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レポート

AWS Summit Tokyo 2015

クラウドで、未来を「今」に。
株式会社オージス総研
矢田恵子、大西洋平
2015年6月11日

2015/6/2 ~ 6/3 に、グランドプリンスホテル新高輪で AWS Summit Tokyo 2015 が開催されました。AWS Summit は Amazon が世界各地で主催する AWS に関するイベントです。AWS ユーザ企業や各ユーザコミュニティが参加し、基調講演、事例・ソリューション紹介、デベロッパー向けカンファレンス、ハンズオンなど幅広い領域に渡るセッション、各社ソリューションの展示などが行われます。そして、AWS Summit Tokyo 2015 では、2 日間で約 14000 人が参加し、世界各地で開催される AWS Summit の中で最大規模となりました。本レポートでは筆者が参加したセッションについて AWS の最近の動向や所感を交えてご紹介します。

aws

全体を通して感じた AWS の動向

モバイル、IoTがこれからの強化ポイント

今回はモバイル、IoT についてはこれからサポートを強化していく方向性であることが伝わるセッションが多かったように思います。例えば、2 日目の基調講演において、モバイル・IoT の分野に力を入れている、またこれからも入れていく、ということが分かる内容が随所で語られていました。

(例)

  • モバイル向けに強化されている各種サービスについて紹介が行われる
  • Amazon Lambda(EC2なしにイベント駆動でコードを実行できるサービス)と Cognito(認証サービス)の東京リージョン提供発表(提供は今年夏~を予定)

ビジネスの実現や拡大に専念できるように、サービスを提供していく

以前から強調されている点でもありますが、エンジニアがビジネスの実現・拡大に専念できるようにする、という点を重視してる点も見逃せないと思います。インンフラ管理に対する省力化も勿論そうですが、今まで専門の知識が必要とされていた領域について参入の敷居を下げるサービスの提供も、さらに様々な領域へ行われていることを感じました。

聴講したセッションのご紹介

今回参加した Day2(6/3)のセッションについて概要と所感をご紹介します。詳細については、後日資料が公開されるとの事ですので、この概要を見て興味がわきましたら公開資料を参照頂けると良いかと思います。

Day2 キーノート

発表者:

  • Marco Argenti(VP, AWS Mobile, Amazon Web Services, Inc.)
  • Gene Farrell(Head of AWS Enterprise Applications, Amazon Web Services, Inc.)
  • Eugene Kawamoto(Sr. Mgr, Business Development, Amazon Web Services, Inc.)

概要:

  • 東京リージョンで提供開始する新サービスの紹介(Amazon WorkDocs、AWS Lambda、AWS Cognito)
  • 新サービスの活用事例紹介(ガリバーインターナショナル社 中古車販売用モバイルアプリ)

所感:

Lambda、Cognito とともに AWS 系のイベントにおいてモバイルや IoT/M2M 向けの活用が紹介されており、国内でも注目度が上がっていたサービスです。正式に東京リージョンで公開されたことで、実サービスへの導入を本格的に検討できる段階に入りました。両者とも、活用次第で自サービスの開発量を削減できる有効な道具になると思われます。皆さんも活用を検討してみてはいかがでしょうか?

(大西)

米国におけるIoT/Big Data & Analytics活用事例の最前線

発表者:

  • Miha Kralj(Principal Solutions Architect, Amazon Web Services, Inc.)
  • Eugene Kawamoto(Sr. Mgr, Business Development, Amazon Web Services, Inc.)

概要:

  • 北米での IoT 分野の事例紹介
  • AWS サービスを活用した IoT / Big Data 向けのアーキテクチャについて
  • 今後の課題(特にセキュリティ・運用面)

所感:

IoT/ビックデータにおける、AWS の活用事例や概要を掴めるような内容でした。なお、日本国内でも有名な「スシロー」の Amazon Kinesis を活用した生産管理の事例は、Amazon Kinesis の高度な活用の点、寿司がクラウドにつながるという意外さの点で、北米でもかなり有名だそうで、事例紹介で必ず登場するそうです。

(矢田)

今日から始められる、機械学習!Amazon Machine Learningのご紹介

発表者:

  • 今井 雄太(アマゾン データ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト)
  • 榎並 利晃(アマゾン データ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト)

概要:

  • そもそも機械学習とは?
  • 機械学習のうち、どのようなパターンをサポートしているのか?
  • どういう事ができるのか?(ユースケースの紹介)
  • Amazon Machine Learning の実際の使い方 (デモも交えて)

所感:

Amazon Machine Learning は機械学習の専門家向けというより、一般の開発者が自身のサービスに機械学習を取り入れやすくしたサービスという位置づけでした。教師用データの作成は若干大変そうだと感じるものの、2 項分類(入力データの属性から 2 つのグループに分類する)のような簡単なアルゴリズムであれば試せそうだと実感できました。機械学習が身近に感じられました。

(矢田)

開発生産性を上げるためのデプロイ戦略

発表者:

  • 吉羽 龍太郎(アマゾン データ サービス ジャパン株式会社 プロフェッショナルサービス本部 部長)

概要:

  • デプロイを自動化するモチベーション
  • デプロイ自動化のパターン
  • デプロイ自動化の課題

所感:

