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オージス総研の本

発見から納品へ

アジャイルなプロダクトの計画策定と分析
  • エレン・ゴッテスディーナー、メアリー・ゴーマン 著
  • 株式会社オージス総研訳
  • BookWay \3,500 (2014/12/5時点の税込)
  • 変形B5版
  • ISBN: 978-4907439880
2014年12月8日

本書のサポートページがあります。正誤表や追加情報を掲載していく予定です。

注意:本書は自費出版で刊行したため、本書のご購入先はこれまでネット書店様のみでしたが、2015年8月31日よりリアル書店様でのお取り寄せが可能になりました。リアル書店様でのお取り寄せの際には書籍名「発見から納品へ:アジャイルなプロダクトの計画策定と分析」と出版社名「BookWay」を書店様にお伝え下さるようにお願い致します。

本書の印刷をして下さったBookWay様のサイトにおいて本書の最初の30ページを眺めることができる「立ち読み機能」が提供されています。なお、この立ち読み機能で表示される書籍データはカラーで表示されますが、本書の紙書籍はグレースケールで印刷されているという点にご注意くださるようにお願いします。

目次

  • セクション 1 : 事例
    • 導入
    • 事前ビュー
    • 現在ビュー
    • 全体ビュー
  • セクション 2 : 主要概念
    • 導入
    • プロダクト
    • プロダクトのパートナー関係
    • 価値
    • 計画
    • 構造化された会話
  • セクション 3 : プロダクトの 7 側面
    • 導入
    • ユーザー
    • インターフェイス
    • アクション
    • データ
    • 制御
    • 環境
    • 品質特性
  • セクション 4 : 構造化された会話
    • 導入
    • 調査
    • 評価
    • 確認
    • プロダクトの7側面の調査と評価: 詳細ガイド
  • セクション 5 : 適応させる
    • プラクティスを適応させる
    • 構造化された会話を適応させる
    • 納品手法と調和するように適応させる
    • 商用ソフトウェアを調達、統合するために適応させる
    • 文書化のプラクティスを適応させる
    • 規制されたプロダクトを開発している場合にプロセスを適応させる
  • セクション 6 : ツールとテクニック

本書の解説

本書を一言で表現するならば、アジャイルではない従来開発の分析者のスキルをアジャイル開発に活用することで、開発内容に対する素早い合意を形成する方法を示した先進的な書籍だと言えます。本書で説明されたフレームワークは、Discover to DeliverTM (DtoD)と名付けられており、それが本書のタイトルになっています。やや説明が長くなりますが、この手法が登場した背景と特徴を以降で説明します。

2001年にアジャイル開発宣言が起草されて以来13年が経過し、欧米ではアジャイル開発が当たり前になりつつあります。そのようなアジャイル開発の普及に大きく貢献したのが「アジャイル開発のミニマムセット」と呼ばれる「スクラム」というコンパクトなアジャイル開発フレームワークです。「スクラム」は、単純化すると以下の4つの特徴を持ちます。

  1. スプリントという一定の期間毎に動くソフトウェアを作る
  2. 要求はプロダクトバックログという優先順位付けされた一覧表に保管される
  3. 各スプリントにおいてその時点での優先順位の高いバックログ項目を基本に、開発チームがスプリント内で開発できる目標を設定する
  4. バックログへの項目の追加や優先順位付け、スプリント毎に作成される動くソフトウェアの評価をプロダクトオーナーという役割の人が行う

1 のように一定期間毎に動くソフトウェアを作ることを時間枠(タイムボックス)納品と本書で呼びます。

スクラムは、優先順位付けされたバックログ項目の優先順位順に動くソフトウェアを作り、作成されたソフトウェアを評価することで開発依頼者や市場のニーズに即したソフトウェア(プロダクト)を開発することを可能にしました。

