ObjectSquare [2005 年 11 月号]

[書籍紹介]


オブジェクトの広場編集員が贈るオススメ書籍
- 2005年 -

皆さんは、今、どんな書籍を読んでますか?

前回の記事から約一年半が経ち、オブジェクトの広場編集員も新たな仕事や書籍に出会っています。そこで、今回は、前回の記事以降に出版された書籍、過去に出版された書籍で今でもよいと思う書籍の中から、オススメしたい書籍を集めてみました。

少しでも書籍を紹介した編集員の仕事柄がわかるよう、今回も、紹介内容以外の項目として以下の 2 つの項目を設けています。

★★★★★どんな点でこの書籍がすばらしいかをの数が 5 つになるよう表現してもらいました
こんな人です現在の業務・立場を自由に表現してもらいました

全 18 冊の中に皆さんの立場、業務にぴったりの書籍はありますか?


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UMLモデリングのエッセンス 第3版

UMLモデリングのエッセンス 第3版
著者マーチン・ファウラー
監訳羽生田栄一
発行翔泳社
ISBN4798107956

実用的な部分に絞り込まれた UML2.0 のエッセンス。
UML が 2.0 にバージョンアップされたのに合わせて改訂されたものです。

UML2.0 では,従来の図も洗練され,モデル駆動型アーキテクチャ(その一面として,プログラミング言語としての UML)を可能にするために,モデル要素も細かく定義されたり,コンポジット構造図,タイミング図や相互作用概要図といった新しく追加された図もあります。
以前のように,「UML 七つ道具」と呼ぶには少し複雑になっています。

本書は,モデル駆動アーキテクチャを指向したものではありません。
第 1 章「UML の概要」には著者の熱い想いが語られています。プログラミング言語としての UML ではなく,関係者間で相互理解を得る「スケッチとしての UML」の使用に限定して,実用的な部分に絞り込んで解説されています。

モデリング言語としての UML2.0 の情報源として利用したい方は,MDA 関係の書籍をご覧になることをお勧めします。
それ以外の多くの方,例えば UML1.x をスケッチに使ってアジャイルに開発している方,分析から設計初期の段階で UML を効果的に利用したいと考えている方には,効果的に UML2.0 のポイントを習得するのに最適です。

また,UML について初めて学ぶ方には少し難しいと思いますので,簡単な入門書と併せて読まれることをお勧めします。

★★★★★UML2.0 でもこの薄さ(174 ページ)を維持しているところが素敵!
こんな人ですモデルは理解しやすいことが大事!と思うくみこまー。
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UMLによるオブジェクト指向モデリング セルフレビューノート

UMLによるオブジェクト指向モデリング セルフレビューノート
著者荒井玲子
発行ディー・アート
ISBN4886487440

UML で書いたモデルのレビュー方法を解説した本です。自分の作成したモデルをどのように検証してよいかわからない。周りに相談できる人がいないので自分のモデルの良し悪しがわからない。といった悩みを持つ技術者が、この本の対象読者です。
モデルのレビュー方法やモデルの品質検証基準が、数や具体的な項目として挙げられており、自分で自分のモデルを客観的にチェックすることが可能になるでしょう。
要件定義や分析、そして分析を設計に落とす作業で登場するモデルの検証方法が書かれてあり、机の横に置いてモデルのチェックリストとして用いるのに良い本です。ただし、設計モデルの検証はこの本の対象外なのが残念です。

私も普段何気なくチェックしている事柄を整理された気分で、すっきりしました。モデルを書き始めたエンジニアや、モデルをレビューする中堅エンジニアにお薦めの本です。

★★★★★検証内容が具体的でわかりやすい
こんな人ですセルフレビューすることが多い中堅エンジニア

モデルを"構築"するための本が巷にあふれていますが、本書は、そのような本とは違います。本書は、モデルを"検証"するための本です。

本書のよい点は、以下のとおりです。

形式基準でモデルをレビューする場合、ドメインの知識が不要です。モデルの記述内容に閉じた範囲で、モデルを評価すればよいのです(もちろん、モデルは、内容基準も満たさないといけませんが)。

これまで、UML で書いたモデルに対する形式基準さえ、あまり紹介されていませんでした(皆無ではありませんが)。その意味で、本書は、モデル評価基準をコンパクトに整理している画期的な本です。モデル評価用の辞書として、本書を購入しても損はしません。

