ObjectSquare [2013 年 2 月号]

[インタビュー]


Change the habit コンテスト優勝チームインタビュー



■ はじめに

昨年11月13日に大阪で開催した学生の方々向けのソフトウェアアイデアコンテストである「Change the habit コンテスト」本選で見事に優勝された陸奥尾張組チームの方々をお招きし、コンテストにどのように取り組まれたかという点を中心にお話を伺いました。 なお、メンバーの西原さんは一昨年に開催した「Smile Grid コンテスト」の優勝チームのメンバーです。

水野さん 西原さん 池田さん

陸奥尾張組チーム:(写真左より)慶應義塾大学大学院 水野 将伍さん西原 政比彦さん戸田 光紀さん

インタビュアー:オージス総研 技術部アジャイル開発センター長 藤井 拓

■ コンテストに応募されたきっかけ

--- 今日はお忙しいところありがとうございます。 流れとしては、チームが出会うきっかけからスタートして、時間軸に沿ってお話を伺っていこうと思います。 それではまず、どのようなきっかけでコンテストに応募されたのでしょうか?

水野: チーム結成の話に遡ると結構前になるんです。 元々、今、全員同じ慶應義塾大学大学院修士の1年生なんですが、学部時代に僕と西原君が同じビジネスコンテストに出場していたという経緯が過去にありまして。

--- 去年と似たパターンですね?(笑)

水野: 入学してすぐの頃に大学院で合宿がありまして、皆顔を初めて合わせる状況なんですけれども、二人で「お前どこかで見たことあるな」みたいな事を言い合って、フタを開けてみたら「ああ、同じコンテストに出てたよ」という事で。そこから始まって、入学式の後から仲良くなりました。 あとは、お互い趣味としてすごく野球が好きで。なかなか僕等の世代だと野球好きな人達があまりいなくて。

--- ああ、そうですね。サッカーの方がメジャーなのでしょうか。

水野: そうですね。先日のワールドカップの予選でも皆でサッカーを見ていたんですけど、Hubで野球中継を見ていたのは僕一人という状況で、(笑) あまり野球人口がいないと普段から考えていました。  6月のテーマ発表前にも、こういうことができたらいいね、と話していたんですけど、いざテーマを見た時に「あ、これ(野球)って今回のテーマに一致するよね」と。

--- そんなにすんなりと!(笑)

水野: そして、「代打、俺」っていうのを考えました。

西原: メディア系の大学院て、そういう事を考えよう、みたいなところなんです。 それで、喋っていて色んなアイデア出しとかディスカッションを前々からしていて、そこでコンテストのテーマに対して「あ、すごく合致してるヤツあるじゃん!」みたいな、そういう感じでした。

■ 第3のメンバーの加入

インタビュー風景

--- ・・・で、戸田さんはどこから登場されたのでしょうか?(笑)

戸田: まだ全然出てないんですけど(笑)

水野: 彼は先日の大阪での本選には出場できなかったんですけれども、戸田と申します。

戸田: 8月だったっけ、最初は?

水野: そうだね。

戸田: まず、2人でプレゼンをやっていく中で実際にモノを用意した方が説得力があるんじゃないかという話がありまして。 大学院もテクノロジーとかマネジメントとか色々な分野に分かれていまして、その中で僕はテクノロジーの方をやってまして、マイコンを使ってハードやデバイスを作ったりするという技能が多少あったので、2人からこういうものを作ってみないかと誘われた、というのが最初のきっかけです。

--- なるほど。

水野: 僕らの中ではアイデアとしてはあったんです。 でも、今までコードを書いたとしてもネットワーク系のコードが多かったので、デバイスを作った経験が無くて、今回のデバイスでは2人ではんだごてを持ってはんだ付けをするところからやっていたんです。 最初は彼に相談しながら「こういうのって実現できるかな」と話を持っていって、「じゃあこういうの使ってみたらいいんじゃない?」と加速度センサーを使ってみたり。僕も加速度センサーっていう概念は知っていても具体的にどういう物かというのがわからなかったんですが、彼がたまたま持っていてすぐに出してくれて(笑)、じゃあこれを使えばスイングの軌道はテスト実験したらそこから割り出せるよね、という話を夜な夜なしたりして、その中で実際に組んでいこうかという話になった時に3人でやりましょうかということで、結果的にこのメンバーになりました。

■ 大学でのご専攻について

--- こちらのお二人(水野さんと西原さん)はマネジメント系の専攻なのでしょうか?それぞれみなさんは何を専攻されているのでしょうか?

西原: 僕はマネジメント系・・・かな?

水野: そう・・・だね。

--- (笑) ハッキリ分かれているわけじゃないのでしょうか?

