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書籍紹介

改訂新版 エンタープライズアジャイルの可能性と実現への提言

アンチパターンとその克服事例
  • 藤井 拓監修, エンタープライズアジャイル勉強会 著
  • インプレスR&D \2,000 + 税
  • 変形B5版
  • ISBN: 978-4844396918
2019年5月13日

注意:本書の紙書籍はPOD (Print On Demand)で提供しています。紙書籍はリアル書店やネット書店で注文は可能ですが、リアル書店の店頭に書籍は並んでおりません。また、ネット書店から電子書籍の形でも購入可能です。

目次

  • 第 1 章 アジャイル開発の狙いと普及状況、勉強会の目指すもの
    • アジャイル開発の狙い
    • 欧米でのアジャイル開発の普及状況
    • 日本でのアジャイル開発の普及状況とアジャイル開発活用の鍵
    • エンタープライズアジャイル勉強会が目指すもの
  • 第 2 章 アジャイル開発、スクラムとアジャイル要求
    • アジャイル開発とは
    • スクラム
    • アジャイル要求
  • 第 3 章 アジャイル開発導入のアンチパターンとそれを克服するための提言
    • よく見られるアンチパターンと落とし穴、その対策
    • アジャイル開発導入のアンチパターンを克服するための提言
  • 第 4 章 エンタープライズアジャイルの実例
    • 事例の概要紹介の方針
    • 事例紹介
  • 第 5 章 アジャイル開発活用の推進役への支援
    • アジャイル開発活用の推進役向けのチュートリアル
    • エンタープライズアジャイルの集い
    • オンライン講座「アジャイル開発の基本」

本書の解説

本書は、2014年度の下期から準備委員会という形で始まったエンタープライズアジャイル勉強会の2018年12月までのご講演をまとめた書籍です。本書の著者であるエンタープライズアジャイル勉強会は、以下の趣旨で設立された団体です。エンタープライズアジャイル勉強会は、勉強会のご講演をまとめることで日本の企業での「エンタープライズアジャイル」の実現における障害とその克服方法、ビジネス上の効果などについて広範な知見を共有することを目的として本書を執筆しました。想定している主な読者は、企業でアジャイル開発活用の推進役の方々です。

近年、日本でもスクラムのようなチームレベルのアジャイルで比較的小規模なシステムの開発は行われるようになりました。しかしながら、日本では既存の商習慣等の影響でチームレベルのアジャイルをより大きな組織やシステム向けにスケールアップし、企業のビジネス競争力を高めるという状態に至っている企業がまだ少ないというのが現状です。
本勉強会は、チームレベルのアジャイルをより大きな組織やシステム向けにスケールアップし、企業のビジネス競争力の向上に貢献している状態を「エンタープライズアジャイル」と呼び、日本の企業でのエンタープライズアジャイルの実現における障害とその克服方法、ビジネス上の効果などについて、会員が多様な観点で議論し相互研鑽することを通じて、日本企業のビジネス競争力の強化に貢献することを目指します。

本書の第 1 章では、アジャイル開発と従来の開発の狙いの違いを説明し、さらにアジャイル開発の欧米と日本での普及状況を説明します。また、日本でのアジャイル開発活用の鍵となるアジャイル開発活用の推進役であることと、それらの方々に対する支援をエンタープライズアジャイル勉強会が目指すことを説明します。

第 2 章では、チーム単位のアジャイル開発を理解するために、アジャイル開発の特徴とスクラムでの開発の流れ、アジャイル開発における要求の取り扱い方を概説します。

第 3 章では、まずアジャイル開発を試行する際に陥りがちなアンチパターン[1]を提示しています。このアンチパターンを通じて、日本の企業での「エンタープライズアジャイル」の実現において直面する様々な障害とあるべき姿を概観します。さらに、これらの障害の解決策を考える観点として以下のものを提案し、これらの観点で勉強会の実行委員の方々のご講演を整理して紹介します。

  • 戦略
  • 戦術
  • 普及/転換
  • 日本固有の問題とその他の課題(失敗パターン)

