大阪ガス・カスタマーリレーションズ様:
自主的になる 自己研鑽する

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大阪ガス・カスタマーリレーションズ(以下、OGCR)様では、2021年度から、弊社オージス総研と共に、新たなことにチャレンジする組織風土作りに取り組んでおられます。
「自ら考え・動く組織」となるために、日々の現場で集めた事実をベースに仮説を導き出し、成果を生み出す取り組みを実施しました。この取り組みを実施するにあたり大変な苦悩や不安があったようです。
これらの活動を経て現状どのような組織になっているのかを、担当の江口様、上田様にインタビューをさせていただきました。

6705_e.JPG 江口 聡 様
2007年、OGCRに入社。定期保安巡回業務に携わり、現場管理者を経て2018年から本社 定保企画部に配属。2022年10月よりマネージャー職として勤務。



6705_u.JPG 上田 和孝 様
2009年、OGCRに入社。定期保安巡回業務に携わり、現場管理者を経て2019年から本社 定保企画部に配属。2023年4月より北東部地区古川橋定保センターの所長として勤務。本活動は、本社勤務時に参加。


1.事業内容と本活動の背景

インタビュアー: 御社の事業内容について教えてください。

上田様: 主な事業は、法令に基づくガス設備調査で4年に一度、「ガス工作物の漏えい検査」「ガス機器の消費機器調査(給排気設備調査)」および「ガスの使用に関する安全使用周知」のため、お客さま宅を訪問させていただいております。点検終了後に安心してガスをお使いいただけるように1軒1軒回らせていただいています。
主に原付きバイクでお客さま宅に訪問しており、その機動力は他社にはない弊社の強みだと思っています。また、愚直なまでの保安に対する姿勢は他社よりも一段二段質の高いものを提供できていると自負しております。
また、コロナ禍では感染症対策を行い、お客さまに丁寧に対応することで安心感を持っていただくことを心がけております。

インタビュアー: コロナなど時代が変わる中で会社として変わってきたこと、力を入れてきたことはなんでしょうか?

江口様: 2018年ガス自由化前の会社の方針は「決められたことを愚直に行うこと」が方針であり、顧客離脱ということは考えもしておりませんでした。しかし自由化以降、我々の仕事が減っていくことに直面し、今までの既存の考え方ではなく、「新たな考え方と視点を持つ組織」となる必要を感じました。そこで始まったのが、御社と取り組ませていただいた「OGCR新規事業検討委員会」です。

インタビュアー: 自由化で組織として変化する必要が出てきたわけですね。

上田様: これまでは既存の枠からはみ出ることはせず、決められたことだけを愚直に行う業務でしたが、自由化以降は委託元とお客さまの両方に選ばれ続けられる必要があるということを痛感しました。

江口様: また、自由化以降は新規事業検討を開始していくことが必要となり、新しい事業にチャレンジできる環境作りを目指すこととしました。

インタビュアー: 業務に携わっている皆様は、バックボーンがさまざまだとお伺いしました。そのような状況では、新たな業務へのチャレンジなど、意識の統一が難しい部分もあるのではないでしょうか?

上田様: 皆さん仕事に対して真面目に取り組んでいますが、決められたことはできるけど、新しいことへのチャレンジは苦手な面があり、その思考を改革することが今回の取り組みのコンセプトとなっております。

江口様: 入社当初の個性は、自社の生活に慣れてくると薄れていく傾向を感じます。今考えるとその入社した時の個性が消えてしまうことはもったいないと感じますが、当時ではそれが当たり前であり、各人の経験値を活かす機会がないということがもったいないと気付くことはありませんでした。
21年度はこのような状況もあり、当時の上司は自主性・主体性とはかけ離れた組織と感じたため「もっと柔軟な発想にしていこう」ということでこのプロジェクトがスタートしました。
当初、色々なモデルケースを御社よりご紹介いただきましたが、オランダ教育のイエナプランを参考にしながら「新規事業を考える」プロジェクトとして始動することとなりました。

2.主な活動

インタビュアー: 御社からは、21年度、22年度とご発注いただきました。ご発注の際は不安などもあったのではと思います。

江口様: そうですね。どうやって進めていくのか、不安が強かったです。最初は小さく、徐々に広げるという3年間のロードマップを描きましたが、1年目はどうなって、次年度のゴールがどうなるのかは正直見えていませんでした。そのため参加者へ説明する際も不安でした。そうした背景もあり、初年度の参加者はやる気のある人に立候補してもらいました。半年にわたって会社の未来や自分を変えたいと思っている人が、どのくらい存在するのか不明でしたが、立候補者が16名となり、想像していたよりも多くの方に参加していただけました。

インタビュアー: プロジェクトでの参加者の様子はいかがでしたか?

