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らぼなび!

第 1 回 東京大学大学院 情報理工学系研究科 本位田研究室の巻

本位田 真一 教授, 石川 冬樹さん (D3), 松崎 和賢さん (D3), 丹羽 智史さん (M2)

教授と学生のお写真

記念すべき第1回目の「らぼなび!」は 東京大学大学院 情報理工学系研究科本位田研究室におじゃましました。本位田研究室はエージェント指向の研究で有名で、最近ではスマーティブというプロジェクトで行っているエージェントフレームワークの研究が注目されています。

とても活発な研究室で、学生の皆さんが非常に研究熱心でした。研究室内での活動だけにとどまらず、論文誌や国際会議での研究発表もさかんに行われているそうで、今回インタビューした修士課程 2 年目の丹羽さんは、インタビューの翌週にはラスベガスで国際会議に出席だとか。

最先端の研究を続ける本位田研究室の本位田教授と学生 3 名へのインタビューです。本位田研究室の研究に対する思いや夢をお伝えしたいなと思います。



本位田真一教授

本位田真一先生

国立情報学研究所(NII)は情報学に関する幅広い研究をしている所ですね。

-- まず、国立情報学研究所という組織について教えていただけますか。本位田研究室は、東京大学大学院に属しているそうですが、国立情報学研究所の研究室でもあるんですよね。

国立情報学研究所は、2000 年の 4 月に設立された文部科学省にとって唯一の情報学に関する研究所です。現在、教員の数は約 80 名。基本的にはコンピューターサイエンスを含む情報学一般を研究していますが、人文社会系のことや、量子コンピューティングなどの基礎的な研究もやっています。情報に関して幅広くやっているという研究所ですね。

前進は学術情報センターというところで、私もそれまでは東芝におりましたが、研究所ができるっていうことで移ってきたという経緯があります。


ハードの進歩に追いついていないソフトをなんとかしたい

--- では、先生の研究の概要について教えていただけますか。

私は、ずっとソフトウェアエンジニアリングをやってきてまして、この 10 年ぐらいはエージェント指向(*1)を研究しています。エージェントの定義も色々あるんですけれども、私は基本的にはオブジェクト指向の次の技術という観点でエージェント指向を捉えています。つまり、オブジェクトがソフトウェアシステムの構成要素でモデリングする際の観点であるように、エージェントをソフトウェアシステムの構成要素のひとつとして考えています。

*1 ソフトウェアの構成単位を「ユーザの代理人(エージェント)」として捉え、システムを構築しよう、という考え方。「もの(オブジェクト)」を構成要素として捉えるオブジェクト指向の次のパラダイムとして関心を集めている。

--- エージェント指向を推されている理由は何でしょうか。

本位田教授

ハードウェアはどんどん進歩しているんですが、それにソフトウェアの方が追いついていないというのが現状であると考えています。進歩する新しいハードウェアに対して、それにマッチするソフトウェアを作っていかなきゃなんない。でも、ソフトウェアの作り方・モデリングの仕方・構成法っていうのが、十分追いついていないという状況です。その答えになるのが、エージェント指向だと考えているんです。

これをちゃんとやらないとですね、せっかくハードウェアがどんどん進歩しても、やはり世の中にとって使い物にならないシステムになってしまう、そういうことなんです。

-- 新しいハードウェアというのは、具体的には何でしょうか?

