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[実世界をそのまま表現するモデルとは]


7.まとめ

ここまでの議論をまとめると次のようになります。

分析段階では対象領域を表現するモデルを作りますが、それは必ずしも対象領域のすべてをありのままに表現したものではありません。そこでは次の観点が重要となります。

これらを一言でまとめると、「モデルとは、ある特定の目的をのために、特定の視点から見て関心のある対象だけを抽出した概念を表現したものである」と言うことができます。

さてこのように書いてしまうと、分析という作業が抽象的でとても難しいことのように思えてきた方がおられるかもしれません。
実はこのような概念的なことをあまり考えずに、目的や視点、関心の有無などを考慮しながらモデル化を進めていく実践的な手法があります。

それがユースケースです。
ユースケース分析では、まずアクターを定義してシステムと外部の境界を定めた上で、システムに期待する振る舞いをシナリオとして記述します。このシナリオに書かれている内容には目的、視点、関心の有無がすでに盛り込まれています。このため、このユースケースを元に分析・設計を行えば、システム化の目的から大きくはずれてしまったり、全く関心のない対象をクラスとして導出してしまう危険が少なくなります。

ただし弱点もあります。
ユースケースはシステム全体の機能、振る舞いに着目したもののため、あまりに強調しすぎると特定の機能を実現するためだけの偏ったクラス構造になってしまう危険があります。

この他にも実際にユースケースを使う上では、いくつかの留意点やノウハウなどがありますが、これについてはまた別の機会により詳しく書いてみたいと思います。


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