西原: そうですね。 僕はマネジメントがバックボーンなんですけど、今所属しているところはネットワークやテクノロジー系のプロジェクトに入ってます。

水野: 僕は制度を作ったりとかコンソーシアムを作って人を集めたりとか、ちょっと別な事をしているんですけど、でも双方共にバックボーンにはマネジメントがあって、それを生かせる方法は何だろうかと考えた時に、双方が別の道にいつつも、今までのバックボーンを生かして研究室の方で活動しています。

戸田: 僕は先程の通りテクノロジー系の専攻なんですけど、そういったテクノロジーを生かして人の感覚を拡張して面白い体験ができないか、という事を研究室でやっています。

--- 応募する前からチームができていて、途中から合流された、ということですね。

水野: やっている事とか、バックボーンは皆バラバラなんですけれど、それを一緒くたに集めてしまっているのがうちの大学院なので、元々皆でよく話もしていましたし、お互いがお互いの知らない事を話すので、魅力的で面白いなと思います。

■ 今年の課題について

--- すごくいい環境ですねえ。そういうものづくりをするには非常にうってつけというか、理想的な環境ですね。 それでは、今年の課題についてどう思われましたか?課題を見た時に「これはしめた!」と思ったとか(笑)

3人: (笑)

--- 課題を出す側としては「習慣を変える」という事自体難しい事だなと。 しかも「世界を変える」というサブタイトルまでつけちゃったので、結構重く大変なんじゃないかな、皆さん悩まれるのではないかなと心配しました。

西原: 初見の印象はやはり「デッカイな!」という印象でしたね。 解釈も大きいと思ったし、越えなきゃいけない期待値も大きいなと思ったんです。 「習慣を変える、世界を変える」だから日常のささいな行為だけじゃなくてもっと人間の習慣の根本的な部分に対して変化させないといけないんじゃないかという風に思いました。 ただ、アイデアの原案はあったので、それをどう膨らましていくか、と。

水野: 6月までは種の段階だったので、そこから今回のコンテストとして考えた時に「習慣を変えただけじゃどうしようもないな」という話を2人でしていて、変えた先に何があるのかというのを2人で詰めていって、そこを打ち出していくべきなんじゃないかという事は考えていたんですけれども。 今回出場するにあたって、彼が昨年出場したというのもあって、昨年のテーマや話を聞いたりして、昨年に比べたら少し具体度が上がったのかなと思う反面、逆にハードルが上がったのかなという気はしましたね。

--- 戸田さんは、テーマについてはどう思われましたか?

戸田: テーマですか(笑)

--- テーマについては特に感想は無いですか(笑)

戸田: 実はテーマにはあまり関わってなくて(笑)

--- 分担外でしたか。

戸田: そうですね。ただ、アイデアは面白いなと思いました。 実際に形になったら魅力的なんじゃないかなと。それでぜひ協力したいなと思いました。

■ 一次、二次審査

--- では次に。 エントリーはチームが結成されてすぐに応募しようと思われたようですが、アイデアを説明する文書を作る時はどんな感じだったのでしょうか?

水野: エントリーと、一次審査の書類を提出する頃までは、僕らはまだ2人でしたが、エントリーした段階で「こんなアイデアがあるんだけど」というのは西原君が戸田君に話をしていて、一次審査が終わった後、二次審査までの間に「じゃあどこまで突き詰めようか」といった時、口だけじゃなくて手を動かそうという事になって、サンプリングを行なって形にしていこうという事になりました。

--- 一次と二次の間にそのようなことを行われたのですね。

水野: はい。 本選の後に藤井さんが「一次から二次の間の伸びが見たかった」とおっしゃってくださって、「ああ、ちゃんとやっててよかったー!」と僕らはすごく思ったんですけれど(笑)

--- いや、それは期待値としてありましたが、実際にどう受け止めてくださるかというのはちょっと分かりませんでした。

水野: 僕らは一次と二次の間にそこを詰めて、その後戸田君が入ったと。

西原: 最初はぼんやりと作ろう、形にしてプレゼンでデモをやりたいなというのは思っていたんですけど、どのレベルでできるかがわからなかったんですね。 進むにつれて、僕ら2人だけだとそこまですごいデモとかきちんとしたものは作れないかもしれないみたいな流れになって、戸田君なら作れる!ということで入ってもらったと言う形です。

--- 実は、一次、二次という仕組みを入れる事にあたっては私自身も期待があって、極端なケースでは「一次に通ったアイデアではダメだ!」と捨てて二次に「もっとスゴイものがあるぞ」と全然違うものが出てくる可能性があるかなと思って見ていたんですが、やはりそれは無理がありましたね。 皆さんマイナー改訂が多かったですね。(笑)

