[レポート]
OGIS International, Inc.
大場 克哉
3月25日から29日まで、サンフランシスコ、モスコーンセンターでJavaOneが開催されました。例年は6月ころの開催が今年は3ヶ月ほど早くなり、桜が咲く中での開催となりました。
私にとっては、昨年につづいて3回目の参加になりますので、昨年との比較も含めて、レポートしたいと思います。もっとも、一参加者として、自分の業務や興味に従ってまわっただけですから包括的なレポートにはなりません。JavaOne全般について、情報を得たい方は、本家のサイトや新聞、雑誌系のサイトをご覧ください。
さて、初日朝9時半からはじまる基調講演へ向けて、私は8時前に現地に到着するように家を出ました。9時半からの講演に、8時到着は少し早すぎると思われるかもしれません。実は昨年は9時頃にのこのこと出かけていったのです。そして私をまっていたのは、モスコーンセンターをぐるりと一周する長蛇の列。わたしは、とぼとぼと列の最後尾につき、会場ではテレビ中継のカメラの後方という少し悲しい席に着くはめになったのです。そして、これに懲りた私は、今年はその轍は踏むまいと勇んで早起きしたというわけです。
途中の渋滞もなく7時45分ころ会場についた私をまっていたのは、とても静かな朝のモスコーンセンターでした。すでにレジストレーションもはじまっていて、参加者もたくさんいるのですが、みんな会場におかれたPCでメールチェックをしたり、くつろいでいます。結局、たいした行列もせずに、基調講演会場にはいり、7回目のJavaOneは静かに始まったのでした。
初日の基調講演というと、目玉となるあたらしい発表や、勢いを示す派手な数字が発表されることが多いように思います。昨年のJavaOneでも、Javaがどれほど浸透してきているか、そのシェアを示す数字が冒頭につぎつぎと紹介されていました。そうした発表が続く中、会場内にいると不思議な高揚感がうまれてきたことを記憶しています。
ところが今年のはじまりは、朝の会場と同じく、静かなものでした。初日の基調講演でSunが強調したかったことは
というあたりに集約できるでしょうか。
会場を揺るがすような発表はなく、Webサービス関連のAPIである、JAX-APIがどこまで開発が進んでいるか、いつごろリリースされるかという話が多かったように思います。
そのせいかSunはさかんにコミュニティの重要性を訴えていました。Javaの仕様に関するディスカッションはJCP(Java Community Process)に従って行われていますが、具体的な仕様案(やりクエスト)である、JSR(Java Specification Request)は現在170を超えており、それを支えているのがJavaの開発者コミュニティであるということです。
連日の基調講演では、さまざまなデモも行われます。デモは、携帯電話に関連するものが多かったように思います。エンタープライズから組み込みまでというJavaの守備範囲の広さを示したいということでしょう。IDEで開発したWebサービスクライアントを、その場で携帯電話に転送して、やはりIDEで開発したWebサービスと連携させるようなデモもありました。
今年の基調講演での毎日の楽しみが、Helixという映画が毎日数分間上映されたことでした。近未来、なにものかによって人類にもたらされた危機がJavaテクノロジーによって救われるというもの設定で、本格的なつくりで楽しめます。Webからも見ることができるので、興味のある方は、ご覧になってはいかがでしょうか。
展示会場であるJavaOneパビリオンでは、Java搭載機器に混じって、Javaカーなどの展示もありました。基調講演では、James Goslingが楽しそうにJavaカーに乗っているビデオも上映されました。
昨年に続き、カンファレンスの目玉となったのはWebサービステクノロジーでしょう。大きな発表はなかったものの、Webサービスにかかわるセッションはどれも多くの人でにぎわっていました。
SunのWebサービスに対するアプローチは、JAX-APIを中心に、XML, SOAP, UDDIなどのWebサービス要素技術を抽象化し、その開発、インテグレーションを容易にしていこういうものだといえるかもしれません。たとえば、レジストリに関連するJAXRでは、UDDIとebXMLの違いを吸収し、またその他のレジストリにも対応しようとしています。
Webサービスの実用化へ向けての取り組みも、各社から発表されていました。現在のサンプルレベルのサービスを超えて、実ビジネスに適用していくためには、トランザクション管理、セキュリティなど越えなければいけない壁が多数存在しますが、これらに対する具体的な解決案も提示されつつあるようです。これらの問題が一つ一つ解決されていけば、WebサービスがHypeを超えて、われわれの身近なところに近づいてくるかもしれません。
