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[1999 年 2 月号] |
[Real-Time UML]
3.通常のUMLと一般的な開発プロセスによるアプローチ
本書のタイトルからすると、「組込み・リアルタイムシステムの開発にあたってどう
UMLを拡張していくか?」といったような内容をイメージしがちですが、実際は前述
したサマリを見ても分かるようにUMLというよりは組込み・リアルタイムシステムを
オブジェクト指向を使ってどのように開発していくか、といったポイントをまとめた
内容になっています。そういう意味ではReal-Time
OOADといったほうがいいかもしれ ません。
で、その内容ですが、本書では組込み・リアルタイムシステムに対し、通常のUML記
法と一般的なオブジェクト指向開発プロセスを使って開発していくスタイルを採って
います。モデル記法については、タイミングチャートやシーケンス図への状態追加など
一部の追加や拡張はありますが、基本的には通常のUMLと大きな違いはありません。開
発プロセスについても、アーキテクチャ設計で組込み・リアルタイムシステム特有のタ
スクや並行性の設計を行う以外は特に一般の方法と変わりありません。
これは、同じ組込み・リアルタイムシステム向けの手法でも記法や開発プロセスを独
自に拡張しているROOM2やOCTOPUS3などとはちょっと異なるア
プローチになります。しかし、本書のスタイルは新たな手法でないぶん、既にオブジェ
クト指向やUMLを知っている方にとっては馴染み易く、また、UMLやオブジェクト指向、
そして組込み・リアルタイムシステムに関する一般的な説明もかなり網羅されているた
め、これらの手法や分野に初めて取り組まれる方にとっても非常にとっつきやすいもの
になっていると言えます。
反面、そういった形式をとっているせいか、本書は他の手法に比べると読んだ印象がか
なり地味で、さらっと読み流しただけだと、組込み・リアルタイムシステムは単なる例
として使われている程度の普通のオブジェクト指向入門書のような印象を受けます。
オブジェクト指向に関する初歩的な説明(オブジェクトとは?関連とは?といったよう
な内容)も結構多いので、オブジェクト指向開発やUMLについては大体知っている、とい
う方には少々じれったく物足りなく感じるかもしれません。
2Real-Time Object Oriented Modeling
Language
3OBJECT-ORIENTED Technology for Real-Time System
© 1999 OGIS-RI Co., Ltd. |
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