水野: (笑) 僕らとしても、戦略的にというと言葉が悪いかもしれないですけど、一次と二次があって、両方とも書類審査で、「ここは何が見られるんだろう?」という話は2人でしていました。

--- 実際に一次審査に応募してみて、その後もう一度見てみると色々ここらへん弱いな、もっといいものが思いついたぞ、という事があったらそこでまた発展があるのかなと。 でも期間的に短いし難しいですね。無茶な期待だったかもしれませんね。

水野: 別のベクトルには進まないけど、向いているベクトルの方に前進するという事はできたのですごく有意義だったなと思います。

西原: 僕達は一次と二次の間の実装部分という書類には落ちないところで、前に進もうとしていましたね。

--- アイデアを説明する文書を作るにあたってどのように分担されたのでしょうか?2人でどうやって話しをして決められたのでしょうか?

水野: やたら(話し合いを)やってたね。

西原: やってたね(笑)

--- 話しては書き直し、という感じでしょうか?

西原: そうですね。 最初はザッっと項目を洗って、全体の概要について2人でディスカッションを重ねて方向性を決めて、分担して書いて合わせて修正してまた合わせて修正して、の繰り返しでした。

水野: 多い時は1週間に1回は必ずFace to Faceで会っていました。 離れている時は疑問に思った事をメールやSkypeで投げたりしながら進めていました。

--- そのFace to Faceは学校で会っておられたのでしょうか?

水野: そうですね。学校です。長かったよね。(笑)

西原: 長かった。(笑)

水野: 学校の教室として小部屋がいくつかありまして、そこを借りていました。 壁に大きなホワイトボードがついているので、そこに3面4面、壁中びっしり、アイデアや話の流れなどを全部書き綴る、という事を毎週行なっていました。

--- アメリカのソフトウェア要求の専門家で「Wall of Wonder、不思議の壁」と言っている人がいて、そういう状況に近いですね。 壁一面アイデア、という状態です。(笑)

3人: (笑)

■ アーキテクチャ設計とプログラミング

--- ではアイデアを作って、その後技術的な話に入っていって、その時に「じゃあこれを実現するためにはどうすればいいのか」と、アーキテクチャは考えられましたか? 全体構想というか設計レベルでの仕組みですね。

戸田: 簡単に動きというか流れやシーケンス毎にこうしよう、というのは考えたんですけど、細かくこうしようというのはあまり考えず、とにかく組みながらやっていきました。

--- アーキテクチャ設計というのは大学で勉強されているのでしょうか?

戸田: 大学の授業で、というのはあまりないのですが、多少本を読んだり実際に組んだりとかして経験的に(笑)

--- わりと実装中心で考えて、ということでしょうか。

戸田: 僕は手を動かしながらでないと考えられないタイプなので、動かして実際に作っていました。

西原: 彼は本当に、何度も朝まで残っては、なんか変なモノを作っているという人間なので(笑)

水野: そうなんです。変なモノなんですよ。(笑)

戸田: 一人で考えるとベクトルがおかしな方向にいくんです。(笑)

--- 言語は何を使っていらっしゃるのでしょうか?

戸田: 最近は、プロトタイプを作るのはアルディーノの開発環境がありまして、機械と言語が一緒になったアルディーノ言語を使ったり、あとはプロセッシングを主に使ったり。 マイコンを使う時はC言語で書いたりします。その3つがメインです。

--- なるほど。プログラミングされてきた経験は何年くらいでしょうか?

戸田: まだまだ浅くて、2年くらいです。

--- ということで、アイデアを説明する文書を改訂する間に無理矢理(笑)、そのアイデアを裏づけるための、実現するためのプログラムをゴリゴリ一生懸命書かれていたということでしょうか。

戸田: そうですね。はい。

--- 本選に行く前の日には完成度的に予定されたものはだいたいできていたのでしょうか?プログラムとして。

戸田: プログラムとしては実はもうちょっと直したかったんです。

--- (笑)

水野: そうなの!?(笑)  そんな話、2人で作ってた時に言わなかったじゃん!

戸田: そう。いやあの、だから、もう、できたって言われたからいいのかなと思って。

藤井・西原: (爆笑)

水野: ごめんなさい。

戸田: いや、いやあの、エラー出てたよね。ちょっとそれを直せればよかったかなと・・・

水野: どんなエラー?

戸田: いや、だから・・・

水野: 2人で作ってたんですよ。 僕がこれとこれを値として受け取ってこれを返す、みたいのをやりたいんだけど、という話をして、じゃあこれだったらこの言語でこういう風に書けば、みたいなという話をしていたんです。

--- XP(eXtreme Programming)的に開発されたのですね。(笑) まさにアジャイル開発です。(笑)

水野: という話をしながら2人でやっていたんですけれども、そんな話は知りませんよぉ?

