Creation Style新人研修を始めて、今年で6年目になります。これまでも、デザイン思考やScrumに加え、ユーザーからのフィードバックや事業化の視点を取り入れるなど、毎年少しずつ研修を改善してきました。
そして2026年度は、研修の内容を足すだけではなく、研修全体の設計そのものを大きく見直しました。
きっかけになったのは、「そもそも、どんなエンジニアを育てたいのか」という問いです。
目次
1. Creation Styleも6年目へ!「何を教えるか」から「どんな人を育てるか」へ
2. 「体験→学習→自走」の3周構造
3. AIで「作る時間」を減らし「考える時間」を増やす
4. 新人たちが取り組んだ8日間
5. 研修を終えた受講者の反応
6. 講師からひとこと
1. Creation Styleも6年目へ!「何を教えるか」から「どんな人を育てるか」へ
私たちが目指したのは、最初から正しい答えを知っている人でも、何でも一人で実装できる人でもありません。
分からないことに出会ったときに、自分で考え、自分なりの仮説を持ち、まず試してみる。そして、得られた結果からまた考え、次の行動を決める。
研修では、そんな姿を「期待を超える新人」と表現しました。
ここでいう「期待を超える」は、ものすごくプログラミングができるとか、何でも一人で解決できるという意味ではありません。分からないことがあれば質問する。自分の考えを相手に説明する。何を優先するのかを自分たちで考える。小さく動いて、結果を見て次を決める。つまり、不確実な状況でも、自分で考えて前へ進めることです。
そこで今年は、研修のゴールを、個々の手法や知識を身につけることだけではなく、こうした考え方や行動を、自分たちで実践できるようになることに置きました。
Creation Styleでは、顧客を理解し、問題を捉え、アイデアを形にして検証し、事業化を考えるところまで、一連の価値創造プロセスを扱います。今年は、このプロセスを段階的に受講者自身で回せるよう、研修全体を設計しました。
2.「体験→学習→自走」の3周構造
この力を身につけるため、今年は研修全体を「体験」「学習」「自走」の3周構造にしました。
最初に知識や手法をすべて説明するのではなく、まず一連のプロセスを体験し、そこで生まれた疑問や難しさを手がかりに手法を学び、最後は自分たちで実践する構成です。
- 1周目は、詳しい手法を学ぶ前に、まず一連の流れを体験する。
- 2周目は、その体験と結びつけながら手法や考え方を学習し、実践する。
- 3周目は、学んだことを総動員し、自分たちで計画・実行・検証・ふりかえりまでを行う「自走」の段階です。

1周目を、あえて詳しい手法を説明する前に始めたのにも理由があります。まず体験することで、「ここが難しい」「なぜこうするのだろう」という疑問が生まれます。その疑問を持った状態で手法や考え方を学ぶことで、知識を単に覚えるのではなく、自分たちの体験と結びつけて理解できると考えました。
そして3周目では、講師が少しずつ手を放します。研修の最後に「自走」を置いたのは、研修後の業務で自ら判断して動くことも見据え、学んだ手法を使えるようになることだけでなく、状況に応じて自分たちで次に何をするかを考えるところまで経験してほしいと考えたからです。講師が次の手順を示すのではなく、自分たちで状況を捉え、計画し、試し、結果から次を決めることを受講者自身に委ねました。
3.AIで「作る時間」を減らし「考える時間」を増やす
もう一つ、2026年度に試したのが、AIを活用した「実践Pivot」です。「実践Pivot」は、Set-Based Design(セットベース設計)1 の考え方を参考にしています。Set-Based Designでは、早い段階で一つの解決策に決め切るのではなく、複数の選択肢を持ちながら検討を進め、得られた情報をもとに徐々に選択肢を絞り込んでいきます。
私たちはこの考え方を、AIを活用したプロトタイピングにも応用することを試みました。最初から一つのアイデアを完成させることを目指すのではなく、複数の可能性を残しながら、ユーザーからの学びや得られた情報をもとに仮説を更新することで、本格的に作り込む判断をできるだけ後ろに置くことを狙っていました。
「実践Pivot」で重視しているのは、大きく作ってから方向転換することではありません。作り込みすぎる前に検証し、得られた情報から仮説を更新しながら、次に進む方向を判断することです。

