アジャイルモデリング(AM)
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変更案の概要

by Scott W. Ambler, Copyright 2003

変更案(change case)(Bennett 1997)とは、システムに対して今後発生する可能性のある要求事項や、既存の要求事項に対する変更を記述するためのものです。変更案のモデリング方法は簡単です。既存の要求事項に対して想定しうる変更を記述し、その変更が起きる可能性と、その変更による影響を示します。図1には2つの変更案が示されています。1つめは技術の進歩(この場合はインターネットの利用)が原因となって発生する可能性のある変更、2つめはビジネス環境の変化によるものです。どちらの変更案も短く要領を得ていて、理解しやすくなっていることに注目してください。変更案の名前は、想定しうる変更自体を表すものにするべきです。

図1. 変更案

変更案: 登録を完全にインターネットで行う

可能性: 2、3年以内は中程度。10年以内ではかなり高い。

影響: 不明。9月からオンラインでの登録が可能になるが、現在のところ、今年のインターネットによる登録は全体の1/4以下であると想定している。利用ピーク時期(各学期の授業が始まる前の2週間と始まった後の1週間)のレスポンス時間が問題になるであろう。

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変更案: 大学の新しいキャンパスが開かれる

可能性: 確実。2年以内に町の反対側に新しいキャンパスができることが発表されている。

影響: 大。学生はどちらのキャンパスのクラスにも登録することができる。両方のキャンパスで教える先生もいる。コンピュータ科学や哲学といったいくつかの学科は、授業全体を新しいキャンパスに移す予定である。おそらくほとんどの学生は、2つのキャンパスのうち片方だけのコースを取りたいと考えるだろうから、それを簡単にサポートできるようにする必要がある。

 

変更案は開発作業全体を通して明らかにしていくことができますが、私の場合はアーキテクチャモデリングに注力しているときに作成する傾向があります。変更案はたいてい、プロジェクトの利害関係者と行うブレーンストーミングの結果として作成されます。考慮すべき問題には次のようなものがあります。

  • ビジネスはどのように変わる可能性があるか
  • 自分の組織の長期的な構想はどのようなものか
  • どの技術が変わる可能性があるか
  • どの法律が変わる可能性があるか
  • 競争相手は何をしているか
  • どのシステムとやりとりする必要があるか
  • 他の誰がシステムを使う可能性があるか。どのように使うか

私の経験から言うと、変更案は非常にアジャイル(機敏)なやり方で使うことができます。第1に、変更案を使うことで、システムがサポートする必要があるかもしれない長期的な問題や変更の可能性について考慮することができます。その結果、どのプラットフォームを使うかなどといったアーキテクチャ上の判断をより適切に下すことができ、最善のアプローチを採用できる可能性も高くなります。そうすれば、自分が選択したアーキテクチャについてあまり心配しなくてすむのでシステムを必要以上に作り込もうとする気持ちも薄れます。第2に、変更案を使うことで、自分の下したアーキテクチャ上の判断が正しいと主張することが簡単になります。広範な問題について考慮したと示すことができるからです。それによってチームが耐えなければならない政治的な駆け引きが少なくなり、より多くの時間を、出席するミーティングにではなく実際のソフトウェア構築に割くことができるようになります。第3に、きわめて可能性の高い変更案が明らかになった場合には、利害関係者と相談して単なる普通の要求として記述することができます。利害関係者はいつものように要求に優先度を付け、チームはそれに合わせて要求を実装することができます。アーキテクチャは本当の要求にもとづいて作成するべきです。そうでなければ、利害関係者にとって実際には必要でない「かっこいい」機能でシステムを飾り立ててしまう危険があります。

 

注: この成果物の説明は『The Object Primer 3rd Edition: Agile Modeling Driven Development with UML 2』より抜粋しました。本ではより詳しく説明しています。


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