★★★★★薄さの割に含蓄に富む本
こんな人ですビジネスと情報システムの接点について深く語れる人になりたい
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UML2 for Dummies

著者Michael Jesse Chonoles, James A. Schardt
発行Hungry Minds Inc
ISBN0764526146

タイトルを直訳すると、「サルでも分かる UML 2」。その名の通り、UML についてとっても丁寧に説明してくれる書籍です。

英語で書かれているのが難点ではありますが、サルでも分かるほど優しい英語 & 説明です。やたら小難しい用語ばかり並べている下手な日本の入門書籍よりは、こちらの書籍の方が断然分かりやすい内容になっていると思います。

また、全 400 ページの中には、モデリングのテクニックや注意点、などなど、単なる表記法の解説以上の内容がたーくさん詰まっており、「なるほど、表記法は分かったよ。でもモデルをどう作ればよいのか分からないんだよね。」とお悩みの方にもお薦めできます。

さらに、UML のバージョンも 2.0 にしっかり対応しているので、「1.X までは知ってるんだけど、2.0 はまだ良く分かっていない。2.0 について丁寧に解説されている情報は無いものかのぉ…」とお悩みの方にもこれまたお薦めなのであります。

★★★★★初心者用と侮ってはいけない充実っぷり
こんな人ですUML と出会ってからかれこれ 7 年目の組み込み系エンジニア
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実践的データモデリング入門

実践的データモデリング入門
著者真野正
発行翔泳社
ISBN4798103853

データモデリングの観点から書かれた本ですが、オブジェクト指向モデリングにも参考になる指針が満載です。
特に概念モデルを作成する際の概念の抽出や概念構造の整理をするアプローチはグッときます。データモデリングから学ぶことが多いことを認識させられた一冊です。他おすすめの章は以下です。

モデリングの初心者向けであり、文章や説明も非常にわかりやすいのでサクサク読み進められます。
モデルの表記は IDEF1X で書かれていますが、クラス図に見立てて読んでもいいでしょう。

★★★★★OOA アプローチのヒントに
こんな人です積読本がたまる一方のOOトレーナー
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デザインパターンとともに学ぶ オブジェクト指向のこころ

著者Alan Shalloway, James R. Trott
翻訳村上雅章
発行ピアソン・エデュケーション
ISBN4894716844
原著Design Patterns Explained: A New Perspective on Object-Oriented Design

デザインパターンを使いこなすには、各パターンの特徴をしっかり理解していなければ、思ったような効果を得ることができないと言われています。でも、Gof のデザインパターン本を読んでみても、それぞれのパターンの特徴をなかなか理解できない。そんな悩みをかかえている方に、この本をお勧めします。

本書では、具体的な事例を通して、パターンそのものを導きだすというアプローチが取られています。このため、そのパターンのどういうところが有効で、どういったときに利用すればよいのかが、自然と理解できるようになっています。また、設計を行った後に要求の変更などが発生した場合、デザインパターンを適用していると、どういった方法で、解決できるのかに関しても触れられています。

Gof のデザインパターン本の参考書として持っていると、役立ちそうな 1 冊です。

★★★★★初心者にも優しく、わかりやすい
こんな人ですOO 修行中の 2 年目エンジニア
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パターン指向リファクタリング入門 ― ソフトウエア設計を改善する27の作法

パターン指向リファクタリング入門 ― ソフトウエア設計を改善する27の作法
著者Joshua Kerievsky
翻訳小黒直樹, 村上歴, 高橋一成, 越智典子
発行日経BP社
ISBN4822282384
原著Refactoring to Patterns

あなたのソースコードは可読性・保守性に優れていますか?
いきなり挑戦的な問いかけになってしまいましたが、可読性・保守性に優れたコードを作りたいと考えている方に本書は効果的な方法を提供してくれると思います。

”リファクタリング”とは、コードの可読性・保守性のために積極的にコードを修正する行為です。この”リファクタリング”を解説した書籍の中では、マーチンファウラー著の「リファクタリング」が特に有名ですが、この書籍は、可読性・保守性を下げるコードはどういったもので、またどのように解決していくかということが細かく説明されています。これに対し、本書はデザインパターンを中心にリファクタリングを行っていく方法を紹介しています。どちらの書もかなり実践的な内容となっているので、すぐにでも試すことができます。ぜひ、これらの書を参照し、美しいコード作成を目指してみてはいかがでしょうか。

