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[Object Day参加報告]


ある日のエンジニア達の会話

「突然だけど、この間の Object Day に参加した?」
「いや、一応申し込みだけはしておいたんだけど、仕事が忙しかったので結局キャンセルしちゃったよ。」
「そうか、それは惜しいことをしたね。別にオージス総研の回し者じゃないけど、あれはなかなか良いイベントだったよ。会場の恵比寿のウェスティンホテルは立派で格好良かったし、セッションもなかなか良い内容のものが多かったし。」
「でもセッションといったって、”なんとかローズ”とか、”クリアーケース”とかの、あの会社で扱っている製品の宣伝みたいのが多かったんでしょ?参加費も無料だったらしいし。」
「いや、そういう宣伝みたいなのはほとんどなかったね。製品のデモもやってなかったみたいだし。セッションは事例紹介や UML のチュートリアルなどだったけど、内容は中立的なものが多かったみたいだね。 オブジェクト指向にまじめに興味を持っていて、これから実際にやってみようと思っている人だったら行って損はなかったと思うけどね。」
「ふ-ん、でもオージス総研って、一体どうしてそんなイベントを無料でやったんだろう?」

なんて会話が実際あったかどうかはわかりませんが、当日はなかなかの盛況でした。好天に恵まれたせいもありましたが、入場者数も予想以上の規模で、基調講演などはもう少しで立ち見が出てしまうほどでした。

さてここでは、当日の様子を少しでも味わっていただくために、私が受講したセッションや会場の様子を簡単に報告したいと思います。


基調講演 (10:00-11:15)
「ビジネスオブジェクト標準化のもたらすもの」
CBOP専務理事、東京国際大学教授 堀内 一氏

かつて DOA (Data Oriented Approach) を最初に提唱し、最近はオブジェクト指向技術の普及促進活動に力を注がれている氏が、現在専務理事を務める CBOP (Consortium for Business Object Promotion) の活動状況を中心に、ビジネスオブジェクト標準化の重要性について熱く語られました。
「要求をヒアリングして個別にモデルを作る時代は終わった。これからはビジネスモデルをサポートするソフトウェアコンポーネントが流通し、それをもとにソフトウェアを組み上げていく時代である。」という氏の持論を、いつもながらのパワフルな口調で話されていたのが大変印象的なセッションでした。

もともと今回のイベントは当初の集客目標を大きくオーバーし、1週間強で申し込み受付を締め切るという予想外の事態だったのですが、それでも当日欠席する人も相当出ることを予想していました。しかしふたを開けてみれば、欠席者の比率は予想より少なく、結果として基調講演の会場は超満員の状態になってしまいました。
運営サイドとしては、予想以上の来場者を迎え、かつ受付や会場で大きな混乱が発生することもなく、最高の状態の中でこのイベントのスタートを切ることができました。


ビジネストラック1 (11:30-12:15)
「Wall Street 金融ビジネスIT最新事情」
Software Services International, Inc. N. Venu Gopal氏

米国で情報システムのコンサルティング会社を経営し、オブジェクト技術を使っての、金融や医療分野のシステム開発やコンサルティングを手がけている Gopal 氏(ゴパール氏)に、今回の Object Day のために来日してもらい、講演をしていただきました。氏は、現在ニューヨークに在住していますが、もともとはインド出身のため、要求分析や分析をニューヨークで、設計や実装をインドに発注するというスタイルでビジネスを展開しています。日本にも15年間在住し、東京工業大学卒業という経歴を持っておられます。

プレゼンテーションは、米国金融業界における、過去10年間のオブジェクト指向技術適用の歴史と技術動向、そして将来の展望について、いくつかの具体的な事例紹介を交えながら、流暢な日本語で行われました。
今後のキーとなる技術 (Key Issues) として、氏は「分散オブジェクト」「大規模トランザクション」「レガシーシステムとの共存」の3点を挙げていました。 また「分散オブジェクトの CORBA と COM の戦いについては、COM が勝つであろう」という、CORBA 製品を担当している弊社の営業にとって衝撃的な発言もありましたが、これはご愛敬といったところでしょうか?


昼食休憩 (12:15-13:15)

セッション1が終わった後で、昼食タイムとなりました。
私自身は日頃お世話になっているお客様の某社の方々と一緒にホテル内の中華レストランで昼食を取りました。
この時間帯は来場者の方々すべてが一斉に昼食を取りに出たため、ホテル内はだいぶ混み合いました。
(ところでそういえば、スタッフには人数分弁当が用意されてたのを思い出しましたが、私の分は結局誰が食べたんでしょ?あとで聞いた話によると「こんな美味な弁当ははじめてだ!」と感動していたスタッフもいたそうですが。)


ビジネストラック2 (13:15-14:00)
「受託資産管理業務へのオブジェクト指向技術初適用」
-パイロットプロジェクトを終えてみて-
三井信託銀行 システム企画部調査役 中野 亮氏

ホスト系の開発をずっとやってこられた部署で、Rose/Forteを使ってオブジェクト指向開発にはじめて取り組んだときの経験談や苦労談を中心とする、きわめて説得力のある事例紹介でした。