江口様: 御社に講習していただき、講習後には毎回宿題がありました。全5回の講習の最終日に「新規事業アイデア発表会」を開催し、他部署の役職者を巻き込んでお披露目を行いました。
また、各回に出題される宿題は難しかった思い出があります。宿題を進める際に講師よりSNSを通じて指摘やアドバイスをいただくのですが「こういうことかな?」とメンバー間で打ち合わせしていたのをすごく覚えています。新しい視点について考える良い機会になりました。
今でこそ「深掘り」という言葉をよく耳にしますが、当時は何が深いのか分かりませんでした。事実と解釈の切り分けも、どれが事実でどれが解釈かよく分からなかったことを覚えています。

上田様: 1人で完成できるものではないので、毎回同じ班のメンバーで打ち合わせをしました。が、誰一人明確な答えが出せず、全員が迷路に入っていくような感じとなり、悩みながら取り組んでおりました。
講師からの指摘や助言は「どういうこと?」となることが多く、「自ら考える力」を身につけることを目的とした訓練は今までの考え方をひっくり返すような感覚だったことを覚えています。

インタビュアー: そのような状況をどのように乗り越えられたのですか?

江口様: 各班4名程度のチームで活動し、「成果物をチームごとにカタチにする」ということを楽しめたことだと思います。チーム内で話していくうちに、不安が解消されることが多く、研修中にすぐに理解できたというよりも、研修後に共に悩むことで理解が深まったと感じています。チーム一丸となってゴールに向かえたことが、最後まで走り続けることができた要因だと思います。

インタビュアー: オージス総研のプロジェクトの進め方に対して感じたことはありますか?

上田様: 付箋を使って、事実と解釈を書き出して進めていく研修スタイルは参加者も初めてのようでした。自分の考えに対して、その場で講師からレスポンスをもらい、コミュニケーションを通して進めるスタイルに新鮮さを感じていたようです。

江口様: 我々の質問に対して身近な具体例を提示してくれたので、すごく納得して進めました。しかし一方では自分たちはこのような答えを導くことができるのか不安を感じました。

インタビュアー: 21年度の活動の成果と課題について教えてください。

江口様: 21年度の活動で、良かったこと、足りないことが明確になりました。良かったことは、今までなかった組織の横の繫がりや交流。新規事業に向けての新しい発想。足りないと感じたことは「ファシリテーション力」でした。それは各所長がファシリテーターとなり、研修で学んだことを自組織にて実施するのが大事だということが分かったため、22年度はそこを重点的に活動しました。

上田様: ファシリテーションで現場のメンバーさんを巻き込み、意見を出してもらえるような環境作りを目指すため22年度は「研修と委員会活動(即実践活動)の2本柱」で進めました。

インタビュアー: 21年度は新規事業を考えていましたが、22年度はどのようなテーマにしたのですか?

上田様: 自所属の強みを活かしたモチベーションアップと繰り返されるヒューマンエラーの再発防止に繋げる活動をテーマとしました。
参加者は研修と委員会活動で学んだことを各センターにて取り組み、楽しんで取り組める工夫として、まずは地区予選を行い、選定された案を地区代表案にする。それぞれの地区にて選定された案を持ち寄り本選を開催しました。本選には多数の役職者の方々にもご参加していただき、総勢60名が集う大会となりました。
研修での学びとして「ファシリテーションとは」から始め、事実と解釈、リフレーム思考などについて学びました。実践では自センターでの事実を集め、それに対する解釈を考え、取り組み案へと繋げていきました。21年度同様、御社よりフィードバックをもらいながら進めていけたのが良かったです。

