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「「BABOK(R) v2」の概要」

2011.04.04 株式会社オージス総研  林 公恵

「BABOK(R)」「BA (Business Analysis)」ビジネスアナリシスの知識体系について、前回は「PMBOK(R)」との比較から「BABOK(R)」の未来を考察しましたが、今回は「BABOK(R)」の概要を紹介します。

1.BABOK(R)とは

■BABOK(R)とは
BABOK(R)を編纂したIIBA(R)(International Institute of Business Analysis)は、BABOK(R)を、ビジネスアナリスト(ビジネスアナリシス活動の実践者)を支援するための「ビジネスアナリシスのプラクティスをまとめたグローバルなスタンダード」(ビジネスアナリシスの実務の中で実践され有効性が認められてきた活動の集合)としています。BABOK(R)における「ビジネスアナリシス」は、「組織の構造とポリシーおよび業務運用についての理解を深め、組織の目的の達成に役立つソリューションを推進するために、ステークホルダー間の橋渡しとなるタスクとテクニック」です。BABOK(R)では、そのビジネスアナリシスの知識エリアおよび関連するアクティビティとタスク、その実行に必要なスキルが説明されています。
従って、BABOK(R)は、BA業務のプロセスや方法論を示すHowTo本ではなく、自社のプロセスや実施するプロジェクトのBAアプローチ計画立案の際に参照モデルやチェックリストとして利用するのが良いと考えます。

■BABOK(R)の主要なコンセプト
BABOK(R)を理解する上で主要なコンセプトは、「ドメイン」「ソリューション」「要求」です。

また、BABOK(R)では要求を下記のように分類しています。

■知識エリアとタスク
BABOK(R)では、知識エリアとして、ビジネスアナリストが行う32のタスクを分類した6つの知識エリアと、ビジネスアナリシスの効果的な遂行を支援する振る舞い、知識、その他の特徴を記述した「基礎コンピテンシ」を定義しています。
知識エリアはプロジェクトの各フェーズを表すものではなく、各タクスに必要なインプットが利用できるのであればタスクを実行する順序に制約はありません。どのタスクからでも始められますが、トップダウンでゴールが設定される場合は「5.1ビジネスニーズを定義する」から、ボトムアップで現状の課題から検討する場合は「7.6ソリューションのパフォーマンスを評価する」から着手することが多いです。
図1に知識エリアの関係、表1に知識エリアとそのタスクを示します。

知識エリアの関係
図 1 知識エリアの関係

表 1 知識エリアとタスク
知識エリアとタスク<
出典:「ビジネスアナリシス知識体系ガイド(BABOK(R)ガイド)Version 2.0」日本語版

各タスクには、目的、概説(説明)、インプット、要素(実行に必要な主要なコンセプト)、テクニック(使用される手法)、ステークホルダー(タスクに関わるステークホルダー)、アウトプットとそのアウトプットを利用するタスクが記述されています。

たとえば、「7.6ソリューションのパフォーマンスを評価する」のタスク内容は以下のとおりです。

表 2 「7.6ソリューションのパフォーマンスを評価する」のタスク内容
「7.6ソリューションのパフォーマンスを評価する」のタスク内容<

テクニックは、1つのタスクに特有のものもあれば、複数のタスクで使用するものもあります。複数のタスクで使用するものは34あり、「第9章テクニック」に記述されています。
また、BABOK(R)では一般的なステークホルダーの例として、ビジネスアナリスト、顧客、ドメインのSME(ある特定分野の専門家)、エンドユーザー、実装のSME(開発者/ソフトウェアエンジニア、組織変革マネジメントの専門家、システムアーキテクト、トレーナー、ユーザビリティの専門家など)、運用サポート、プロジェクトマネジャー、テスト担当者、規制者(行政府・規制担当機関など)、スポンサー、サプライヤを挙げています。

■基礎コンピテンシ
BABOK(R)では、ビジネスアナリシスの実践に必要な行動、特性、知識、個人的資質をとして、以下のものがあります。

表 3 基礎コンピテンシ
基礎コンピテンシ<

2.ビジネスアナリシス(BA)の認定資格

IIBA(R)は、ビジネスアナリシスの経験と知識を有する人材を認定する資格として、CBAP(R)(Certified Business Analysis ProfessionalTM)とCCBATM(Certification of Competency in Business AnalysisTM)があります。
CBAP(R)とCCBATMについては以下のとおりです。詳細は、「CBAP(R)ハンドブック」「CCBATMハンドブック」を参照ください。IIBA日本支部サイトでは翻訳版が掲載されています。

表 4 CBAP(R)とCCBATMについて
CBAP(R)とCCBA(TM)について

CBAP(R)の日本人の合格者は2011年2月現在4名で、IIBA日本支部サイトでは「合格体験記」が掲載されています。合格までの苦労やポイントなどがリアルに書かれていますので、日本語での試験対策本がほとんどないこともあり、受験されるには貴重な情報だと思います。
また、CCBATMについてはIIBA日本支部では日本語で受験できるように、現在本部と交渉を進めています。3月のIIBA日本支部の会員・スポンサー向けメールマガジンによると、9月にペーパー試験での実施の方向で進めているとのことですから、これを契機に受験者、合格者が増えることでしょう。

今回は、超上流といわれるBAの知識体系であるBABOK(R)の概要と認定資格について簡単に紹介しました。「なぜ Why」「何を What」をまず明確にして、ビジネス目標達成のためのソリューション要求を開発するBAのスキルやテクニックは、これからの企業には重要でしょう。BAを実践することで「ビジネス的」に成功プロジェクトが増え、BABOK(R)の認知度が高まって実践事例が増えることで、BABOK(R)がさらにブラッシュアップされることを期待しています。そして、超上流を担当する人だけでなく、多くの人にBAについて関心を持ってもらいたいと思っています。

(株式会社オージス総研は、BABOK(R)の趣旨に賛同し、その普及と利用促進のために法人スポンサーとして、活動しています。)

バージョン3の概要についてはこちら

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