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[実世界をそのまま表現するモデルとは]


8.モデリングと言葉、そしてUML

最後にモデリングについて、少し違った角度から考えてみましょう。
これまでの話で、対象領域をモデル化するということが、何か特別なことのように思われたかもしれません。

しかし実はよくよく考えてみると、私達は「言葉」という道具を使って、日常的に当たり前にモデリングを行っているのです。
私達は何か身の回りの世界で対象を見つけると、それを「言葉」として認識します。
それはたとえば「部屋」「テレビ」「シャツ」「コーヒー」だったりするのですが、これらは見方を変えれば「空間」「電気製品」「洋服」「飲み物」のように簡単に別の表現に置き換えることができます。
同じ対象でも言葉による表現が変わったのは、別の見方をしたからです。
視点が変われば、表現方法が変わり、その結果として意味する内容も変わるのです。
これはまさしくモデリングそのものです。

それではオブジェクト・モデルと言葉の違いはどこにあるでしょうか?
どちらも「人が認識した概念を表現し、他者とその認識を共有するための手段である」という点では同じです。
ただし言葉はさほど厳密なものではありません。もともと不特定多数の人により自然発生したもので、同音異義語があるように曖昧な点がたくさんあります。人間が大きな誤解なく意志疎通ができる程度に厳密であればよいものです。
反対にあまりに厳密過ぎると流行語などというものはなくなり、かえって面白味がなくなってしまうでしょう。

しかしオブジェクト指向モデルの表現が曖昧では困ります。
言葉にたくさんの外国語があるように、かつてはオブジェクト指向モデルの記法にもOMT法、Booch法、OOSE法、Coad / Yordon法などとたくさんの種類がありました。しかし幸いなことに最近ではUML (Unified Modeling Language)が国際標準になったことで状況は大きく改善されました。

このUMLが「language ? 言語」であると初めて聞いたときには何だか不思議に思ったものでした。
しかしこんな風に考えると納得できませんか?


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