★★★★★きれい好きなので
こんな人ですお金に非常に疎い3年目の金融系エンジニア

リファクタリングにより、少しづつデザインパターンを適用していく設計方法を詳細に説明した本です。

デザインパターンを覚えたての頃は、パターンの構造の美しさの虜になり、いたるところでデザインパターンを使ってしまいがちです。しかしながら、デザインパターンの適用にはメリット、デメリットがあり、常にパターンを使った設計が最適の解とは限りません。

この本では、初期の設計段階からいきなりデザインパターンを使うのではなく、メリット、デメリットを考慮し、リファクタリングしながら、じょじょにデザインパターンを適用し、設計を進化させていく方法を、懇切丁寧に紹介しています。

ここに書かれているリファクタリングやパターンの適用の手順をそのまま覚えこむのではなく、筆者の思考のプロセスを追いかけながら読むとよい設計ができるようになると思います。

デザインパターンを学んだばかりで、ついついパターンを使いすぎてしまう人やデザインパターンをいつ適用すべきか悩んでいる人にお勧めの本です。

★★★★★デザインパターンとリファクタリングの両方の技術が学べる良書です。
こんな人ですファンキープログラマ
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エンタープライズアプリケーションアーキテクチャパターン

エンタープライズアプリケーションアーキテクチャパターン
著者Martin Fowler
監訳長瀬嘉秀
翻訳株式会社テクノロジックアート
発行翔泳社
ISBN4798105538
原著Patterns of Enterprise Application Architecture

業務アプリケーションのアーキテクチャを検討する際に役立つパターンが満載の一冊。
レイヤ化の話とドメインロジックのパターンはぜひ読んでほしい。O/R マッピングの章は、今話題の Ruby on Rails や Hibernate がどういう思想で作られているのか知る上でとても参考になる。
でも、よほど腕に自身がない限り O/R マッパーを自作しようなんて思わないこと。もはやそういう時代は終わったと思う。
なお、翻訳が良くできているので、原著とあわせて読むことをお薦めします。

★★★★★尊敬すべきオブ脳な著者に
こんな人ですをたくからITアーキテクトへの脱皮を図る30代
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アジャイルソフトウェア開発の奥義 ― 原則・デザインパターン・プラクティス完全統合

アジャイルソフトウェア開発の奥義 ― 原則・デザインパターン・プラクティス完全統合
著者Robert C. Martin
翻訳瀬谷啓介
発行ソフトバンク パブリッシング
ISBN4797323361
原著Agile Software Development Principles, Patterns, and Practices

この本は大きく分けて、「アジャイルなソフトウェア開発」というプロセスに関する話題と、「オブジェクト指向によるソフトウェア設計」に関する話題から成っています。どちらの話題も興味深いのですが、ここでは後者をお薦めしたいと思います。

オブジェクト指向によるソフトウェア設計を話題にするとき、原則(Principles)やパターン(Patterns)は、これまでに幾度も取り上げられてきました。ただ、これらはもともと関連する話題であるにも関わらず、別々に語られることが多かったように思います。この本は、これらをまとめて、絡めて説明してあるというところが最もお薦めするところです。

原則は、オブジェクト指向を使うと何がうれしいのか、そのうれしさを活かすには何に気を付けなければならないのかを教えてくれます。パターンは、原則に従った例であると共に、実際に設計するときにぶつかる問題の、解決のヒントを示してくれます。そしてこの本は、事例を用いて、またコードを示して、これらを分かり易く伝えてくれます。分厚い本ではありますが、見た目通りの内容を、見た目と違って楽に、楽しく学べるでしょう。

より良い設計をしたい方、オブジェクト指向の何がうれしいのだろうという疑問のある方にお薦めです。

★★★★★分厚いだけのことはある内容の充実に
こんな人です踊り場脱出を図るエンジニア
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オブジェクトソリューション ― オブジェクト指向プロジェクトの管理

オブジェクトソリューション ― オブジェクト指向プロジェクトの管理
著者グラディ・ブーチ
翻訳石川克己
発行ピアソン・エデュケーション
ISBN4894716941

オブジェクト指向開発プロジェクトの管理にかかわる実践的なノウハウをまとめた本です。古い本であるため、クラス図のノーテーョンが雲形の Booch 図だったり、開発プロセスの用語が UP とは異なったりするのが難点でしょうか。

