事例
KINTOテクノロジーズ株式会社様
マイクロサービス化によるシステム再構築事例
トヨタファイナンシャルサービスのマルチモーダルモビリティサービス「my route」の全国展開に向けて、バックエンドシステムの再構築をマイクロサービス化により実現
~開発の高速化を実現し、地域のサービス展開スピードを2倍以上に加速~

トヨタファイナンシャルサービスのMaaSアプリ「my route」の開発を手掛けているKINTOテクノロジーズ様。「my route」の展開エリアの拡大が進むにつれ、拡張性や保守性においてシステム上の課題が浮き彫りとなり、スピード感あるリリースに限界がありました。そこで、マイクロサービス化によるシステム再構築を決断、オージス総研が開発を支援しました。再構築により、地域リリースまでの期間を2倍以上に高速化することができ、機能追加も容易に対応できる仕組みを実現、現在も安定稼働しています。
「my route」の事業拡大のため、バックエンドシステムの刷新を決断
KINTOテクノロジーズ株式会社は、グローバルに展開するモビリティサービスブランド「KINTO」をはじめ、あらゆるモビリティサービスを技術領域から実現させる開発組織として設立された戦略テックカンパニーです。MaaSアプリ「my route(マイルート)」のほか、愛車サブスクリプションサービス「KINTO ONE」などの開発・運用を行っています。

2018年に福岡市での実証実験をスタートした後、さまざまな地域でのMaaS事業で採用されており、2022年3月時点では、一部都市での展開も含めると9県(福岡、熊本、神奈川、宮崎、富山、愛知、佐賀、大分、沖縄)に展開エリアを拡大中です。
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「my route」の展開エリア拡大とユーザー増加に伴い、システム上の課題が浮上してきました。my route開発グループ プロジェクトマネージャー諸田氏は、バックエンドシステム再構築の経緯について次のように語ります。
「元のシステムは、福岡市での実証実験開始に伴いにスピード重視でリリースされたものでした。そのため、本格的にビジネス展開、エリア拡大していく上では拡張性や保守性において課題を抱えていました。チケット対応や地域リリースなどビジネス部門から日々あがってくる要望に対応しようとすると、モバイルアプリの度重なるアップデートが必要になり、ユーザー様の負荷があがるだけでなく、アプリストアの審査などもボトルネックとなり、スピーディなリリースに限界がありました。今後の拡張性と保守性を考え、バックエンドシステムを抜本的に作り直す決断をしました。再構築する機会を得たなら、機能追加・改修の要望に迅速に対応できる仕組みにしたいと考え、マイクロサービス化を採用するのは自然の流れでした。」
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KINTOテクノロジーズ株式会社 my route開発グループ プロジェクトマネージャー 諸田 皓也氏 |
マイクロサービス化の導入実績、上流のモデリングの知見、Javaの実装力を評価
my route開発グループ マネージャーの岩元氏は、マイクロサービス化を支援するベンダーとしてオージス総研を選定した理由をあげました。
「システムの要件が不明確な状態でのスタートでしたので、上流工程の要求分析が得意なベンダーを探していました。また、今回、メイン開発言語の1つであるJavaを使った開発を検討していたのですが、オージス総研がJavaのトップランナーだったこと、さらにマイクロサービス化の導入実績が豊富なこと、これらを総合的に判断して採用を決め、広範囲の領域を担当してもらいました」
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KINTOテクノロジーズ株式会社 my route開発グループ マネージャー 岩元 貴彦氏 |
再構築プロジェクトは、KINTOテクノロジーズ様を中心にマルチベンダー体制で進められました。プロジェクトマネージャーを務めた諸田氏は、システムリリースに向けた関係者との調整に苦労したと振り返ります。
「コロナ禍の影響でほぼ完全リモートワークだったため、対面で話すことがほとんどできませんでした。複数ベンダーといかに円滑なコミュニケーションを取るかを意識し、定例会以外にも各種会議体を設置するなど工夫して進めました。ビジネス部門とのコミュニケーションを増やすことも意識しました。その際は、専門用語をなるべく使わず、再構築することでいかに事業側のメリットにつながるか、サービスの利便性が良くなるかを説明し、理解・協力を得ながら取り組みました。」
マイクロサービス化においてオージス総研では経験豊富なメンバーで支援しました。ドキュメントが十分整備されていなかった点を踏まえ「動くものを確認していく」という方針を採り、新旧システムの挙動を比較検証しながら進めました。マイクロサービスアーキテクチャ設計では、オージス総研が得意とするモデルベース開発の技術を応用し、担当領域のドメイン再整理を行いました。そして、ビジネススピードに追従できるシステムにするため、設計面でマイクロサービス化を実現するだけでなく、サービス間の情報連携を容易にするためのAPIエコノミー化や、開発の効率化のためのCI/CD※環境構築、クラウド基盤の載せ替えも行いました。
※CI/CDとはソフトウェア開発の手法。ソフトウェアの変更を継続的にテストして自動で本番環境にリリース可能な状態にしておくアプローチを指す
地域リリースの大幅スピードアップを実現、機能追加も容易に

