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「優先度」

2013年01月号 タイム OCP-プロジェクトマネジャー(L5)   齊藤 剛

このコラムを書いているときは衆院選の結果は出ていませんが、テレビや新聞を見ていても、各党が主張している事はまちまちです。日本の抱える課題と、それらの重要度・優先度についてもいろんな考え方がありますが、いずれも解決は待ったなしの雰囲気を感じます。どこが第一党になるにしても、党利党略より日本の将来を優先的に考えてくれているところに勝っていて欲しいですよね。

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さて、今回のテーマは「優先度」です。
といっても、政治の話は私の専門外なので、もちろん開発プロジェクトの話です。

プロジェクトを進めて行くにつき、課題は後から後からどんどん増えて行きます。課題が0件のプロジェクトには残念ながらお目にかかったことはありません。一覧に溜まっていく課題の数を毎週数えていると「このプロジェクト、本当に終わるの?」という気分になる事も良くあります。

課題の数を減らす(解決する)にあたっては、一つ一つの課題に優先度を付けて、その順番に片付けていくのが常套手段ですが、この「優先度」を考えるのが案外難しいのです。理由は、何が優先事項であるのか人によって考えが違う事や、タイミングによって優先度が変わる事が多いためです。その為、優先度を考える際には二つの点に気をつけるべきであると思います。

一つめは、考え方を定義しておく事。

課題一覧の管理項目として、「優先度」「重要度」「緊急度」「影響度」「期限」等を細かく分類管理して出来るだけ正確に書こうと思った事が若い頃にありました。しかしながら、細かく分類管理しているとそれだけで多大な労力を費やす事になり、なにより意味の違いが良く分からずややこしいので、恥ずかしながら、結局途中で一覧のメンテナンスを投げ出した事があります。
そうならない為の一番簡単な方法は、「重要度」と「期限」だけを課題一覧で管理し、その2つの組合せで「優先度(解決の優先順位)」を判断するというやり方だと思います。

「重要度」については、他システムに影響するとか、品質低下を招くとか、要件の実現性に影響する、スケジュール遅延を招く、コスト増に繋がるなど様々な判断要素が考えられますが、それらは課題の中身を説明する欄に丁寧に記載すれば良いので、「重要度」の項目自体は「高中低」等の3段階で十分だと思います。できるだけシンプルに管理できるように定義した方が、本質で無い余計な議論を生みません。

「期限」はそのままの意味ですが、後ろに余裕を持たせる為にも、最初はできれば前倒しで設定しておくのが理想です。肝心の優先度の判断ですが、必ずしも「期限」が早いものが優先度が高いのではなく、「重要度」が高いものは「期限」に余裕があっても優先度が高くなる事を忘れてはいけません。もし重要な課題解決が遅れると、新たな課題・問題が生まれるからです。

二つめは、見直しが大事であるという事。

同じ課題でも状況の変化によって優先度が変わってきます。単純な例でいえば、期限が差し迫ってくるにつれてその課題の優先度は次第に高くなります。(期限が差し迫る前に解決しておくべきである事は言うまでもありませんが。)
他にも、新たな課題Bが見つかったときに、課題Aの解決が前提になるような場合は、課題Aの優先度が前よりも高くなる時もあります。昨日まで優先度「低」だったものが今日は「高」になる事もあるのです。逆もあります。ものすごく重要な課題が新たに見つかった場合、他の課題の優先度を下げる場合もあります。

このように、一度決めた課題解決の優先度は普遍ではなく、時間の経過や他の新たな課題との関連で変わる可能性があるので、定期的に確認して優先度を見直すという事が重要です。優先度の低い課題に人や時間を割り当てたままで、優先度の高い課題を放置する事が無い様に。

二つともごくあたりまえに思えるのですが、一度周りを見渡してみてください。「そんな事考える前に、もっと先にすべき事があるだろう」と思う事は無いでしょうか?。あるいは、誰かにそのように言われた事は無いでしょうか?目先の事にばかりに意識が向かってしまって優先度の考え方そのものが間違っているか、状況に応じた見直しができていないのかも知れません。
限りある時間を効率良く使っていく為にも、課題一覧の優先度、即ち課題解決の優先順位付けを意識してプロジェクト運営に臨んでみてください

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