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[ かんたんUML ]


『かんたんUML』とは?

 最近のオブジェクト指向技術における一大事件──。それは,UML(Unified Modeling Language:統一モデリング言語)によるモデル表記法の標準化です。

 オブジェクト技術は,現実の世界をモデル化するものであり,人間の思考を自然に反映すると言われています。単にソフトウェア開発に有効な技術としてだけではなく,広く一般に有効な思考技術であるといえます。

 しかし以前は,いくつも存在する方法論がそれぞれ独自のモデル表記を使っていたので,オブジェクト指向といってもそのモデルは様々で,コミュニケーションを取るには困難が伴いました。この標準化によってモデルの表現がUMLに統一されます。今後は, UMLを習得すれば,方法論に関係なく成果物(モデル)を理解出来るようになります。また,考えをまとめたり伝えたりするときのツールとしても使えます。

 この本は,そんな統一モデリング言語(UML)についての入門書です。対象となる読者は,情報技術(IT)産業に従事する経営者・管理者からソフトウェアエンジニアまでと幅広く,オブジェクト技術などの知識を持たない人でも理解できるように,全章にわたって易しく解説されています。また,ソフトウェアエンジニアにとってはUML技術者認定試験のための「UML練習帳」的な参考書・問題集でもあります。

 監修はオージス総研の社長である千藤雅弘氏です。今年5月に行われた「ObjectDay」に参加した際に名刺を頂くことができ,その名刺には UML認定技術者のロゴが印刷されていたので驚きました。千藤社長は,元々は技術畑のエンジニアではなくバイバリの営業マンだったそうですが,独学で勉強して一回で合格したそうです。


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『かんたんUML』の内容

簡単にこの本の内容について触れてみたいと思います。

  • 第1部 小説 UML物語

     2001年の国際企業合併をテーマにした小説で,UMLが経営戦略を担うビジネスモデルとして活用されるという近未来のお話です。もちろんフィクションですが,日米企業間の「差」を痛感させられます。

  • 第2部 ITマネージャのためのUML講座

     ここでは主に経営者・管理者のためにソフトウェア開発の問題点から UMLの意義や目的について説明されています。
     「ITマネージャのための豆知識」は経営者や管理者のためのQ&A集になっています。オブジェクト指向で開発したいけれども,上司を納得させる自信がないというエンジニアの方にもオススメです。

  • 第3部 初級エンジニアのためのUML講座

     UML表記法の簡単なガイダンスとチュートリアルとして「注文管理システム」の開発を例に,オブジェクト指向分析・設計の進め方および実際のモデリングを学ぶことが出来ます。このチュートリアルと同様のものがWebでも公開されています(注1)。

  • 第4部 UML技術者認定試験対策

     Web上でUML技術者認定試験を無料で受験することが出来ます。ブロンズ(初級),シルバー(中級),ゴールド(上級),プラチナ(最上級)の4つのレベルに分かれています(現在の認定試験はブロンズレベルのみですが,近々シルバーレベルも開校するようです)。
     ここでは認定試験の対策として,例題および模擬試験から本番の認定試験と同様の問題で演習することができます。

  • 付録 UML最新仕様と今後の動向予測

    年内に正式に承認される予定のUML1.3(現在はUML1.1)での変更点について,重要なポイントが易しく説明されています。


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    感想

     この本の残念なところは,書店でコンピュータあるいはソフトウェアの棚に陳列されてしまっていることです。対象読者がエンジニアだけではないのに,これでは経営者や管理者などの目に止まるチャンスが少ないのではないでしょうか。またこの本は,出張の移動時に新幹線や電車の中で読むのに適していますが,カバンに入れるにはちょっとサイズが大きく,かさばってしまいます。せめてビジネス書のようにA5サイズだったらと思います。

     私はこの本の「小説 UML物語」を読んでオブジェクト指向を用いたビジネスモデリングに興味が湧いてきました。オブジェクト技術を用いたビジネスモデリングやBPR(Business Process Reengineering)に関する書籍は既に存在していますが,正直言って現時点では企業合併にUMLを使うなんて想像も出来ません。しかしオブジェクト技術の潜在能力の高さを考えると,ひょっとすると本当にそうなるかも知れないという気もします。手始めに,本棚の隅で埃を被っていた『コンバージェント・エンジニアリング入門』(デビッド・A・テイラー著)を読み直してみようと思いました。

     また今後,上位のUML認定試験(シルバーレベルなど)の開校にあたっては,中級編・上級編などの続編の発行を期待します。


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    まとめ

     この本はあくまでUML入門書です。既にオブジェクト指向技術および UMLに ついて理解のある方にとっては,退屈なものになってしまうかも知れません。 腕に覚えのあるソフトウェアエンジニアの方は,まずUML技術者認定試験(ブ ロンズレベル)を受験してみることをお勧めします。
     この試験でミスなく合格できるなら必要ないかも知れませんが,間違ったり迷ったりするようならきっと役に立つはずです。また,新人エンジニアへの UML教育の教科書としても最適です。

     この本では,様々な角度からUMLについて解説がなされています。オブジェクト技術やUMLについて興味はあるが,何から勉強していいのか迷っている方には,エンジニアであるかどうかを問わず,最適の一冊です。


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    (番外編)UML技術者認定試験に挑戦!

     実際に,認定試験を受けてみることにしました。この本の受験対策の効果を試してみたかったからです。
    といっても実は,この試験を受けるのは初めてではありません。昨年 9月にUML技術者認定試験がWebで公開されるとすぐに受験しました。その時はいくつか間違えながらも,なんとか合格できました。
    それから1年近くも経っていますが,今回は全問正解での合格を目標に掲げました。とはいえ,かなり不安一杯です・・・。

     まずは「基本例題」からです。実際にやってみると,結構苦戦します。8割程度の正解率でしょうか。よーく解答の説明を見直してから(^^;;今度は「模擬試験」をやってみました。
    「完璧だ!」と思いましたが,解答を見て採点してみると,残念ながら1問不正解がありました。やっぱり全問正解は難しいかも・・・。

     いよいよ「本番(受験)」です。UML認定技術者認定制度のWebページから“チャレンジ”を選んで試験に進みます。始めてみると,先程の模擬試験と同じような問題ばかりなので安心して解答できました。結果は──なんとか全問正解!で合格出来ました (^_^)/~。
    もし受験にためらっているなら,この本を読んで受験してみて下さい。スリーアミーゴのサイン入り認定証はもうあなたのものでしょう。

    (注1) UML技術者認定制度
    https://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/UMTP.html


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