スプリントレビューを楽しく、そして、インクリメント受け入れ可否の認識違いを防ぐための、アジャイルチームの工夫を紹介します。お花畑セレモニーは、プロダクトオーナーと開発チームにまだ少し遠慮があるチームにお勧めのプラクティスです。
「スプリントレビューが無事に終了。さて、次のスプリントの計画だ! あれ? 結局、このバックログアイテムって Done になったんだっけ? プロダクトオーナーとは色々議論したけど、結局これってどうなったんだっけ? Done でいいんだよね? いいはずだ。よし、Doneにしちゃえ!」
ところが後日、プロダクトオーナーが「え? 受け入れてないよ」と言いだしたから、さぁ大変……
こんなこと、ありませんか?
プロダクトオーナーには、受け入れたのか駄目なのか、はっきりして欲しい! ですよね? でも、だからって「これはどうなんですかっ? OKですかっ? NGなんですかっ?」と迫るのも、なんだか殺伐とした光景です。
そこで、お花畑セレモニー です!
これをやれば、プロダクトオーナーは、やんわりと、でもハッキリと、インクリメントの受け入れOK/NGを示せます。受け入れたインクリメントのバックログアイテムには花を! 駄目なものはそっとスルーして……
沢山の花を飾って綺麗なお花畑を作れば、スプリントは大成功!野に咲く一輪の花……な光景になってしまっても、その花を愛でつつ次のスプリントに臨みましょう。
お花畑セレモニーとは?
いつやるの?
スプリントレビューの最後。締めの儀式として行います。
誰がやるの?
スクラムチーム全員で!
プロダクトオーナーと開発チームの代表が前に出て儀式を行い、みんなで見守ります。
どんな時にやると良いの? どんな問題の解決に役立つの?
こんなとき
お花畑セレモニーは次のような時にやるとよいプラクティスです。
開発チームはスプリント毎にゴール達成に必要なバックログアイテムを概ね実装できています。スプリントレビューではデモが行われ、プロダクトオーナーも色々と意見を言い、活発な議論が行われます。 また、スクラムチームの関係に大きな問題は見当たりません。しかし、スクラムマスターがプロダクトオーナーと開発チームの間に微妙な距離があると感じることがあります。もしかして、お互いに遠慮しているのだろうか……?
こんな悩みに
お花畑セレモニーは次のような悩みを解決します。
開発チームの悩み
- デモを見たプロダクトオーナーが色々と言ってくるのに釈然としない気分になることがある。それって文句じゃなくて新しいアイディアなんだよね? このスプリントのバックログアイテムとしてはOKなんだよね? そう言いたいけど、何となく言えなくてモヤモヤする。
- このスプリントでこれだけ完成した! みたいな達成感が無い。1スプリント分のバックログアイテムを片付けたと思ったら、すぐに次が降ってくる感じで、ちょっと気分が乗らなくなってきた。
- スプリントレビューで議論が白熱して、色々と意見が出るのはいいけれど、結局、どのバックログアイテムがOKになったのかがあやふやなままになっている。まぁいいか、と流しちゃってるけど、ホントは良くないよね?
プロダクトオーナーの悩み
- スプリントレビューではバックログアイテムを受け入れるかどうかをハッキリ言わないとならないのは解っている。でも、「駄目だ」と言うのは少し気が重い。開発チームに嫌がられて今後がやりにくくならないか心配だしね。OKかNGか、何となくわかるよね? そこは察して欲しいんだけど。
勿論、どんなチームでも、スプリントレビューをより楽しいものにする為に、是非、試してみてくださいね!
やってみよう!
前提条件はあるの?
特にありませんが、バックログが電子版しか存在しないチームの場合は、印刷したり付箋に書くなどして壁に貼っておいてください。
なお、地理的に離れた場所に居るメンバーで構成されたチーム(分散チーム)で、スプリントレビューの時にも一か所に集まらないチームの場合、ちょっと難しいかもしれません。
用意するものは?
