ObjectSquare [1999 年 8 月号]

[オブジェクト指向モデリング言語 UML]
   - 情報処理 VOL.40 NO.1, NO.3より -


UMLと開発プロセス

開発プロセスとは,開発の手順であり,オブジェクト指向でシステムを開発する際の開発局面や手順,各開発局面での成果物の構成,および各開発局面や手順を構成する作業内容に関するガイドラインやノウハウといったものの体系から成り立っている.しかし,UMLに基づく開発プロセスは,UMLの仕様には含まれない.したがって,中間成果物も含めて開発成果物をUMLに基づいて記述すると決めても,さまざまな開発プロセスがありうる.当然,開発組織の規模や体制や文化,開発対象分野や製品の特性に応じて適切な開発プロセスは異なる.現在,モデルを文書化する言語としてUMLを採用するある程度汎用の開発プロセスとして多くのものが名乗りを挙げている.有名なものだけでも,Rational Unified Process9),HPFusion法,Shlaer/Mellor法,組み込み向けのOCTOPUS法14)などがある.

ここでは,初期からUMLを意識し,体系としても最も整備され広く使われつつあるRational SoftwareのRUP(Rational Unified Process)を紹介する.これは,もともとObjectory法として知られていた手法を進化させたものである.汎用的なオブジェクト指向システム開発技法になっており,一種の開発プロセスの枠組みである.既存の一般的なオブジェクト指向開発手順を取り込んで標準化するとともに,分野や組織に合わせてカスタマイズできる点で注目できる.また,UMLの特徴として,モデル中でユースケース概念がオブジェクト概念と同等に重視される点が挙げられる.その結果,開発プロセスを進めていく1つの駆動力としてユースケースを取り込んでいるのも重要な点である.

RUPの特徴は,既存のオブジェクト指向開発のみならずソフトウェア工学的に有効な経験,知見をうまく取り込んで,UMLによるビジュアルモデリングを前提に1つの体系的な開発手順の枠組みを提示している点である.その枠組みは,(1)ユースケース駆動,(2)アーキテクチャ中心,(3)管理された繰り返し,(4)プロセス自体のカスタマイズ可能性,の4点で特徴付けられる.


© 1999 OGIS-RI Co., Ltd.

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