ObjectSquare [2010 年 11 月号]

[レポート]


青いボタンでコンテスト

「青いボタンで...」コンテスト本選レポート

株式会社 オージス総研「青いボタンで...」コンテスト事務局 木村めぐみ


「青いボタンで…」コンテストはオージス総研が初めて開催した学生向けコンテストです。 そもそもはオージス総研社長の平山が「うちでコンテストをしよう」と発案したのがきっかけでした。 その背景には、将来 IT 技術者となる若い学生の皆さんに柔軟で大胆な発想力を駆使してソフトウェアの新たな可能性にチャレンジして欲しい、コンテストを通じて将来ソフトウェアの世界で活躍する日本を代表するような技術者が出てきて欲しい、という思いがありました。 その思いを胸に、社内有志をはじめコンテスト運営スタッフが「青いボタンで...」コンテストの開催に向けて準備を進め、学生の皆さんに応募いただき、今回の本選に至りました。

「青いボタンで...」コンテストは、青いボタンと連動するソフトウェアのアイデアを募りそのアイデアを審査する、といういたってシンプルな、でも何が出てくるか予想できない、主催者側としてもワクワクどきどきなコンテストとなりました。 2010 年 7 月のエントリー開始からスタートし、書類による応募、書類審査を経て本選出場作品を決定しました。 そして、書類審査を通過した 7 作品 7 チームは 10 月 13 日にオージス総研本社 ICC ビル(大阪市西区)で開催した本選に出場し、各作品 20 分間のプレゼンテーションによって最終審査に臨みました。 最終審査結果は本選当日に発表され、 5 作品の受賞が決定しました。

本レポートでは、受賞した 5 作品のアイデアの内容紹介を中心に本選の様子をご報告します。

[ 2010/11/11update ]
受賞チームにご協力いただき、コンテスト応募の際に提出いただいたソフトウェアの「アイデアを説明する文書」をご覧いただけるようになりました。 各作品の説明の最後に「アイデアを説明する文書」へのリンクを追加しています。



受賞作品のご紹介

優勝

チーム 「 OSO 」
タイトル 「 OSO - 果てしなく続く青いボタン - 」

同志社大学大学院工学研究科 佐々木 亮太さん、岡田 裕さん、長村 篤記さん

優勝チームOSO

OSO は自身の思考をログに残す「ライフログシステム」です。 「時間駆動」と「 Chance 」という新しい概念を用いて感動の記録を支援します。 例えば、あなたが旅先で花火大会に行ったとしましょう。とても美しい情景です。この感動を残したい。 そんな時、 OSO の青いボタンを押すだけで場所と時間が記録されます。 もしその時、そばにいた人もボタンを押していればその人の情報も記録されます。 その場では美しい花火を堪能し、旅から帰った後ゆっくりと記録すればいいのです。 いつどこで誰と、という情報があれば旅の記憶を思い起こすことは容易でしょう。

青いボタンに込めた思い

コンセプトは「果てしなく続く青いボタン」。 青がイメージする空、海から「永続性」というイメージをボタンに込めました。 ボタンを押すことをきっかけに、自身の思考をログに残し、自分を成長させ、その結果を永く連鎖させる仕組み、それが「 OSO 」です。

ライフログシステム OSO

OSO ボタンを押して同期すると地図上に表示された[右写真]

OSO を押そう

OSO は持ち歩きできるデバイス「 OSO Button 」と Web アプリケーション「 OSO Web App 」という 2 つのツールで構成されます。 「 OSO Button 」はパソコンと USB 接続して「 OSO Web App 」と同期します。

「 OSO Button 」の使い方はいたって簡単、感動した瞬間に青いボタンを押すだけです。 ボタンを押すと、時間と場所が「 OSO Button 」に記録されます。 この時、もし近くにボタンを押した別のユーザがいたら、 Bluetooth 通信でお互いのユーザ ID が自動的に交換されます。 この「すれ違いプロフィール交換」をしたユーザ同士は「 Chance 」というグループを形成します。 例えば街のカレー屋さんでカレーに感動したあなたが、同じくカレーに感動したイチロー選手とつながる可能性もあるんです。

