[2008 年 10 月号] |
[書籍紹介]
皆さんは、今、どんな書籍を読んでますか?
前回の記事から約3年が経ち、オブジェクトの広場編集員も新たな仕事や書籍に出会っています。これまでは比較的、技術書に趣を置いていましたが、今回はいろいろな分野からオススメ書籍を集めてみました。
書籍紹介にあたって、以下の2つの軸で書籍を分類しています。書籍紹介を読む参考にしていただけると幸いです。
専門書 ⇔ 一般書 | : 「専門書」はコンピュータやソフトウェア工学に関する専門的な書籍、「一般書」はより一般的なビジネス書などになります。 |
技術系 ⇔ 人間系 | : 「技術系」はより技術的な書籍、「人間系」はコミュニケーションや人間の心理を扱った書籍です。 |
全10冊の中に皆さんが興味を持つような書籍はありますか?
専門書 | |||
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人間系 | ・ トム・デマルコの「プロジェクト管理」がわかる本 ・ スーパーコンピューターを20万円で創る |
・ アート・オブ・プロジェクトマネジメント ・ More Exceptional C++ ・ UMLモデリング入門 |
技術系 |
・ 仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本 ・ ポール・スローンのウミガメのスープ ・ 目に見える議論 |
・ エンジニアのためのWord再入門講座 ・ いま、すぐはじめる地頭力 | ||
一般書 |
著者 | : | 吉平 健治 |
発行 | : | 秀和システム |
ISBN | : | 978-4-7980-1699-3 |
『ピープルウェア』をはじめとするトム・デマルコの著作をまとめ、リファレンス化した書籍です。ポケットに忍ばせるには少し大きいですが、いつもかばんに入れておけば、現場でちょっと確認したい時などに便利です。
トム・デマルコのプロジェクト管理の考え方は、現場で働くヒトたちが能力を発揮するためにはどうあるべきか、に終始一貫しています。 PMBOKなどを学ぶことは重要ですが、そこでは語りきれないこともたくさんあります。 誤解もたくさんあるかもしれません。例えば、エクセルとにらめっこすることがプロジェクト管理ではありません。 ヒトに注目し、ヒトが能力を発揮できる場を作り上げれば、自然とプロジェクトは良い方向に向かうでしょう。 トム・デマルコの書籍を読めば、そのことに気付くはずです。
本書は、ポケット図解とあるように、トム・デマルコの考えのエッセンスを簡潔に示しています。 オリジナルにはさまざまなエピソードや楽しい物語がありますので、ぜひ併せて読んでみてください。
こんな人に読んでほしい | : | 楽しく仕事したい方。プロジェクトがうまく行かず悩んでいる方。PM や PL をすることになった方。 |
こんな人が推薦しています | : | 研究系妄想コンサルタント |
著者 | : | 伊藤 智義 |
発行 | : | 集英社 |
ISBN | : | 978-4-08-720395-0 |
本書は、通常、数十億〜数百億円をかけ、ときには国策として開発が行われるスーパーコンピューターを、開発費わずか20万円、たった4人の天文学者が手作りで開発したという実話に基づく自伝的小説です。
著者である伊藤氏が、驚異的な計算速度を誇るスーパーコンピュータを開発していく中で、巨大楕円銀河誕生の謎を解明するなど画期的な成果を挙げていくストーリーをベースにしていますが、注目すべきなのは開発の裏側で繰り広げられた熱い人間ドラマです。
ものづくりを生業にしているエンジニア達はついつい技術的なことに執着してしまいがちですが、開発しているのは人間である以上、開発に対する思いや熱意を大切にしなければいけないと感じさせられます。
こんな人に読んでほしい | : | 昔抱いていた夢を忘れがちな大人。 |
こんな人が推薦しています | : | 毎日カーオーディオと戯れている2年目くみこまー |
著者 | : | 米光 一成 |
発行 | : | KKベストセラーズ |
ISBN | : | 978-4584130070 |