おそらく、この本の多くの読者はオブジェクト指向開発におけるプロジェクト管理に興味があるのでしょうが、僕にとって興味深い部分は、オブジェクト指向アプリケーションのアーキテクチャにかかわる記述です。

たとえば、この本の中ではアプリケーションを三つのカテゴリ、ユーザ中心型、データ中心型、計算処理中心型に分類して、それぞれどのようなアーキテクチャをもとにアプリケーションを構築していくべきかが簡単に述べられています。おそらく、このような関心が、現在のアーキテクチャハンドブックの活動につながっているのではないかと思います。

オブジェクト指向開発プロジェクトの管理にかかわる実践的なノウハウとソフトウェアアーキテクチャに興味がある人におすすめです。

★★★★★偶然、手にいれた本ですが非常に面白く、10年近く前にこのような本を書いたブーチに改めてびっくりです。
こんな人ですファンキープログラマ
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C++の設計と進化

C++の設計と進化
著者Bjarne Stroustrup
翻訳岩谷宏
監修επιστημη
発行ソフトバンククリエイティブ
ISBN4797328541
原著The Design and Evolution of C++

近年,私が業務で関わることの多い組み込み分野においても,オブジェクト指向開発が積極的に行われるようになってきました.サイズや速度に対する要求が厳しい組み込み分野では,プログラミング言語として,主に C や C++ が利用されています.

C++ の生みの親である著者は,本書の中で,C++ がどのようにオブジェクト指向プログラミングを実現し,なぜ現在の形になったのかについて,当時の背景に触れながら語っています.例えば,ガーベッジコレクションや事前・事後条件のサポートを言語に取り入れる提案がなされ,結局これらは採用されませんでした.C++ 標準化委員会のメンバは,その提案を取り入れた場合と取り入れない場合を,パフォーマンスや教育の容易さなど,様々な観点から比較・検討しました.本書ではこのような議論が,かなり詳細に紹介されています.なお,本書は技術史物語としても楽しく読めるので,もし,興味をお持ちになりましたら是非読んでみてください.

★★★★★パフォーマンスとわかりやすさの両立への妥協無き追求度
こんな人ですC++ による組み込み分野のオブジェクト指向浸透を Boost させたいと願うエンジニア
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Javaプラットフォームパフォーマンス ― コードレベルのチューニングと開発プロセスへの統合

Javaプラットフォームパフォーマンス ― コードレベルのチューニングと開発プロセスへの統合
著者スティーブ・ウィルソン, ジェフ・ケセルマン
翻訳豊福剛
発行ピアソン・エデュケーション
ISBN4894713934

Swing のパフォーマンスチューニングから得られたノウハウをまとめた書籍です。パフォーマンスというと処理スピードを思い浮かべますが、この書籍では、パフォーマンスを「計算性能」,「RAM フットプリント」,「起動時間」,「スケーラビリティ」,「体感性能」の 5 つのカテゴリに分け、そのカテゴリ毎にパフォーマンスを高めるテクニックを紹介しています。

J2SE 1.3 の頃の VM でパフォーマンスを評価して得られたノウハウなので、今のJ2SE 5.0 では有効でないテクニックも掲載されているかと思いますが、「一般的に最善と思われているプログラミングテクニックであっても無闇に適用すべきではない。性能の最適化を行なう前後で、必ずソフトウェア性能を測定し、その結果を分析すべきである。」という著者の姿勢からは、学ぶべきところは今でも多数あると思います。

まずは、「第1部 戦略」で解説されているパフォーマンスを測定するための指針を読んでみてください。パフォーマンスを向上させたいが、何から手をつけたらよいかわからない方にはきっと役に立つでしょう。

★★★★★パフォーマンスを何とかしたい方へのお役立ち度
こんな人ですアスペクト指向やら、思考法やらと最近興味が発散しているエンジニア
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StrutsによるWebアプリケーションスーパーサンプル

StrutsによるWebアプリケーションスーパーサンプル
著者高安厚思, 西川麗
発行ソフトバンククリエイティブ
ISBN479732963

読者のみなさんの中には、いまさら Struts と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。この本は、Struts の初心者から中級者を対象として、ショッピングサイトや、会議室予約システムといった実践でも使えそうな題材とした、Struts のサンプルコードが、解説つきで記載されています。
この本では、各クラスの関係だけでなく、DB(MySQL)との連携や、Validator の種類などについて、分かりやすく解説されています。この本の良いところは、実装だけでなく、仕様や、設計について解説している点にあります。

これから Struts を学ぶ方だけでなく、Struts の知識を整理したい方にも、オススメです。

★★★★★Struts初心者でも分かりやすく、実践でも役立ちそう
こんな人です営業、ネットワークエンジニアを経て、オブジェクト系SE2年生
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[入門+実践]要求を仕様化する技術・表現する技術 ― 仕様が書けていますか?