「 OSO Web App 」のトップ画面には地図が表示され、ボタンが押された時間と場所が表示されます。 ボタンが押された時間を軸に情報を整理できるのでこの仕組みを時間駆動と呼んでいます。 Web App 上では記事を投稿したり、「 Chance Members 」の記事を閲覧することができます。 「 Chance Members 」の記事を閲覧できるのはすれ違った日だけ。 SNS のコミュニティなどとは異なり、継続する人間関係を気にする必要はありません。 本当の気持ちを記録することができるでしょう。


自身のログを取り続けることがより簡単にできるように、また、多くの人が自分自身とより向き合い成長して行くことを願って考案された作品でした。
詳しくは応募の際に提出いただいた以下の文書もご覧ください。

アイデアを説明する文書「OSO - 果てしなく続く青いボタン - 」 (PDF: 約 1.8MB)


準優勝

チーム 「 MI3 」
タイトル 「いらポチ」

同志社大学工学部 今井 祐介さん、石川 勇樹さん、今入 康友さん
同志社大学経済学部 田中 志樹さん

準優勝チームMI3

「いらポチ」は"いらいら"という感情を世界に伝える青いボタンを持つシステム。 いらいらというネガティブな感情をポジティブな形に変換し、いらいらを和らげ、よりよいコミュニケーションを実現することをコンセプトとしています。

青からイメージしたもの

青いボタンは感情を世界に伝えるボタン。 青からイメージするものは空、海、地球、幸福、爽快感、青ざめた顔、涙・・・。 青は人間のポジティブな感情やネガティブな感情を象徴するものと考えました。 いらいらは何かに前向きに取り組もうとしている人間の原動力を奪い、人間関係や幸福を奪うことにもなります。 そこで、いらいらを世界に伝えていらいらを緩和し、加えて人間関係もより良くしていこうと考えました。

いらいらコミュニケーター

いらポチは「いらいらコミュニケーター」というペン型の専用デバイスと iPhone アプリで実現します。 いらいらした時に、普段はペンとして使用している「いらいらコミュニケーター」の先に装着した青いボタンを押すと、いらいらの測定ができます。 測定したデータは Bluetooth で iPhone と同期し、 iPhone アプリ上でいらいらの可視化、いらいらの共有を行います。

いらいらコミュニケーター 思いやり機能

いらいらコミュニケーター[左写真]と、思いやり機能を使って A 君(右)を思いやる B 君(左)の実演[右写真]

「いらポチ」 3 つの機能

いらポチはアンガーマネジメントの理論*1に基づいて以下の 3 つの機能を提供します。

・いらいらの測定
青いボタンを押した回数や強さを数値化して測定します。
・いらいらの可視化
測定した"いらいら"をアバター「ポチ」の顔色で表現したり、マップ上にグラフを表示することで可視化します。 いらいらの感情を客観的に見ることができます。
・いらいらの共有
Twitter 連携機能によりアバターが自動的にいらいらをつぶやきます。 アバターが代理でつぶやくことでネガティブな印象を和らげることを狙っています。 もう 1 つが思いやり機能。 この機能については実際にプレゼンで披露されたコント(?)を再現してご紹介しましょう。

A 君「最近、なんかいらいらするなー。先生の授業もよう分からんし、どうにかならんかなー。」
がっくりしながら A 君がいらいらコミュニケーターの青いボタンをポチポチ・・・
B 君「なんか A 君最近いらいらしてるんじゃないかなぁ。そういえばシェイクという機能があったな、使ってみよう。A 君、がんばれ。」
とつぶやきながら B 君が iPhone をシェイク。すると A 君の青いボタンが光る。
A 君「あ、ボタンが光ってる!誰か分からんけど僕を思いやってくれてるんや。もうちょっとがんばってみようかな♪」

*1アンガーマネジメント:欧米では、犯罪者の更生プログラムの一環としてすでに普及している概念。 「怒り」や「いらいら」といった、マイナスの結果をもたらしがちな感情をコントロールし、よりよいコミュニケーションを築くための知識・技術。 参考文献:『アンガー・マネジメント―アメリカ・エグゼクティブの間で爆発的に普及!イライラ、ムカムカを一瞬で変える技』 安藤俊介(著)

「いらポチ」はいらいらを可視化していらいらと向き合うきっかけを創造します。 思いやり機能など新しいコミュニケーションを実現してよりよい人間関係を構築できるでしょう、と発表を締めくくりました。
詳しくは応募の際に提出いただいた以下の文書もご覧ください。