この本は、ゲームの企画担当という仕事に携わる著者が、「プロジェクト」(=複数の人間が集まって、何かを成し遂げようとすること)を楽しく進めるにはどうすればいいのか、について書いた本です。
チームの方針の決め方やチームでのアイデアの出し方、ミーティングの方法についてのベストプラクティスを、トピック形式で「ゲーム的」に解説しています。
PMBOKのような難しい理論をまとめた書籍と異なり、さらっと読み流せる本です。けど、とても大切なことが書いてあり、ためになります。
例えば、プロジェクトでは、「プロジェクトリーダー」と「上の人」が、いい意味で対立することがが大切だ、ということはとてもためになると思います。
こんな人に読んでほしい | : | 本に書かれている内容は簡単なので、初めてプロジェクトに携わるような新人さんにお勧めできると思います。 |
こんな人が推薦しています | : | 社会人1年目の雑用係 |
著者 | : | ポール・スローン&デス・マクヘール |
訳 | : | クリストファー・ルイス |
発行 | : | エクスナレッジ |
ISBN | : | 978-4767803326 |
この書籍は『水平思考推理ゲーム』の問題集です。 現実にある(あった)ことや、現実にあるかもしれないことについて、どうしてそうなったのか?と推理していきます。 答えが正しいか間違っているかではなく、答えを導き出すまでの過程を楽しむ書籍です。
世の物事は意外なことにあふれていて、一見なんでもないことの裏には驚くべきことが隠れているものです。 それらを見つけ出す活動は、豊かな発想を必要とする活動です。 また、固定観念を捨て、どこまでゼロベースでものを考えられるかも重要となるでしょう。 加えて、大胆な仮説を設定しつつも、論理的でなければいけません。 この書籍は、楽しみながらそれらを鍛えることができます。
また、本当の意味でこの書籍を楽しむには、出題者と数名の解答者に分かれて議論するのが良いでしょう。 出題者は解答者の思考を導きます。 決して、答えを教えるわけではありません。 解答者の視点を変えるヒントを出しながら答えへと導きます。 出題者にとって、ファシリテーションの良い練習となるでしょう。
こんな人に読んでほしい | : | 固まった頭をほぐしたい方。ファシリテーションを練習したい方。なぞなぞ好きな方。英國紳士、または英國少年な方。 |
こんな人が推薦しています | : | 研究系妄想コンサルタント |
著者 | : | 桑畑 幸博 |
発行 | : | PHP研究所 |
ISBN | : | 978-4569699738 |
会議におけるファシリテーションの初級解説本です。 これまで多くのファシリテーション関連書籍が出版されてきましたが、本書はそれら中から有益な部分だけを抽出してまとめなおしたような「いいとこ取り」の内容になっています。
「会議設計シート」や「コラジェクタ」など、すぐに実際の会議に使えるツールも紹介されているので、ファシリテーション本にありがちな「内容は理解できたけど、何から実践すればよいかわからない」といったこともほとんどないでしょう。 また、上記のような内容が、見開きの左ページに文章、右ページにイラストによる解説、という構成でまとめられているので、短い時間で読みやすく、忙しい方にもおすすめです。
こんな人に読んでほしい | : | 最近ファシリテーションに興味を持った人。ファシリテーションの本はいくつか読んだけど、いまいち要点をつかめていないと感じている人。 |
こんな人が推薦しています | : | 5年目文系くみこまー |
著者 | : | Scott Berkun |
翻訳 | : | 村上 雅章 |
発行 | : | オライリー・ジャパン |
ISBN | : | 978-4873112992 |
Microsoft にて 10年近く活躍した Scott Berkun という方が、ソフトウェア開発最前線の現場で蓄積した「プロジェクト管理」に関するノウハウをギュギュッとまとめあげた一冊。
巷にあふれる多くの「プロジェクト管理」本との大きな差異は、WBS等のツールや知識体系を表層的に紹介するのではなく、 「コミュニケーションの取り方」や「信頼関係の構築」といったいわゆる人間系の話題まで含めて、 著者の豊富な実体験を基に分かりやすく説明されていることでしょうか。
また、翻訳本ではあるものの、日本語訳の質も高く、読み進めやすいと思います。
