70代を迎える団塊世代の兆しを探る

2017.01.30 行動観察リフレーム本部メンバー

「きざしレポート」とは

 生活者をとりまく外部環境の変化や、市場のトレンドに着目しテーマを設定。リサーチャーがテーマ周辺の事実(fact)を読み解き、そこに見え隠れする仮説を市場の「兆し」として捉えます。今回のテーマは「団塊世代の兆し」。業界の枠を超えた新たな市場機会発見やビジネス課題設定のヒントとして、ぜひご活用ください。


テーマ設定の背景

 現在70歳前の団塊世代は、日本の人口ピラミッドのボリュームゾーンとして各時代を牽引し、数の力で戦後の新しい文化やトレンドを形成してきた。現在同層では現役をリタイアしているケースは多いものの、アクティブシニアとしてリアルかバーチャルかを問わず、社会やコミュニティとのつながりを強く持っている。

 一方で70歳を目前に控え、経済的な不安、自身や家族の健康問題に直面するリスクも徐々に高まることであろう。そうなったときに、彼らは引き続きアクティブであり続けられるのか、私たちは大いに疑問を感じるのである。

 そこで、団塊世代への調査やインタビューを通して彼らの実態や意識を改めて確認し、結果について独自に考察を加えながら、この世代に芽生えつつある兆しを発見するとともにその対応を検討する。

調査結果(抜粋)

 団塊世代の現状を知るべく、2つの調査を企画実施した。

1.WEBアンケート
インターネット通販利用者アンケート会員に対しての意識と実態調査
 時期:2016年11月
 対象:日本全国の都市部に居住する65歳から74歳の男女400名
 内容:現在の生活意識、外出頻度、現在の心配事、最近5年間および今後5年間の意識変化など

<結果の抜粋>

総じて依然アクティブで積極的かつ前向きに充実した日々を送っていることがわかる。現役意識はいまだ強く、将来的にも社会とのつながりを保ちながら常に新しいことにチャレンジしていきたいという意識も強い。

2.インタビュー/自由記述型アンケート

 ①会場へ直接出向いていただいた上で1名1時間程度の1対1のインタビュー
 ②自由記入型アンケート(エピソードを象徴する写真も依頼した)
  時期:2016年12月~2017年1月
  対象:インタビューおよびアンケート、それぞれ65歳から69歳の男女各2名計4名、合計8名
  内容:5年前と今、5年後の自分を想像してみて、心配事や
アクティブシニアとしてギャップを感じる場面、など

<ポジティブ発言例>
「日本全国の美術館を見たり、社寺巡りなどをして過ごし、ゆくゆくは美術館ガイドや旅行ガイドをしたい」(66歳男性)

「今後自分史を編纂して、自分の生涯青春の姿を子供たちに見せたい」(68歳男性)

「将来寝たきりにならないため、できるだけ歩いて筋力アップ、体力アップを図っていきたい」(67歳女性)

「仕事先から"いつもテキパキしていて助かっています"という年賀状をいただき、とてもうれしかった」(69歳女性)

<ネガティブ発言例>
「旅行は、50代では時間がなくて行けなかったが、今は時間はあるが費用や手間を考えると億劫」(67歳男性)

「スポーツクラブの会員で数年前まではマメに行っていたが、最近は気力がなくなり休みがち」(69歳男性)

「自分や夫がどんな形で年を取るかわからないのでとても不安」(65歳女性)

「以前はショッピングや散歩が楽しくてよく外出したが、最近は面倒になり家にいる時間が多くなった」(69歳女性)

インタビューでは、全体にポジティブで元気な団塊世代の豊かな生活の様子がうかがわれた。料理や読書など趣味は豊富で、語学や教養を身につけることなど向上心も高い。そのための健康の維持増進、体力向上にも積極的に取り組んでいる。旅行、スポーツ、外食などを通して人付き合いも活発である。人によってはボランティアや地域貢献にも積極的で、「他人から感謝されることがとてもうれしい」という趣旨の発言も少なくない。一方、一部には弱気な部分やネガティブな意見も見られた。 これらの結果から、普段はアクティブに過ごしながらも、アクティブな生活に疲れを感じる場面や、将来への不安を感じるケースも徐々に増え始めていることがうかがえる。

きざしの分析

 私たちは、アンケートやインタビューを通して感じられた元気でポジティブな実態や意識の中に、微かに見え隠れするアクティブ疲れや不安に注目し、以下の分析から兆しの抽出を試みた。

・WEBアンケートの質問項目の中から、気持ちの変化と将来への意識に関わる60項目を選んで因子分析を実施。

・同集団に共通して観測される4つの因子について、インタビュー結果とあわせて分析し、4つの兆しとしてまとめた。

「枯れ知らずスーパーシニア」の兆し
社会とのかかわりを強く持ちながら今後もアクティブであり続けようとする兆し

「自分中心肉食老人」の兆し
社会貢献より自分の趣味や向上を優先しようという兆し

「不安いっぱい疲老人」の兆し
疲れ気味で今後への不安が増大する兆し

「引きこもり孤独老人」の兆し
社会とのかかわりが薄く屋内で過ごす時間が増えてくるという兆し



上記の兆しのそれぞれの特徴とインサイト、さらに、一人のシニアに複数の兆しが混在する状況や、そこから考察されるコンフリクト、ビジネスチャンスについても分析し、資料にまとめました。資料をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

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