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プログラミング

新人エンジニアにすすめるリファレンスと本の活用

新人研修の現場から伝えたい基本のこと
技術部
アドバンストテクノロジセンター 荘司 繭也
ビジネスイノベーションセンター 木村 めぐみ
2024年10月29日

初めての言語を使って開発するときにどうやって調べるか?基本的な「調べる」という行為ですがそのやり方を教わる機会は案外少ないかもしれません。今回は当社の新人研修で見えた実際の状況をもとに、新人エンジニアにすすめたい方法を、リファレンスと本の活用に絞って紹介します。情報を得る方法はさまざまありますので、選択肢の一つとして参考にしてください。

はじめに

7 月に実施した当社の Creation Style 新人研修では、Java は知っているが JavaScript は知らない新入社員が、短い研修期間の中で JavaScript を使った開発を行いました。開発時間は 100 分× 4 スプリント、開発するのはユーザーのインサイトをとらえてチーム毎に考えたアイデアを形にした Web アプリのデモ画面です。

開発では静的な Web ページに、作りたいアイデアに合わせて動的な制御を実装しました。各チームは実装したい動きを JavaScript でどのように書くのか調べながら進めました。ただ、開発の過程は、JavaScript の実装方法を調べるのに時間がかかったり、実装してもなかなか思うように動かなかったり苦労も多かったようです。

実際の開発現場で、新人エンジニアが独学で新しい技術に取り組むことは少ないかもしれませんが、わからない技術を調べながら進める際に、今回の研修と同じように時間がかかってしまうケースはあるかもしれません。そんなときに試してもらいたいやり方を、新人研修の講師として受講生の技術サポートをした技術部の荘司さんに聞きました。

検索語句によっては必要な情報になかなかたどりつかない

研修では、調べたいことを検索してヒットしたサイトを参考に実装するチームが多かったのですが、バージョン違いの古い情報が出てきたり、宣伝が間に入って知りたい情報になかなかたどりつかなかったりするケースが見られました。

検索の仕方によっては、時間がかかったのにやりたいことがなかなかできないということがあります。

リファレンスサイトや本を使って情報を得よう

必要な情報を得る際におすすめしたいのが、リファレンスサイトや本の活用です。

リファレンスはその言語の使い方(言語の仕様)を網羅的に説明するドキュメントです。その言語の開発者やその言語のアップデートをしている人たちが書いているものですから内容は信用できますし、最新のものに対しても正しい使い方がわかります。JavaScript の場合、MDN Web Docs というリファレンスサイトが該当します。

リファレンスを見るには

リファレンスは Web や本で参照できます。Web で初めてリファレンスサイトを探すときは、「調べたい言語 リファレンス」で検索すると、たいていリファレンスサイトがトップに表示されます。

また、リファレンスサイトの URL が分かっているときは、リファレンスサイトを指定して検索すると便利です。たとえば JavaScript で日付計算を行いたい場合、Google では +site://developer.mozilla.org/ja 日付 計算 、Bing では site://developer.mozilla.org/ja 日付 計算 のように入力することで特定の Web サイト(この場合は JavaScript のリファレンスサイト)を指定したサイト内検索ができます。

リファレンスサイトの使い方

リファレンスサイトはまずは日本語版を読み、日本語訳が不自然で意味が理解できないような場合は英語版を読むとよいと思います。英語といってもそこまで難しい書き方をされていることは少ないので適宜自分で 1 文 1 文を翻訳にかけて読むとよいでしょう。(まとめて翻訳すると読みにくい文章に翻訳されやすいです。)

リファレンスに慣れない最初の間は、リファレンスサイトの読み方がわかりにくいかもしれません。そこで、先ほども例に出した JavaScript で日付計算のやり方を調べる場合を想定してリファレンスサイトの使い方を説明します。