こんな人に読んでほしい | : | プロジェクトマネージャだけでなく、ソフトウェア開発に携わるあらゆるステークホルダ。 |
こんな人が推薦しています | : | そろそろ若手とは主張しづらくなってきた組み込まー |
著者 | : | Herb Sutter |
発行 | : | Addison-Wesley Pub |
ISBN | : | 978-0201704341 |
C++という言語は、時代と共に、利用方法が進化しています。 これに伴い、昔の定石が現在では適切ではないということもあります。 言語仕様が変化しないのに、利用方法が変わってきているわけです。 不思議に思う方もいらっしゃるかと思いますが、これは ある意味C++プログラマの工夫の結晶です。
この本には、そんな比較的新しいのC++イディオムがまとまっています。
こんな人に読んでほしい | : | C++でプログラミングすることになった全ての人に。 |
こんな人が推薦しています | : | C++好き |
著者 | : | 児玉 公信 |
発行 | : | 日経BP社 |
ISBN | : | 978-4822283582 |
本書は、UMLの文法書ではなく、UMLで表現したいモデルとは何なのか?に着目した書籍です。著者が執筆した「UMLモデリングの本質」をさらに発展させた書籍になっています。
システム設計で必要な3つのモデル (静的・動的・機能) を整合性を取りながら作成するにはどうしたら良いのか?など、一般的なUML文法書ではあまり書いていないことを、豊富な例題を使って詳しく書いています。
UMLには慣れてきたけど、結局良いモデルってどう書くんだろう?と疑問に持った方にオススメです。
こんな人に読んでほしい | : | UMLの文法は理解しているけど、良い概念モデルの書き方がよく分からないという方。 |
こんな人が推薦しています | : | 毎日カーオーディオと戯れている2年目くみこまー |
著者 | : | 佐藤 竜一 |
発行 | : | 翔泳社 |
ISBN | : | 978-4798117133 |
タイトルのとおりエンジニアを生業とした人向けに Word を解説する本です。 本書では、エンジニアに求められるドキュメントとは「見栄え」がよく、「メンテナンス性」が高いドキュメントだと宣言しており、そのようなドキュメントを Word で作るためのテクニックの紹介がメイン コンテンツとなっています。
また、第 1 章「ドキュメント作成の意味とは」から始まり、第 7 章「チームでの作業を効率化する」で終わるという点もエンジニアを対象としているが故の特徴といえます。 このようにエンジニアが Word を使用する場面にフォーカスして解説されているので、無駄がなく、効率的に仕事に適用できる一冊です。
こんな人に読んでほしい | : | Word は嫌いだけど仕様書作成で使わざるを得ない人。ドキュメント作るときはなんとなく Word を敬遠してしまう人。 |
こんな人が推薦しています | : | 大恐慌におびえる5年目エンジニア |
著者 | : | 細谷 功 |
発行 | : | 大和書房 |
ISBN | : | 978-4479771135 |
経済雑誌でも特集が組まれるなど、今年評判の書籍「地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」」(出版は昨年末)の続編です。この地頭力は、コンサルタント業界でよく使われる問題解決力を指す言葉であり、著者曰く「結論から」「全体から」「単純に」考える 3つの思考力であるそうです。この能力を伸ばすことで、仕事や生活上の問題を素早く効率的に解くことができるとのことです。
本書は、評判になった前著よりも具体的に地頭を強くするためにはどうしたらよいのか一般的な視点で書かれています。前著を読んで、実際に日々行動から改善したいけどどうしたらよい?と考える人にはオススメです。
こんな人に読んでほしい | : | 仕事だけじゃなく人生の問題をスピーディーに解決したい全ての人 |
こんな人が推薦しています | : | 地頭強くしたい2年目くみこまー |
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