造花(小) ★必須★
- 数は、そのスプリントに投入したバックログアイテムの数。
- 100円ショップやホームセンターで数十個入りの袋詰で売ってるので、それを買ってくればOK! ラッピング用品のコーナーを探すと吉。
- サイズは小です。多分3センチくらい? あまり大きいのは避けましょう。
- シール付のものが良いです。シール付でない場合は別途セロハンテープ等を購入しておきましょう。
- 色のバリエーションがイロイロあるとなお良し。なければ単色でも大丈夫!
- どうしても造花が見つからない場合はドットシール等での代用も可。
- でも花の方がなんか盛り上がりますよ? 頑張って探しましょう!
カゴ
- 造花を入れるカゴです。無くても良いですが、あれば雰囲気が出ます。
- こちらも100円ショップで適当なのを見繕いましょう。個人的には籐カゴを推します。
予算
全部あわせて300~500円程度あれば大丈夫です。
造花(赤・青・白、各8個入り)とカゴ。全部で400円(税別)でした。
花のサイズは3cmくらい。裏にはテープが付いています。
盛り付け(?)の例です。
やり方はカンタン!
- 開発チームの代表は、造花の入ったカゴを持ちます。
- プロダクトオーナーと開発チームの代表は、貼り出されているプロダクトバックログの前に立ちます。
- 開発チームの代表は、一つ目のバックログアイテムを読み上げ、プロダクトオーナーにカゴを差し出します。
- プロダクトオーナーは、バックログを受け入れるのならばカゴから造花を1つとってバックログアイテムの付箋に貼ります。(受け入れない場合はパスします)
- 開発チームのメンバーは見守ります。花を付けて貰えたら拍手をすると良いでしょう。
- 全てのバックログアイテムについて3-5を繰り返します。
とあるチームのお花畑
実際の風景はこんな感じ
下の写真は、お花畑セレモニーをやっているスプリントレビューの風景です。上の方の7個は既に花を付けた後のバックログアイテム。8個目の確認をしているところです。
- 開発チーム代表(付箋を指さしてる手):「次はこちらです」
- プロダクトオーナー(手前側の人影):「えーっと……」
これがお花畑だ!
次の写真は、スプリント4終了時点のもの。各スプリントで完了したバックログアイテム(の付箋)が花を付けられた状態で貼られています。最初の頃は大量の付箋が貼られているだけ(最下段のスプリント5のような状態)だったのが、どんどん花飾りが増え、ついにお花畑に!
これだけは気をつけて!
お花畑セレモニーでは、完了かどうかを全員が揃っている場でハッキリさせます。
ところで完了の定義は、ちゃんと決めていますか?
どうなれば完了なのかは、スプリントの開始までには決まってないといけません。もし、スプリントレビューの場になってからそれを議論し始めたら、楽しいセレモニーがたちまち緊迫し、殺伐とした空気に包まれてしまいます。
そうならないために、プロダクトオーナーは、バックログリファインメントの時やスプリント計画会議の時にバックログが完了になる条件(どうなっていれば受け入れるのか)を開発チームに伝えましょう。
開発チームは、スプリント中のなるべく早い段階で、完了の定義についてプロダクトオーナーと一度は会話をしておきましょう。スプリントレビューで見せるデモのシナリオを共有しておくのも良いかもしれません。
綺麗なお花畑を作るために、バックログは日頃からきちんと手入れをしておきましょう!
まとめ
スプリントレビューはスクラムチームがスプリントの成果を確認する大事な場です。全員で達成感を共有し、次のスプリントに向かって気持ちを盛り上げる場でもあります。
お花畑セレモニーは、そんなスプリントレビューの締めくくりに使う、みんなのプチ☆プラクティス(みんプチ☆)です。完成したバックログアイテムに花を飾ることでスクラムチーム全員で完了を確認し、スプリントを重ねながらお花畑を広げて行くことで皆の気分を盛り上げます。
淡々と続くスプリントに疲れたとき、是非お試しください!