  1. 検索語句「Javascript リファレンス」でリファレンスサイトを検索します。JavaScriptの場合は MDN が該当します。
  2. 次にリファレンスサイト内の検索を利用します(リファレンスサイトの右上あたりにあることが多いです)。今回の場合「日付 計算」のように必要なワードを区切って検索します。
  3. 検索結果から自分の調べたい内容が概要に書かれているページを選択します。今回の場合”本章では、JavaScript で数値と日付の計算を実行するのに使われる概念、オブジェクト、関数について紹介します。”と書かれた数値と日付のページがあるのでこのページを選択しました。
  4. 該当のページを読んでやりたいことに近いコードを調べます。記載されているコードがそのまま使えそうならクリップボードにコピーして自分が書いたコードにペーストすることもできます。
JavaScript リファレンスサイト
JavaScript リファレンスのページ(https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/JavaScript/Reference)


該当のページの説明を読んで、さらにわからないことがあった場合、リンクが貼っている用語は別タブや別ウィンドウで開いて確認します。たとえば、日付の説明のページには Date オブジェクトの説明文中に Date のリンクがあり、ここから Date オブジェクトの説明ページに飛ぶことができます。他にも文章中の言葉がわからないときは検索エンジンを使って検索するなど調べながら読み進めてください。

本は調べたい情報に確実にアクセスできる

リファレンスサイトと並んで本の情報も有用です。本は索引などを利用して辞書のように利用できますし、余計な情報を含まないので調べたい情報に確実にアクセスできるのが利点です。

一口に言語といっても本の種類が豊富にありますから、いくつかの観点で本を選ぶとよいと考えています。ただ、きちんと学ぶ場合に言えることは 1 冊の本だけで学ぶことは難しいところがあるということです。私(荘司)の場合は最終的に複数の本を買うことが多いです。

本を選ぶときの目安

本を選ぶときは、当たり前ですが、自分のレベルに合わせた本を買うのがよいです。特に入門書などは言語に関係ない部分から入ってくる場合があるので、基本的な情報系の知識を持っている場合はページの半分ぐらいが無駄になることもあります。

自分のレベルに合わせて本を選ぶときの目安は個人的には以下のような内容です。

  • 言語以前にプログラムの基本知識から学ぶ場合
    「エンジニア 初心者」などで調べて出てくる単行本を使う。
  • プログラムなどの基本知識がある上で言語について学ぶ場合
    「学びたい言語 初学者」などで調べて出てくる書籍を利用する。ただし、0 から学ぶなどと書かれているとプログラムの知識の部分まで含めた本になっていることがあるので注意が必要。

基本的な言語について理解している場合は、使いたいシチュエーションに合わせた言語の技術の本を選ぶとよいと思います。

個人的におすすめしたい本

  • 言語のリファレンス本
    「言語 リファレンス」などと調べると出てくる本です。いわゆる辞典のような使い方ができますし、下手にサイトを探すより早く調べることができることが多いです。読む本というより索引にする本として 1 冊持っておくと便利です。
  • オライリー本
    動物本とも呼ばれるオライリー社の本です。こちらはかなり深くまで技術について書かれている本なので言語について詳しく知りたい場合に読んでおくと深く理解ができるかと思います。ただし、書かれている内容はある程度前提知識を持っていないと難しい点などがあるので言語の基礎を学んだあとに読むとよい本です。
  • 言語に直接関係ないがおすすめしたい本
    『「リーダブルコード」Dustin Boswell, Trevor Foucher 著, 角征典 訳, オライリージャパン出版』をおすすめします。コードをどのように書いていくか、という点でまとめられた本です。コードは基本的にレビューが行われますが、そのレビューの際にわかりにくいということを少なくするためには読んでおくとよい本かと思います。

おわりに

本記事は、実際の新人研修での気付きから、初めての開発言語を自分で調べる際に試してほしいリファレンスと本の活用を紹介しました。技術情報を集める手段の一つとして、覚えていただけるとうれしいです。

そして、調べるときには、その場限りで解決するという意識ではなく、そのやり方について解決するという視点を持つのがよいと考えています。その視点が習熟にもつながると思っています。

本記事が参考になれば幸いです。