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[奇妙なクラスと実世界]


2.銀行アプリケーションの事例

2.1 典型的な分析モデル


ここでは、銀行システムにおける簡単な預金アプリケーションを例にとって話を進めることにしましょう。
図1に分析段階のクラス図を示します。

 

ここでは、以下に述べる6つのクラスが導出されています。

ここに書かれたクラス図は実際のアプリケーションを構築する上では不十分なものでしょう。
なぜなら、顧客の住所や電話番号を変更することができませんし、普通預金や定期預金といった預金種類の違いも考慮されていません。 実際のアプリケーションにおいては、ここに登場したクラスは、より多くの属性や振る舞いを持ち、周辺にはさらにたくさんのクラスが定義されることでしょう。

ただし業務範囲を限定すれば、概ね妥当な分析モデルといっても良いでしょう。
登場する6つのクラスはすべて現実世界に存在するものです。
「顧客」「カード」「通帳」「カレンダー」は、私たちが実際に目にすることが可能な、実体を伴った存在です。
「預金口座」は概念的なものであり、これを直接見ることはできませんが、顧客が銀行に置いてある自分用の仮想的な財布とでも考えておけば良いでしょう。 (余談ですが、最近ではこの財布には穴が空いていて、不良債権にどんどん流れてしまっているようですね...)
「取引履歴」も同様に実体はありませんが、金銭出納帳の1行と考えれば、実体とみなしても良いでしょう。

ここでは現実世界に存在する実体や概念は中核クラスとしてほぼ導出されていますし、個々のクラスの役割やクラス間の関連もほぼ明確になっています。 またこのモデルを使って、エンドユーザーと業務仕様についてのディスカッションをすることも期待できるでしょう。
オブジェクト指向による分析段階のモデルとしては、まずは及第点と言ったところでしょうか。


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