グリッドだとか、センサーネットワークだとか……具体的には、家庭内にある情報家電ネットワークとかです。家庭内と家庭内がシームレースに繋がるシームレスコンピューティングなんかを考えるとき、セキュリティー要件が非常に大事になってくるということですね。あとは、いろんな機器同士が柔軟にうまくつながるとか、そういった、これまでになかった要件が必要になるハードウェア状況を考えています。

そういうハードウェアを考えるときに、自律的に動くエージェントが有効だと考えている訳です。


人を育てるのが好きなんですよね。

--- 先生は企業から大学に移られたわけですが、こちらへ移ってこられた理由は何でしょうか。

東芝時代と今とで状況が変ったところはないんですが、じゃあ、どうして移ってきたかというと、今の研究スタンスを継続したかったからです。なんていうのかな…やっぱり、私は人を育てるのが好きなんですね。それは私のミッションだと思っていまして、これまでもそうした技術者・研究者を育ててきました。

でもまぁ企業の場合、どうしても年取ってゆくと直接技術者・研究者と話し合う機会が少なくなって、管理者と話し合う機会が増えてくるんです。私は管理者を育てるのは興味はない。やっぱり、研究者・技術者を育てる方に興味がある。それを継続しようと思うと、大学の方がよいと考えた訳です。

学生には自信を持ってもらいたい。

本位田教授

--- 学生が本位田研で学んでもらいたいこと、将来どういった人になって欲しいかというお考えをお聞かせください。

いろんな観点があると思うんですけど、一番言いたいことは自信をつけて欲しいなということです。自信というのは、できないかもしれないような難しい仕事にも、「チャレンジして、自分で絶対できるんだ」というその自信です。

大事なことには、人間力だとか、交渉力だとか、協調性とかありますけれど、でもそれよりも以前に、やはり自分でちゃんと、納期どおりに結果を出すということ、それが大事ですよね。で、結果を出すために何が必要かって言うと、やはり自信なんですよね。

--- 自信を持ってもらうっていうのは、自然と持つわけではないと思いますが、どういったご指導をされておられるのでしょうか。

やっぱり成功体験を持たせてあげることですよね。卒論・修論とかっていうのは、その体験のひとつだと思うんですよ。例えば、卒論は 4, 5 月にテーマを決めますが、こんなこと出来るのかな? と思いますよね。それまでは問題を与えられて、それを解いてきました。でも卒論は、場合によっては、自分で問題を見つけなくてはならない。その問題を解けるかどうかもわかんない。でもそういった不安感の下で研究を続けて、12 月、1 月になるとまとまってくるんですね。それ、ものすごい達成感ですよね。そういうのを卒論・修論を通じて、きっちり学んで欲しい。そういった成功体験がやっぱり自分の自信に繋がってゆくんですね。

--- なるほど。その他に先生が指導される際に気をつけておられることはありますか?

この研究室では特に、国際会議とか、論文誌での発表を強く奨励しています。これってまぁ、純粋な考えではないかもしれませんけれど、自己アピールできるわけですね。例えば世界の国際会議の場で発表するとかすると、そこに自分の名前が載るわけですね。これってものすごい自己実現ですよね。研究っていうネタを通じて、自分をアピールできる。その達成感ってすごく大きいと思うんですよ。それをやっぱり、研究の中で、しっかり体験して欲しいなと思っていますね。

日本人だけでやってもしょうがない...

--- 国際会議で思い出しましたが、この研究室は留学生もたくさん受け入れておられるようですね。やはり海外との交流を意識されておられるのでしょうか?

留学生をどうして受け入れているかというと、まぁ日本人だけでやってもしょうがない訳ですね、特にこれからは。普段から英語でのディスカッションに抵抗感がなくなるようにして欲しい。様々な国の人と気楽に話してゆける、ディスカッションできる。学生時代からきちっとやろうということで意識しています。

それから、学生同士でのディスカッションの場を設けているのですが、英語でのプレゼンテーションをしています。この研究室にはポスドクで外国人の方が多いんですね。そういった中で発表を練習しています。毎週持ち回りで。いわゆる普通の研究室のセミナーを英語でやっています。


トップ SE を育てようと思っているんですよ。

本位田教授

最近 Top SE というプロジェクトを進めているんですよ。これはですね、ソフトウェア技術者教育、それも、これは超エリート教育なんです。非常に高度なソフトウェアエンジニアリングに関する技術を理解させようというものです。

