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[1999 年 2 月号] |
[Real-Time UML]
4.分析とアーキテクチャ設計の部分がお勧め
本書で一番お勧めする部分は3章のオブジェクトの発見方法と、パターンの話を
除いた5章全般です。
特に、第3章の分析で述べられているオブジェクトの発見方法は、かなり細かく分類
されており筆者の体験の豊富さが感じられる部分です。先にも書いたように、リアルタ
イムシステムにオブジェクト指向開発を持ち込んだとき、まず最初に苦労するのがオブ
ジェクトの見つけ方です。一般の入門書にある銀行
口座や給与支払いシステムなどの 例題を前にして「こんなの実際の開発で使えそうにないし…」などと思ったことのある
人はこの部分を読まれるといいでしょう。
5章の前半部分では組込み・リアルタイムシステムと言えどもアーキテクチャを設計す
る大切さを説いており、個人的にも非常に共感を覚える部分です。オブジェクトにさえ
すれば拡張性や再利用性が可能になるという幻想を持った方、比較的小規模の組込み・
リアルタイムシステムにはアーキテクチャ設計など必要ないと思われている方などには
ぜひこの章を読んで欲しいと思います。また、アーキテクチャの具体的な内容が今一つ
ピンとこない方にもお勧めします。
また、5章の後半ではプロセス間通信、並行性の設計、タスクの表現方法、タスクとオ
ブジェクトのマッピング、タスク間の同期方法などについて記述されています。内容的・
量的に物足りなさが残るのが残念ですが、いわゆる組込み・リアルタイムシステムといっ
たものに特有の部分がここに凝縮されています。特に、何を基準としてタスクをくくり出
すか、といった点については他の手法に比べるとかなり多くの視点が与えられており参考
になります。
なお、先にも触れたように本書ではこの5章のアーキテクチャ設計に組込み・リアルタイ
ムシステムに必要な部分をなんでもかんでも押しこんでしまっているため、特に後半部
分は内容がかなり薄くなっいるのが気がかりです。また、他のフェーズと比較しアーキ
テクチャ設計への比重の偏りも気になる部分です。
© 1999 OGIS-RI Co., Ltd. |
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