ObjectSquare [2007 年 9 月号]

[オージス総研の本]




UMLで考えるモデルベースマネジメントの表紙

UMLで考えるモデルベースマネジメント
内部統制が働くエンタープライズアーキテクチャの設計


オージス総研 左川 聡 著
株式会社翔泳社 2,520円(税抜き 2,400 円)
A5 判 432 ページ
ISBN:978-4-8399-2284-9


 目次 目次
 「はじめに」より 「はじめに」より

目次

はじめに
本書の構成

第1章 理論編:モデルベースマネジメントのフレームワーク

1. モデルベースマネジメントの目的
2. モデルベースマネジメントのアーキテクチャ
3. モデルベースマネジメントの機能構成

第2章 実践編:企業の再設計

1. EAの設計
2. EAの実装
3. EAの管理

第3章 技術編:モデルベースマネジメントに関連する技術

1. モデリング技術
2. マネジメント手法

付録

資料A. ビジネスにおける各種の構成
資料B. BPMNパターン
資料C. 用語集
資料D. 参考文献

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「はじめに」より


企業がビジネスを行う目的とは「企業が持つミッションに従い、利益を追求することによって、ステークホルダー(企業の利害関係者)に対して経済価値を提供し続けること」です。また、日本版 SOX 法の関係で重要視されている「企業に対する信頼性」も大切で、ステークホルダーが常に信頼できる企業であり続けなければなりません。

現代では、企業を取り巻く環境が目まぐるしい勢いで変化しています。今の躍進が明日の成功を保証するわけでも、逆に今の低迷が明日の失敗に直結するわけでもありません。一度成功しても、その成功パターンに固執しすぎると、環境の変化に気づかない硬直した企業になってしまいます。「柔よく剛を制す」と言います。このような時代、企業にとって大切なのは、常に顧客の視点に立って環境の変化をいち早く捉え、アジャイル(俊敏)に適応できる能力です。本書では、この力を持った企業を「アダプティブな(環境適応力のある)企業」と呼びます。

アダプティブな企業であるためには、外部環境の変化の分析に多大な時間を費やすよりも、「仮説を立てる」→「即実行に移す」→「期待した結果が出なければ次の仮説を立てる」というサイクルを繰り返す、仮説・検証型のアプローチのほうが有効です。具体的には、「環境の変化に対する仮説を事業戦略として形で可視化する」→「具体的な行動計画に落とす」→「計画を実行する」→「その結果を評価指標に基づいて検証する」→「戦略を見直す」というマネジメントサイクルを回すのです。この時、もし、既存の仕組みを前提とした戦略を何度立ててもダメだという場合には、ビジネスの仕組み自体に問題がある可能性が高く、仕組みの再構築という抜本的な手術が必要になります。

ここで大きなハードルが 2 つあります。1 つはビジネスの仕組み(ビジネスモデル)を十分に把握すること。もう 1 つは、ビジネスモデルをベースに、実際に価値を生み出す仕組みである「バリューチェーン」を作り出すことです。ここまで実現できて、初めて環境に適応したことになるからです。

まず、前者の場合、ビジネスの仕組みを体系立てて、分析と設計を行うことが重要です。例えば、ビジネスの仕組みとして組織だけを考えるのは不十分です。組織とビジネスプロセスは縦と横の関係で常に連動している関係上、組織を構成する要素を組み合わせ、ビジネスプロセスを実現させる方法まで落とし込まなければなりません。

次に後者の場合、重要なのはビジネスモデルからバリューチェーンを作るための事業計画です。例えば、次のようにビジネスモデルを変える場合を考えてみましょう。

どれをとっても、実際の仕組みとして実現するためには大きな投資を必要とします。したがって、株主や銀行など他人の資本を使ってビジネスをする場合、ビジネスモデルを変えることによる投資効果をきちんと説明する責任があります。

また、ビジネスモデルからバリューチェーンを構築する場合、具体的に何を実行する必要があり、それにいくらかかるのか、そして、それが実現した場合の損益モデルはどのようになるのかを事業計画として示すことができなければ、ビジネスモデルは「絵に描いた餅」になってしまいます。

これらのことより、アダプティブな企業であるためには、少なくとも次のことが考慮されたマネジメントを行う必要があることがわかります。

つまり、ビジネスモデルがマネジメントサイクルを回すための中心的な役割を担っているということでもあります。

本書では、アダプティブな企業であるために、ビジネスモデルをベースにマネジメントサイクルを実行する経営を「モデルベースマネジメント」と呼び、このような企業を実現するための根本的な考え方や実践的なノウハウを解説することを狙いとしています。本書を通じて、モデルベースマネジメントが環境の変化に合わせ変幻自在に姿(仕組み)を変えられるアダプティブな企業への扉になることを願っています。

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