--- 面白そうですね。具体的には何をされているのでしょうか。

ソフトウェアツールの使い方を理解させます。どうしてそれが必要かっていうとですね、ソフトウェアツールっていうのは、例えば、モデル検査とか VDM とかそういった形式手法に関しては、やっぱりコンピュータサイエンスの知識が必要になってくる訳です。でも、それを理解した上で、具体的な自分の問題にツールをどう適用するのかいうところが、世界的に非常に欠けているんですね。

そういった先進的なツールを理解することによって、モデ リング能力だとか抽象化能力っていうのを身に付けさせようということです。 昨年からやっているんですが、まぁ今後 10 年かけてコレをきっちりまとめて ゆきたいなという風に思っています。

--- これは企業に入るトップ SE を育てるという取り組みですね。

そうです。なんでもかんでも優秀だと、プロマネにしてですね、金勘定させる、人の管理させるっていうんじゃなくて、やはり私としては、技術で日本は勝負していかなくちゃなんないとしょうがないなと思います。

--- 技術のまま上がれるキャリアパスが必要だと言うことですね。

そうですね。

--- では先生、今日は貴重な時間ありがとうございました。

ありがとうございました。

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本位田研究室の学生紹介

本位田研究室で研究に取り組んでいらっしゃる、修士課程 2 年目の丹羽さん、博士課程 3 年目の松崎さん、石川さんの 3 名にお話をうかがいました。

最先端の研究テーマ

-- 本位田研究室のメインテーマは「エージェント指向」ということですが、皆さんは、具体的にはどんな研究をされているのでしょうか?

丹羽さん

丹羽さん

僕は Web フィルタリングの研究をしています。

日々生み出される膨大な Web ページの中から、質の高いページや自分の好みにあったページを抽出するシステムの開発を目指しています。

昨年は、 「Web Page Recommender」 という研究[1]に取り組んでいました。 ユーザが普段利用している Web ブラウザのブックマークは、そのユーザの好みを凝縮したようなものですよね。 そのブックマークをインプットとして与えることで、ユーザはどんな好みを持っているのかを解析し、 最近のホットトピックの中から、ユーザの好みにあったものだけをお知らせする、というシステムです。


松崎さん

松崎さん

私は、ユビキタス対応のソフトウェア開発を楽にする研究[2]に取り組んでいます。

ユーザと非常に近い位置で動作する、ユビキタス環境で動くソフトウェアでは、タイトなレスポンスタイムが要求されますよね。一方で、実験室のレベルから出て社会の中で利用されるには、メンテナンスのしやすさも重要になってきます。

しかし、レスポンスタイムとメンテナンス性の間にはトレードオフが存在します。これに対し、「短期的変化」と「長期的変化」の 2 種類の「変化」を抽象的にモデリングすることで、トレードオフ、すなわちギャップを埋めることができるのではないか、という観点で研究を進めています。

-- ユビキタス環境における「短期的変化」「長期的変化」とは具体的にはどういったものでしょうか?

「短期的変化」とは、ユーザの移動といった、比較的短期間で発生する変化ですね。一方の「長期的変化」とは、3D ディスプレイなどの新しい周辺装置・サービスの登場、といった長い時間で発生する変化です。

アスペクト指向(*2)のようなかたちで、これらの変化への対処を埋め込んであげることで、レスポンスタイムと保守性の両立を実現できるのではないかと考え、フレームワークを提唱・開発しているところです。

*2 ソフトウェアを開発する際の横断的関心事を各々分離させることで、ソフトウェアの再利用性や保守性を高めよう、という考え方。オブジェクト指向を補完するものとして注目を集めている。


石川さん

石川さん

僕は、様々な機能を提供するソフトウェアエージェントが、お互いに必要な機能をもつエージェントをネットワークから探して新しいサービスを作り上げていけるようにするためのフレームワークを構築しています[3]。この研究の成果は、スマーティブ・プロジェクトでも活用されています。