本セッションはデプロイにターゲットを絞って、デプロイ自動化の動機・課題・導入パターンを紹介していました。

  • 手作業のデプロイで発生する間違いを防ぐため
  • そもそもシステム構成が複雑すぎて手作業でのデプロイが不可能

などの理由でデプロイの自動化を試みている人は多くいると思います。ただし、デプロイの自動化といっても、対象システムの特性やニーズによって、実現方法は様々です。例えば、あらかじめデプロイ済みのインスタンスをAMI化し再利用すれば十分な場合や、オンデマンドでプロビジョニング(基盤の設定)からデプロイまで一気にやってしまう場合もあります。おそらく本セッションの資料も公開されると思いますので、資料で紹介されているデプロイの基本パターンを把握し、自分のシステムにはどのパターンが合うのか検討してみると良いのではないかと思います。

(大西)

【パネルディスカッション】テーマ: IoT が変える世界

発表者:

  • モデレーター
    • 工藤 卓哉(アクセンチュア Data Science Center of Excellence兼 アクセンチュア アナリティクス日本統括 マネジング・ディレクター)
  • パネリスト
    • 高萩 昭範(株式会社Moff 代表取締役)
    • 田中 郁(株式会社リクルートホールディングス Recruit Institute of Technology リサーチエンジニア)

概要:

モデレータである工藤氏が普段の業務の中で感じている疑問を第一人者であるパネリストに質問しながら進める形式でした。

  • IoT のプロジェクトを機動的に行うための組織作り
  • データ分析の勘所
  • 今後の展望
  • etc.

所感:

伝統的な企業向けのデータ分析業務を行うモデレータと消費者向けの IoT プロジェクトを運営するパネリストの対比が際立つパネディスカッションでした。

  • 組織運営上の工夫

    • IoT のプロジェクトを運営する上では、ユーザにとって何が重要なのか把握し、小さいプロジェクトから始めてフィードバックを受けながら、随時、機能拡張を行うやり方が有効だという話をされていました。まだまだ定石が分からない新しい分野では必要な取り組み方だと思います。また、データ分析はデータの解釈が重要であり、かつ対象領域ごとに専門の担当者を用意するなどの工夫が必要とのことでした。
  • 今後の展望について

    • 高萩氏によると、現在、コンシューマ向けのデバイスでは、デバイスのリソース制約などの理由によりデバイスが直接でデータ分析やインターネット接続を行うことが少なく、スマートフォンをゲートウェイ代わりに使う事例が多いようです。ただし、デバイスやネットワークの性能が上がるにつれて、デバイスで直接センサーデータの分析を行ったり、必要に応じて直接クラウドとやり取りするようになるだろうとのことでした。技術の進歩によってアーキテクチャが大きく変わる可能性がありますので、技術動向は随時ウォッチする必要があります。

(大西)

JAWS-UG 勉強会 in AWS Summit Tokyo 2015

運営:

概要:

Day 2 のナイトイベントとして開催された 「JAWS-UG 勉強会 in AWS Summit Tokyo 2015」。日本における AWS のユーザーグループ会である JAWS-UG の勉強会です。今回もドリンク(ちなみにアルコール有りです!)と、おつまみを片手に、「くさい」が表示される T シャツ(?!)のデモや、恒例(?!)の会場内ウェーブが繰り広げられる LT を見たり、全員参加型の AWS ウルトラクイズに参加してみたり。なお、このウルトラクイズの優勝者は今年 10 月にラスベガスで開催される「Re:Invent」に参加できるとあり、 大変盛り上がっていました。(なお、私は途中の割と早い段階で敗退……はい、精進します)

さらに私自身も、先日の AWS のイベント(それも今回と同じくナイトイベントの JAWS-UG 勉強会)でお会いした方々とここで再会して盛り上がっていました。ひょっとすると、ここが一番楽しんだ時間かも知れません…。

(矢田)

最後に

平日の 2 日間、ということでなかなか参加が難しい点もあるかと思いますが、様々な事例紹介やでデベロッパーカンファレンスを一度に見ることが出来て大変勉強になりました。また、他の AWS のイベントと同様に、ナイトイベントも盛り上がる、楽しいイベントの側面もありますので、AWS やクラウドについて興味のある方は、次回は是非参加されてみてはいかがでしょうか?

(矢田)

最近では、Web 上に AWS 関係の情報が充実してきていますので、イベントに参加せずとも AWS の動向は把握できるようになってきています。しかし、Web で情報収集する場合、自分の関心のある情報しか得られない傾向にあります。一方、イベントの場合、当初の目的とは異なるもののイベント参加後に役立つ情報やネットワークが偶然にも得られることがあります。例えば、私の場合、IoT 分野の活用事例やアーキテクチャの話を中心に聴講しようと考えて参加しましたが、セッションテーブルを眺めていて、偶然、私の関心ごとの 1 つであるAWS でのデプロイ関係のセッションがあることに気づき、急遽、受講することにしました。おかげで国内第一人者からデプロイの典型的なパターンや導入の工夫を聞くことができ、今後自分で調査する上で非常に参考になる話を聞くことができました。ぜひ皆さんも、私のような偶然性も期待して(?)、来年の AWS Summit には参加してみてはどうでしょうか?

(大西)