ObectSquare

[自我自賛的お気楽書評]


オブジェクトデータベース(ODB)はどの程度使える?

「来期Javaで再構築する例のシステムで使うデータベース、ちょっと調べてみてくれない?最近、オブジェクト指向データベース(ODB)ってのも出始めてるみたいだし。実際にどれ程度使えるものかっていうのも興味あるしね。」と大切なお客様(注1)から言われたSEのA君。

さて、A君がこれからとる行動を眺めて見ましょう。

「ODBかぁ。Oracleは、何度もプロジェクトで使ったし、あれなら安心(注2)なのになぁ。まあ、仕方がない。いくつか製品をあたって、比較表(注3)でも作ってみるか。」

まずは、手近なところで、社内で定期購読している雑誌をあたります。

「へぇ。確かにODBの記事って結構あるもんだ。お、こっちの雑誌はODBの特集(注4)をやっているぞ。」

A君は、早速、集めてきた記事のコピーをとってファイルします。どうやら、市場に出ている商用ODB製品がいくつかリストアップできたようです。いくつかの記事にはODBを利用した簡単なサンプルコードも載っていました。しかし、残念ながら雑誌記事だけでは、もうひとつピンと来ないようです。

「これだけの記事では、情報量が足りないせいかな。じゃ、それぞれの製品ベンダーのWWWページでも見てみるか。ありゃ、この製品のページはトップが日本語になってるだけで、後は英語ばかり(注5)だ。うーん。めんどくさいなぁ。。しゃーない。帰りに本屋でも行って、もうちょっと詳しい本がないか見てみよう。」

とA君、あっさりと今日の仕事はあきらめて、帰り支度を始めてしまいました。

さて、帰りに寄った本屋では、

「データベースの棚は、、っと。Oracle, Oracle, Oracle,,,,SQL Server SQL Server,,,,Sybase(注6)って、これは全部RDB(か。あれ?ODBの本は??」

しばらくコンピュータ関連のコーナーをさまよったA君。やっとの思いで見つけました。「オブジェクト指向データベース入門(注7)」というタイトルの本があったのはソフトウェア工学と書かれた棚(注8)でした。

「あ゛ーーー。データベースの理論ばかり書いてあるぅぅぅ。」

A君はかなりショックを受けました。以前RDBを勉強したときは、ずいぶん勝手が違います。

「あの親切な、カラフルなRDB本のコーナーが懐かしい!!」

かなりやる気をなくしてしまったA君。結局、こんな報告になりました。

「たしかにいくつかのODB製品が出始めているようですが、どこまで使えるものかどうかはよくわかりません。書籍も理論書が多いようですし、まだまだこれからの技術なんじゃないでしょうか。」

こんなA君。今まで結構いたんじゃないでしょうか?そして、きっとこんな試練を乗り越えて、ODBに期待を持っていただけた方が、オージス総研(注9)ほか、ODBのベンダーや代理店に問い合わせをしてきていただけてたんじゃないかと感じています。


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「ユーザーによる」事例集:「事例で学ぶ オブジェクトデータベース活用技法」

お待たせしました。本の紹介です。「事例で学ぶ オブジェクトデータベース活用技法」は、こんなA君にお勧めです。

内容はというと、世界のODBユーザーによる18編の事例論文集。「ユーザーによる」というのが、はっきり言って、この本のみそです。使われている製品も、我らがObjectivity/DBの他、GemStone, O2, ObjectStore, Versant(注10)と多岐にわたり、それぞれの著者がどのように製品を選んでいったのか、どの製品を使っているときにどのような問題に直面して、どう解決していったのかなどが、具体的かつ詳細につづられています。

もちろん、なぜRDBではなく、ODBなのかという点に触れた論文もあります。

扱われている事例も多方面にわたっています。「実際にどの程度使えるものか」というA君の課題も、これを読めば解決していたでしょう。

面白いのでは、製品の比較ではなく、ベンダーの比較についての記述もあります。その著者は、複数のベンダーと付き合った経験から、それぞれの親しみやすさ、付き合いやすさについて言及しています(注11)

