レンゴー様:パッケージの付加価値提供に向けて

レンゴー様では、開封・陳列作業の軽減や販売促進など、「並べる」・「売れる」機能を併せ持つ、革新的な段ボールケースRengo Smart Display Packaging(以下、RSDP)や美粧性・開封性を高めた段ボールケースNew Smart Display Packaging(以下、NSD)の販売に注力しておられます。オージス総研では、2020年度にRSDPの開封表示デザインの検証を、2021年度にNSDの販促効果の検証をご支援させていただきました。
このプロジェクトを通じて、販売商品を改良しただけでなく、オージス総研の専門家の知見が商材開発や社内のデザインルールにも影響を及ぼしたようです。
このプロジェクトが、どのようなプロセスで進み、オージス総研の専門家としての知見がどのように活かされていったのかについて、岡野様にインタビューでお話しいただきました。

岡野 香織 様
パッケージング部門開発本部 デザイン・マーケティングセンター
東京デザイン第一課 担当部長代理 兼 課長



1.事業内容について

インタビュアー: 御社の事業内容について教えてください。

岡野様: 段ボールをはじめとした包装資材の製造販売が主な事業です。段ボールを国内で最初に製造したのがレンゴーです。1909年創業ですのでまもなく創業115年になります。現在では、製紙の他、飲料のラベルやフィルムといった軟包装事業にも注力しています。
現在、パッケージング部門として力を入れている商材の一つが、2019年に導入した段ボール用のプレプリント・デジタル印刷機です。美粧性の高い広幅印刷が特長で、アジア地域では当社にしか導入されていません。「デジパケ」という商品名で展開しています。
また、RSDPやNSDという、開封性を高め、食品スーパーの品出しに便利な段ボールの拡販に力を入れています。

インタビュアー: RSDPとNSDとはどういった商品でしょうか?

岡野様: どちらも商品陳列に特化した商材です。欧米ではRRP(リテール・レディ・パッケージ:店頭陳列の準備ができているという意味)と呼ばれるパッケージがあります。お店に届いた段ボールケースごと棚に陳列することの多い欧米では、輸送箱にも開けやすく切り口がきれいで商品露出が高いなどの機能が重視されます。この考え方を日本の小売りに合わせてアレンジした輸送箱です。商品を段ボールケースから出して陳列するバラ陳列の多い日本でも、カッターを使わず簡単に開封でき、店頭作業の時間短縮やカッターによる事故防止に繋がります。
NSDは、RSDPの機能を更に高め、より軽い力での開封や、商品露出を高めた販促効果の高いケースです。

2.プロジェクトの経緯と成果(RSDPについて)

インタビュアー: 2020年度にRSDPの開封表示デザインプロジェクトを、2021年度にNSDの店頭における販促効果検証についてご支援させていただきました。まずは、RSDPの開封表示デザインプロジェクトについて実施の背景について教えていただけますか?

岡野様: RSDPは前述した通り、店頭作業の時間短縮や負荷軽減を目的に開発しましたが、開発当初は具体的なエビデンスを持っていませんでした。時短効果やオペレーション軽減効果を具体的に示すことができれば、営業の説得力にも繋がると考えました。しかし、小売りの店頭で働く方が品出しにどれくらい時間をかけているのか、どのように開封しているのかといった情報は、既存の調査データにはなく、調査方法も確立していません。そのため、オリジナルの調査を実施できるパートナーの必要性を感じ多くの企業に話を聞きました。

インタビュアー: 多くの企業の中から弊社を選んでいただいた理由について教えていただけますか?

岡野様: オージス総研の営業ご担当者の提案にあった行動観察に興味を持ったためです。
オージス総研の提案資料に毎回必ず入っていたのが「小さくクイックにステップを踏みましょう」という言葉です。最近では何度も仮説立てと検証を繰り返す「アジャイル型」が主流だと聞き、まずは小さく行動観察にトライするのも面白そうだと感じました。

インタビュアー: 弊社に依頼した内容について教えていただけますでしょうか?