戸田: マジで?

全員: (笑)

戸田: 本当に細かいところだったので、僕が気になったというだけだったので。機能的に動けば大丈夫かなと。

--- そうですよね。学生さんだとそうなのかな。 実際のアジャイル開発だとストーリーというのを作って、そのストーリーの受け入れ条件を入れて、これを入れたらこうなるという条件をいくつか作って、それをちゃんと満たすことを確認してプログラムできた、というような事を行います。

戸田: へえ、そうなんですか。

--- まぁ、そこまで大学時代きっちりやるかどうかというのはありますが。

戸田: 本当にもう徹夜でやりました。

--- そうですよね。期間が短かったですからね。

水野: 外装までちゃんと作ったからね。(笑)

戸田: レーザーカッターで切ってね。

■ 本選の準備

--- では、プレゼンの準備は二次審査が通った後に始められたのでしょうか? それ以前から?プレゼンでの劇というかパフォーマンスはどのあたりから練習されたのでしょうか?

西原: だいたい二次審査が終わってからですね。

水野: そうですね。お互い妙にプレゼン慣れしているところがあったので、特にそこは問題無く進められました。

--- 阪神を選んだというところが微妙でしたね(笑)

3人: (笑) 大阪だったので、絶対にこれは阪神だろう!と思ってわざわざ阪神のユニフォームを借りたんですけど。

水野: 借りたんですよ!

--- レンタルで?友達に?

西原: 友人に借りたんですけど

--- 大阪の方でしょうか?

水野: そうですね。兵庫の方なんですけど、前日にお会いして貸してもらいました。

--- そうなんですか!

水野: 大阪に前入りしていたので。

西原: プレゼンの前にユニフォーム着た時に、審査員の方達の反応が薄くて「あ、あれ!?もしかしたら!?」と思ったら、皆さん阪神ファンではなかったんですね・・・

--- そうなんです、審査員はほとんど東京から来ていたんです。(笑)

水野: 前のチームで質疑応答されている時に「あ、関西弁じゃない」と気がつきました。(笑)  プレゼンの時のスライド写真も全部阪神ナイズしていたんですけど。(笑)  デバイスも、「背番号6金本」って彫ってあったんですけど、空振ってしまったと。

戸田: あれ作ったの1週間前だよ。実装を完成させたのも二次審査が終わってからだったね。

水野: その前からデータ収集はしていたんですけど、スイング軌道をどういう風に割り出すか、という事は考えていて、実際に組もうと言ったのは1〜2週間くらい前にガッと2人で組んで形にはできたんですけど。

--- プレゼンのリハーサルはされたのでしょうか?3人で集まって。

水野: リハは結構したね。発表が20分あったんですが、20分リハーサルをやるとすごいバテるんですよ(笑)

西原: そうそう(笑)

水野: でも数をこなしたというよりは質を上げつつのプレゼンの練習をしたつもりです。 何人か学校にいた友人に「ちょっと見てよ」と呼んで、その友達の前であの劇を何回も繰り返すという。

インタビュー風景

--- (爆笑) あれを繰り返し見てもらったのですか!?

西原: そうなんです。

水野: あれを繰り返しです。(笑)

--- わぁー、いいお友達ですねぇー!(笑)

全員: (笑)

水野: ・・・というのをずっとやってましたね。

--- 後でお礼をしないといけないですね。(笑)

水野: すでにたかられてます(笑)

--- 戸田さんはリハーサルには参加されたんですか?

戸田: 僕はプレゼンには行けなかったので。

--- プログラミングを一生懸命されていたですか?

戸田: そうですね。はい。

--- それも大変だなぁ。(笑)

戸田: (笑)

■ 本選

--- 本選でのプレゼンの時に、審査員に実際にデバイスを持たせてスイングさせましたよね。 あれはちょっとアヤシイなと思ったんですけど(笑) あれってどう打ってもヒットになるように設定してあるとか・・・

水野: !?いや、ホンットの話ヒットにならないですよ、あれは!!