「複数の Web サービス(*3)を、見つけてきて、組み合わせて、1 つのサービスを作り上げる。」という話は以前からよくありますよね。 しかし、サービスを探す方法、例えば、レンタカーサービスであれば、値段を優先するのか、カーナビオプションを優先するのか、というところまでプログラムとして書いてしまうと、非常に複雑になってしまいます。

僕は、サービスの探し方とか、組み合わせる順序などのルールを、後で簡単に変更できるようにするフレームワークを提供することで、この問題の解決を目指しています。

*3 ネットワークを通じて利用できるようにしたソフトウェアの機能。

-- なるほど。エージェント指向のみに限定されているわけではなく、Web 2.0 やユビキタスコンピューティング、サービス指向といった、世の中から注目されている最先端の研究分野に取り組んでいらっしゃるんですね。

石川さん

僕らの学科自体は理学部で、計算論や意味論、といった 基礎研究をメインテーマにしている研究室が多いんですね。 これに対し、本位田研究室では、 もちろん基礎はやるんですけども、その上で応用に取り組んでいます。 ですから、応用を見据えてやりたい、という学生が集まってくるんです。


実際の利用を見据えた研究

-- 皆さんが現在取り組んでいらっしゃる研究テーマによって、我々の社会生活、あるいはソフトウェア開発に、どのような変化が期待できるのか、簡単にお話していただけますか?

丹羽さん

短時間で、面白くて、有用な、Web 記事を、効率的に閲覧できるようになります。 もともと、僕個人の強いモチベーションで研究しているので、研究成果が非常に実用的です。 大きなことを言うと、人々の精神生活の向上に、より直接的に寄与するテーマだと思っています。

現在は Web のパーソナライゼーションに凄く興味があります。パーソナライズすることによって、人と人の出会いが生まれたりするんですよね。分かりやすい例でいうと、mixi とかそうですし。そういったことをどんどん進めていって、限られた人生の中で得られる全効用を最大化できるシステムを目指していきたい、と思っています。

丹羽さん_2

松崎さん_2

松崎さん

ユーザの携帯端末は非常に画面が小さく、リソースも限られているので、 近くに大きなモニタなんかがあったときには、 そちらの画面でアプリケーションの一部、あるいは全体を映せると便利ですよね。 こういったユーザの移動等の短期的な変化に対し、 一時的な、仮想的な拡張をしてあげられるようなソフトウェアの開発が容易になります。

また、ユビキタス環境を構築する周辺装置・サービスは進化・変化していきますよね。そういった長期的な変化にも、ソフトウェアは対応しないといけないのですが、その対応に要する負荷を、私の取り組んでいる研究によって、減らせるようになると考えています。

実際、世界的にも、 ユビキタス環境の研究に取り組んでいる人達が目指しているものは、 同じようなところに落ち着いてくると思うんです。 自分はそこに流れる水が押し寄せて流れていく最初の呼び水のようなものを、 新しい切り口で 1つ提案できたら良いな、というスタンスでやっています。


石川さん

僕が携わっているスマーティブ・プロジェクトでは、 音楽・動画などのコンテンツを単なるデータではなく、サービスとして捉えようとしています。 データベースの世界では、パーミッションが無いのにデータにアクセスしようとするとデータベース管理システム(DBMS)に怒られますよね。 同様に、番人を付けてコンテンツを出回らせてあげよう、という発想です。

先ほどもお話しましたように、Web サービスは他の Web サービスを部品として取り込みますよね。 同じように、音楽・動画などのコンテンツを部品として取り組むことで、 これまでには無い便利な世界を実現できるようになります。

ユビキタスの話であれば、「プロジェクタ」なんかもサービスとしてラッピングできると考えています。そうすることで、例えば、「特定ユーザから一番近くにあるもの」などの様々な検索条件で、プロジェクタを探せるようになるんです。