といった、今回の経験を通じて学ばれた、非常に示唆に富んだ経験談やノウハウを紹介していただきました。


ビジネストラック3 (14:15-15:00)
「次世代生産システムへの展望と分散オブジェクト技術」
横河電機株式会社 情報技術開発センター長 柴田 友厚氏

IA (Industorial Automation) 業界の生産制御システムの概要と特徴について、石油、化学、ビール工場などの具体例を元にわかりやすく紹介する内容でした。リアルタイム性やノンストップ稼働などが一般的に重要な要件となるこの分野ですが、JAVA や分散オブジェクト、Web、Windows といった最新の IT 技術が、まずは HMI (Human Machine Interface) の部分に適用され、さらには次世代の生産制御システムにおいては重要な基盤技術になるとの展望が紹介されました。

プレゼンテーション資料もアニメーションがたっぷりで視覚的に充実し、時折ジョークも交えながらの抑揚の効いたプレゼンテーションは、「ビジネストラック」にふさわしい、あっという間の45分間でした。


UMLトラック4 (15:15-17:00)
「パネルディスカッション-オブジェクト技術導入の落とし穴-」

次のセッションまで少しだけ時間の余裕があったため、ちょっとだけこのパネルディスカッションの様子を覗いてみました。
ちょうど司会のHさんが「オブジェクト”しこう”の罠」などというスライドを前に、「オブジェクト思考ができない」「オブジェクト嗜好に陥る」「オブジェクト試行からオブジェクト施行へ」なんていう話をしている最中でした。ダジャレ好きの私としても、対抗して「オブジェクト私考で行こう」とか「オブジェクト歯垢がたまらないように」なんて考えながら、でもそこまでやりすぎると、座布団全部持って行かれるかな?などと思わず考えてしまいました。そうこうしているうちに、そろそろ次のセッションの事前打ち合わせの時間が迫ってきたので、テクニカルトラック会場へ。

そういえばこのセッションは、最終的にパネルディスカッションに決まる前にはずいぶんと色々とアイデアが出たものでした。
たとえば、

などと、いろいろなアイデアが出るには出たのですが、会場の設備や準備の問題などが色々と指摘されて、結局は当たり障りのないパネルディスカッションに落ち着いたのでした。


テクニカルトラック5 (16:15-17:00)
「Visual BasicとRDBを使ったオブジェクト指向開発の実際」

さて最後は何を隠そう、私のプレゼンです。 自分で喋ったわけですから、内容は一番よくわかっているはずですが、実際の反応がどうだったかはよくわかりません。自分自身としては、さして緊張することもなく普段通りのペースで、話したいことはほとんど話せたので、まあまあだったのでは?と思っているのですが...

話の内容は、実際に私が半年前に担当したコンサル案件の事例紹介です。
宇部興産株式会社殿(メインコントラクタは株式会社宇部情報システム殿)におけるイントラネットシステムのサーバーアプリケーションを Visual Basic と RDB (Oracle8) を使って開発したのですが、分析・設計・実装までを一貫してオブジェクト指向アプローチで開発しました。「Visual Basic とオブジェクト指向」「RDB とオブジェクト指向」というと、水と油のように思われる方もおられるかもしれません。
しかしオブジェクト指向アプローチは、必ずしも”純粋な”環境でなくても非常に有効であり、むしろ積極的に採用すべきだとアピールすることを、プレゼンテーションのひとつの大きなテーマにしました。

またタイトルで Visual Basic を強調したことから、言語に関する話を期待している人をがっかりさせないように、今回の開発を通じて見つけたいくつかの Tips も紹介しました。 併せて、通常私達がシステム開発をするときに行う、Unified Process ベースの繰り返し型開発手法に、概念モデリング・セッションアーキテクチャ構築などについても紹介しました。

手元には、ストップウォッチを用意して逐次時間を確認しながら進めましたので、時間通りちょうどで終了できました。
Object Day のメインイベントとも言えるパネルディスカッションに参加せず、私のプレゼンを聴きにきてくれた方々がたくさんおられたことには、とても感謝しています。


Object Dayその後

その日の晩は恵比寿ガーデンプレイスのビアガーデンで同僚達と打ち上げをしました。
思えば、年明けぐらいからアイデア出しのためのミーティングを何度もやったり、招待講演者への依頼をしたり、連休中にプレゼン資料を作ったり、といろいろ準備作業がありましたが、幸いなことにたくさんの人に来ていただくことができ、その甲斐がありました。(事務局などは、さらにもっと大変だったようですが。)とりあえず第1回目としては大成功と言って良い内容だったと思います。あとはセッションの内容が少しでも来ていただいた方に満足いただけるものになっていれば何よりです。

ここに紹介できなかった他のセッションも評判の良いものがたくさんありました。それらのセッションの講師の方々には、この場でご紹介できなかったことをお詫び申し上げます。
当日来場してくださったたくさんの方、貴重な時間を割いて招待講演をしてくださった方、皆さんありがとうございました。事務局をはじめとするスタッフのみなさんもご苦労様でした。
そしてObject Dayのことは知らなかった、あるいは知ってたけど行く気はなかった、でもいまこの文章を読んでいる貴方or貴女へ、この分だと来年もやることになりそうですので、今度は是非来てくださいね。

来年は Object Days になるのでしょうか???


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