[入門+実践]要求を仕様化する技術・表現する技術 ― 仕様が書けていますか?
著者清水吉男
発行技術評論社
ISBN4774125237

この本は,要求を適切に仕様化することで,お客の要求にきちんと応え,仕様漏れや要求漏れなど,要件に関する不具合やトラブルによって失われてしまう時間を獲得するための知恵が詰まった本です。
これにより,デスマーチに陥って終わりの見えないプロジェクトで疲弊することなく,楽しく開発できるだけでなく,「失われずに獲得した時間」によって,新しい設計技術や要件の抽出や分析技術を習得する時間に充てることが出来る。つまり,プロジェクトを成功に導くために必要な,プロセスを改善し,スキルを向上するための最初の取っ掛かりの本なのです。

第 1 部では要求の仕様化に関して,多くの誤解を解き,要求仕様化の効果と要件開発の重要性について解説されています。
第 2 部では,仕様漏れを防止する,要求仕様の書き方について,著者が実際に考え,工夫してきたやり方が惜しみなく解説されています。
第 3 部では,要件を管理し,計測することで,要求仕様を改善し,プロセスを改善し,プロジェクトのブレを逓減していくことやリスク管理への応用について書かれています。

まずは第 1 部は必ず読んで頂くとして,お勧めは以下のとおりです。

★★★★★要求仕様に関する知識,技術が必要にして十分。
ユースケースに関してはあまり多くの説明はありません。
こんな人です著者を師匠と勝手に仰ぐ,中堅くみこまー
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思考・論理・分析 ― 「正しく考え, 正しく分かること」の理論と実践

思考・論理・分析 ― 「正しく考え, 正しく分かること」の理論と実践
著者波頭亮
発行産業能率大学出版部
ISBN4382055415

論理的思考を、考えるとはどういうことか、論理的とはどういうことか、と順を追って丁寧に解説し、その上で、論理的思考の実践としての分析について説明しています。学術書のように難解でもなく、思考ツールの紹介や簡単な例示で終わるのでもなく、理論的でありながらも実践的である、そのバランスの良さがすばらしい本です。

留意点や落とし穴もまとめられているので、実践的な論理的思考の全体像を把握できます。全体像を把握することで、自分が見過ごしていることに気付けると思います。プレゼンやドキュメンテーションで妥当性や納得性に悩んだときなど、この本から多くの示唆を得られるのではないでしょうか。

また、分かるということが、事象の識別とその属性の理解、さらに事象間の関係性の把握からなるなど、オブジェクト指向でのモデリングに通じることが多いのに驚かされました。ディメンジョンの統一、クライテリアの設定、MECE などはモデリングの際の留意点としても役に立つと思います。

ただ、正確さと平易さのバランスに気を付けて書かれてはいますが、ところどころ難しい、回りくどいと感じる表現も見られます。それらに負けずにじっくり読まれると良いでしょう。

分析力を高めたい、問題解決力を高めたいという方、論理的思考について体系的に学びたい方にお薦めします。

★★★★★理論と実践のバランスの良さに
こんな人です踊り場脱出を図るエンジニア
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考える技術・書く技術 ― 問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術 ― 問題解決力を伸ばすピラミッド原則
著者バーバラ・ミント
監修グロービス・マネジメント・インスティテュート
翻訳山崎康司
発行ダイヤモンド社
ISBN4478490279

この本は、いわゆる「文章力向上本」の古典といわれているものです。私はこの本から明快な文章構成とはこういうものだ、ということを教えてもらった気がします。

著者は、ピラミッド原則によって明快な文章を書けると主張しています。なぜ「ピラミッド」なのかという理由の一つには、ピラミッド構造は人間がものごとを整理するときに使用する構造だから、ということが挙げられています。

人間は、まず大きな考えを受け取り、そのあとにその大きな考えを構成する小さな考えを受け取るというやり方がもっともわかりやすい、という筆者の主張は十分に納得できるものです。これは、ピラミッド構造に沿って相手から情報を伝えられると、頭の中で情報を再整理する負担が少ないためだとされています。

