西日本高速道路様:将来にわたって輝き続ける高速道路を作る

西日本高速道路株式会社(以下、NEXCO西日本)様では、日本の構造的な課題である人口減少・車の減少という背景の中、中期経営計画でサービスエリアの今後の在り方を考えておられました。
その中でオージス総研は、20年後、30年後でも変わらない普遍的なお客様の価値観とは何かを見出すためのご支援を行いました。コロナ禍初期の、人の価値観が揺らいでいる最中での、普遍的な価値観の導出は苦労もあったようですが、このような時期だからこそ得られたものもあったようです。
今回のプロジェクトに至った背景や、サービスエリアでの調査やワークショップを経て作成されたコンセプトが、現在どのように用いられているか、インタビューでお話しいただきました。

西田 健祐 様
1998年前身の日本道路公団入社。マイレージサービスなどの業務に携わり、民営化後は投資審査業務等に従事。5年前に現在の事業開発部に異動し、中期経営計画・年度計画の策定や、サービスエリアの在り方について考える。



1.事業内容

インタビュアー: 御社の事業内容や、提供しているサービスについて教えてください。

西田様: NEXCO西日本では滋賀から沖縄までの高速道路の建設や、その管理運営をしています。私の所属する部門は特にサービスエリアの開発や、管理運営をグループ会社と協力しながら遂行しています。
新名神高速道路宝塚北サービスエリアの新設時はメディアでも多く話題として取り上げていただきました。ここは、高速道路ご利用のお客様以外にも、近隣の方に高速道路に乗らずに来ていただいています。また、最近ではもともと店舗のないパーキングエリアへコンビニさんにご協力いただき店舗を新設いたしました。これは一例ですが、このように、お客様サービスをしっかり考えていく部署になります。

インタビュアー: 当時のお立場で感じていた、御社の課題を教えていただけますか?

西田様: 長い目線で考えると、日本全体では人口減少で大きな成長が望めず、マイナスになるということです。これまでと同じことをしていると、利用者は必ず少なくなっていくので、人が減り、車も減っていく中で我々がどう変わるべきなのかというのが大きな課題になります。

2.プロジェクトの背景

インタビュアー: そういった背景の中、まずは簡単にこのプロジェクトの内容をご紹介いただけますか?

西田様: 20年後、30年後のサービスエリアがどうあるべきで、どのような状態になれば、お客様も僕たちも楽しいのか?喜んでもらえるのか?を考えることです。日々の業務の先にゆるぎなく光り僕たちを導くものを作るのがプロジェクトの概要になります。

インタビュアー: このプロジェクトをオージス総研にご発注いただいた理由についてお話しいただけますか?

西田様: 人や車が減っていくという厳しい環境の中で、現状維持ではない未来を考えようとすれば、現状から飛び跳ねる必要があるのですが、それを自社だけで達成するのは難しいと思っていました。そのような中、オージス総研さんからご提案をいただいた中に、将来のあるべき姿から逆算してやるべきことを捉えていくバックキャスティングがありました。バックキャスティングで考える将来像は、中期経営計画の思想の要になると思いオージス総研さんにお願いをすることになりました。
オージス総研さんとは、お付き合いが長いのですが、行動観察は得られるものも多いと思っています。お客様をしっかり見ることの重要性は社内でも共有されているものの、なかなか自分たちだけではやりきれないというのを実感しています。自分たちでは、どうしても目的を持って見てしまいますので、目的は持ちつつも「偏見なく見る」というところはやっぱりプロだなと思います。将来像を考えそれを社内で共有していくにあたり、現場のお客様をしっかりと捉えることは必ず必要と思っていましたし、また第三者目線での観察も大事だと思っていましたので、そこに強みがあるオージス総研さんにお願いするのがいいのかなと思いました。

インタビュアー: このプロジェクトでの西田さんの役割はどういうものだったのでしょうか?

西田様: このプロジェクトでは、僕がリーダーでグループ会社を含めて6人のプロジェクトチームでした。新しいことを考えるということで、30歳から30代半ばの新しい発想ができる比較的若い社員をアサインしました。
プロジェクト期間がコロナの初期と同時期だったため、慣れないオンラインミーティングなど厳しい環境ではありましたが、そのような中でもチームとして情熱を持って取り組めたと思います。チームで遅くまで残って議論したり、メンバー一人一人が積極的に提案してくれたりしましたし、フィールドワークでもいろいろな視点からファクトを探し、それをもとにさまざまな発想に取り組んでくれました。頼りになるメンバーに恵まれたチームです。

3.プロジェクトの進め方とその結果

インタビュアー: 弊社のプロジェクトの進め方はどうでしたか?

西田様: そうですね。プロジェクトは一緒に考えて進めていく形式でした。普段の仕事では最初からある程度ゴールが見えていることが多いですが、それとは異なっていて、なかなかゴールが見えなくてもやもやすることもありました。そのため、実際にプロジェクトが始まった時に、「もっと考えてよ」と思う時もありましたが、一方、発想を広げるワークでは「もっと考えなさい」と叱咤激励もいただきました。お互いいいものを作ろうと真剣な関係で取り組めたプロジェクトだったと思います。
1つ心残りがあって、プロジェクトのゴールの1つとして当初コンセプトムービー作成のご提案をいただいたのですが、自分自身も社内もそれは必要ないと思い、お願いしませんでした。ただ、今の社内に伝えていくフェーズとなって考えると、実際にそういったムービーを作っていれば、社内、社外への伝え方、伝わり方も違っていたかもしれないと思います。

インタビュアー: 2020年は世の中もリモートワークを始めたばかりで苦労や不安もあったと思います。

西田様: 弊社もコロナ初期は全員在宅だったので、コミュニケーションは大変でした。そもそもサービスエリアもお客様が少なく、お客様がいても接触がしにくい状態でした。お客様自身の価値観も過渡期でした。そんな中でのフィールドリサーチは大変で、何が原因で感染するかわからなかったので、距離を取ってリサーチをしました。
また、コロナ禍という状況でのリサーチから、どのくらい普遍的な価値観や心情を把握できるのか不安でした。「コロナ禍でもこれは変わらない」ということを、グループ内やオージス総研さんと話しながら進めていきました。20年30年後を考えるのに今この時点で見ていいのだろうかという葛藤は常にあった気がします。

インタビュアー: フィールドリサーチを実施して印象に残っていることはありますか?