--- 本当に?(笑) なんかそこらへんが疑惑を招いていたんですけど(笑)

水野: そういう風に見えてたのか・・・。もっと難しくすればよかったな。一応設定は甘めにしたんですよ。 実際に投げてからのタイミングとスイングのタイミングを取得して、その誤差0.何秒という値だけ指定してその中に当てはまればヒット、その前に振ってれば振りが早い、後ろだったら振り遅れという、3パターンのメッセージを出そうと言っていて、その誤差0.何秒の部分を広げるか狭めるかして難易度のレベルとして設定してヒットの出る確率が変わるんですけど、たしか最初に組んだ時はゼロ1個少なかったんだよね。

戸田: うん。

水野: なので、作った本人でもなかなかヒットが出なくて、「これは実際に現場で振ってもらって全員アウトというのも空気的にマズくない?」という話になりまして、ちょこっとだけ甘めにしたんですけど、あれは本当にそのタイミングに合わせて振らないといけないんです。 たしか1回目に振っていただいた時にスイングの判定が出なかったのも、あれは本当にx軸とy軸とz軸がある一定の数値以上を満たした時に初めてそれをスイングと認識する、とやっていたので、本当に野球のスイングっぽく振ってもらわないと認識されないという。

戸田: 持ち方が固定だったからね。

水野: 加速度センサーの向きが決まっていたので、「こっちを正面に持ってください」と僕も言ったと思うんですけど、あれを守っていただかないとうまく動かない、というのはありました。

西原: なので、あれはガチです。

--- (笑)

西原: ヒットが出るまで振っていただく予定でした。

水野: うまいことヒットが出てしまったんです。

--- 運が良かったんですね。(笑)

水野: そうなんです。(笑)

--- 順番は7組中6番目でしたが、他のチームのプレゼンを聞いていてどう思いましたか?

西原: いやぁ、去年より全然レベルが高いなぁと、見ていて感じましたね。

--- 一番強敵だなと思ったのはどのチームでしたか?

西原: 僕が個人的に強敵だなと思ったのは、hABeOチームの「Game DE Posit」でした。

水野: 僕も「Game DE Posit」でしたね。

西原: あれはすごく発想が面白いなと思って。

--- 結構ユニークでしたよね。

西原: たぶんユニークな分、裏側の金融業の法的な扱いとか、審査員の方がその辺をどうとらえられるのかなと思ったんですけど、たぶん僕達以外に優勝するとしたらそこなんじゃないかな、とは考えていました。

--- なるほど。では、表彰式の時に、最後の優勝の発表まで名前を呼ばれずに残ったわけですが、どう思われていましたか? これはもうイケた!と思われていました?

水野: 僕らとしては「Game DE Posit」が上に行くんじゃないかという話をしていたんですが、たまたまあのチームがたしか一番最初に名前を呼ばれたんですよね。 その瞬間、想定していたものをいきなり覆されたので、僕らは頭の中が真っ白になって、「これはマズイぞ」と思っていました。 チーム名が読み上げられていくにつれて、中間の賞じゃなくて優勝なのかゼロなのか、というリスクがだんだん上がっていくわけじゃないですか。(笑)

--- ドキドキされたわけですね。(笑)

水野: そうなんです。 だから、最後の最後まで名前を呼ばれなかった時は、「優勝なのか?ゼロなのか?本当にわからない!」って2人でヒソヒソ話してました(笑)

西原: もう、めっちゃ目を合わせまくって、「どうなんだ?どうなんだ?」って。

水野: 「ヤバくない?ヤバくない?」と。(笑)

--- ハラハラされたのですね。(笑)

水野・西原: そうですね。

戸田: ダメだったら赤字になってた・・・(笑)

--- で、結局優勝という結果になりましたが、戸田さんに結果の連絡はいつ頃されたのでしょうか?

水野: すぐ電話したよね?

戸田: うん。

--- 優勝と聞いて、どうでしたか?

戸田: いやー、嬉しかったです。(笑)

全員: (笑)

--- 報われた、と思われたのでしょうか?

戸田: はい。途中からの参加でしたが、作った甲斐があったな、と実感しました。

■ コンテスト後の反響

--- では、その後の生活はどうなんでしょう。優勝の反響はありましたか?同級生の人達に結果は報告されたのでしょうか?

水野: まず、表彰式の後にすぐに戸田君に電話して、その後すぐにソーシャル上にアップしたよね。

戸田: うん。ツイッターとか。

水野: あとはFacebookに上げたら結構みんなから反響があって、「おめでとう」という声と同じ数くらい「何かおごれ」みたいな。(笑)

インタビュー風景

全員: (笑)

--- まぁ、そうでしょうね(笑)

水野: 最近ようやく冷めてきたけどね、そのへんの熱は。

西原: ようやく飲み会の時に「おごって」って言われなくなりました。(笑)

水野: ホント、昼ごはん行こうって誘うと「え、出してくれないの」みたいな顔を急にされて。(笑)

戸田: マジで(笑)

水野: コンビニ行く時もレジの後ろに並ばれるんですよ。(笑)

全員: (笑)

戸田: そんなもん無いよって。(笑)

--- (西原さんは)2年続けてそういう経験でしたね。

西原: はい、そうですね。(笑)

■ コンテストに対する感想

--- 今回コンテストに参加されていかがでしたでしょうか?感想というか。

戸田: 感想ですか・・・うーん・・・

--- 辛かったとか(笑)