インタビュアー: 自分たちだけで委員会を進める中で大変だったこともあるのかと思います。

上田様: 受講者も35名と21年度より倍の参加者となりました。研修で2時間新しいことを学び、その後の2時間は当社だけの委員会として参加者の皆さんを巻き込んで取り組みました。当時は自分自身も1人の受講者だったので、参加者の皆さんをファシリテートすることは非常に苦労しました。正解が不明であり、どうやれば次回に繫がるのかを試行錯誤しながら進めていきました。

江口様: 22年度で題材を新規事業ではなく、実業務に絞ったので、具体的な話ができました。自センターのメンバーの声を吸い上げて自センターの強みを活かす方法が分かったことが一番変わった部分だと思います。
我々の仕事では、ミスの再発防止策を作る時は、チェックの数を増やすというスタイルで実施してきました。研修の学びを経て、チェック数を増やすのではなく自分たちで話し合ってどうしていくかを考えていくという動きが根付いてきたように思います。
まだまだミス自体は撲滅しておりませんが、この活動を通じて地区から提出される再発防止策の内容が変わってきたように感じます。それはリフレーム思考が活かされているからだと感じています。

3.プロジェクトの成果

インタビュアー: 21年度、22年度のプロジェクトを経て得られた成果について教えていただけますか?

江口様: 何よりも自分が所属する部署が一番変わったことが成果です。自分たちは教育担当で「できている」、「できていない」をチェックし、結果だけを返していました。でも、評価することが目的ではなく、その人ができるようになることが目的だということが分かりました。相手が不安だと思っていることを聞き、受け止めて、できていないことにはアドバイス、フィードバックをしていく。このような接し方に変わりました。

上田様: 江口マネージャーの言う通りです。私は現在現場におりますが、まだまだ環境が変わっていないことに直面しており、悔しい思いをしているので早く組織の考え方を変えていきたいです。会社として掲げている「自主的な自己研鑽」は担当者も理解をしてくれているので、今後は各人が自発的になってくれたらと考えています。

江口様: まさにそこが3年目の目標です。今は、本社と併せて、各センターに1人は理解者がいるので、3年目は全体に展開していきたいです。

インタビュアー: 上田さんは今年度現場に戻られましたが、本社ではどう取り組んでいきますか?

江口様: 3月時点で上田さんが今年度の大きな絵を描いてくれています。それを進めながら、後任にも理解を深めてもらいたいです。今年度はどのように全体に皆に広げていくかが課題となるので、上田さんが現場で実践してもらえるのが心強いです。

インタビュアー: 上層部のこれまで、そしてこれからのプロジェクトに対する反応はどうでしたか?

江口様: 一定の評価をいただきましたが、上司への説明にて「これをやったらどうなるのか、一言で言って」と言われると、なかなか一言で言い表すのは難しくて。「3年やってゴールはこんなものか」とも言われました。それでも「とにかく推し進めていきたい」と進言し、前年度の本選大会を見ていただいているので、一定の評価はいただいていると思います。

インタビュアー: 参加者からの声はどうでしたか?

上田様: 理解が深まって、数名からは、「23年度やらないの?」「せっかく流れができてきているから、このままいきたい」という声をもらっています。やる気になっている人がたくさんいて、いい波に乗っていると感じています。
あるセンターは称賛することに取り組んでいます。毎朝の朝礼で褒め合うことで、皆のモチベーションを上げています。ちょっとした取り組みから始めて、少しずつ変わっていくものなんだなと感じています。22年度の発表内容を実際に取り組んだり、継続してそれぞれの取り組み案を修正しながら進めています。

4.今後の展望

インタビュアー: このプロジェクトを受けての今後の展望を教えてください。

江口様: このプロジェクトを通して今年度の活動テーマである「思いやりのある組織作り」に繋げていきたいです。

上田様: 従業員一人一人が主体性を持った動き方ができているのを目指したいです。21年度、22度は御社に手を取って導いていただきました。今年度は学んだことを各センターで活動し、今後不明な点が多々出てくると思うので、その時は都度教えていただけると助かります。引き続きよろしくお願いします。

インタビュアー: 長時間のインタビューにご対応いただきありがとうございました。

(インタビュー: 2023年5月23日実施、インタビュアー: 弊社ソリューション開発本部 大出 絢香)



2023年11月6日公開
※この記事に掲載されている内容、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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