ではピラミッド構造で伝えるために気をつけなければならない点は?この本にはそのためのヒントが詰まっています。

文章に限らず、論理的なコミュニケーションが必要とされる方にオススメです。

★★★★★斜め読みでも新しい発見があります
こんな人です文章よりもコードを書くことが多い 2 年目
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日本のSEはこれからどうなるのか

日本のSEはこれからどうなるのか
著者萩原佳明
発行翔泳社
ISBN4798108065

日本人のソフトウェアエンジニアについてどう思うかというテーマで、いろいろな国や職業の人へのインタビューをまとめた本です。

何年も日本のソフトウェア業界に身をおき、仕事を続けていると、この業界の常識や文化に染まってしまい、発想がせまくなりがちです。しかし、外の世界を見てみると、別の考え方や生き方があることにあらためて気がつくはずです。

この本には、韓国、中国、インド、モンゴル、モルドバのソフトウェアエンジニア、元銀行家、元家電プログラマ、農家、建築士、漫画家、手品師、クラシック作曲家、弁護士、在英の日本人プログラマ、40 歳をすぎていきなり転職したプログラマ、大学生のプログラマへのインタビューが掲載されています。僕自身は、外国人のエンジニアと他業種の人々が参考になりました。表紙のスージー甘金のイラストもいい感じです。

自分の進むべき方向性について迷いを持っている技術者にお勧めです。

★★★★★企画もインタビューもすばらしい
こんな人ですファンキープログラマ
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The Little Schemer

The Little Schemer
著者Daniel P. Friedman, Matthias Felleisen
Duane Bibby
発行Mit Pr
ISBN0262560992

Lisp の方言のひとつ Scheme の入門書です。ただし、文法ではなく、Lisp 的な考え方を身につけるための本なので、簡単な文法は別の本で学んでおいたほうがよいでしょう。

この本の特徴は、非常に簡単な問答の、しつこいぐらいの繰り返しで構成されていることです。一問一問は簡単ですが、それらをクリアしていくうちに、いつの間にか Lisp の特徴ともいえるリストや再帰プログラミングの知識が身につきます。

僕は、Emacs Lisp を少々いじる程度の Lisp プログラマですが、最初はなかなか C 言語的なスタイルから抜けきれませんでした。通勤中の電車の中で、この本を少しづつ読むことによって、再帰プログラミングの気持ちがわかるようになりました。

英語で書かれていますが、中学生レベルなので苦にはならないと思います。普段、使っているのとは異なるコンピュータ言語で軽く遊んでみたい人にお勧めです。

★★★★★簡単で楽しい、でも Lisp の気持ちがわかるようになる本です。
こんな人ですファンキープログラマ
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アラン・ケイ

著者アラン・C・ケイ
翻訳鶴岡雄二
発行アスキー
ISBN4756101070

「未来を予測する最良の方法は、未来を創りだすことだ」有名なアランケイの言葉です。この本はそのアランケイがパーソナルコンピュータ等の概念を発表した当時の論文等を集めたものです。

「ダイナミック・メディア」ではメディアを作ることができるメディア、つまりメタメディアとしてのパーソナルコンピュータ(=ダイナブック)の定義が述べられています。

「マイクロエレクトロニクスとパーソナルコンピュータ」ではダイナブックを実現する手段としてのハードウェアやソフトウェア(Smalltalk)について述べられています。

「コンピュータソフトウェア」はオブジェクト指向に関する解説です。ユーザ(プログラマという用語は慎重に避けられている)の表現能力を拡張させる手段としてのオブジェクト指向について述べられています。単なる生産性以上のことを考えていたようですね。

「教育技術における学習と教育の対立」は、コンピュータを利用した教育についての講演です。この章は、短い中にアランケイの考え方のエッセンスがつまってて面白いです。

「評伝アランケイ」は訳者による解説です。アランケイの経歴等が解説されています。時代背景を知ることができて興味深いです。

これらの論文は 30 年近く前に発表されたものですが、その考えは今読んでも全く古びてないし、原典にあたるという意味でも重要だと思います。絶版でしたが再発されてよかったです。まさに古典のひとつでしょう。

★★★★★オブジェクト指向の源流に触れる本
こんな人です最近OO厨に回帰しようかなと考えてる人
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