコイン用お財布)に保存して取引に使うようになると、(取引決済のための)銀行口座は不要になり、金融サービスのあり方が大きくかわる事と思います。(遠くの人ともネットを介して現金受け渡しで取引が完了しているイメージでしょうか? 過渡期においては、銀行口座は特定通貨ベースでの預貯金のための預け場所となり、取引時には、ビットコインウオレットに資金を移してやりとりすれば、海外の取引相手であっても送金手数料も為替手数料もかかりません)。

 第2に、”お金”というアイデアのもつ最大の機能は、”交換を超加速したこと”にあると思いますが、ビットコインは、さらにこの機能を飛躍的に高める気がします。

 特に、大きな視点で考えると、国家によるコントロールをうけない通貨が、世界の主要取引通貨になった時にどんな事がおこるのか?という観点が一番重要そうです(かなりハードル高いですが・・)。
 たとえば、他の通貨との交換比率(為替)に対する国の意図が反映しにくくなったときの金融政策や財政政策がどうなるのか?(そもそも金融政策はなくなるのでは?)とか、各国の規制に対する”市場の意思”の力とスピードが、ますます強くなる時(グーグル等の一部企業が”国”よりも大きな力をもちつつある現状が加速されるイメージ)、国に依存しない信用保証のしくみはどのような形をとるのか?等、考えても答えのない問いが山積です。

4.結び

 ビットコインが今後メジャーな通貨になるかどうかは、疑問符がつく点も多い(発行量、価値変動)ですが、ビットコインのしくみの核である、プルーフチェーンの技術&考え方は今後、金融の世界/信用の世界に、大きな革新を起こすと思います。

 ナカモト・サトシの論文にある下記の文章は、信用を保証・創造するしくみの要(かなめ)が、「善意の人々の集合(CPU)パワー 」> 「悪意の人々の集合(CPU)パワー 」である事を示唆していますが、

「良心的なノードがCPUパワーの過半数をコントロールする限り、プルーフ・オブ・ワークを使って記録された公開型の取引履歴を攻撃者が変えようとする事が、コンピュータ的に加速度的に実質上実行不可能になっていく」

 ”信用とは、最後は人の良心・善意そのものに他ならない”という事をシンプルに示していて、非常に興味深いです。

*本Webマガジンの内容は執筆者個人の見解に基づいており、株式会社オージス総研およびさくら情報システム株式会社、株式会社宇部情報システムのいずれの見解を示すものでもありません。

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