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「面対することの大切さ ~距離と時間の一考察~」

2013年11月号 コミュニケーション OCP-プロジェクトマネジャー(L5)    吉岡 毅

 ここ4年くらいBPO(Business Process Outsourcing)の仕事で上海に行く機会があり、その都度たくさんの良い刺激をもらっています。周りからは上海に行くのは大変ですね?と声をかけられますが、私としてはあまり大変という感じもなく距離的にもそう遠く感じていません。慣れもあるかもしれませんが、国内出張の延長といった感じで毎回出かけています。(上海へは関西から飛行機に乗って2時間そこそこなので東京出張と大差はありません)

 近年のITインフラの向上に伴い(表現が古臭いですが)、世界各地との距離は大きく縮まっています。便利な道具がたくさん開発され、よりリアルタイムにコミュニケーションをとる手段が増えてきました。とはいえ、すべてのコミュニケーションがこの便利な道具の上だけで成り立っているのではありません。
今回はオフショア開発、BPOの移管準備を進めるにあたり、「一同に介する場」の重要さ、お互いに往来し同じ場所に集まることの意味を書きたいと思います。

 相手との距離感、空気感を感じるにはTV会議のようなツールではどうしても 得難いものがあります。単に双方向の情報の連絡手段という観点であればTV会議は便利なツールですが、議論を必要とする会議には向かないと感じます。会議の主体となる拠点だけ盛り上がることもよく見かけます。
 私は、一度はお互いに面対して話を交わすということが大切だと考えています。面対していればこそ、その後のTV会議などでも双方のことを理解しながら話ができるからです。

 特にオフショアの場合、ブリッジSEが介在したり、現地メンバと直接触れ合わずに工程を進めることも多いですが、この場合でも、キックオフ直後に可能な限りメンバが一同に介してコミュニケーションを図ることで、後々の場面においてお互い良い意味で「言いたいことが言える」のではないかと感じます。一度の面対ではわかりえないこともたくさんありますが、同様にわかることもたくさんあると考えています。

 一方、オフショアにはコスト削減が求められます。日本人メンバが現地に赴いて作業指示することは、ある意味コスト増加の要因となり、距離が遠ければそれだけコスト(時間や費用)がかかります。しかしながら、現地に赴きコミュニケーションをとることは何も会議だけではなく、一緒に食事を取ったり様々なコミュニケーションの機会を得ることができます。仕事とプライベートは区別すべきではありますが、仕事を円滑に進めるにはこういった場も大切で、プロジェクト全体を通してみた場合、「時間とコストをかけて現地に赴く」ことが、プロジェクト運営には必要なことだと思います。

 最近の上海オージスのオフショアでは、キックオフ時に日本からメンバが訪問し、様々なコミュニケーションを図っている姿をよく見かけるようになりました。実際このやり方を実施しているプロジェクトのほうが失敗は少ないように感じます。距離と時間をうまく活用し、距離と時間の壁を越えない限りオフショアはうまくいかないと実感しています。

 このことは、お客様先で作業を実施しているメンバとのコミュニケーションについても同様だと考えています。時間をかけて双方で悩むのであれば、時間をかけて距離を縮めてお互い一緒に悩むほうが様々な面でメリットが多いと思います。私も常日頃から可能な限り現場に赴き、メンバと話をするよう心がけています。

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