組織デザイン思考は生き生きと自律した組織をつくるために考えた手法です。今回から2回にわたって創造ステップについて解説します。今回は上位目標をさぐるために用いるバリューグラフというツールを紹介します。
これまでのおさらい
前回までに、共感ステップから問題定義ステップまでの流れを解説しました。誰でもある程度はこの思考プロセスを使って成果を出すことができるよう、それぞれのステップで有用なツールを紹介し、進め方のガイドとなるようにしました。

問題定義ステップを終えると、組織に存在する問題のうち、今回解決したい問題を定義することができているはずです。また、問題の背景に存在する構造も把握できているはずです。デザイン思考に共通するポイントですが、早くプロトタイプを作り、テストし、フィードバックを早く得て、間違っていても「早く失敗する」ことをよしとしてます。よって、良いフィードバックを上手に受け取ることが大事です。問題定義ステップが終わった段階で問題定義の理由が曖昧であると、フィードバックを受け取っても何がまずかったかを把握するのが難しくなります。そこで、きちんと着眼点を定め、焦点を絞っていることが重要です。
創造ステップ

さて、今回の本題の創造ステップです。創造ステップでは、目標を達成する具体的な手段を考えます。このときに、できるだけ思考の自由度を広げ、目標を達成するための手段を幅広く検討します。
そのときにおさえておくべきことは価値です。組織を維持発展させるためには価値が大切です。価値をきちんと作って価値に基づいた運営をすることで人々は生き生きとした活動ができます。だから、組織デザイン思考では創造ステップは価値を創造するステップと捉えます。
また、「組織は戦略に従う」ものです。だから戦略、そして戦略がよって立つところの価値をきちんと定めて確認する必要があります。
そこで組織デザイン思考では、自分達のあげた目標の上位目標を知ることで目線を高くし、視野を広げて、目標を達成するための手段を幅広く検討できるように創造ステップのプロセスを設計しました。そして、組織の構造は「組織が目的を達成するための手段である*1)」ことから、価値を定めたうえで組織の構造を確認することを考えました。
バリューグラフで上位目標を知ろう

バリューグラフ*2)は、最初のアイデアの上位目標が何であるかを探り、その上位目標を達成するための別の手段を強制的に考えさせることで、目標を達成するための手段を広く検討できるツールです。成果物としては、これまでのアクティビティで出した目標(仮)の上位目標が出ますが、なぜバリューグラフを使ったアクティビティをするかというと、組織の目指す大目的に向かってメンバー全員を一体化するためです。このことを理解してバリューグラフを使うことが大事です。
- 『システム×デザイン思考で世界を変える』, 前野隆司/保井俊之/白坂成功/富田欣和/石橋金徳/岩田徹/八木田寛之(著) 日経BP社 (2014/3)
- 『価値づくり設計』, 石井浩介/飯野謙次(著) 養賢堂 (2008/4)
目的 | 目標(仮)を整理して序列づけ体系化することを通じて、組織の目標にむかってメンバー全員を一体化する |
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インプット | ネガポシートの目標(仮) |
アウトプット | 目標(仮)の上位目標をまとめたバリューグラフ |
バリューグラフは、問題定義ステップでアウトプットした目標(仮)が組織においては何のためなのかを考えることからスタートし、検討を進めます。具体的には次のリストのように進め、図にまとめます。
- 検討すべき項目を設定する
- 項目に対し「なぜそうするのか?」を考え、その目的を斜め上に記載し、矢印で繋ぐ
- 項目に対して「どのように達成するのか?」を考え、別の手段を考える
- 2と3を繰り返し、さまざまなアイデアや解決策を導き出す

バリューグラフを描くときのポイント
- みんなでアイデアを出す
- 突飛なアイデアも許容しながら議論を進める
- 違和感を覚えるアイデアがあれば組み直すことも必要
- 不要であれば、出発点の目標(仮)を削除しても良い
次に…

バリューグラフを使って出すことができた目標達成のための手段は、組織に受け入れられるものでなくてはなりません。そのためには、組織内の利害関係者の関係がどのようになっているかを把握することがポイントです。そして組織のあり方を確認します。
組織デザイン思考では、CVCA・WCA (Customer Value Chain Analysis・Wants Chain Analysis) というツールを用いて組織の関係を整理すること勧めています。そしてその結果を元に再びバリューグラフを描いて目標を再度考えていきます。最後にはSMART評価を用いて活動目標が具体的であるかを確認します。
次回はこの流れを説明します。