このほかWeb サービス関係のセッションをいくつかあげておきます。各セッションのスライドはJavaOneのサイトからダウンロードできます(ユーザ登録が必要)し、有料ですがストリーミングでセッションの様子を見ることもできます。
さて、去年と比べて増えたのが、Sun以外の会社による開発事例の発表ではないでしょうか。Javaの広がりを示したいSunの意図によるものでしょうが、やはり実際の経験を聞くのはたのしいものです。
なかでも、とても興味深かったのがAT&T WirelessによるApplying an Architecture Centric Iterative Development Methodology at AT&T Wireless という発表表でした。
これは、AT&T WirelessでカスタマーサポートサイトをJavaで構築した事例ですが、
が紹介されました。
アーキテクチャを中心に考えるというのは、たとえば、ソフトウェアの機能的側面ではなく非機能的側面を重視すること。たとえば、ボタンが押されたら何が起こるかではなく、そのボタンはどの程度押されるのか、同時アクセスユーザ数は?という観点から、アーキテクチャを決定していくということなどが報告されていました。
また、プロセスは、XP風ですがXPほどは極端でないもの。たとえば、
などが特徴です。
チームモデリングでは、ホワイトボードなどを使い、CASEツールを濫用することはしなかったといっていました。しかし、シーケンス図などを中心にオブジェクトの識別に非常に有効だったとのこと。
この話の中では、何回かScott Ambler氏の名前が引き合いに出され、最後に参考文献としても、JavaOneの直前に発行されたAgile Modeling本が紹介されました。
また、オブジェクトの広場ではおなじみ(?)のMartin Fowler氏、Scott Ambler氏らによるパネルディスカッションもありました。
Reuse for Real: Implementing Software Reuse in the Java2 Platform, Enterprise Edition(J2EE) Environment - An Expert Panel
再利用について
という観点で議論が行われました。
タイトルにはJ2EEとなっていますが、話されたのは一般的な再利用の話ばかりでした。Q&Aで誰かが、「まったくJ2EEという言葉が話の中に出てこなかったのですが、、」と突っ込むと、すかさずMartin Fowlerさんが「J2EE」とだけ、言い返していました。実際のところは、J2EEであろうとなかろうと、再利用の本質は変わらないということでしょう。
後日談ですが、その後Scott Amblerさんと話をする機会があったのでこのパネルについて伺ったところ、タイトルにJ2EEが含まれたのは直前の話で、もともとはJ2EEに限らず一般的にソフトウェアの再利用に関するものだったそうです。
Expert Panel for Agile Software Development on the Java Platform
最終日のセッションの中でもっとも期待していたものだったのですが、残念なことに会場が満員で入れませんでした。初日ははりきって早起きした私も疲れが出てきていたのでしょうか。別の部屋で、満員になったセッションをストリーミング中継していたので、そちらにはいってみましたが、機材の調子が悪かったのか、ノイズばかりでほとんどききとれないため、あきらめて出てきてしまいました。というわけで、このパネルについては何もかけません。ごめんなさい。Agile Modelingについては、ObjectDay2002でのScott Amblerさんの講演を楽しみに待ちたいと思います。(編集部注:オブジェクトの広場では、Agile Modeling日本語公式サイトを公開しました。ぜひご覧になってください。)
さて、木曜日、月曜から4回にわたった基調講演の最後にサプライズがありました。座席の下に、JavaOne特製イースターエッグが隠されていたのです。イースター(復活祭)には、カラーリングした卵を探すエッグハントという習慣があります。今年は3月31日がイースターだったので、それにあわせたのですね。振るとマラカスのような音がするもので、最後に登場したバンドにあわせて会場も一緒に盛り上がろうというものでした。毎朝早起きして、朝8時半から始まる基調講演に参加した甲斐があったというものです。
*JavaOneの会場で入手したグッズをプレゼントします。希望される方は、下記のページからご応募ください。
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