その一方で、スクラムはコンパクトなアジャイル開発フレームワークとして誕生したために当初は以下のようなことを行うための具体的な方法が示されていませんでした。

  1. プロダクトバックログ項目の表現形式
  2. プロダクトバックログ項目の定義プロセス

スクラムが発展する過程で、XP (eXtreme Programming) というアジャイル手法の考え方を取り入れ、i としてユーザーの声形式の「ユーザーストーリー」を用い、ii として Ron Jefferies の 3C(カード、会話、確認)などを適用するなどの方法が広まりました。さらに、本書でも紹介されているユーザーストーリーマッピングという手法が登場し、ユーザーストーリーをリリースや重要性を軸に並べて各リリースの内容を考えることが提案されました。これらの方法により、開発者ではないプロダクトオーナーが自分の理解できる言葉で要求を表現したり、リリース計画の計画策定に参加したりすることが可能になりました。

ただ、これらは「ユーザーストーリー」の表現形式やそれを検討する過程を 3 段階で考え、さらに計画と結びつけた方がよいということについて優れたアドバイスではあるものの、「ユーザーストーリー」をどのように考案するのかという具体的な方法を示すものではありません。また、具体的な方法が示されてもその方法によりプロダクトオーナーが単独で「ユーザーストーリー」の考案や優先順位付けを実際に行えるのかという問題も残りました。

さらに、「ユーザーストーリー」はソフトウェアの機能的な要求しか表現しておらず、データや品質特性、環境などプロダクト開発に関係するニーズをより多面的に理解し、表現し、開発内容を検討し、合意を形成することには適していません。言いかえれば、従来開発の分析に相当する作業を行うことを想定していないのです。確かに従来開発の分析作業はある程度の専門性が求められ、時間もかかりますし、文章を中心とした成果物を作るという点でもアジャイル開発とは相いれないものと思われるかもしれません。しかし、現実にはプロダクト(システム)の開発に関与する複数の利害関係者のニーズをより多面的に理解し、表現し、開発内容を検討し、合意を形成することが求められる場合も多いでしょう。

本書では、従来開発の分析作業を以下のように変えた、アジャイル開発とうまく組み合わせられるフレームワークを提示しています。

  1. ファシリテーションの活用
    • 専門家単独で行うのではなく、異なる視点の人々が参加するワークショップ(セッション)で迅速にニーズをより多面的に理解し、表現し、開発内容を検討し、合意を形成する
  2. 多様なモデルの活用
    • ワークショップ(セッション)で、ニーズや開発内容を軽量でとっつきやすい様々なモデル(短文を含む)により多面的に表現し、理解する
  3. 分析者の活用
    • 分析者がワークショップ(セッション)のファシリテーターやモデラーの役割を担うことで、プロダクトオーナーの役割を分担する

このフレームワークは、ファシリテーション、要求 / 分析の分野で長年に渡り活躍してきたゴッテスディーナーさんとゴーマンさんの検討の集大成として生まれたものです。このフレームワークの概要を手っ取り早く理解するための資料としては、下のオブジェクトの広場の記事があります。参照されることをお奨めします。

本書の内容

本記事の冒頭の目次に示されたように本書は、6 つのセクションで構成されています。これら 6 つのセクションの概要を以下に紹介します。

セクション 1 : 事例

ガラス清掃業を営むスクイーキー・クリーン (SK)社という設定で、その会社の課題、顧客、ビジネス、技術的な観点での価値を議論し、それらの価値を実現するソリューションを次回のリリース(事前ビュー)、直近の反復(現在ビュー)、ロードマップ(全体ビュー)という 3 つの計画対象期間で考えていく過程が記述されています。以降のセクションで示される例もこのセクションの事例に基づいています。

セクション 2 : 主要概念

「DtoD」の主要な構成要素であるプロダクト、プロダクトパートナー関係、価値、計画、構造化された会話の概要が説明されています。セクション 1 は、これらを実践している具体例になります。「構造化された会話」とは、「調査」、「評価」、「確認」の 3 段階を通じて候補ソリューションのオプションや要求に対する合意を形成するためのテクニックです。

