ObjectSquare [2011 年 6 月号]

[レポート]


Android資格受験記

株式会社オージス総研
組み込みソリューション第二部 第二チーム
三橋 雅典

先日、Androidの資格試験『Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシック』に合格しました。本記事では、筆者がAndroidに初めて触れてから試験に合格するまでの学習記録を報告します。


■ 試験概要

Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシック

Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシックは、一般社団法人Open Embedded Software Foundation(OESF)が実施する『Android技術者認定試験制度』の試験の1つです。OESFは、Androidを組込みシステムで利用することを目的とし、その標準化、共同開発、普及促進を図る法人です。Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシックは、Androidアプリケーション開発に必要なスキルを習得しているかどうかを認定するための試験です。試験の概要は次のとおりです。

上記は、2011年6月現在の情報です。試験の最新情報については、OESFの公式サイト(https://www.oesf.jp/ace/)をご覧ください。


■ 受験結果

1回目の受験で、正答率76%で合格しました(合格ラインが70%なので、結構ぎりぎりですね)。試験後に貰えるスコアレポートに、分野別正答率が載っていて、以下のとおりでした。


■ 学習記録

もともとJavaの知識はあったのですが、Androidには触れたことがありませんでした(所有携帯は、スマートフォンではなく遥か昔のカメラ無しモデル)。Androidの学習を始めてから、試験に合格するまで、だいたい1ヶ月半くらいでした。その間に、次のような学習を行いました。

  1. 対策問題集×3周(約3日)

    『Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシック対策実践問題集』 Androidアプリケーション技術者認定試験対策委員会(日経BP社) ISBN:978-4-8222-0296-5

    1周目は通しで解いてみて、日をあけて2周目をやり不正解の問題に付箋を貼っていき、3周目は付箋を貼った問題だけやりました。

  2. 公式サイトの模擬試験(約30分)

    OSEFのWebページから、『模擬試験チャレンジ』を行うことができます。10問しかありませんが、試験の雰囲気はつかめます。2回やりました。

  3. Android入門書3冊(約1ヶ月)

    1. 『Android2.1プログラミングバイブル』 布留川 英一(ソシム) ISBN:978-4-88337-707-7

      初級向け。環境セットアップ、Hello Worldの作り方、あとAndroidの基本的なAPIの使い方が載っていました。広く浅くという感じで、Androidでできることをざっと俯瞰するには良いのではないでしょうか。コンパクトにまとめるためだと思うのですが、クラス分割がなく、画面レイアウトをXMLでなくJavaソース内で構築しています。

    2. 『コードからわかるAndroidプログラミングのしくみ』 フランク・アブルソン、チャーリー・コリンズ、ロビ・セン(日経BP社) ISBN:978-4-8222-8409-1      

      中級向け。画面遷移、DB、ネットワークなどを活かした、もう少し複雑なアプリケーションの作り方が載っていました。例題アプリは、天気予報やレストラン検索など、WebからXMLを拾ってきて加工するものが多かったです。実用的なアプリケーションを見てみたい方にはイメージが湧きやすいのではないでしょうか。コードの全文は載っていませんが、Webサイトからダウンロードができます。筆者は1から自力でフルスクラッチで書いてみたいと思い、この本に結構時間をかけました。

    3. 『入門Android2プログラミング』 Mark Murphy(翔泳社) ISBN:978-4-7981-2032-4

      中級向け。内部設計にかなりこだわって深堀りしていて、ためになりました。お試しアプリではなく、実際に業務・商用アプリケーションを手掛ける際にはこのレベルまで知っておきたいなと思いました。こちらの本は狭く深くという感じで、環境のセットアップ手順などの説明はありませんが、アーキテクチャが丁寧に説明されていました。

  4. オージス総研トレーニング『Androidアプリケーション入門』受講(1日)

    自社でAndroidアプリケーション開発研修を提供していて、そのリハーサル(2日間コースを1日に圧縮したもの)を受講することができました。実装済みのクラスやメソッドを活用してAndroidアプリケーションを完成させていくという、実案件に近いスタイルになっていました。入門書ではなかなかお目にかかれない、Androidアプリケーションの内部設計書(設計モデル図)を見ることができたのも収穫でした。


■ 学習の目安

筆者と同じように「Javaは知っているけれど、Androidは初めて」という人は、速い人だとAndroid入門書2週間+対策問題集3日で合格できるかもしれません。しかし合格ラインが70%とややきついので、学習期間は長めに取るほうが良いと思います。類似問題も結構出題されますので、問題集はやり込んだほうが有利です。知識問題が多く、現場での実装経験がなくても十分に合格は可能です。試験の全体的な雰囲気は、Javaのエントリ試験(SJC-P)に似ているなと感じました。Java未経験の方は、Androidの前にJavaの基礎を学習してから挑んだほうが、途中でつまずかず飲み込みも早いと思います。