アイデアを説明する文書「いらポチ」 (PDF: 約 0.7MB)


エンターテイメント賞

チーム 「 c-lover 」
タイトル 「手の中のセカイ、わたしたちの世界。」

関西大学総合情報学部 泉本 優輝さん

エンターテイメント賞 c-lover

この作品は現実世界と仮想セカイの行き来を体験し、人と人のつながりを再認識してもらうことをコンセプトとしたメディアアートです。 普段ゆっくり空を眺める余裕がない人も、この作品を通じて何かを感じてもらえるといい。 でも、要は楽しめれば OK です。

仮想セカイと現実世界

青いボタンは地球を意識し、地球儀を模した作りをしています。 この地球儀は仮想セカイです。 初めはスクリーン上に作品名がプロジェクションされているだけです。 ところが地球儀に人が近づくと、地球儀は人の動きを感知して仮想セカイのざわめきを流し、近づいた人に主張を始めます。 近付いた人が地球儀に触れると地球儀は青色に光りだし、プロジェクションした青空がゆっくりと流れ出し、現実世界の人々のつぶやきが青空の上を流れていきます。

現実世界の人々のつぶやきは TwitterAPI を利用して Public なタイムラインから世界中の人々のつぶやきを取得して表示します。

地球儀を模した青いボタン 青空に流れるつぶやき

地球儀を模した青いボタン[左写真]と、スクリーンに映し出された青空の上を流れる人々のつぶやき[右写真]

孤独感を感じている人が多いという現在。 この作品を通じて人とつながっていることを再認識してもらえるのではないでしょうか。 実際に展示する場合は、青空は天井にプロジェクションし、ゆったりとソファに座って体験してもらうことを考えているそうです。
詳しくは応募の際に提出いただいた以下の文書もご覧ください。

アイデアを説明する文書「手の中のセカイ、わたしたちの世界。」 (PDF: 約 12.6MB)


社会貢献賞

チーム 「一日一善製作委員会」
タイトル 「一日一善」

神戸情報大学院大学 林田 敦さん、村田 智哉さん、黒田 城次さん、鈴木 圭祐さん、三宅 秀明さん、松浦 圭祐さん、東 昌輝さん

社会貢献賞 一日一善製作委員会

「一日一善」は、人々の善意による行為を共有することで、人のこころの温かさを感じ、 ほっととするような心の余裕を感じてもらうためのソフトウェアです。 善意による行動を行い、その情報を共有して、新たな善意による行動、つまり善意の連鎖が生まれることが社会全体を活気づける原動力となるでしょう。

青とボタンの効果

水をイメージする青には心を穏やかにする心理的効果があります。 ボタンは、あるとつい押したくなる衝動に駆られます。 青いボタンをインターフェイスにすることで、日常的な利用を促進し、植物に水を与えるように、心に潤いを与えるソフトウェアにしたいと考えました。

一日一善のつかい方

落ちていたゴミを拾った、電車で席を譲った、など、なにか善意ある行動をしたとき「一日一善」の「いいひとボタン」を押します。 すると「いいひとMAP」上に双葉マークの「想いの芽」が表示されます。この「想いの芽」は「一日一善」の利用者全員が見ることができます。 「想いの芽」に対してエピソードを入力したりコメントを書きこむこともでき、善意を通じたやりとりが可能です。 さらに、自身の投稿履歴を閲覧できるので、行動を振り返ってまたやってみようという気持ちになることができます。

現在は Android 搭載スマートフォン上で実現していますが、利用者数の拡大を図るため、今後は iPhone や他社携帯からも「一日一善」を利用できる仕組みを提供したいと考えています。

善意ある行動 いいひとボタン

プレゼンで流れたショートムービー[左写真]と、いいひとボタン[右写真]

今後の展望として、一日一善をテーマとしたボランティアイベントを開催して人々のふれあいの場を提供したり、一日一善に賛同した企業があれば「想いの芽」100個につき1苗のような形で寄付してもらい、現実世界でも芽を増やすことができれば夢がある・・・。 他にもたくさんの展望が語られました。
詳しくは応募の際に提出いただいた以下の文書もご覧ください。

アイデアを説明する文書「一日一善」 (PDF: 約 2.2MB)


