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[インターネット時代のオブジェクト指向入門]


(3) IntranetとBusinessObject

企業システム内にこのインターネットの仕組みを使っていこうというのが、イントラネットの基本的な考えかたです。現在企業内で一般的なシステムの形態は、クライアント・サーバです。クライアント・サーバは、画面の表示と、アプリケーションが扱うデータとを分離して扱うことのできるアーキテクチャとしての利点があります。しかしその一方で、共有されているのがデータのみであるため、クライアント側にアプリケーションのロジックの大部分が割り当てられてしまう問題があります。このためアプリケーションの機能拡張などを行うときには、アップグレードをインストールされたクライアントごとに行わなければならず、保守性や拡張性を低めてしまいます。また、サーバとクライアントの関係はあまりに密なため、クライアント数の増加に対し、サーバを自由に再配置できず、サーバに負荷が集中するなどの問題も起こります。実際にクライアントに必要になるのは、表示を行うための最低限の部分だけであり、処理ロジックの大部分は共通化できるのが普通です。ロジック部分を表示部分と更に分割することで、いわゆる3層構造のクライアントサーバと呼ばれる形態になります。表示やデータベース処理などから独立したビジネスロジックを取り扱う部分はクライアントとサーバの中間層におかれ、各アプリケーションから使用され、再利用性、保守性を高める役割を持ちます。ところが、3階層クライアントサーバの必要性は声高に叫ばれているものの、その構築は一筋縄ではいきません。レイヤが増える分、互いのインターフェースを一致させる手間がかかり、それぞれの層ごとに開発環境を整備しなければならないなど、非常にコストがかかることも広く知られています。

WWWシステムはクライアントであるWWWブラウザと、HTMLをブラウザに提供するWWWサーバから成り立っています。この意味では2階層クライアントサーバシステムと同様の形態をとっていることになります。しかしブラウザ、WWWサーバ間の互いのインターフェースに関しては、ハイパーテキスト情報を表現するためのHTML(Hyper Text Markup Language)として既に統一化されており、ベンダごとに異なるインターフェースの従来のC/Sシステムにくらべ大幅に単純化されています。また企業での使用では、何らかのデータベースにWWW側からアクセスする処理が大半ですが、その際にも、WWWサーバ側でロジックを蓄積しておき、データベースサーバとインターフェースを取れるようにさえすれば、 すぐにでも3階層システムができあがることになります。さらに、もともとが商用の目的で作成されたシステムでないために、開発ツールや、サーバ、クライアントの大部分は無償で調達できます。

つまりWWWシステムのアーキテクチャをうまく利用することで、3層に分割されたアプリケーションを比較的容易に構築していくことができるわけです。

3階層システムの構築に成功すれば、ビジネスのロジックを共通で管理し、アプリケーションの性質をより保守性、拡張性の高いものにしていくことができるようになります。現在3階層から多階層のシステム構築が望まれる時代に入ってきています。多階層では、ロジックは更に最適化された分割をされ、クライアントサーバという大きな単位ではなく、ビジネスの一処理としていつでも再利用できる部品、ビジネスオブジェクトとよばれます。こうした複雑なシステムを容易に構築していくために、WWWアプリケーション作成においては、JavaやORBといったが新たなオブジェクト指向技術が積極的に採用されてきています。


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