セクション 3 : プロダクトの 7 側面

「DtoD」の構造化された会話では、話し合った内容を書き込むために「オプションボード」というものを使います。このオプションボードには、ユーザー、インターフェイス、アクション、データ等 7 つの側面(欄)がありますが、それらの側面の概要とそれらの側面で議論が始まる例が示されています。

セクション 4 : 構造化された会話

構造化された会話の「調査」、「評価」、「確認」の 3 つの段階を説明し、さらに構造化された会話で議論する対象となる各オプションについてそれらを検討するための問いかけや、調査や評価の進め方に対するアドバイスを提供しています。

セクション 5 : 適応させる

構造化された会話や、納品(開発)方法、商用ソフトウェアの調達、ドキュメント作成、規制下にあるプロダクトの場合のプラクティスの適応方法に対するヒントが説明されています。

セクション 6 : ツールとテクニック

受け入れ基準一覧、ビジネスポリシーとルールなど「DtoD」を実践するのに役立つ各種テクニックやツールの概要や例が紹介されています。

著者について

エレン・ゴッテスディーナー

EBG Consulting社の創業者であり、社長であるエレン・ゴッテスディーナーは、要求 + プロダクト管理 + プロジェクト管理をコラボレーティブな形で収束させた分野で世界的に認知されたリーダーです。エレンは、個人やチームに対するコーチングやトレーニングを提供するとともに、様々な業種に渡って発見と計画策定ワークショップをファシリテートしています。エレンは、世界中で広く執筆、基調講演、講演を行っています。彼女は、認定されたプロフェッショナルファシリテーターです。本書に加えて、エレンは『Requirements By Collaboration(邦訳「要求開発ワークショップの進め方, 日経BP, 2007」)』と『The Software Requirements Memory Jogger(邦訳「実践ソフトウェア要求ハンドブック, 翔泳社, 2009」)』という高い評価を得ている2冊の書籍の著者です。

メアリー・ゴーマン

EBG Consulting社の品質と納品担当の副社長であるメアリー・ゴーマンは、ビジネス分析と要求でリーダーと認知されています。メアリーは、プロダクトチームをコーチしたり、発見ワークショップをファシリテートするとともに、価値の高いプロダクトを定義するのに不可欠なコラボレーションプラクティスでビジネス、顧客、技術の利害関係者にトレーニングをしています。メアリーは、商業カンファレンスで講演し、アジャイル、ビジネス分析、プロジェクト管理コミュニティー向けに執筆しています。彼女は、認定されたBusiness Analysis ProfessionalTMです。IIBA ® とPMI ® コミュニティーを横断してビジネス分析職に対する中心的な貢献者であり、IIBA ® のBusiness Analysis Body of Knowledge ® や、IIBA ® やとPMI ® のビジネス分析認定試験の開発を支援しました。

本書の購入

本書の購入は、下のリストの書店からお求めください。Amazon様には、Kindle版もあります。ネット書店ではなく実際の書店でのお取り寄せの際には書籍名「発見から納品へ:アジャイルなプロダクトの計画策定と分析」と出版社名「BookWay」を書店様にお伝え下さるようにお願い致します。

本書の内容を補うインタビュー記事と、DtoDの入門記事

オブジェクトの広場では、DtoDの考案者の1人であるメアリー・ゴーマンさんへのインタビュー記事も掲載しています。このインタビュー記事では、ゴーマンさんにお聞きしたDtoDを実践する上でのいくつかの疑問点に対する回答が記されています。DtoDに基づくアジャイル要求入門は、DtoDの入門記事です。ご興味がある方は、合わせてお読みください。

参考情報


サポートページの作成にあわせて、他の記事へのリンクを変更しました。あわせて、軽微な文言の修正を行っています。(2017.12.13)