石川さん_2


翻訳こんにゃくが欲しい

学生インタビュー風景

-- 本位田研究室では、積極的に国際会議で発表されているそうですね。

丹羽さん

はい。実は僕も、来週、初めての国際会議でラスベガスに行ってきます。ドラえもんの秘密道具の中で 1 つだけもらえるならば、「翻訳こんにゃく」が欲しいですね。

松崎さん

海外発表をどんどんしよう、というのは本位田研究室のポリシーだと思いますね。若いうちに色々な経験を、特に痛い経験を積んでおけ、という本位田先生の方針を感じています。

-- 一方では、海外からの留学生も積極的に受け入れていらっしゃるんですよね?

石川さん

昼ごはんを研究室のメンバーで食べに行くと、半分くらいが外国人ですね。

丹羽さん

研究室に入る 1 年前は英語を喋る、という環境が全く無くて、「喋ろう。」という気さえ無かったんですけども。1 年かけて、本当に、切実に、必要だなぁ、と感じるようになりました。


閉じこもらずに、外の世界との繋がりを大切に

-- 海外留学生以外にも、社会人学生を受け入れたり、産学共同で研究をされたり、と非常に精力的に外の世界と関わりを持っていますよね。

石川さん

大学にこもりっきり、というわけじゃないのもこの研究室の良いところだと思っています。

スマーティブ・プロジェクトでは学生リーダーを勤めさせてもらって、色々な場に関わらせていただいて非常によい勉強になりました。例えばプレスリリースでは、一般の人たちに説明する際には論文発表とは異なった表現にする必要があるんだ、ということを学べました。また、プログラムを外注することもあるので、外注先の人達にどのように指示を出すのか、といったことも学べますね。それから、特許も取りましたし、スマーティブ・プロジェクトをビジネス化していこう、という話もあります。

学生インタビュー風景

松崎さん

3 人一致した見解だと思うんですが、研究室だけでなく外の世界も見れる、この研究室の環境はとにかく素晴らしいものがありますね。

石川さん

また、面白いところでは、企画力・提案力を鍛えるべく、 1 人の発表を全員で徹底的に批判するゼミを開いたりもしています。 研究って、人に見せる、人に評価されることが、前提にあるじゃないですか。 この研究室に在籍することで、「客観的に見る」ことの重要性を感じるようになりました。


社会をより良くしていきたい

-- 将来はどのようなことをされたいと考えていらっしゃいますか?

丹羽さん_3

丹羽さん

Google の創業者 セルゲイ・ブリンラリー・ペイジ の 2 人を見習って、 研究と仕事のバランスを上手に取りながら、社会に大きなインパクトを与える仕事に関わっていきたいと思っています。

僕にとって、Google の創業者の 2 人は理想のエンジニアなんです。彼らは、技術と研究をもとに、あれだけのインパクトを社会に与えたわけですよね。普通はアカデミックな世界に閉じちゃってて終わり、という研究が多い中。大学院の研究でも、これだけ世界を変えられるんだ、っていう良い例だと思います。


松崎さん

現在取り組んでいる研究テーマでもそうですが、 レスポンス性だけでなく、メンテナンス性も考慮した ソフトウェア作りに寄与できれば、と考えています。

現在の日本では、IT 系の投資はそのほとんどがメンテナンスに回されてしまっていて、新規事業には回されにくい、という状況が続いていると聞きます。僕としては、メンテナンスに必要な投資を圧縮して、新しい、面白そうなところを広げていきたいな、と思っています。どういったかたちで具体化できるかは分からないんですけど、そういった想いを持ちながら、ソフトウェア工学系の話に携わっていきたいですね。

松崎さん_3

石川さん_3

石川さん

ソフトウェアがソフトウェアを使いこなす、という夢の世界を実現したいな、と思っています。将来は、一般ユーザには見えない裏舞台でコンピュータが頑張っている、という世界になって欲しいんですね。

ところが現在では、ユビキタス環境向けのシステム開発は、今回はこう作ろう、今回はこう作ろう、といった感じで場当たり的に作ってしまっています。 この問題に対し、ユビキタスのパターンのようなものを提供できれば、ユビキタス環境向けのプログラミングももっと楽に開発できるようになると思うんです。

-- ユビキタスのパターンとは具体的にはどういったものでしょうか?