3人: (笑)

戸田: まあ、作業している時は辛かったですね。(笑) 徹夜で朝までやったりしたので。

水野: 朝8時までやったもんね。

戸田: その時は「できるかなあ・・・」と思っていたんですが、形になって、しかも結果まで残してくれたので、なんていうんですか、感慨深いといいますか・・・

全員: (笑)

戸田: こういったコンテストにあまり参加したことがなかったので。 プレゼンはしてませんが、参加させてもらったのも初めてだったので、実績を残せて、これからやりたいことへの励みになりました。

--- そうですか。よかったです。西原さんはどうでしょうか?今回は2回目ですけれども。 まあ、あちこちに出られているということもあるので、その視点からも何か感想をもたれていらっしゃるでしょうか。

西原: やっぱり優勝するのは嬉しいなあ、と。 特に今回はデバイスを作ってもらったし、大学内の色んな人に見てもらったりしたので、結構追い込まれてる感がありました。 これで何も賞をとらなかったら、大阪まで来たのに手ぶらでどういう顔して東京に帰ればいいんだ、っていう。

水野: 本選の日は授業休んでたしね。(笑)

--- 申し訳ありません。

水野: あいつら授業休んで大阪まで行ったのに手ぶらで何も言わないってことはダメだったんじゃない?みたいなことになりかねないからね。

西原: そういう状況で勝てたっていうのはすごくホッとしましたし、嬉しかったですね。 あとは、色んなコンテストに出場してきて、ここ(オージス総研)が他とは違うのは、すごく具体的にテーマ設計を明示してくるところだと思います。 色々出していると自分が考えて提案するものって似てきたりするんですけれど、テーマがピシッとある分、「あ、自分はこういう考え方もできたんだ」とか「このプロダクトはそういう価値の与え方もあるんだ」と、色んな方向に広がりが感じられましたね。

--- なるほど。そういう面があるのですね。

西原: はい、ありました。

--- いつもテーマを決める時は、皆で議論しながら悩みます。あまり限定的なテーマにすると面白くないじゃないですか。 広がりと、具体性というのをうまく両立させて。難しすぎると遠すぎるし。いつもその点を悩んでいます。

西原: ええ。

水野: 西原君もそうだと思うんですけど、僕は大学の学部の1〜2年生頃からこういったコンテストに自分の考えとかプランを出す機会が非常に多くて、気づいたら僕ら、24歳の大学院生になっていたんですけれども。 今回やっていて嬉しかったなと思うのは、若い子、若い子っていうとオッサンみたいですけど(笑) 学部の1〜2年生ぐらいの子達というのが一生懸命プレゼンしているのを見ていて、「ああ、自分達にもこんな時期があったなあ」思いつつも、そういう子達が出てきてくれているというのは嬉しいなあと思いました。 日本はベンチャー企業が育ちにくい環境が云々と僕らの頃から言われているんですが、今後もそういった子達がこういうコンテストの場を通して自分のやりたい事をどんどん形にしていってくれるような機会というのがあり続けてくれるといいなと、僕らも先輩として頑張らなきゃいけないなと、今回出場して思いました。 気付いたら上の立場になってしまっていたので。(笑)

■ 今後の夢

--- では次に、恒例の「今後の夢」ということで。(笑) 今後何を目指されているのか、お一人ずつお願いします。

戸田: 僕はもっと色々勉強して、実際に動かして面白いと言ってもらえるような物を作りたいと思います。

--- その時に、作る能力と構想する能力って違うじゃないでしょうか。 開発で言うと要求を決めて設計して実装していくという形になると思うのですが、実装部分だけでできる可能性ももちろんあると思うんですけど、そのあたりはどうされますか? 面白く作るために。

戸田: そうですね・・・。 自分一人で要求を考えたりするのは苦手といいますか、自分だけではなかなか出なかったりする事も多いので、もっと人の話とか、簡単な日常の会話からヒントを得て、あとは時々自分のアイデアをぶつけたりして、それに対するフィードバックとか、こうしたらいいんじゃない?という要求・要望とかを取り入れて作っていきたいと思っています。

西原: そうなんですね。

水野: (笑)

西原: 将来的にやりたいことというのはIT系、Web系の事業を作ってインパクトを与えられるようなサービスやビジネスができればいいなという風に思っています。 やっぱりこういう事を考えるのが好きなので、たぶん将来もそういう事をやると思うんですよね。 その中でしっかりお金を稼げて、ユーザーにも使って喜んでもらえるようなものができればな、と思っています。

水野: 最初にお話した野球以外にも僕は音楽が好きで、今、ソーシャルを通したり、海外まで足を運んでコンサートを見に行ったりしているんです。 そこで僕自身が世界中の人達と音楽を通して結びつくという体験をして、今度は僕がそういう場を提供してあげる側になりたいな、とずっと思っていて、それで大学院に進学しているんですけれども。 その中でも大事になってくるのは体験とか経験だと思っていて、そういったところにフォーカスしつつ、人と人とを結び付けられるプラットフォームを作っていけたらなと思っています。

--- それはリアルな方を重視するのか、仮想というかバーチャルな部分を重視されるのでしょうか?