これまでの研修では、アイデアを実際に動くものにするまでに多くの「実装」時間が必要でした。今年はその実装をAIに支援してもらうことで、プロトタイプをより素早く形にできるようにしました。
ただし、目的は「AIを使って速く作ること」ではありません。
作る時間を短くできるからこそ、「誰のどんな問題を解くのか」「何を確かめるために作るのか」を考えることに、より多くの時間を使えるようになります。つまり、早い段階で一つの案に決め切らず、検証しながら、本格的に作り込む判断をより後ろに置くことができるのです。
さらに、できたものをユーザーに触ってもらい、得られたフィードバックをどう解釈するのか、最初の仮説にこだわるのか、それとも問題設定やゴールそのものを見直すのか、AIを活用してもどの仮説を残し何を見直すかという判断は、受講者自身が行います。
特に「自走」のフェーズでは、こうした判断・決断も受講者自身に委ねました。AIによって「作る」ことのハードルが下がるからこそ、今回の研修では、何を作るべきかを考え、試した結果から自らの仮説を更新する力をこれまで以上に重視しました。
4. 新人たちが取り組んだ8日間
ここからは、「体験→学習→自走」の3周構造で進めた8日間を、新人たちの様子とともにご紹介します。
1日目はデザイン思考を体験するところから始まり、2日目以降、実際のユーザーへのインタビュー、アイデアの検討、プロトタイプ、事業化、そしてScrumによる開発まで、一連の価値創造プロセスに取り組みました。
1日目:まずは一周、体験してみる
今年は研修初日に、デザイン思考の体験ワークを取り入れました。
身近なテーマを題材に、ペアになって相手にインタビューし、相手が求めていることを考え、アイデアを出し、簡単なプロトタイプを作って試してもらいます。ここでの目的は、まずはデザイン思考の一連の流れを、悩みながらも自分でやってみることです。
いきなりのインタビューで話ができるのか、という講師の不安をよそに、戸惑いながらも次第に話が弾んでいきました。相手のことを考えて作ったプロトタイプを見せると「ほんと、これ欲しい」という反応も。
3時間ほどの体験ワークを終えると、「自分の聞き方次第で、相手が気づいていなかったことを引き出せた」といった声も聞かれました。まずは一周体験し、ここから8日間の研修が始まりました。
2~4日目:実際のユーザーを相手に何を作るか考える
2日目からは、実際のユーザーを相手にグループワークが始まります。57人が10チームに分かれ、チームごとにユーザーへインタビューし、その人が普段どんなことをしているのか、なぜそう考えるのかを掘り下げていきました。
最初は自分たちの仮説が合っているかを確かめるような質問をしていたチームが、次第にユーザーの価値観や行動の背景まで聞こうとするなど、少しずつ質問の仕方にも変化が見られました。
一方で、ユーザーの潜在的なニーズを捉える「インサイト」には、多くのチームが苦戦しました。講師からもフィードバックしながら、何度もチームで考えました。
さらに4日目には、事業化の視点も加わります。「このユーザーが喜ぶもの」だけではなく、誰にどんな価値を届けるのか、どうすれば事業として成立するのかまで視野を広げました。
5~8日目:作って試しながら、自分たちで判断して進む
AIも使いながら、素早く形にする
5日目からは、ここまで考えてきたアイデアを、実際に動くものへと変えていきます。
まずは、ユーザーに価値を届けられているかを検証するために最低限必要なもの(MVP)を考え、ユーザーストーリーの形にして優先順位をつけます。そして、各スプリント120分という短いサイクルで、開発とユーザーレビューを繰り返しました。
今年はAIを活用したこともあり、短い時間で実際に操作できるプロトタイプを作るチームが多く見られました。

形にすることが速くなった分、「何を作るのか」「どこまで作るのか」「ユーザーに何を確かめたいのか」を自分たちで考え、判断することが、より重要になります。
実際、ユーザーレビューでは、作ったものを詳しく説明することに時間を使い、ユーザーの反応を十分に聞けなくなってしまうこともありました。作ることが速くなっても、「何を確かめるために作るのか」を考えることは簡単ではありません。
自分たちのチームの進め方へ
3周目の「自走」に入ると、日を追うごとにチームの進め方にも変化が見られるようになりました。
- タスクを細かく分ける
- タイマーを使って時間を区切る
- 分担前に全員で確認する
- 個人で作業した後に時間を決めて集まる
- 「分からない」と言えるようにする
など、うまくいかなかったことを振り返り、自分たちなりの進め方をつくるチームが増えていきました。
研修終盤には、その変化がいろいろな場面に現れました。残り時間を考えて「新しい機能はもう追加しない」と決めたり、最後まで直らない不具合があっても「今あるもので発表の練習をしよう」と切り替えたり。
最終日には、それぞれのチームが開発したサービス(アプリケーション)を発表しました。
発表では、アプリを使うユーザーの日常を寸劇で紹介したチームも。予想以上に本格的な寸劇に、聴講者からも笑いが起こり、発表の場が一気になごみました。
最初から自分たちだけで進められたわけではありませんが、体験し、学び、実践する中で、少しずつ自分たちで考えて次の行動を決める場面が増えていきました。こうして、8日間の研修が終わりました。
5. 研修を終えた受講者の反応
今回の研修では、正解のないテーマに向き合い、試しながら考え直すことを繰り返しました。アンケートでも、そうした経験について次のような声がありました。
- 正解がないお題に取り組むことで、頭が柔らかくなった。
- 正解がない手探りな状態で進めていくという、これまでになかった経験ができた。
ユーザーに向き合うことについてのコメントも多く見られました。
- ユーザーのニーズという答えのないものに対して、その答えを仮説を基に定義するというワーク自体が楽しかった。
- 自分のユーザーに対する理解が、解釈なのか、事実なのか考え直すことができた。頭では理解していても、常に意識しないと抜け落ちてしまうと感じた。
そして、「この研修でもっとも学べたもの」で最も多かったのは、「チームを通じた価値創出」でした。

