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[2000 年 5 月号] |
[オージス総研の本]
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ユースケースの適用:実践ガイドゲリ・シュナイダー/ジェイソン・ウィンターズ 著 羽生田 栄一 監訳 株式会社オージス総研 訳 株式会社ピアソン・エデュケーション 2,730円 (税抜き 2,600円) ISBN4-89471-186-9 |
REFERENCE
ようやく、オブジェクト指向開発を支える根本的なツールである『ユースケース』に関する本を送り出すことができます。いままで、UMLでいくらでも複雑なダイアグラムを書くことはできるのだけれど、いったいどうやってそのダイアグラムを導けばよいのかわからないとか、ユーザーやクライアントの要求をどういう風に記述してどう管理していけばプロジェクトがうまくしかも繰り返し型で進むのかわからない、ユースケースをどんな観点でどのくらいの詳細さで書けばいいのかわからない、あるいはもっと直接的によいユースケース記述のお手本はどこかにないですか、といった疑問・悩みに本書は的確に応えてくれるでしょう。
思えば、ユースケース概念をスウェーデンのJacobson氏が提案してからほぼ10年が経過し、オブジェクト指向の世界でユースケースの普及は確立したといえるでしょう。当初は、ユースケースなど機能主義でありオブジェクト指向ではないといった批判(これ自体正しいのですが、逆にいうとユースケースの目的は純粋なオブジェクト概念に欠けている機能要求やプロジェクトの管理のための適切な単位を提供することにあったのです)が存在しましたが、いまではその必要性に文句をいう人はなくなっています。
本書では、非常にリアルなプロジェクト内部の具体的な会話を通して、具体的なユースケースの使い方、要求定義の仕方、プロジェクトの進め方、文書管理の仕方といったテーマが、具体的なノウハウとともに物語として進行して行きます。読者はあたかもそのプロジェクトのメンバーになったような気分で、ユースケースや要求定義、繰り返し型のプロジェクトといった新しい経験を実践的かつ段階的に積んでいくことができる、という寸法です。本当のプロジェクトに入る前のイメージトレーニングとして役立ててください。
実際のプロジェクトでは、こんなにうまくはいかないでしょうし、ユースケースの利用法もユーザーのレベルや業務ドメインの特性、開発メンバーの技術や文化に応じてカスタマイズしていく必要がありますが、その際の共通認識を本書は与えてくれることでしょう。
また、近年注目されているソフトウェア規模と工数等を見積るためのファンクションポイント法のオブジェクト指向バージョンとして、『ユースケースポイント法』が著者らの経験にもとづいて提案されているのも本書の読みどころでしょう。なお、本書を元にしたExcelのワークシート(日本語です!)が株式会社永和システムマネジメントの平鍋健児さんによって公開されています(https://www.objectclub.jp/download/technicaldoc/else)。これをベースにぜひ皆さんの現場のメトリクスを積み上げていってください。
本書を訳すに当たって、原書のUMLのバージョンが古かったので、最新のUML1.3に準拠するように書き改めました。
第1章
はじめに |
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1-1 | 反復型のソフトウェア開発プロセス |
1-2 | プロジェクト例 |
1-3 | プロジェクト概要 |
1-4 | リスク分析を開始する |
1-5 | この章のまとめ |
第2章
システムの境界を識別する |
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2-1 | アクターを識別する |
2-2 | ユースケースを識別する |
2-3 | アクターとユースケースを記述する |
2-4 | 時間の扱い |
2-5 | システム境界に潜む問題点 |
2-6 | プロジェクトの対象範囲を決定する |
2-7 | この章のまとめ |
第3章
主シナリオ |
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3-1 | 完全なユースケース |
3-2 | 複雑なユースケースの場合 |
3-3 | シナリオ |
3-4 | 主シナリオ |
3-5 | どこまで正しく、完全にするか指針 |
3-6 | その他の要求 |
3-7 | 記述スタイル |
3-8 | この章のまとめ |
第4章
副シナリオ |
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4-1 | 副シナリオを見つける |
4-2 | 重要な振る舞いを詳しく記述する |
4-3 | ユースケース記述を再検討する |
4-4 | この章のまとめ |
第5章
ユースケースを図で表現する |
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5-1 | アクティビティー図 |
5-2 | ユーザインターフェースを図で表現する |
5-3 | この章のまとめ |
第6章
大規模なシステムを分割する |
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6-1 | アーキテクチャパターン |
6-2 | ユースケースを使ってアーキテクチャをテストする |
6-3 | サブシステム間のインターフェースを定義する |
6-4 | ユースケースをサブシステムに割り当てる |
6-5 | サブシステムの文書化 |
6-6 | この章のまとめ |
第7章
ユースケースの文書化 |
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7-1 | 文書化のためのテンプレート |
7-2 | 注文処理システムのユースケース |
7-3 | 注文処理システム |
7-4 | システムレベルのユースケース |
7-5 | この章のまとめ |
第8章
ユースケースとプロジェクト計画 |
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8-1 | プロジェクト計画を立てる |
8-2 | ユースケースを使って工数を見積もる |
8-3 | この章のまとめ |
第9章
レビュー |
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9-1 | 完全かどうかのレビュー |
9-2 | 潜んでいる問題点のレビュー |
9-3 | エンドユーザとのレビュー |
9-4 | 顧客とのレビュー |
9-5 | 開発担当者とのレビュー |
9-6 | レビュー担当者 |
9-7 | システムに柔軟性を持たせる |
9-8 | この章のまとめ |
第10章
システムを構築し導入する |
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10-1 | ドメインのキー概念 |
10-2 | 反復のスケジュール |
10-3 | 導入とそれ以降 |
10-4 | この章のまとめ |
10-5 | 最後に |
付録 A
参考文献 |
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付録 B
文書のテンプレート |
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B-1 | システム/サブシステムの文書 |
B-2 | ユースケースの文書 |
B-3 | シナリオの文書 |
付録 C
本書で使用するUML記法 |
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付録 D
ユースケースによる見積もりに関する返信用フォーム |
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