水野: リアルが一番だとは思うんですけれども、仮想というかソーシャルのネットワークというのが一番の媒介にはなると思うので、それが目的というより手段にはなると思うんですけど、webとかアプリケーション、ソーシャルサービスとか全部。 そういったものを使って人と人を結びつけていくことができたらなと思っています。

■ 今年のコンテストの運営について

--- 今回、コンテストのやり方をいくつか変えました。 大きく変えたのは一次・二次書類審査を行なって、途中で結果をお知らせするように変えた事と、部門賞を変えてみました。 それらについてどう思われたでしょうか?

水野: 部門賞に関しては・・・

--- もう眼中に無かったから関係ない?(笑)

水野: いや!そんなことは無いんですけど、部門賞に言葉が付いていましたよね。「環境賞」「グローバル賞」「創意工夫・技術賞」。 自分達も含めて、どのチームがどこに当てはまるのか、というのは難しいのかなと思っていて、「環境賞にあてはまるチームってどこだろう?」という話は2人でしていたんですけれども。

--- そのあたりは審査でもちょっと悩んだところです。(笑)

西原: そういう賞を設けてしまうと、プレゼンであからさまに賞に合わせにきている表現もあったので、ひとつのプランで色んな視点が出るというのは良い事だとは思うんですけど、それって無理矢理な屁理屈みたいなロジックになっちゃう場合もあって、それはどうなのかな、みたいな。

水野: 「部門賞あり」という形で、最終的に審査の時に「このチームは○○賞」みたいな形にしたら一番適しているんじゃないだろうかというやり方だとたぶん一番皆がやりたいこと、自分の出したいプランというのをその場で出せたんじゃないかなと。

--- でもその場合、「名無しの部門賞3つ」という事で納得できるのでしょうか、応募する側としては。

西原: そしたら「入賞」みたいな感じにすれば。

水野: 例えば僕らの場合、無理矢理あのアプリを使ってグローバルな野球の対戦ができるという方向性に持っていったとしたら、たぶんそれは僕らが本当にやりたい事とか、習慣を変えた先にあるものじゃなくなってくる、という気がして、そこを狙っていく形になるとちょっと残念かなと思ったので、賞の名目は隠れていた方がいいのかなと僕らとしては思いました。

西原: あとは、一次・二次のスキームで言ったら、もしプランのブラッシュアップを望むのであれば、例えば書類審査の採点結果とか、審査員のコメントがあった方が「あ、ここを変えた方がいいんだ」というのがあっていいかもしれません。 あるいは敗者復活戦とかあってもいいかもしれないですね。

--- 敗者復活・・・

水野: (笑) 一次の後に、一次で落ちたけど二次で出してみたらよかった、みたいな、ってこと?

西原: 一次でギリギリのボーダーラインで落ちた人達、例えば5チームなり10チームに、ここがダメで落ちたよ、というような事を伝えて、二次にひとつ枠を準備しておいて、そこで敗者達がブラッシュアップしてくる、とか。

--- ただ一次審査はエントリーされたチームの半分くらいが通っています。 だから運営側としてはわりと広めに通っているという印象を持っています。また、一次と二次で審査員が変わる事もあるので、一次でコメントした事が必ずしも二次でも一貫性のある評価になるかどうか、というところでちょっと難しさがあります。 フィードバックというのは確かにあり得るのですが。

水野: 一次と二次の間に煽られるみたいなものがあると僕らもお尻に火が点くので、例えば一次通ったチームが40組なのに、ウチら39位だったらしいよ、というのがもしわかっちゃったとしたら、そりゃもう一回考えなきゃ!となるからね。

西原: 順位の明示はいいかもしれないですね。 例えば、二次で7枠しか残れないとして、一次が20チーム通ったなら、あなたのチームは20チーム中20位です、とか19位です、とか言われたら、がんばってブラッシュアップしなきゃって。

--- そうですね。その議論も実はありました。

西原: そうなんですか。

--- 部門賞との兼ね合いで難しくて。 総合での順位と部門賞の順位があるので、単純に順位がつけられない、つけにくい、という問題があります。

3人: うーん、なるほど。

--- つまり、総合では真ん中あたりだが、部門賞では上になるかもしれない、というあたりで、順位をつけにくいなということで見送りました。

西原: なるほど。

--- いいフィードバックの仕方があったらぜひとも採用させていただきたいと考えています。

水野: はい。(笑) 一次の結果の時、コメントとかってあったんだっけ?

