[2002 JavaOneSM Conference in Japan 特集]
先日まで担当していた業務の関係もあり、今回の JavaOne では JXTA に注目しようと考えていました。しかしながら、諸般の事情により、JXTA 関連は本セッションのみの受講となってしまいました。本セッションでは JXTA 全体像、および現在の動向についてまとめられていました。
プロジェクトJXTA は Bill Joy が中心となってはじめたオープンソースの P2P 研究プロジェクトです。P2P というと Napster や Gnutella などのファイル交換アプリケーションが有名ですが、ほかにもインスタントメッセンジャーやグリッドコンピューティングのように、デバイスがサーバ等セントラルコンピュータを経由せず直接デバイスとアクセスするという接続形態をとります。
本セッションで言われていた理想的な P2P ネットワークとは、一元化できず、大規模な拡張性をもち、関係が一過的でリソースが分散しているような環境において、ノードおよびピアの数が増えるほど価値、パフォーマンスが上がるというようなネットワークであるとしています。
プロジェクト JXTA は XML ベースのプロトコルを提供します。いわば TCP/IP がクライアントサーバシステムのプロトコルとして使用され、HTTP が Web ベースのアプリケーションプロトコルとして使用されてきたのと同様、P2P で使用されるプロトコルとして JXTA があるわけです。
プロジェクトJXTA は以下のような特徴があります。
- 相互接続性
異なるベンダのアプリケーションであっても、JXTA プロトコルを実装していれば接続可能です。
- プラットフォーム非依存
特定のプラットフォーム、OS、ネットワークプロトコル、プログラミング言語に依存しない仕組みを提供します。
- ユビキタス
デスクトップPCのみならず、携帯デバイスから巨大なサーバにまで適用できるしくみとなっています。
JXTA ではネットワークに参加する Peer の種類は3種類あります。
一つ目は Micro Peer と呼ばれるもので、携帯デバイスなどリソースが限られたプラットフォームです。JXTA プロトコルのうち比較的軽量な部分のみを実装します。JXTA プロジェクトでは特に JXTA for J2ME (JXME) として内部プロジェクトが立ち上がっており、現在 MIDP 1.0 および i-appli での動作が確認されています。
二つ目は Simple Peer と呼ばれるもので、通常のデスクトップ PC などを想定しています。最初に実装が提供されたプラットフォームであり、J2SE での実装およびサンプルが Webサイトで提要されています。
三つ目は Super Peer と呼ばれるもので、豊富なリソースを持ったプラットフォームを想定しており、Micro Peer に対してリソースを提供します。Peer 同士がお互いを発見するためのランデブーピアとなることができます。
現在ではこれらの Peer 上での動作確認が終了し、以下のような作業が行われています。
- ベンチマーク、計測
メッセージトラフィックの計測テストおよびパフォーマンスのボトルネックの特定
- 垂直型スケーラビリティ
各 Peer での最適化作業、使用メモリ量の削減
- 水平型スケーラビリティ
多数の Peer が参加した場合のランデブー Peer などエンドポイントの最適化作業
さらに今後の動きとしては、各プラットフォームでの基本実装上で動作するサービスの開発(例: SOAP メッセージの送付など)、IETF へ提案し標準化作業を行うことなどがあげられていました。
JXTA プロジェクトには実装およびサンプルコードがダウンロードできる Web サイトがありますが、現在 600,000 のダウンロードがあり、80 以上の内部プロジェクトが動いていて、10,600 人がメンバ登録をしているそうです。
今回の JavaOne での新しい発表はi-appli での動作確認ができたということぐらいでしたが、概要でも触れたとおり、基本的な実装および動作確認が終了し、スケーラビリティの確保や JXTA 上でのサービスを考えるフェーズに入っており、実用間近という印象をもちました。また、やはり最近の流れですが、Web サービスとの関連もうたわれていて、今後の動向をウォッチしておく必要のある技術のうちのひとつであることは間違いないようです。
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一橋 範哉
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