この本がある今ならA君の報告はきっとこうなることでしょう。
「市場には、複数のODB製品が出回っていて、すでに多くの分野で利用されているようです。私たちも時代の流れに遅れないように今すぐODBを採用しましょう。え、もっと詳細な報告ですか?では、この本をご覧ください。(注12)


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最後に

上にも書いたとおり、この本のポイントは「ODBユーザーによる」論文集であるということです。ベンダーからはなかなか出てこない、あるいは出せない情報がたくさん含まれています。また、実際のシステムで利用する場合に必ず出てくる他製品との統合についても多くの著者が触れています。
このような情報は、現在ODBを評価、選択している方だけではなく、すでにODBを活用している方にも有効だと思われます。

ところで、この本はODBの入門書ではありません。ODBの理論が体系だって説明されているわけでもありません。それでもなお、私はこの本をODBにまだあまりなじみを感じていない方にお勧めしたいと考えています。なぜなら、それぞれの論文を書いている著者達も始めからODBのエキスパートだったわけではなく、彼らの実プロジェクトで使いこみ、試行錯誤した経験を、この本にまとめていると思われるからです。決して、軽い本でも読みやすい本でもないとは思いますが、一つ一つの論文を読み進め、取り上げられているプロジェクトを疑似体験していくのは、なかなかエキサイティングな体験です。

翻訳は、オージス総研のエンジニアがよってたかって行いました。Objectivity/DBの代理店とはいえ、(意図しない誤りを除いて)原文の意図に忠実におこなったつもりです。この本で、ODBの認知度が今よりいくらかでも高くなることを願っています。そしてできれば、Objectivity/DBの採用をご検討いただきたく、、、、


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(注1)オージス総研では、現在ISO900シリーズ取得を目指しています。品質方針は、「お客様に満足をしていただくため、優れた品質と高度な技術力を追求します」。というわけで、お客様は大切なのです。当たり前ですね。

(注2)この「安心」。いったいどこから来てるのでしょう?A君(年齢不詳?)にはぜひ若年層をターゲットにしたリストラの波に巻き込まれないよう、気をつけてもらいたいものです。

(注3)製品比較表。プリセールス担当者にとって、できるだけ避けたいけれど、しかし絶対に避けてとおれないもの。製品評価中の皆さん、お願いですから、○×の数だけで決めないでくださいね。

(注4)昨年(98年)だと、DDJ(翔泳社)4月号、JavaWorld(IDG)9月号に大きく取り上げられています。

(注5)ODBに限りませんが、英語ドキュメントには苦労させられますね。まあ、ほとんどあきらめていますが。。ちなみにObjectivity/DBのページは、米国からのニュースリリースをのぞいて日本語です。

(注6)順不同。繰り返しの回数に他意はございませんです。

(注7)特定の書籍は意図していません。念のため。

(注8)本屋の棚配置問題(?)は、今後ぜひ「オブジェクトの広場」でも取り上げていただきたい問題ですね。別にソフトウェア工学の棚でも間違いじゃないんだけど、それじゃ、あんまり人目に触れないし、読んでもらいたい人に気づいてもらえないんですよぉ。ちなみに、邦訳のタイトル「事例で学ぶ〜」の決定プロセスはマーケティングの事例になるのではないかというくらい白熱したものでした(大げさ)。

(注9)しつこいようですが、Objectivity/DBの代理店です。よろしくお願いします。

(注10)順不同(アルファベット順)です。こういうところには、やはり気を遣ってしまいます。

(注11)こういう点も含めて製品の選定をされているということで、製品のベンダー、代理店としては息が抜けません。

(注12)このように、ぜひ社内で3冊、個人で1冊とお求めください。ちなみに印税は私の手元には入ってきません。


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