創意工夫・技術賞

チーム 「 NEWEST 」
タイトル 「位置記録システム ケルン」

和歌山大学大学院 海老原 健一さん

創意工夫・技術賞 NEWEST

行動を記録できる新しいシステム、位置記録システム「ケルン」。 「ケルン」はボタン 1 つでいつでも気軽に、直感的に行動を記録することができます。 文字を入力したり面倒な入力操作はしなくても「ケルン」を動かせば、どこで何をしたかを記録できるのです。

ケルンとは

ケルンは山頂や登山路に道標や記念として置いていく石のこと。 このシステムでは石を置いて道標をつけるように、動作によって行動を記録します。 行動の記録は加速度センサと GPS が入ったキーホルダ型の手のひらサイズの独自端末または iPhone 、 Android 端末で行い、サーバに情報を格納してクライアントから情報を閲覧します。

ジェスチャーで記録

位置情報を記録するには、「ケルン」のボタンを押しながら、あらかじめ自分で設定しておいた特定の動作(ジェスチャー)をするだけです。 加速度センサを用いて向きの方向を 3 種類に分類して動作を判断できることを実証済みです。

ケルンのイメージ 加速度センサ

ケルンのイメージ[左写真]、加速度センサ[右写真]

ケルンの応用

独自端末「ケルン」で登録した情報は「ケルン」で利用するだけでなく他のサービスからも利用できるようにしたいと考え、サービスのAPI化を検討しています。 例えば位置情報に加えて写真や音声なども登録できるサービスや、ある時期の釣り属性を検索すると適した釣り場所を探すことができるケルン付箋などもおもしろいでしょう。 娯楽性が高いところで言うと、位置情報をもとに音を鳴らすケルン MUSIC なども考えています。 操作が簡単なので介護や学校の現場で使ってもらうことも可能です。 多くのサービスに対するケルンの可能性が挙がっていました。

詳しくは応募の際に提出いただいた以下の文書もご覧ください。

アイデアを説明する文書「位置記録システム ケルン」 (PDF: 約 0.3MB)




さいごに

では最後に、コンテスト事務局スタッフとして本選を見守っていた私から、本選の様子をご紹介してレポートを終えたいと思います。

本選スタート!

本選では各作品、発表 20 分間と質疑応答 10 分間の合計 30 分が持ち時間でした。 プレゼンの順序はくじ引きで決定。 作品ごとに 15 分間の休憩を挟み、 11 時半から 16 時半まで 7 作品の発表が続きました。 参加者のみなさんは他の作品の発表も聞いておられ、長時間の戦いです。 最初の発表が始まるまでの待ち時間は、こちらも緊張するほど会場内がシーンとしていたものの、発表が始まるとプレゼンターの話術につられて笑いが起きたり、休憩時間に参加者同士で会話が生まれたり、主催者側としてほっとする光景が見られました。

当日は皆さんの熱気のせいか、クーラーを調整しても室温はなかなか下がらずまさに汗にまみれた戦い。 若いパワーを感じました。

くじ引き 審査員質問中

プレゼンの順序はくじ引きで決定[左写真]、作品ごとに審査員による質問が飛び交う[右写真]

いよいよ審査へ・・・

16時半、予定通り全作品の発表が終了し、5人の審査員は審査のため別室へ。そして、いよいよ受賞作品が決定します。 この間、参加者の皆さんは懇親会場で社員技術者を交えて歓談しながら審査結果を待ちました。

審査結果発表

社長と審査員 5 名が懇親会場へ入場し、いよいよ審査結果が発表される時間となります。 会場には社内の音楽コミュニティ有志が作成した BGM 「威風堂々」が流れ、厳粛なムードの中、発表に移りました。

・・・受賞作品は上でご紹介したとおりです。 審査結果が発表された後は、審査員も交えて参加者の皆さんと歓談が続きました。

審査中 平山社長 懇親会

審査中[左写真]、学生の皆さんに向けて社長の平山がメッセージを伝える[中央写真]、社員技術者も交えた懇親会[右写真]


以上が本選の様子です。 本選に参加された皆さん、本当にお疲れ様でした。 また、本コンテストに応募して下さったすべての皆さん、お疲れ様でした。 皆さんに応募していただいて初めてコンテストは成り立ちます。 全力で戦っていただいた皆さんに心から感謝の意を述べたいと思います。 ありがとうございました!

さて、来年もコンテストを開催する予定です。学生の皆さん、どうぞお楽しみに!



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