西田様: 西田含めチームメンバーも一緒に参加して行いましたが行動観察は本当に根気が要りますよね。長時間の観察になるので集中力が続かず、油断するとすぐ漫然と見てしまいます。しかし、オージス総研さんはそこは途切れずに行いますのでプロだと感じました。普段の業務でサービスエリアに行く時とは異なり見方や滞在時間も全然違いますので、いろいろな気づきを持って帰ることができました。
今回、印象的なシーンとしてトラックドライバーさん関係が多かったです。トラックドライバーさんが普段から多いサービスエリアでのことですが、ドライバーさんが長く滞在しているのは知っていたのですが、1日半いなければならないという話がありました。次の荷物を受け取りに行くのに時間が空いてしまったそうです。サービスエリアの店員にプレゼントを持ってくる別のドライバーさんもおり、サービスエリアに愛着を持っていただいているなと思いました。
これは一例ですが、普段見えない事実がいっぱい見えました。サービスエリアの利用の仕方はいろいろで、与えている価値もいろいろだなと再認識しました。

インタビュアー: 弊社の行動観察コンサルティングはリアルの場で起こっていることを大事にしているのですが、その良さは実感していただいたのでしょうか。

西田様: そうですね。実際現場で起こっているのは事実なので、エビデンスとして強いです。それをどう解釈するかは難しいですが、事実に即しているのは、自分の中の納得感も、会社の中での納得感も強いと思います。

インタビュアー: フィールドリサーチ後はワークショップでディスカッションをしましたが、その中での苦労はありましたか?

西田様: ワークショップでは、濃いディスカッションが行われるので、本当に使ったことない頭を使うので毎回ヘトヘトになりました。オージス総研さんとのワークショップの時間だけでは咀嚼しきれないところも多くて、チームメンバーで毎回振り返り会を実施していました。
特にコンセプトのワーディングを決めていく時は、何回も集まり、産みの苦しみがありました。グループ内でも話しましたし、オージス総研さんとも何度もディスカッションしました。オージス総研さんが提案されたワードは、普段社内で使わない表現も多かったのですが、最終的に決定したワードは、会社の変化への期待も込めて、あえて僕たちが普段使わないような言葉で仕上げました。これもオージス総研さんからの提案のおかげです。

インタビュアー: プロジェクト全体を振り返って、新たな気づきや成果はありましたでしょうか。

西田様: 高速道路やサービスエリアの価値を再認識、再確認させてもらえたと思っています。僕たちだけでは見えていなかったポテンシャルというか、「こんなこともできる」という根源的に提供している価値の話ができました。今後もこれを深めたり、進化させたりしていきますが、そのきっかけを、僕の中にも持てましたし、組織・会社としても1つ持てたと思います。
また、今回のプロジェクトで見出した価値は、一定の普遍性があり、長い間保てるものだと思っています。コロナで大変ではありましたが、逆に、価値観が振れているところで観察できたことは、学びも多かったと思います。

4.プロジェクトを終えた現在の状況

インタビュアー: このプロジェクト以後、この結果はどのように活用されていますか。

西田様: 中期経営計画の中にとりいれられていますが、それだけではなく社員が自らサービスエリアの価値を高めていく必要があります。そのため、僕たちの想いをもっと社内に伝えるためのスライドをメンバーに作ってもらいました。社内の人に、「ぜひ一緒に考えましょう」「これで終わりじゃないんです」という形で結んでいます。
このスライドを作ったことでコンセプトの裏にある僕たちの想いを伝えやすくなって、社員にもより響くようになったと思います。将来像は変化していくでしょうが、今回考えた将来像の近くをぶれながら少しずつ進化していくと思っています。僕自身少しでも開かれたサービスエリアになるようにと思っていますし、もっと地域と繋がっていくべきだと思います。
僕たちが考えたものが絶対的に正しいわけではないですので、社員それぞれが理解して咀嚼して、自分なりの理解を深める活動を、もっと続けていかないといけないと思います。

インタビュアー: 参加メンバーのプロジェクトを通じての変化はありましたか?

西田様: プロジェクトに対する熱量がどんどん上がっていったと思っています。最初はやはり業務としてやっている部分が一定程度ありました。ただ、プロジェクトを通じて、ただの業務という意識を超えて熱意を上げていってくれたと思います。自分が何を考えているか、それをどう解釈するか、ワーディングをどうするかを、プロジェクトチームでどんどん話していく中で、大きく成長してくれたと思います。

インタビュアー: 最後にプロジェクトを通じてのご感想をお願いします。

西田様: 自社だけでは気づけない部分、形づくるまではいけない部分があると思っており、そういう時に頼れる会社だと思っています。大変でしたが楽しく進められました。長期的な軸で物事を見ることがあまりないので、ご一緒できたのは本当にありがたいです。

インタビュアー: 長時間のインタビューにご対応いただきありがとうございました。

(インタビュー: 2023年6月1日実施、インタビュアー: 弊社ソリューション開発本部 黒木 美和)

2023年11月15日公開
※この記事に掲載されている内容、所属情報(会社名・部署名)は公開当時のものです。予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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