岡野様: RSDPは開封性に特化した商品ですが、得意先から、「店頭では開封機能が十分に活用されていない」という相談を受けました。店頭ではミシン目を使わず、カッターを使って開封されていました。開封表示がわかりにくいのか、作業者の習慣性からカッター開封を優先してしまうのか、などいくつかの仮説検証が最初の依頼でした。
正直に言うと、オージス総研はデザインを専門とする会社ではないので、表示のことがわかるのか、また段ボールの開封性というニッチな調査で我々の欲しい検証ができるのか、といった不安もありました。
決め手となったのは、心理学や人間工学といった、人に関する科学的な専門家の存在です。専門家の知見を用いた道路標識の改善など、デザインに関わる実績を聞く中で不安は解消され、パートナーとして取り組むことを決めました。

インタビュアー: プロジェクトを実施して社内での評価やお客様の評価はいかがでしたか?

岡野様: 実際に、心理学の専門家からは開封時に表示がどう見えているのか、また人間工学専門家には段ボールを開封してもらい「開封の向きや力の入れ方で体に無理な力がかかっている」など解説を交えて説明してもらいました。
それまでは、社内の設計担当者が開けやすいと思う形を開発していましたが、人間工学や心理学の専門家による知見が入ると、説得力の質が変わると感じました。この調査を元に、調査対象となった形態には大幅に改良を加えることになりました。人間工学的に体に負担がかかることが明らかになり、設計部署も納得の上、改良に取り掛かりました。カッター開封を懸念していた得意先には調査を反映させた新しいケースを納入し追跡調査を行ったところ、意図した通りに開けてくださるお店が格段に増えました。

3.プロジェクトの経緯と成果(NSDについて)

インタビュアー: 20年度に続き、21年度もご依頼をいただきました。21年度のNSDの店頭における販促効果検証プロジェクトの概要とご依頼いただいた経緯を教えていただけますか?

岡野様: NSDは、RSDPに比べより販促効果を高めた商材です。カッター開封した茶色い段ボールとデザインされたNSDで作った売り場を比較し、それぞれの印象、販促効果についての調査を依頼しました。消費者がNSDで作った売り場に対して感じる印象を具体的な言葉にしたいという思いがありました。潜在的な印象を明らかにしたかったので、心理学にも強いオージス総研に依頼しました。

インタビュアー: プロジェクトで得られた成果を教えていただけますか?

岡野様: 普通の調査会社であれば、被験者の言葉を額面通りに受け取るのですが、オージス総研は被験者が発した言葉の裏にある思いについて心理学的観点からの解説があったところが良かったです。これはオージス総研ならではだと思います。
具体的には、NSDで陳列した売り場は、「商品が良いモノに見える」「お店が大切に商品を扱っている感じがする」という言葉が出てきました。同じ商品なのに、商品価値が高く見えるということは、小売りにとってもメーカーにとっても重要なことです。商品がより記憶に残りやすいという結果も得られ、定量だけでなく、定性で得られた結果を丁寧に見てゆく大切さを感じました。

インタビュアー: プロジェクト終了後の成果はどうでしたか?

岡野様: 社内の営業に対しNSDで作った売り場は消費者の買いたい気持ちに働き掛け、メーカー、小売り双方にとって競争力に繋がるという話をしました。また、調査で得られた専門家の知見も、その後有効に活用されています。例えば、人の認知機能を踏まえた記憶に残るデザインの作り方などです。これまでデザイナーが無意識に作ってきたデザインが、実は印象に残る法則に則っていたなど、視覚や脳のクセを活かした競争力のあるデザインが明らかになりました。

4.今後の展望

インタビュアー: 今後の展望について教えていただけますか?

岡野様: RSDP、NSDの拡販を継続的に進めながら冒頭でご紹介したプレプリント・デジタル印刷を組み合わせ、商品がより多く売れるパッケージをご提供していきたいと思います。国内の小売りを取りまく環境は変化し続けていますが、RSDP、NSDは今後更に、メーカー、小売り双方にとって価値のある商品になると信じています。段ボールが人時生産性の向上を実現し、販促にも効果を発揮することを多くの方に知っていただきたいです。

インタビュアー: 最後にお伝えしたいことがあればお願いします。

岡野様: レンゴーではマーケティング視点を活用したパッケージのご提案を通じ、商品をより多く売るお手伝いをして参ります。包装資材はコストと見なされがちですが、付加価値のあるご提案でサプライヤーではなくプロバイダーとして、得意先にさまざまなご相談をいただける存在になっていきたいと思います。

インタビュアー: 長時間のインタビューありがとうございました。

(インタビュー: 2023年7月6日実施、インタビュアー: 弊社ソリューション開発本部 小泉 尚子)

2023年11月28日公開
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