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デザイン思考

組織デザイン思考 問題定義ステップ

組織デザイン思考による組織づくり [第三回]
オージス総研&さくら情報システム
ITAコミュニティ 組織デザイン思考分科会
2015年7月9日

組織デザイン思考は生き生きと自律した組織づくりのための手法です。連載二回目は共感ステップのツールと進め方を紹介しました。三回目のこの記事では共感ステップのおさらいと、問題定義ステップについて解説します。

共感ステップのおさらい

第二回目の前回は、共感ステップで有用なツールを3つ紹介しました。前回の記事の中で書けませんでしたが、紹介した3つのツールは共感ステップが目的とする「組織のメンバーに共感し、組織の進みたい方向や問題を理解する」のを助けます。組織のメンバーに共感して問題を理解することが大事だと思っても、どのようにすればどのような理解を得ることができるのか悩むところだと思います。そこで、我々、組織デザイン思考分科会はツールと手順を揃え、ガイドを提供することにしたのです。

共感ステップの流れ

実際にやってみましたが、この共感ステップはかなり混沌とした状態になります。つらい状態ですが、それで良いと考えています。この段階では組織のメンバーの話を聞き、丁寧な対話を重ねることが大事です。課題や解決策を決め打ちしてしまうことや出てきた意見を綺麗にまとめてしまうことは避けたほうがよいです。混沌とした情報や感情をそのまま扱い、逆に深堀りすることが大事です。

特に、免疫マップを用いて目標の達成を阻害している見えないメカニズムを把握することがとても重要です。何かを変えようとした時、目標に対する直接的なアクションを起こしがちですが(例えば、週2日の休肝日を設けることに対して、週2日は会社帰りに居酒屋に寄らないと決意する)、課題が発生する原因や感情に目を向けないと変化は成功しません。共感ステップでは、表面上の事象だけではなく裏に隠れた情報や感情を浮かび上がらせる事が重要です。

問題定義ステップ

問題定義ステップ

さて、今回の本題の問題定義ステップです。問題定義ステップでは、組織に存在する問題のうち、今回取り扱う問題を定義します。

このステップでは、着眼点を定め、焦点を絞り込んでいくことが重要です。焦点を絞ることで、この後に続くステップで問題解決案を出しやすくなり、また仮にテストの段階で問題を解決できていないことが分かったとしても、問題定義が間違っていたことが分かり、やり直すことができます。組織デザイン思考では組織のメンバーも気づいていない性質のものを扱うので、やってみるまでは正しく問題を捉えられているか分かりません。ですので、焦点を絞り迅速に解決策を出し、プロトタイプを提示してテストしてフィードバックを得ることが重要です。*1)

*1) 参考)オージス総研Webマガジン 「デザイン思考 その6 -問題定義-」, オージス総研, 竹政 昭利

組織デザイン思考のプロセスでは、共感ステップで集めた情報を次に紹介するネガポシートで整理することにしています。

ネガポシートで情報の整理

ネガポシートは、私達 ITA コミュニティ組織デザイン思考分科会のオリジナルのツールです。共感ステップで得た仮の目標と組織に存在する固定概念の整理をします。そうして、組織に存在する問題は何であるかを把握します。

ネガポシートを使ったアクティビティは、課題や問題などのネガティブな情報と「こうありたい」というポジティブな情報とを繋ぎ、最終的にポジティブな方向に意識が向かうよう進めます。もし、前回の免疫マップでネガティブな情報のみが出ている場合、共感ステップで実施した他のアクティビティ (例えば、親和図法) からもポジティブな情報を拾って進めると良いと思います。

目的目標(仮)と固定概念の関係を整理し問題を把握する
インプット免疫マップの目標(仮)と固定概念、親和図にあるポジティブなアイデア
アウトプット目標(仮)と固定概念の関係性

ネガポシートは次のリストのように進め、図のようにまとめます。

  1. 親和図や免疫マップを元に関係者がこうありたいと思っている目標をポジティブ欄に整理する
  2. 免疫マップを元に関係者がもっている否定的な考えをネガティブ欄に整理する
  3. ポジティブな考えの足をひっぱるネガティブな考えを紐づける
  4. 大きな目でポジティブな考えとネガティブな考えを眺めて問題を把握する
ネガポシート

ネガポシートのポイント

  • 免疫マップをもとにポジティブな考え、ネガティブな考えを素直に言葉にしていく
  • 広い視点で何が目標(仮)を妨げている固定概念なのかを考える
  • 整理しながら、免疫マップを作成しているときに気付かなかった固定概念を見つける
  • ポジティブな考えから自分たちの目的、目標を考える
  • 特にポジティブなイメージをしっかりと把握する
ネガポシートの例

まとめ

問題定義ステップ

繰り返しますが、問題定義ステップは「組織に存在する問題のうち、今回解決したい問題を定義する」ステップです。

組織デザイン思考では、ネガポシートをつかって共感ステップで得た情報を整理し、問題を把握することを提案しています。扱う問題は組織のメンバーも気づいていない性質のものなので、早くプロトタイプを作り、テストし、フィードバックを早く得て、間違っていても「早く失敗する」ことをよしとします。

ですが、問題定義の理由が曖昧であると、フィードバックを受け取っても何がまずかったかを把握するのが難しくなります。そこで、きちんと着眼点を定め、焦点を絞り込んでいくことが重要になります。

さて、次は創造ステップです。創造ステップは四回目五回目の2回に分けて解説します。