バックエンドシステムの再構築は完了しリリースされました。諸田氏は「何よりも無事にリリースできて良かった」と安堵の表情を浮かべます。
この再構築により、地域リリースにかかる期間を大幅に短縮することに成功しました。
「再構築前は、1年半の間に6地域(2~3ヶ月に1地域程度)にリリースするペースだったのが、再構築後は3ヶ月で4地域(1ヶ月に1~2地域)と大幅にスピードアップしました。また、マイクロサービス化したことにより、デジタルチケットやユーザー認証の移行など大型改修対応にも同時並行で実装・リリースすることができ、ビジネス対応力も向上しました」(諸田氏)
プロジェクトを通じて、オージス総研への評価も高まりました。
「my routeについては未経験のなか参画され、資料や情報を得るのが難しいなかプロジェクトを推進してくれました。プログラミング・コーディングだけでなく、分析・設計、プロジェクトの全体管理においても力を発揮してくれました」(岩元氏)
「システムのリプレイスは延期することが往々にしてありますが、どんな困難に直面してもリリースまでプロジェクトをやりきる姿勢がすごいと思いました」(諸田氏)
国内外で新サービス立ち上げを計画、オージス総研の技術力に期待
KINTOテクノロジーズ様は、現在「my route」のモバイルアプリのUI/UXの改善に取り組んでいます。
「MaaSアプリは日本全国に乱立していて市場の拡大が期待されています。そのなかで、ユーザー様にとっていいものとは何か、使ってもらえるアプリは何かという視点で、日々議論をしています」(諸田氏)
最後に岩元氏は、オージス総研に今後の期待を寄せました。
「難易度が高いプロジェクトや新サービス立ち上げ時に協力してほしいです。当社では国内のみならず、グローバルにプロジェクトが次々と立ち上がっています。採用にも力を入れていますが、信頼できるベンダーとのパートナーシップも大切です。今後もオージス総研と良い関係を続けたいですね」
<プロジェクトを担当したオージス総研担当者の声>
MaaSモバイルアプリのシステム再構築は当社として貴重な経験でした。ビジネススピードに追従できるシステムにするには、設計面でマイクロサービス化を実現するだけではなく、APIエコノミー化やCI/CD環境構築も必要であり、それを実現できたことは大変うれしく思っております。
これからも、KINTOテクノロジーズ様とDXを一緒に推進する共創パートナーとして、ユーザーにとって楽しく便利で満足度が向上するような高品質なアプリケーション開発をご支援していきたいと思います。
スピード感あるビジネス展開の実現に向けマイクロサービス化を検討されているお客様は、オージス総研にご相談ください。
お客様プロフィール
KINTOテクノロジーズ株式会社
2021年4月に設立した株式会社KINTO(以下 KINTO)のトヨタファイナンシャルサービスのテックカンパニー。モビリティブランド「KINTO」、「my route」の開発のほか、幅広いサービスを技術領域から実現している。
