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[シリコンバレー放浪記]


シリコンバレー放浪記 連載第1回

こんにちは、はじめまして。
私はこの10月から、スタンフォード大学の共同研究員ということでアメリカでの生活をはじめることになりました。今まで海外と言うと旅行程度の経験しかなかったのですが、「アメリカ行ってみる?」と聞かれて、サンフランシスコ=49ers の本拠地 --> 本場でアメフトが楽しめる!、程度の気持ちで赴任を受けてしまいました。今回の赴任では、約1年こちらで過ごす予定になっています。現在入社3年目で、この赴任の前までは一貫してSIをやっていました。
このコーナーでは私がシリコンバレーで感じたことや、聞いたことについて気の向くままに筆を走らせてみたいと思います。とはいえ、アメリカやシリコンバレーに関するニュースは、他にたくさんいいサイトがありますので、このコーナーではそんなには触れません。どちらかと言うと、シリコンバレーの生活に密着した話をしていこうと思います。

今回は第一回ですので、私が今通っているスタンフォード大学について軽く書きたいと思います。
スタンフォード大学はサンフランシスコから約50Km南の Palo Alto 市にあります。この Palo Alto 市からもう少し南にある San Jose 市までの一帯がいわゆる「シリコンバレー」と呼ばれる地域です。

MainQuad
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私は来年の秋までこのスタンフォード大学で過ごすことになります。立場としては、企業から派遣された研究員(私のような共同研究員はコンピュータフォーラムだけで約20人います。日本の企業の方が多いです)となります。共同研究員の場合、基本的には授業等もないので研究に専念できますが、通常の学生はそういうわけにはいきません。当然ですが研究以外に授業を受けなければいけません。

GreenLibWithHoover
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アメリカの学生は日本の学生に比べるとよく勉強する、といわれていますが、もちろんスタンフォード大学の学生も非常によく勉強しています。だいたい、図書館が夜の12時まで利用できるというあたりから信じられません(少なくとも私が通っていた某大学では、夕方あっさりと閉まっていました)。しかも、この図書館が曲者(?)で、単に夜遅くまで利用できるだけではなく、環境面でも優れています。勉強するための机があるのは日本も同じですが、その机にちょっとしたパーティションみたいなのがついていて、一台一台が独立したつくりになっているのです。これは集中して勉強がしたいときには大変助かります。しかも、図書館のいたるところに個室があり、グループや個人で利用することもできるのです。ここは大学か?と思いたくなるようなお金のかけ方をしています。それで、実際ここの学生はよく図書館を利用していると思います。休みの日に行っても、沢山の学生が図書館で勉強をしています。自分が大学にいたころに比べると、反省することしきりですね。シリコンバレーがこのようにめざましい発展を遂げたのもうなずけるってもんです。ちなみに、このすばらしい図書館ですが、私はまだ活用できていません...

さて、話は変わって、私が指導を受けている先生の研究についてちょっと話したいと思います。
私の先生はもともとAIの研究をなさっていた方なのですが、最近はエージェント思考について研究をなさっています。といっても、かなり実践的な研究をなさっていて、エージェントをどのように経済に応用していくか、といったことがメインテーマになります。現在先生が最も熱心に取り組んでいらっしゃるのは、複数参加者が複数の出品物について争うオークションについての研究です。この場合エージェントは、参加者の代理として他のエージェントとオークションで競い合うことになります。最初アメリカにくる前に、エージェントの研究と聞いて、”エージェントとはなんぞや”といったような基礎的な研究か?、と思っていたのですが、実際には現実世界を想定したかなり実践的な話でびっくりしました(先生は”エージェントとは”といった基礎的なことはそんなに重視してないようです)。

実践的といえば、私の先生が指導をしている学生を集めて週に一回行うミーティングもひとつの良い例だと思います。そのミーティングではお昼にみんなで軽食を取りながら2時間ほど、お互いの研究についての発表をしあいます。
このミーティングの参加者は私のような共同研究員や、学生(普通の学生もいれば社会人学生もいます)なのですが、研究についての発表を1時間した後、残りの1時間でその時々の適当な話題を取り上げてみんなで議論します。この世間話のような会話が非常に面白いです。例えば、IT産業が経済に与えている影響だとか、インターネットを使った電子商取引がどのくらい普及していくか、などが話題になります。こういった話題では、やはり実社会に出たことのある人の方が活発に意見を出すのですが、学生にとってそういった人たちの話を生で聞けるのは非常によいことだと思います。大学の研究では、ともすれば理論にのみ走りがちになりますが、こういった社会人からのフィードバックがあることで、社会に出た経験のない学生でもより実践的な研究ができるのではないかと思います。ちなみに、この軽食のお金というのは政府関係から出ているそうです。草の根の産学官協力ですね。

また、現状を考えれば当然といえば当然なのですが、このミーティングでは、現在のIT関連の今後についての話も取り上げられたりします。例えば、今の景気はまだ続くの?、とか、今騒がれている電子商取引って本当にはやるの?、などです(こういった質問は学生から出ることが多いです)。そういったばあいの答えはもちろん、YES。
みんなIT産業の先行きについては軒並み強気の意見を持っており、多少過熱気味であることを承知しながらも、後5年はこの調子でいける、と考えているようです(この辺、うまく表現できないのですが、「昼の12時になったらランチを食べる」、というのと同じくらいの感覚で、「IT産業はまだまだいける/まだこれからだ」と思っている感じです)。

景気といえば、スタンフォード大学もこのIT産業の好景気の恩恵をちゃんと受けています。もっとも端的なのは建物でしょうか?私が勉強しているコンピュータサイエンスの建物は、「William Gates Computer Science」 Buildingですし、最近隣には新しく「David Packard Electrical Engineering」 Buildingもできました。「Paul G. Allen Center For Integrated Systems」Building なんてのもあります。実際これらの建物の中には日本企業の寄付でできた部屋も多数あるのですが、やはり個人名で建物を建てるあたり、米国のお金持ちってすごい、て感心してしまいます。
皆さんも、将来成功した暁には、大学に建物のひとつくらいぽーーんと寄付してみてはいかがでしょうか?

それではまた来月お会いしましょう。

DavidPackard
DavidPackard

by iwade@亜米利加



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