石川さん

オブジェクト指向でも、こういうときにはこれを使いましょう、というパターンがあるじゃないですか。ユビキタスのときも、「人の移動を追っかけたいのか。」「モノが来たときに何かしたいのか。」といったパターンがあると思うんですよね。 オブジェクト指向でいうパターンとちょっと違うのは、あらかじめ前処理を作っておけば、後はそれを呼び出し、設定だけ変えてあげるだけで、色々できるようになると思います。そういった基盤を作っていきたいなぁ、と考えています。

デモ

インタビュー後、石川さんを中心に研究グループで開発しているフレームワークを利用して作られた英会話学習の教材システムをデモンストレーションしていただきました。

各生徒の習熟度を考慮したカタチで、生徒同士の英会話をコーディネートする、というシステムですが、内部的には、各生徒のエージェントと担任のエージェントが協調動作・交渉するカタチで実現されています。

デモを拝見させていただき、 既に「研究」というレベルを超え、 通常の実用アプリケーションの域に達していることに驚きを感じました。 実際に利用している学校側での評判も大変良い、とのことです。 また、物理的に遠く離れた教室間でもこのシステムを利用して、生徒同士が会話できるようにする準備も着々と進めているそうです。

単に、理論や論文レベルではなく、実際に利用されることを意識して研究に取り組んでいらっしゃる本位田研究室の基本姿勢を肌で感じることができました。

インタビューを終えて

研究室にて

ソフトウェア業界では、再利用性・保守性の向上や異なるシステム・サービス の結合、優れたユーザエクスペリエンスの実現を目指すべく、エージェント指 向、アスペクト指向、サービス指向、Web2.0 等の技術に注目が集まっていま す。

今回訪問させていただいた本位田研究室では、「現在」ではなく「将来」の世界をより良くするために、これらの最新技術の実用化に向けた応用研究に取り組んでいました。教授、そして学生達の、ソフトウェア業界、引いては社会全体を改善するために研究を進めていこう、というその熱い姿勢に、取材メンバー一同、深い感銘を受けました。

また、研究室全体で取り組んでいらっしゃるスマーティブ・プロジェクトのお話にも大変ワクワクさせられました。エージェント指向の概念を取り組んだ新しいコンテンツの利用形態の提案によって、これまでにはなかった、新しいサービスが実現される日の到来を待ち遠しく感じます。

弊社でも、現場でのシステム開発をより良くしていくため、エージェント 指向などの最新技術の調査・開発を早くから行っております。オブジェクトの 広場の過去記事にもエージェント指向に関する記事がありますので、ぜひご覧 下さい。


研究室情報

研究室名 東京大学大学院 情報理工学研究科 本位田研究室
教授 本位田 真一
主な研究内容
  • ユビキタスコンピューティング
  • Webサービス
  • ソフトウェア工学(オブジェクト指向、エージェント指向、アスペクト指向)
  • グリッドコンピューティング
  • 形式的検証手法
  • コンテンツ流通
Website http://honiden-lab.ex.nii.ac.jp/

リンク・参考資料

インタビュアー

大場 克哉 (おおば かつや): オージス総研 技術部ソフトウェア工学センター。UMLによるSOAのモデリングをはじめSOA実現のための技術開発に従事。2001年から2005年まで米国シリコンバレーのオージスインターナショナルでWeb サービス, SOAに関して現地ベンチャー企業や大学との共同プロジェクトを推進。

(編集: 金子 平祐, 水野 正隆)
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