UML 2 相互作用概観図の概要

by Scott W. Ambler, Copyright 2003

UMLの相互作用概観図 (interaction overview diagram) は、制御フローを概観するためのUMLアクティビティ図の変化形です。図1に示すのは、ゼミに登録する場合の相互作用概観図です。図に書かれたノードは、アクティビティ図に表す通常のアクティビティではなく、枠 (frame) です。ここには2種類の枠が書かれています。UMLの相互作用図(シーケンス図、コミュニケーション図、タイミング図、相互作用概観図)のいずれかを表す相互作用枠と、呼び出すアクティビティや操作を表す相互作用発生 (interation occurence) 枠です。この図には2つの相互作用枠が含まれています。ゼミに登録する資格を学生が持っているかどうかを判断するシーケンス図を表すものと、ゼミに空席があるかどうかを判断するコミュニケーション図を表すものの2つです。これらの枠には、ダイアグラムの種類(シーケンス図の場合は「sd」、コミュニケーション図の場合は「cd」、タイミング図の場合は「td」、相互作用概観図の場合は「iod」)と、オプションでダイアグラムの名前が書かれています。相互作用発生枠には「ref」と書かれていて、通常名前は書きません。呼び出されるアクティビティや操作の名前から、何が行われるかは明らかだからです(明らかでなければ、名前のつけ方を考え直した方がよいでしょう)。

図1 ゼミに登録する

★== sd Enroll In Seminar: sd ゼミに登録する lifelines: 生存線 Student: 学生 Seminar: ゼミ Course: コース Enrollment: 登録 Select Seminar: ゼミを選択する sd Determine Eligibility: sd 登録資格を判定する isEligible: 登録資格があるか getPrerequisite: 受講実績を取得する [Not Eligible]: [登録資格がない] cd Determine Seat Availability: cd 空席を判定する number Enrolled: 登録済みの人数 [seat Available]: [空席がある] [No Seat]: [空席がない] AddToWaitingList: 登録待ち名簿に追加する Enroll In Seminar: ゼミに登録する ==★

この図の他の表記法はお馴染みのものです。ひし形で表された分岐点は、UMLアクティビティ図とまったく同じ使い方です。分岐点から出ていくフローには本来ならすべてにガードを付けなければならないのですが、見れば分かるようにこの図では、意味が明白な場合にはガードのラベルなしで済ませています。思い出してください。アジャイルなモデルは完璧である必要はなく、そこそこ役に立てばいいのです。所要時間に関する制約(「{0..7 msec}」)は、他の種類の相互作用図と同じ表記法を使って書かれています。開始点と終了点は、UML状態マシン図やUMLアクティビティ図の初期状態や終了状態と同じ表記法です。

相互作用概観図というのは興味深い概念ではありますが、実際に使えるかというと疑問です。相互作用枠はスペースが少なすぎてほとんど使い物になりません。枠内に書くことのできる図は小さすぎて役に立ちません。世の中では相互作用概観図が見捨てられて、代わりにUMLアクティビティ図が使われるのではないかと私は疑っています。相互作用概観図はホワイトボードには書きにくく、CASEツールのベンダーが別の図を使ってアクティビティの詳細を記述できるようにすることは簡単だからです。私は間違っているかもしれませんが、そのうちに分かるでしょう。

注: この成果物の説明は『The Object Primer 3rd Edition: Agile Modeling Driven Development with UML 2』より抜粋しました。本ではより詳しく説明しています。

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