第 4 章では、2015年7月から2018年12月までの期間に勉強会でご紹介頂いた以下のアジャイル開発の活用事例の概要を紹介しています。これらの事例は、アンチパターンに陥らずに日本で戦略的にアジャイル開発を活用した事例と位置づけで紹介されています。

  • 東京海上日動システムズ株式会社の事例
  • KDDI株式会社の事例
  • 新日鉄住金ソリューションズ株式会社の事例
  • 楽天株式会社の継続的システムテストパターンの事例
  • 株式会社リクルートライフスタイルの事例
  • ウルシステムズ株式会社(製造メーカー)の事例
  • ニッセイ情報テクノロジー株式会社の事例
  • 株式会社日本経済新聞社の事例
  • ヤマハ株式会社の事例
  • 楽天株式会社のはじめての My アジャイルの事例
  • コニカミノルタ株式会社の事例
  • コクヨ株式会社の事例
  • 株式会社三菱UFJ銀行の事例

第5章では、アジャイル開発活用の推進役の支援のために、エンタープライズアジャイル勉強会が開催しているイベントや情報サービス産業協会と共同で開発したオンライン講座[2]を紹介します。

第 2 章と第 3 章は、勉強会でのご講演資料のスライドを多数引用しており、スライドを参照して下さるという前提で説明文がかなり端折られています。その点で、詳しい説明を期待される方にとっては本書が期待外れなものになる恐れがありますのでご注意ください。

第 2 章で参照されているスライドを含む本書籍の紹介プレゼンがエンタープライズアジャイル勉強会のサイト[3]に掲載されています。第2章に掲載されている図をより詳細にご覧になりたい方はこのプレゼンをご利用下さるようにお願いいたします。

旧版からの改訂点

2014年10月から準備委員会という形で活動を始めたエンタープライズアジャイル勉強会は「はじめに」に記されているように「エンタープライズアジャイルの3つの可能性とそれらの可能性の実現を阻む障害と解決策を共有する」ことを目指して活動を始めました。本書初版は、2014年10月から2016年6月の2年間の勉強会の活動をまとめたものでした。本改訂新版では、2016年7月以降2018年12月までの勉強会の活動内容をさらに反映したものになるとともに、カラー印刷になりました。

2016年7月以降の勉強会の活動を通じて、監修者はそれ以前と比べて以下のような変化を感じたり、認識を深めることができました。

  • 新たな価値やビジネスを創出する上で、不確定な要求に対応(仮説検証)する必要性が増すとともに、アジャイル開発の適用が顕著に増えてきた
  • アジャイル開発の活用を成功させるために、活用を支援するマネジメントと活用の推進役のペアの重要性が明らかになってきている
  • アジャイル開発活用の推進役が、ビジネスと開発の両面においてアジャイル開発の難しさ(落とし穴)と活用方法を正しく理解する必要がある

本改訂新版は、これらの変化や得られた認識を記すために第1章「アジャイル開発の狙いと普及状況、勉強会の目指すもの」を新たに追加するとともに、第2章に「アジャイル要求」の内容を追加しました。

さらに、初版に収録されていた10件の事例を2016年7月以降2018年12月までにご紹介頂いた事例とともに見直して、上記の変化や認識を裏付ける11件の事例を選び直して第4章「エンタープライズアジャイルの実例」に収録しました。

最後に、勉強会での活動においてアジャイル開発活用の推進役の育成や交流のために取り組んだチュートリアルやオープン・スペース・テクノロジー、情報サービス産業協会と共同で開発したオンライン講座などを第5章「アジャイル開発活用の推進役に役立つプログラム」において簡単に紹介しています。

参考文献

[1] 藤井 拓, エンタープライズアジャイル徒然草 第1回: よく見られるアンチパターンと落とし穴, https://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/technical/EnterpriseAgileEssay/essay1.html
[2] Udemy「アジャイル開発の基本: アジャイル開発活用の推進役となるために」, https://www.udemy.com/jisaag-kpjleufc/
[3] エンタープライズアジャイル勉強会, エンタープライズアジャイルの可能性と実現への提言~アンチパターンとその克服事例, https://easg.smartcore.jp/C23/file_details/VVRZRFBRPT0=