自由記述にも、
- チームでの作業が多かったため、KPTを回して毎回問題やその解決策を見直しながら、改善することを経験できた。
- グループでの取り組み方について、どんな風に話したら意見が出やすいか、進め方はどうしたらよいかなどを考えながら取り組め、成長できた。
といった声があり、講師から見えていたチームの変化と、受講者が感じた学びが重なるところでした。
また、
- 少し大変な時もありましたが、同期と楽しく取り組めました。
という感想もあり、同期と一緒に取り組んだ時間も印象に残ったようです。
受講生の声については、次回、インタビュー形式で、もう少し詳しくお伝えする予定です。
6. 講師からひとこと
最後に、本研修に携わった講師・サブ講師を代表して、講師4名からひとことお届けします。

原田:
Creation Style新人研修の企画・設計に加え、スクラム講師としても関わり、今年で6年目となりました。これまでに累計200名を超える新人が受講しています。
今年は「期待を超える人材とは何か」から研修を見直しました。新人の皆さんには、正解のない中でユーザーの話を聞き、仮説を立て、何度も試してもらいました。アイデアが出ない、AIで予想外に形になる、ユーザーから想定外の反応をもらう――そんな中でも、振り返りながら自分たちなりの答えを形にしていく姿が印象的でした。3周目の「自走」では、後半になるほど「何をすればよいですか」ではなく、「こう考えたので、まずこれを試します」という声が増えていきました。
8日間ですべてを身につけることはできません。それでも、相手の立場から考え、チームで試し、結果から次を変える経験を、これからの仕事でも思い出してもらえればと思います。皆さんと最後まで走り切れたことを嬉しく思います。

喜多村:
デザイン思考の主担当として、またユーザー役としても関わりました。印象に残っているのは、スプリントが進んでも多くのチームがユーザーに立ち戻り、ユーザー自身もまだ気づいていないニーズに向き合い続けたことです。自分たちの問いに自覚的で、違和感に嘘をつかず、前向きに、真摯に対話を重ねたからこそ、ユーザーである私自身も驚くようなインサイトにたどり着いていました。
そのインサイトがあったからこそ、その先のアイデアや事業化の検討にも、自分たちらしく進んでいたのだと思います。ユーザーに向き合い続ける姿勢と、信念をもって前に進むチームの力を、これからも大切にしていってほしいです。

黒田:
新人研修では、受講者がユーザー課題をもとに検討したプロトタイプアプリについて、「どうすれば事業として成立するか」を考えるパートを担当しました。事業化には様々な観点が必要なため、まずはそれらに気づいてもらうことを目的に、リーンキャンバス作成のグループワークを実施しました。
難易度の高いテーマでしたが、最終日のお披露目会では競合との差別化やマネタイズ方法を多面的に発表しており、大きな成長を感じました。今後も日々の業務の中で新たなアイデアに出会った際、「事業化できるか」という視点で検討を進めてくれることを期待しています。

皆川:
昨年に引き続きUIデザインの講師を担当しました。デザイン思考、UXデザインを学んでいただいた後でのUIデザインの説明であったため新人さんにとっても「どうやって画面に落とし込めば良いのだろうか」という困りごとに応えられたのではないかと考えています。デザインはセンスではなくスキルとして身に着けていただくきっかけになれたなら幸いです。
8日間のグループワークでは、楽しそうにわいわいやりながらも、真剣に取り組む新人の皆さんの姿が見られました。そんな皆さんの様子を見守ることは、総勢15人の講師・サブ講師にとっても、8日間の楽しみの一つでした。
研修を終えて約1ヶ月。新人の皆さんは今、それぞれの配属先で新たな業務に取り組んでいます。
これからいろいろなことを吸収しながら、自分らしさも大切に、のびのびと成長していってくれたらと思います。一緒に仕事をすることもあるでしょう。そのときはよろしくお願いします!