■ 試験の感想

全体的な難易度は、対策問題集と同じくらいだと感じました。試験時間は90分ありますが、筆者は40分くらいで解き終わり、見直し時間を入れて60分弱でした。実装スキルは、2〜3画面の小規模アプリが作れる程度でしたが、試験で特に困ることはありませんでした。開発ツールやコマンドに関する問題でやや取りこぼしが目立ったので、知識として知っているだけでなく、それらのツールやコマンドを実際に叩いておけばよかったかなと思いました。試験問題集はすぐに答えを覚えてしまうので、1回やったら少し日をあけることをお勧めします(人間の脳って、よくできていますね)。


■ 日記

ここから先は、筆者がAndroidの学習を始めてから試験に合格するまでの日記です。

☆月8日 上司から、「今度Androidの案件にアサインするので、よく勉強しておくように。」とのお達しを頂く。
☆月9日 初めてAndroidに挑戦。『Android2.1プログラミングバイブル』という本を購入して、サンプルコードを打ちながら読み進めた。環境セットアップ、HelloWorld、あとAndroidの基本的なAPIを広く浅く。画面の作り方がAWT/Swing風で、Javaの中でもクラサバのクライアント側に近いようだ。
☆月10日 『Android100% vol.2』というAndroid携帯のカタログ雑誌に目を通す。編集部オススメアプリはコレだ!みたいな記事が載っていて、Windows95の頃のフリー/シェアウェア黎明期にもこんな雑誌あったな〜と思った。
☆月13日 駅前のドコモショップでGalaxy Sに機種変更した。入門書を見て書いたアプリを動かすつもりで購入したが、エミュレータ上で動かしてばかりいたので、結局この実機の出番は最後までなかった。だからAndroid携帯持ってなくても資格は取れると思います。
☆月15日 Androidの資格試験があると知り、本屋で『Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシック対策実践問題集』をぱらぱらとめくってみた。知識問題のボリュームに若干引いてしまい、(まあ、必要になったら取ろう。うん。)と思ってこの時は買わなかった。
☆月16日 2冊目『コードからわかるAndroidプログラミングのしくみ』に取り掛かった。1冊目のアプリはボタン押下など1アクションで処理が終わるシンプルなアプリが多かったが、この本はもう少しリッチなアプリを作る。プロキシ回りの設定がわからなくて苦戦したが、実際にクラウドデータが画面に表示されるとやはり手ごたえがあって嬉しい。
☆月28日 自社で『Androidアプリケーション入門』という研修のリハーサルをするというので、受講させてもらうことができた。入門書は1つのクラスにコードを全部詰め込んでいることが多いので、機能やMVCで分けられた設計モデルは参考になった。
△月1日 先日の研修講師に、「Androidの資格あるよ。取らないの。」みたいなことをちらっと言われる。「いや、まあ…受験料を会社の経費で出してくれるなら…もごもご。」と言葉を濁したつもりが、速攻でOKが返ってきてしまった。フラグが立った瞬間である。
△月4日 『Androidアプリケーション技術者認定試験ベーシック対策実践問題集』を買ってきた。暗記することも多くて大変だが、ツール・テスト・配布のことなど入門書で扱っていないことも結構あった。なので、まあ知っていて損はないかと思って3周くらい回したらほとんど答えを覚えてしまった。
△月5日 資格のことをネットで検索しても、実際に受験した人の情報(体験記など)が全然ない。
△月7日 試験対策に疲れ、3冊目の『入門Android2プログラミング』に現実逃避した。踏み込んだ内部設計をしていて、興味深く読み進めることができた。
△月10日 プロメトリックのサイトで受験申し込みをした。試験日は△月26日、試験会場はギンザグラッセ。予約カレンダーを見ると、土日なら1週間後、平日なら3日後くらいから空きがあるようだ。遅めに予定を入れるあたり、自信のなさが現れている。
△月26日 試験会場はギンザグラッセという商業施設の5FにあるPCスクールだった。1時間半くらい前に着いてしまったので、6Fにあるカフェに行ったら、店員がタキシードに蝶ネクタイとかしてるハイソな所だった。完全に場違いである。アウェイである。銀座で受験する人は注意してください。(タルトはおいしい)
さて肝心の試験は、CBT方式といって、パソコンの画面に問題が表示されて答えをクリックして進めていくタイプである。メモ用のA4ボード1枚とペンを渡されてテストルームに入室する。パソコンにログインして、いざ、試験開始!いきなり1問目2問目が難しい。ま、まじですか…と焦ったが、その後の問題は対策問題集と同じくらいの難易度だった。A4ボードは特に使わなかった。40分くらいで一通り解き終わり、見直しをして60分くらいで席を立った。点数が画面に出ず、受付で貰うスコアシートを見るまで合格かどうかわからない。受け取ったスコアシートは…76%で合格と書いてあってほっとした。ヨカッタヨカッタ。

以上です。試験に関心のある方に、少しでも参考になれば幸いです。 拙いレポートでしたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


: トレーニングコース『Androidアプリケーション入門』の詳細は、こちらの紹介ページをご覧ください。(Androidアプリケーション技術者認定試験の対策コースではないので、ご注意ください。)



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