西原: なかったね。

--- あとは、言い訳がましいかもしれないですけど、途中段階であまり細かくこちらから言うよりも、あるところまでは自分達で考えていくというのも大事かなと考えています。

西原: たしかに。

--- 色々ご意見ありがとうございます。

3人: いえいえ、こちらこそ。

■ 趣味

--- ちょっと脱線するのですけど、皆さん趣味は何でしょうか?(笑)

3人: !?(笑)

--- いきなり違うパターンの質問で申し訳ありませんが。(笑)

戸田: 趣味ですか・・・

水野: 趣味あるんですか?(笑)

戸田: (笑) 読書とか、普通に本を読んだりするのは好きなんですけど。

--- どんな本を読まれているのでしょうか?

戸田: ジャンルは問わないんですよね。面白そうと思ったものは色々と。 歴史とか機械は好きですね。あとは、モノを作っていくのが趣味であり、という感じなので。

--- ほう。プログラミングの本をひたすら読んでおられるのかなと思いました。

水野: 僕もそう思いました。彼の机に行くとだいたい言語系の本が積んでありますからね。(笑)

戸田: そういう仕事というか、作業が多いもので。

--- 色んなジャンルの本を読むのはいいですよね。素晴らしい。

戸田: あとは美術館とか。

水野・西原・藤井: おおおおう!

--- いいじゃないですかぁ!

西原: さすがっ。

戸田: 気分転換とともに、新しい知識とか経験ができますね。 最近はメーカーフェアという、僕みたいにモノばかり作っている人達が展示しているスペースがあって、そこに行ったんですが、楽しかったですね。(笑)

全員: (笑)

戸田: え、なんでしょう?ザックリしすぎた?

--- いえいえ。

戸田: こういう、自分より上のレベルの人達がたくさんいて、情熱をもってモノを作ってらっしゃるので、僕もがんばっていきたいなと励みになります。

--- では次は・・・

西原: あ、彼(水野さん)はトリで。

水野: やめてよ(笑)

西原: 僕は、家では専ら歴史小説を読んでますね。

--- カタイんですね。(笑) 日本の歴史でしょうか?それとも世界の歴史でしょうか?

西原: 中国史が多いかな。

--- ああ、戦略的ですね。(笑) 「孫子の兵法」とかでしょうか。

西原: あ、それ読みました。(笑)

水野: そういえば、三国志の話を夏休みにひたすらしたね。

西原: したした!(笑)  あとは飲み会とかお酒が普通に好きなんですが、しっとり飲むというよりはグイグイ飲みながら思い切りハッチャケるような飲み会が好きなので、それが趣味といえば趣味ですね。

--- 飲み会に参加される方でしょうか?主催される方でしょうか?参加されるのが楽しいということでしょうか?

インタビュー風景

西原: 参加、ですね。

水野: ふふふ。

西原: なんだよ。(笑)

--- 他の人に楽しんでもらう、という立場ではないのでしょうか?(笑)  エンターテインメントを自分でやるとか、ひたすら薀蓄を言うとか説教するとかそういう?(笑)

西原: そういう感じではないんですけど、たぶん迷惑をかける方ですね、飲み会では。

--- へぇ〜(笑) そうなのですね。好きだけど迷惑をかける、と。難しいですね。(笑)

西原: (笑)

水野: 僕は先程も言いましたが、音楽が好きで、聞く方がメインで、「X JAPAN」がずっと好きで、ワールドツアーを転々としたりして、自分がそういう機会を提供したいと考えた時に、音楽だけじゃなくて色々な経験を組み合わせて楽しいもの、経験・体験というのを作れたらなと思っています。 最近は自分でなんでもかんでもやろうとしていて、この間も、初めて触ったんですけど、Adobe Premiereでひたすら映像編集してみたりとか、いきなりDreamweaverでコーディングをしてみたりだとか、自分で色んなものを体験して、それを色んな人に還元できたらなと思っているので、戸田君も言っていたように、色んな刺激を受けたいと思っています。 海外に行くのも好きですし、スポーツはするのも見るのも好きですし、おいしいものを食べに行くのも好きですし、西原君のように飲んで騒ぐのも好きなので。(笑)

--- 面白い事全般的にですね。

水野: そうですね。

--- じゃあ、以上でインタビュー終わりたいと思います。 お忙しい中、長時間のインタビューにおつきあい下さいましてどうもありがとうございました。

3人: ありがとうございました。




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