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「対応力の強化をいつやるか? 今でしょう!?」

2013年04月号 全般 OCP-プロジェクトマネジャー(L5)   岸田 秀雄

 「対応力」は、PMにとって必要な能力である事は周知の事実です。一般に対応力の強化と言えば、新しい知識を習得し、新しい引出を増やしていく事を思い浮かべますが、ここでは、簡単な方法として私が日頃から気にかけている事をご紹介します。

■学生時代にした「眼と手の協調動作の実験」から学ぶ
 我々が日々何気なくしている「手で物を指す」という動作ですが、屈折するメガネをかけて普段の生活を一日過ごした後メガネを外すと、手で物を指す動作にズレが生じてしまいます。この実験から、日常生活でも、少しの曲がった情報でズレが生じてしまう、すなわち、日常の動作は日々の学習によって成り立っているという事がわかります。

 人は、進化もしますし退化もします。そのため、普段出来ている事でも、継続していないと少しの変化で手元が狂ってしまう事があり、普通に身に付いている筈の経験値でも、使っていないと使えなくなってしまいます。つまり、日々の反復なしではその経験値すら保てないという事です。

■父とのテニスから学ぶ
 私の父は八十半ばですが、いまだに週末私とテニスをします。ただ、打ち方が今までと同じで、現在の自分にあった打ち方になっていません。これは、経験値を取得した時の周囲の環境や自分の立場・知識が使おうと思った時と異なっているためで、この場合、年齢による体力や視力の衰えに脳と体が対応できていないということです。

 私が思うテニスの「対応力」とは、知識と経験を使い、自分の体、相手の動き、ボールの軌道等の情報から、ボールを打つためにどの程度の動作が必要か「予測」できる事です。体の動きが鈍くなると、今まで頭に描いていた予測と同じでは、実際の動作と予測に齟齬が出てきてしまいます。対応力が高ければ、たとえ動きが鈍くなっても、いまの自分の体の動きに合わせた予測に組み立て直すことができ、より良い動きができます。
 また、経験が多くなればなる程、良く考えずに判断することも多くなるため、日頃から、環境の変化を柔軟に且つ敏感に読み取り、日々ギャップを補正することが、対応力の強化につながると考えています。

■対応力の強化をいつやるか?
 私が考えるトレーニングとは、今までの経験(仕事や仕事以外でも)に対して、どうすれば良かったかと思い返す事です。それにより、経験が根付き、補正もしている事になります。また、過去の経験を今の自分に置き換えて考えてみたり、「もし~なら」を入れて考えることで、過去の経験に留まらず、未経験のエリアを経験(予測によるシミュレーション)している事になります。これはとても良いトレーニングで、「もし~なら」のバリエーションが増えると、自然と柔軟な対応力が身に付き、新しい引出が増えることになります。

 私は、散髪している時、ジョギングや通勤中等で、わりと「ぼーっと」している時にトレーニングしているような気がします。と言うのも、自分では強く意識してやっている事ではないからですが、対応力を強化するには、日頃から継続してトレーニングをしている事、すなわち「今」が重要だと思っています。

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